「文学横浜の会」
特集
「 箱 根 駅 伝 」
2002/1/12
シード校 :順大・駒大・中大・法大・神大・大東大・帝京大・日大・山梨大
今年も箱根駅伝の季節がやってくる。 毎年の事だけれども、この季節になると大学各チームの動向が気になる。 関東大学連盟主催の駅伝だが、日本の大学駅伝の中でも最も歴史があり、 正月の風物詩として定着しているのではないか。 各大学のチーム状況を占う上で参考となる直前のレースも終わった。 各区間がほぼハーフマラソンに匹敵する箱根駅伝では、実績のある選手が実力通りの走りをするとは限らない。 長距離の場合は特にそうだが、選手のコンディションが大きな要素となる。 春先の関東インカレ、9月の日本インカレで成績をのこした選手でも、一年を通して好調を持続させる事は難しい。 その意味でも直前のレースを興味深く見た。 例年に増して、各大学の力は接近している。それが第一印象だ。
そして各大学の主力が本番のレースに照準を合わせて、直前のレースを回避する傾向が今年の特徴か。
順大のように直前のレースには出ない大学もあるが、そうした傾向はこれからも続くかも知れない。
直前のレースと言っても、本番までは、まだ一月もある。これからが各大学の監督・コーチの腕の見せ所か。
<順大の連覇、駒大の勢い> 今年もこの2大学がレースの中心になる事は間違いない。 まず今年の出雲駅伝を順大が制し、全日本大学駅伝は駒大が制した。 距離こそ違え大学駅伝の覇者を競うに、箱根駅伝はまさにうってつけのレースと言える。 ・駒大
・順大
<伝統校、中大・日大・早大は> ・早大
・中大
・日大
<神大・山梨大の勢いは戻るか> ・神大
・山梨大
<嘗ての強豪、日体大・大東大は> ・日体大
・大東大
<新興勢力、法大・帝京大は> ・法大
・帝京大
<予選会上り、亜大・東海大・専大・関東学院は> 近来にない高いレベルの予選会を勝ち抜いてきたチームだ。
シード校を一つでも食って、上位を狙ってほしい。個々のチームにその力は十分ある。
横須賀での20キロのレースでは、亜大の選手は神大に劣らぬレース運びをしたし、
関東学院大の尾田は、日体大の記録会で果敢に徳本と競っていた。
既に大牟田時代の同僚を凌ぐ力をつけ、学生長距離界のエースと競うまでに成長した。本番でのレースが楽しみだ。
[ 予想 ] 箱根駅伝の楽しみの一つ、どのチームが優勝するかを予想する。 何も自分の楽しみを文章にして、公開する事もないではないかと思うのだが、 同じ楽しみを持つ同輩、意見を交換するのもまた楽しい。 さて今回の予想だが、どこを見ても駒沢大が圧倒的に有利だとの声が強い。 1万Mの持ちタイムを見れば、確かにそうで、誰が予想しても優勝候補の筆頭に挙げられるのは間違いない。 だが、それでは面白くないし、今年の高校駅伝を見た後では「駅伝では何が起るかわからない」との思いが強くなった。 無論、高校生と大学生との違いはあるが、同じ人間がする事に違いはない。 応援しているチームがあれば、優勝してほしいと思うのは当然だ。 と同時に、箱根駅伝を考えれば、山を考慮に入れなければならないし、1万Mの持ちタイムなど参考程度にしかならない。 どの区間もハーフマラソンに匹敵する箱根駅伝では、如何にその日にコンデションを合わせるかに掛かっている。 幾ら1万M28分代の持ちタイムの選手でも、1・2分遅くなるのはよくある事だし、 ハーフマラソンではその差は3・4分にもなってしまう。ブレーキを起せばその差はもっと大きくなる。 つまり如何にチームのコンデションを整えるかに掛かっていると共に、 如何に調子の良い選手を見抜き起用するかに掛かっている。 それは、何が起きるか判らない箱根駅伝の魅力の一つである事には間違いない。 前回、優勝を予測するための目安として、以下の条件を考えたが今回も全く同じだ。
勿論、優勝するためには、本番では一人も大ブレーキを起さない事が絶対条件だ。
[優勝を争うと思われるチーム] まず、優勝を争うと思われるチームを予想すると、駒沢大・山梨大・順天大・中央大を挙げる。 ・駒沢大
・山梨大
・順天大
・中央大
優勝を予想するとデータ通り駒沢大を取るか、不気味な中央大と見るかだが、ここは実力の駒沢大を取る。
続くチームとしては、山梨大、順天大と予想する。
[上位を争うと思われるチーム] ・大東大
・神奈川大
・早稲田大
・法政大
・日本大
[シード権をめぐって] ・帝京大
・日体大
・亜細亜大
・東海大
・専修大
・関東学院大
[振り返って] 今年も充分に駅伝を楽しんでテレビ観戦した。 大学の出雲駅伝に始まって、年末の高校駅伝、元旦の実業団駅伝から箱根と、 楽しみにしている者には目を離せないレースが続いた。 観戦者は勝手に観て、楽しんでいるだけだが、選手達には気の抜けない日々だろう。 日頃の成果を発揮できた選手、運悪く不調で充分に活躍できなかった選手、 まるで人それぞれの人生の一齣、縮図でもある。 昨年の栄光は必ずしも今年の栄光を約束しないし、来年の事は誰にも判らない。 高校男子の大牟田高校一区の走者、昨年最終区で競り勝ち、トップで栄光のゴールに飛び込んだ1年生選手が、 今回46位に沈んだ事が印象に残る。 2年生でありながら、1万M29分そこそこの記録を持つまでに成長した選手なのだ。 全く、長距離のレースは何が起るか判らない。だから見ている方は面白いのだが…。 さて今年の箱根を振り返ると、1・2区の意外な展開、やっぱり駒沢大は強かった、に尽きる。 加えるなら、早稲田大の頑張り、順天堂大の底力、それに亜細亜大の奮闘だろう。 その他の大学もそれぞれのカラーを出して、見る者を楽しませてくれた。 伝統校の日大が10位に沈んだ事は、各校の実力差が無くなってきている証拠だろうし、 徳本選手のアクシデントも、極限まで自分の身体を鍛錬している表れだろう。 残念な結果ではあったが、これもまたレースの一部なのだ。 テレビ放送の影響なのだろうが、アクシデントを起した選手をドラマ仕立てにする傾向が見受けられる。 画面に映すのはいいが、レースは続いているのだ。そちらを疎かにしてほしくない。 勝手にレースを予想したのだが、的中率60%程度と言った処か。 今回もテレビ観戦だが、 改めて選手のコンデションが如実に結果に表れる事を再認識し、 コンデションの持って行き方の難しさと、選手個々の意識の持ち方が結果に表れる事を知った。 結果を残せた者、残せなかった者を含めて、 4年生は箱根駅伝を終えて、大学での競技を終える。 卒業後は実業団で活躍する者もいるが、殆どは一市民ランナーになるのだと思う。 箱根を走れた選手は、箱根を目指して競技をしている者の一部に過ぎない。 箱根を走れなかった選手も、大学での競技生活は決して無駄ではないと思う。 この時代、何にでも夢中になれる事があれば幸せだ。一度夢中になれる事があったのなら、 また必ず夢中になれる事が出来る。 夢中になれる何物もない者ほど、虚しい事はない。 さて、レースを振り返ってみるとしよう。
<往路> 牽制しあってのスタートはここ何年かの特徴だ。とび抜けて力の違いがなければそれも頷ける。 12月の日体大記録会で、関東大の尾田選手がいいタイムで走っていたのを目撃して、 てっきり飛び出すのでは、と思っていたが、そうはならなかった。 記録会後、調子を落したとの記事を読んで、長距離選手の調整は本当に難しいものだと思う。 スタートから遅れてはならじと、各校1区にはエースクラスを配置する。 前半から果敢に攻める選手がいなかったのはちょっぴりさみしい。 殆どのチームがトップから30秒以内で2区に繋げた。30秒は箱根駅伝では大きな差ではない。 2区ではなんと言っても法大・徳本選手の棄権が印象に残る。 そして駒大・神屋選手の不調、反対に早大・原田選手と山大・モカンバの区間賞争いも印象的だった。 中大・野村選手も12月の記録会では早々にリタイアしたが、元気な走りを見せてくれた。 それ以上に意外(失礼!)に思ったのは亜大・前田の頑張りだ。区間3位の走りは見事と言うほかない。 亜大がシード権を勝ち取った功労者の一人だろう。 3区で印象に残るのは早大・森村と駒大・島村の走りだ。 ここではっきりと、早大が予選会の好調さをそのまま持続している事を窺わせると共に、 駒大の層の厚さを見せ付けられた。1・2区で躓いて、まさかの9位から4位にまで押し上げたのは、 まさにチーム力なのだろう。 4区は駒大・松下につきる。力強い走りでトップにたち、2位早大との差は約11秒。 前回は強風に悩まされたコースだが、今回は天候にも恵まれた。区間記録には及ばなかったが、 それに匹敵する走りだった。 最も注目していた5区では、今回もトップの入れ替わりがあった。 各校でエース区間を走ると思われていた選手が、5区にエントリーされたのが今回の特徴だ。 山登りの過酷なコースだけに、選手の好不調がもろにタイムとして表れる。 注目していた選手は中大・藤原、山大・カリウキ、順大・野口、それに神大・吉村の各選手だ。 まず実績のある藤原がトップから3分以上も離れて襷を受けた時点で、昨年の再現は薄くなった。 カリウキ、野口が何処までトップに迫れるかが関心事だったが、 トップと約1分10秒差で襷を受けた神大・吉村が後半トップに踊り出た。鮮やかの一語に尽きる。 区間賞・野口の走りもすばらしかった。 往路優勝:神奈川大学
<復路> 往路を終えて、約18時間後にスタートする復路の選手は一体何を思うだろう。 置かれた立場で、受けるプレッシャーも様々、眠れない選手もいるに違いない。 走る選手の気持を思えば、部外者は勝手に言いたい放題、選手が読んだらきっと不快に思う者もいるかも。 と、そんな事を考えながら書いている。 しかしプレッシャーを跳ね除けてこその戦いなのだ。 6区、11校が時差スタート。 6区の選手の走りは、テレビの画面を観ていても、スピードの違いがよく判る。 今回で言えば、6区で駒大がトップに踊り出た時点で勝負はついた。 トップを走る神大の選手と、駒大の選手の走りは、明らかに違っていた。 恐らく、神大の選手には、重いプレッシャーがのしかかっていたに違いない。 実績から大東大の選手をテレビでは追っていたが、確かにスピード感は他の選手とは違う。 でもテレビでは多くの選手を映してほしい。 7区は順大・伊牟田、早大・空山、大東大・柴田の2位争いが見ものだった。 8区はトップを追う順大・中川の走りに、連覇を狙う順大の意気込みを見た。 こう言う選手が残っている限り、来年も順大は侮れない。 それにしても駒大の総合力はすばらしい。エントリー変更の1年生が、区間賞に肉薄する走りをするのだから。 9区は駒大・高橋の走りに尽きる。復路に若い選手を配置した中大が4位に上がったのは、さすがと言うか、 やはり伝統の力なのだろう。中大には駒大の対抗として密かに期待していた。往路の6位は期待外れだったが、 復路での若手の活躍は、きっと来年に繋がる。 10区ではシード権を賭けた熾烈な戦いが見ものだった。 結果的には10区の出来がそのままシード権に繋がったが、それがそのまま各チームの力だと言う事だ。 日大のシード落ちは、コンディション作りの失敗と見る。個々の選手を見れば、区間上位の成績を残した選手もおり、 来年に期待したい。 (K.K) |
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