「文学横浜の会」

 文横だより

<1月号>

過去の「文横だより」

2014年 1月12日 更新


昨年は内外ともに豪雨や巨大台風等、
自然災害の被害が多かった印象がある。

地球の温暖化とどう関係しているのかは、
まだまだ確実な事は解っていないが、
無関係ではない事はどうやら確かだ。

ならば温暖化を止められるかと言うと、
それは全世界で取り組むべき課題で、
近未来でみればそれは非現実的。

となればどうしたらいいのかと言えば、
自然災害に備えた減災に取り組み、
国家間の助け合いを密にしなければいけない。

なのに東シナ海や南シナ海を巡る国家間の軋轢は大きくなった。
果たして今年はどうなるのか?
今年は知恵の出し合いとしたいものだ。

           ★

文横だより2014年01月号を送ります。

◆出席者(敬称略)
 浅丘、遠藤、河野、金田、佐藤(ル)、篠田、清水、山下、林、佐藤(直)、鶴岡/藤野
 (注)林さん、佐藤(直)さん、鶴岡さんは今回初めて見えられた方です。

◆読書会テーマ
 「やまあいの煙」重兼芳子、担当者<佐藤(ル)>
 1月11日(土)18時〜

 今月の読書会は、20年前(1993年)に66歳(昭和2年〜平成5年)で亡くなった重兼芳子の52歳の時の 芥川賞受賞作「やまあいの煙」を選んだ。地方の火葬場でひとり働く青年が主人公。
恋人である背丈の大きな老人介護施設で働くたくましい女性と、 精神を病み最後は病死した息子の遺体をリヤカーに乗せ焼き場までの坂道を引いてきた小さな老婆の2人の女性を登場さ物語は進む。

同人の感想として:

読ませどころは、焼き場という特殊な職業。主人公の父親も同じ職業であったが、父親の方が普通の姿であろう。 最後に老婆が思ったよりも若く香水のなまめかしさが漂うところは蘇生であろう。

男は「死」の案内人、女は 「生」の案内人。

善人ばかりが出てくる。陰のような存在を善なるものとして書きたい場合、悪を書かないと意味がない。

小説としての盛り上がりを考えると、母子相姦の老婆に子供が出来てしまうなどの想定はどうだろう。

昨年取り上げた村田喜代子とストーリーテラーとして似たところがある。構成的に見れば最後はおかしい。 老婆の生年設定は作者と同じである。したがって投影しているのではないか。後半を手厚くすればもっと面白くなったのではないか。

優しい文章である。男には書けない文章だ。母子相姦は文学独特のものであるが、この物語のそれは「業」はあるが優しい母子相姦。

作者は洗礼を受けているので、老婆にキリスト教の「マグダラのマリア」を重ねる。それは「全てを尽くしての自己犠牲的なもの」。 赤ちゃんを亡くした若夫婦の生きている時は出なかった乳の、赤子が骨になったあとの場面がとても良い。

人間のどこを表現したかったのだろうか。全てを許して受け入れることだろうか。

題名である「やまあいの煙」と内容が終始一貫していない。最後が俗的すぎる。 「王様になったような気分であった」この「王様」にがっかりした。

(担当より) 主人公の職業は「生」が終焉した肉体を「骨」に焼き上げ遺族に返す仕事である。 「焼き場」は彼の仕事場であり、彼自身も「焼き場」そのものとして存在していたのではないだろうか。 ところが老婆に出会い、彼は「肉体」を持つ青年として生き始めた。

彼の職業に少なからずショックを受け、結婚の返事もできてはいない恋人にも「肉体」を持つ恋人として存在するようになった。 彼は2人の女性によって「生」を生き始めた。これからは煩悩に向き合い生きることになろのだろうか。

    以上、佐藤(ル)記

◆次回の予定;2月1日(土)
 読書会担当者;金田
 テーマは「忍ぶ川」三浦哲郎作 新潮文庫
 入手は図書館、またはAMAZON、「日本の古書店」等古書市場で。
 新刊本は注文が必要かも?

◆その他
 (1)読書会に入る前に、「文学横浜の会」Webページについての意見を交わした。
  色々な意見がでて、当面、以下の方向で随時改良することとします。
  @旧い内容については一括して纏める。
  Aメンバーの紹介記事については書く内容を決めて個々に書いてもらったものを載せる。
  B随筆等は随時募集して更新する。

  これら以外で、
  ・ビジュアル化する/
  ・当会のアピール事項を明確に表示する/
  ・時代に合わなくなった記事は外す/
  等の意見もありました。

 (2)Webに掲載する随筆(短くて結構です)を募集しています。
 (3)3月の読書会担当者は佐藤(直)さんです。
 (4)45号は2校原稿が集まった段階です。以降については判り次第連絡します。

(金田)


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