「文学横浜の会」

 文横だより

<3月号>

過去の「文横だより」

2014年 3月 3日 更新


雪国から見れば話題にもならない降雪量だが、
2月の大雪にはうんざりした。
2度の雪かきから雪国の苦労を体感した方も多かろう。

ほんのちょっとした気候変動によって、
豪雪になったり豪雨になったり、

地球上で自然を破壊し続ける人間に、
自然は時に大きな試練を与える。

そんな事を想っていると、ここにきてウクライナ情勢がきな臭い。
東アジア情勢や南西諸島をめぐる国家間の軋轢を含めて、
紛争の種は尽きない。

人・国家など、自然の中では小さな存在なのに、
いがみ合ってどうする。

まだまだ温かくなったり、寒さが戻ったり、
この時季、季節は安定しないが、もうすぐ春は確実に来る。

何時までも同じ春であってほしいものだ。

           ★

文横だより2014年03月号を送ります。

◆出席者(敬称略)
 浅丘、遠藤、河野、金田、佐藤(ル)、篠田、清水、杉田、鶴岡/藤野

◆読書会テーマ
 「シッダルタ」ヘッセ、担当者<杉田>
 3月1日(土)18時〜

 (はじめに)
安心して語り合える場を求めて、私はこの読書会に参加している。 同人が読書会と創作を通じて各自の「生に対する態度」を語り合う。 大事なことは「間違っているかも知れないことを、不十分な言い方でいっても大丈夫」という安心感を、 この場に対して持てるかだと思う。

もし何かを言ってみたとしても、すぐに「それは違うよ」と否定されたり「それはヘーゲルによればさあ」 と知識を見せびらかすような発言が続いたりすると、人は心を閉じる。 自分の「生に対する態度」つまり「生き方の姿勢」とはその人の内側でありそれを他者に対して出すというのは、 ここが「安心できる場」でなければならない。

自己の生き方を振り返り、他者のあり方への感度を育てる、作品をつくる、享受する、批評する、 そういった「同人の本音で語り合う場」を持てば人間理解が深まり、勇気をもらい、これが前向きに生きる力となり、創作意欲が増す。 私は会社とテニスコートにはない「読書と創作の場」を強く求めた。

入会希望は内面に深く聞き、真摯なものであり、結果を残そうと強く思う。 しかし、今も、将来も、無神経な馬鹿な私の一言が人を傷つけることを恐れる。 最初から言っておきます、私の未熟をご指摘ください、そしてお許しください。

(どうしてこの本を選んだのか)
さて、入会し、読書会のテーマの提出を求められる光栄がありました。 ヘルマンヘッセ「シッダルタ」を選択しました。この本は会社の尊敬する先輩社員(仲人でもあった)から、 「日本仏教も意外と深いものがあるよ」と言って頂いた本です。 30歳で初め読んだとき、何を言いたいのかわかりませんでした。

「デミアン」は同じ作者で同時期に書かれた精神世界、内面を書いた作品ですが、これには深く感動したことを覚えています。 「シッダルタ」は当時、4度、読んで何となく、意味がわかったように思いました。 今読んで面白いと思います。しかし、読書会のテーマとしては難解かも知れない。 申し訳ないことをしてしまったかも知れないと臨みました。

ところが意外にも評判が良かった。以下に、読書会での私がとらえた皆様の感想の一端です。

・ことばでは悟り、知恵は伝えられない。もっと若い時に読みたかった。
・非常に勉強になった。「シッダルダ」のどのページをめくっても、リフレインの効果で文章が音楽を奏でている。
・「オーム」というのは呼吸法の一つ、脳を刺激しアルファー波を出す。
・キリスト教の世界では人間は肉欲の結果であり、最初から罪を背負って生まれてくる。その罪を救うのがキリスト。 仏教では人間は成長し、修行し、悟りを得る。
・キリストの物語には一種の型がある、「高貴の内に生まれるが、下賤の中に暮らし、絶望の中を這いずりまわる。 その職業は渡し守が多い」
・ヘッセを若い時読んだ。今また読んで、より深いことを言っていることを知った。 「シッダルダ」には、考えさせることが多く、特に最終章に感動した。
・人は煩悩の中に、悩み、苦しみ、絶望し、それを乗り越えて人生の意味をいくらか知ることになる。 シッダルダは煩悩に沈んでいく中で始めて悟りに到達した。
・自分が悩んで来たことは人生の意味をいくらかでも知るためではないか。感動した。
・禁欲とヨガの修行に終始したゴーヴィンダは悟りを得ることができない。煩悩を経て始めて悟りに至ることができる。
・シッダルタの師としてゴータマが登場する、ゴータマとは悟りを得た人。
・シッダルタはやがて、最終の悟りを得た人として、ゴータマシッダルタとなるのであろうか。
・宗教はわからない。(確かに、オーム真理教などもあって、怖い部分もある)

(終わりに)
・「言葉では知恵は伝わらない」と言いながら、小説は始めら終わりまで言葉だけです。 言葉で考え、逆に言葉でしか伝わらない。この小説でも、「オーム」という言葉が川に身を沈める寸前の主人公を救います。 人には真理より、芸術、言葉が大切なシーンがあります。

・南ドイツからスイスを通り北イタリアまで「ヘルマンヘッセ号」という名の国際列車が走っている。 約50年前になくなったノーベル賞作家を顕彰してその縁の地を走る。 ヘッセの生涯は幸せ一途のものではなかった。結婚生活は破綻しナチスの支配する祖国ドイツからは売国奴呼ばわりされ、 亡命先のスイスで貧窮の日々をおくる。そうした中でこの作品は生み出された。

・わたしは死ぬまでに「ヘルマンヘッセ号」にのることに決めました。 強く求めればきっと乗れるはずです。

    以上、杉田記

◆次回の予定;
 文学横浜45号、合評会
 日時;4月6日(日)13時〜17時
 場所;幸ヶ谷集会所、会議室(予定)
 今回もゲストとして秋林哲也氏にお願いしました。

◆その他
 (1)合評会後の2次会は「「萬珍菜館」(予定)
 (2)5月の読書会担当者は鶴岡さんです。
   テーマは「可哀想な姉」渡辺温
   青空文庫に掲載されています。
 (3)45号は本日(3日)メール便にて送りました。
 (4)三島賞受賞記念対談「村田沙耶香×楜沢健」
   日時;3月21日(金)13:30〜
   場所;横浜市開港記念館1号館
   主催;自主講座横浜文学学校

(金田)


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