「文学横浜の会」

特集

「 箱 根 駅 伝 」

    目次
2005年のみどころ H16.12/18

予想 H16.12/23
 ・優勝に最も近いチーム
 ・波乱を起こすとすれば
 ・上位を窺うのは
 ・先ずはシード権

振り返って H17.1/11
 <往路>
 <復路>
 

2005年の見どころ

ー2005年箱根駅伝出場大学ー
 <シード校>
 駒沢大、東海大、亜細亜大、法政大、順天大、
 東洋大、中央大、神奈川大、日体大、日大
 <予選会上がり>
 早稲田大、大東大、明治大、専修大、山梨大、
 中央学院大、拓殖大、城西大、帝京大

 一言でいえば、「駒沢大」の4連覇がなるかどうかだろう。 また、今年の新しい戦力としての北村選手(日本体大)、伊達選手(東海大)、松岡選手(順天堂大)、 そして上野選手(中央大)といった高校時代に実績を残した新人達の箱根デビュー戦に注目したいし、 予選会から出場の早稲田大、明治大にも注目だ。

 先ず、「駒沢大」の4連覇だが、実績と選手層の厚さで他大学の追随を許さないが、 今回は対抗として、中央大、日本大に注目したい。 先の伊勢路でもはっきりしたように、「駒沢大」の強さはその安定した走りにある。 駅伝では一人でもブレーキを起こすと、 実力の飛び出た選手を多く抱えていれば別だが、回復するのは難しい。スタートで躓けば、致命的にさえなる。 例え、優勝候補の筆頭駒沢大でも、それは例外ではない。大学駅伝とはいえ今の駅伝では益々その傾向は強くなった。 それだけ実力が拮抗している証拠なのだが、その中にあって3連覇を勝ち取っただけでも大変な実績だ。

 直前の前哨戦といわれる「上尾ハーフ」「府中ハーフ」「横須賀シティー」そして日本体大での記録会も終わり、 各大学の現状も垣間見えてきた。1次エントリーの選手も発表になって、益々「箱根モード」になった。 自ら限界まで肉体を鍛える競技選手に怪我・アクシデントの類はつきものだが、今回、 中井選手(東海大)が1次エントリーから洩れた。 残念な結果ではある。

競技の結果は当日の調子が大きく作用するが、その意味ではコンディションを好い方向に持っていくのも競技のうちで、 試合当日まで3週間を切った今、既にもう戦いは始まっている。

さて、今年の予選会も様々なドラマを呼んだ。 先ずは、13年目となる古豪・明治大の予選突破と、早稲田大の1位通過が挙げられる。 ここ数年、主力の不振で満足な結果を残せなかった早稲田大だが、今回は本番でどんな結果を残すか興味深い。 同様に、明治大のレースにも注目が集まるだろう。

アドバンテージを入れたトータル時間の4秒差で連続出場がならなかった東農大、 20キロを走った10人の差がこれだけだから、まさに僅差。 実際のレース結果も9位と10位の差は39秒だった。 去年といい、今年といい、各チームの力が接近した結果だろう。

そして予選会からもう一つ、座間選手(専修大)1年生を挙げたい。予選会日本人1位の結果は誰が想像しただろう。 先に挙げた4人の1年生だけではないことを結果で示した。 本番ではどんな結果を残すか興味深いが、他にもどんな新人が出てくるかも大いに期待したい。

<予想>

 これは、全く個人的な楽しみである。

・優勝に最も近いチーム

 <駒沢大、中央大、日体大>

 やはり、駒沢大だ。でも昨年までの強さを感じなくなったのも事実で、これは絶対的なエース、 駅伝における大砲と言ってもいい選手が見あたらないからだろう。でも他のチームが認めるように、 他の大学だったらエース区間を走ってもおかしくない選手が揃っている。それが強さでもある。 伊勢路で見せたように、全区間失敗なく襷を繋げるか、大砲がいないだけに失敗は許されない。

 対抗としては、中央大、それに日体大をあげたい。

 中央大がここにきて勢いを感じる。なんと言っても下りのスペシャリスト野村選手、 そしてエースに成長した高橋選手の存在が大きい。 それにまだ20キロを超えるレースの実績はないが1年生の上野選手と、伊勢路で結果を残した池永選手にも注目したい。 先の伊勢路と前回の箱根駅伝のどちらもスタートに失敗しているだけに、 どんな選手配置になるか注目の的だが、スタートにつまずかなければ‥‥、 他の選手も力をつけているだけに駒沢大を脅かす一番手だろう。 5区の成績と、どの区間も失敗なく走れば、駒沢大の前を行く可能性は大きい。

 日体大は下級生と上級生がうまく噛み合い、力を出し切れば、駒沢大といえども後塵を拝することになる。 なんと言っても1万メートルの日本人・大学生の最高タイムをもつ1年生・北村選手、 そして前回活躍した2年生の鷲見選手・保科選手・稲垣選手等の下級生が持ちタイム通りの走りをすれば、 各校にとっては脅威だ。それに四辻選手・山田選手・熊本選手と言った力のある上級生がいる。 力はあるのにどういう訳か過去の駅伝では満足できる結果は残せていない。 高校時代に実績ある選手を集めているだけに、山をどう走るかによるが、結果次第では面白いチームだ。

・波乱を起こすとすれば

 <日大、順天大、東海大>

 日大は1年生・サイモン選手の存在が言われているが、他にも高校時代実績を残した選手を多く抱えている。 土橋選手をはじめ大学に入って伸び悩んでいる傾向はあるが、実績・実力があるだけに、 きっかけさえあれば不気味な存在だ。

 順天大も高校時代のスター選手を多く抱えている、と言った点では日大や日体大と似ている。 4年生が1人、3年生が6人、2年生が7人、1年生が2人と、1次エントリーされたのをみて判るように、 2・3年生が中心のチームだ。その中で1万メートルでチーム一の持ちタイムを持つ、 1年生・松岡選手に注目が集まる。それに去年実績を残した2年生の長門選手・今井選手にも注目したいが、 今シーズンのトラック・レースに限っていえば、前回ほどの勢いが見られないのが気になる。 しかし調整次第では、、。

 東海大はエース・中井選手のエントリー漏れがやはり大きい。 しかし新戦力として1年生・伊達選手の成長には、エースがいなくても或いは、と思わせる勢いを感じさせる。 5区を走るとの噂が流れているが、果たしてどの区間を走るのか?  ハーフマラソンのJr日本新を出した上尾ハーフ時ような走りができれば、間違いなくチームに勢いをもたらすだろう。

・上位を窺うのは

 <早稲田大、大東大、法政大、神奈川大、山梨大、東洋大、亜細亜大>

 まづは予選会1位通過の早稲田大の勢いに注目したい。シード権狙いが順当だろうが、上位でシード権を獲るか、 10位でのシード権なのかも大きな意味をもつ。今回は「山への準備もできている」との監督発言もあるが、 過去は山を苦手としているだけに、新監督の思惑通りになるかも注目したい。

 大東大、神奈川大、山梨大といった過去に実績あるチームのレースにも注目したい。大東大は前回の優勝候補からの、 よもやの予選落ちだったが、今回は注目が集まらない分、リラックスしてレースに臨める強みがある。 神奈川大も山梨大もそれは同じだが、如何せん、中心となる選手が1人2人では優勝を狙うには厳しい。 山を無難なく上位で乗り切れば、上位に食い込める力はある。

 法政大、東洋大、亜細亜大のチームがなんとも不気味だ。大砲級のエースや注目の新人がいる訳ではないが、 駅伝はチームでのレース。前回の亜細亜大が3位に入ったように、調整次第ではどのチームも上位へ行く可能性がある。

 前回の山登りで20位と大ブレーキを起こして8位から16位に順位を落としたチームがあるように、 1人でも調子を落とせば、下位に低迷する可能性もある。それはどこのチームも同じだ。本番まであと僅かだが、 この期間の調整次第が勝負となる。

・先ずはシード権

 <明治大、専修大、中央学院大、拓殖大、城西大、帝京大>

 久々に出場の明治大のレースが注目されるだろうが、まずはシード権狙いが本音だろう。 専修大も1年生・座間選手の台頭はあるが、やはりそれだけでは上位へ食い込むのは難しい。 中央学院大は新しい勢力の台頭が見られないのが苦しい。

 これらのチームも先に挙げたチームとそんなに力の差がある訳ではない。 調整次第では上位へ食い込める可能性のあるのは同じだ。

 まあ、選手諸君には楽しんでレースに取り組んでほしい。 廻りがどんなに熱くなっても、長い人生駅伝の、所詮は1区間なのだから。

<振り返って>

 今井選手・順天大の山登りには驚いた。
 駒沢大はやはり手堅く、選手層の厚さを見せつけて、強かった。
 注目の1年生の結果は“明暗”はっきり別れた。
 そして、今年の箱根駅伝も充分に面白かった。

 まず、今井選手の山登りは、今までの区間記録を大幅に更新すると同時に、 これからの山登りのイメージを大きく変えしまうのではないかと思わせる。 余程体調が良かったにしても、あんな走りができる選手がいたのかと驚く。 来年以降、どんな走りをみせてくれるか楽しみだ。他の選手にも大きな目標になる事だろう。

 駒沢大の強さは、誰もが認めるように大きな失敗をしないことだ。つまりそういう選手を各区間に配置する、 配置できる、その手腕だと思う。 それは監督を中心とした日頃からの鍛錬、そして何より各選手を掌握しているからだと思う。 1万メートルの持ちタイムが一番いい、3区に配置されていた斉藤選手を、当日入れ替えた事からもそれは明らかで、 選手起用は、あくまでもその時の“調子”なのだ。選手をしっかり把握できているからそれも可能なのだろう。 それに、要所(4区、9区)にエースを配置できる選手層の厚さと、それに応えることができる選手につきる。

 注目された1年生だが、まず上野選手・中央大の1区でのまさかのブレーキで、波乱の幕開けとなった。 当日の体調が悪かったのかも知れないが、恐らくプレッシャーと重圧感で潰れてしまったのかも知れない。 松岡選手・順天大、もブレーキと言う訳ではないが、区間11位と実力を出し切れなかった。 反対に2区を走った伊達選手・東海大はトップで襷を受けて、2区・区間2位の快走だった。 北村選手・日体大も途中アクシデントがあったにも関わらず、5区・区間4位の結果を残した。 立派だと思う。

 <往路>  

 1区は、ルーキー上野選手の走りに注目が集まった。
画面から観る上野選手は、スタート直後からなんとなく落ち着きがないように思われた。 独特の雰囲気の中、結果論だが、初めての経験で緊張していたのではないか?  ルーキーが遅れて行く中、目論み通りに、いやそれ以上に1区を走れたのは、東海大だろう。 丸山選手が亜細亜大の木許選手とラストを競り合い、8秒差でトップでゴール。 2区に最初に襷を繋げて、その後1度もトップを譲ることなく芦ノ湖にゴールした。

2区では、最初に襷を受けたルーキー伊達選手の走りに注目が集まった。本当に強いね、と言うのが感想だ。 流石、ハーフマラソンのジュニア日本新の記録をもつ選手だ。区間2位の走りは立派。 その後も区間3位・3位・5位とトップで往路優勝。1区の良い流れがそのまま襷に繋がった。

 反対に、駒沢大への対抗として1オシの中央大が、まず1区で3分31秒差と大きく出遅れた。 観ている誰もが、もう優勝はおろか、せいぜいシード権確保が当面の目標になったな、と思っただろう。 それ程に駅伝での1区の躓きは大きい。1区で多少躓いても、トップ争いに持っていける力のある大学は、 駒沢大ぐらいしかないだろう。しかし大きなブレーキを犯したらそれも危うい。

しかし今年の中央大は違った。少しずつ順位を上げて、6位で芦ノ湖にゴールした。 2区を走った高橋選手の冷静なレース運びが大きかったと思う。区間3位の走りだったが、後ろの一人旅の走りで、 この記録はまずまずだろう。何より1区の躓きを断ち切った事が大きい。 その後も区間7位・2位・2位の走りで、往路6位だった。

 優勝候補の筆頭、駒沢大の1区の走りにも注目した。太田選手は出雲駅伝にも、伊勢路にも出ていなかった選手で、 前回1区を走り、実績のある選手だが、今シーズンは故障との噂があった。 箱根が近づいて、好調だとの声は聞こえていたが……。 逆に言えば、1区に出てくるぐらいだから、余程好調だったのだろう。結果はトップと31秒差の7位。 1区は順位より、トップとの差だから、31秒差はまずまずのスタート。

2区佐藤(慎)選手が区間9位と繋いで、その後も区間4位・1位・2位と、 トップと30秒差の2位で芦ノ湖にゴールした。何より4区田中選手がトップに1分14秒に詰めたのが大きい。 4区にエース級を配置できる選手層の厚さがチームの力なのだと思う。

 そして5区の山登りは順天大の今井選手の走りにつきる。チームは15位から4位に浮上。 同じく快調に飛ばしていた北村選手・日体大が突然アクシデントに襲われた画面に釘付けになった。 あわや棄権、と言う事態も予感されたが、北村選手、ただ者ではない。我慢して走りきり、区間4位は立派だ。

 優勝経験のある山梨大が8位、神奈川大が10位、大東大が14位、早稲田大が15位、、 久々出場の明治大は16位だった。

 ー往路順位ー
 1位:東海大、2位:駒沢大、3位:日本大、4位:順天大、5位:日体大、
 6位:中央大、7位:亜細亜大、8位:山梨大、9位:城西大、10位:神奈川大、
 11位:中央学大、12位:東洋大、13位:法政大、14位:大東大、15位:早稲田大、
 16位:明治大、17位:学連、18位:専修大、19位:帝京大、20位:拓殖大

 <復路>

 復路は16位の明治大(9分12秒差)までが時差スタート。

 この時点で総合優勝を占うとすれば、タイム的には4位の中央大(4分25秒差)までが範囲と言えるだろう。 しかしあくまでも可能性で、2位につけている駒沢大(30秒差)が何時トップに出てくるかに注目が集まった。 でも、そこは箱根駅伝、何が起こるか判らない。 6区の走者が時間差で次々スタートしていく。

 6区は、まず野村選手・中央大の走りに注目が集まった。去年・一昨年と区間賞を獲得した選手だ。 画面では区間新を狙うとのインタビューが流れて、観る方の期待を集める。しかし最初の1キロの入りが2分40秒(?)、 とのアナウンサーの声を聞いて、「速い、気負っているのかな」と思った。 下りとは言え、最初の3キロ辺りまでは登りなのだ。 20キロを超えるレースでは、最初の入りで失敗すると後に響く。心配した通り、その後はペースが落ちて、 芦の湯(5キロ付近)までは16位の記録だった。 でも流石下りのスペシャリスト、終わってみれば区間賞だった。しかし記録は1時間1秒と、平凡な記録に終わった。 後で知った事だが、野村選手は12月に入って一時は出場を危ぶまれた程、体調を崩していたらしい。
4年間満足の行くレースをするのは、本当に難しい。

 小田原中継所に、駒沢大はトップと14秒差で襷を繋げる。

 7区では、糟谷選手・駒沢大がいつ前を行く角田選手・東海大を捕らえるかに注目が集まったが、 3キロ辺りで追いつき、しばらく併走したが5キロを過ぎて除除に差がついて、その後は駒沢大の独走となった。 やはり両者の走力の違いだろう。7区区間賞は糟谷選手。

 7区を終えた時点で、トップ争いと同時に、シード権を巡る争いも熾烈になった。 この時点で7位の亜細亜大と15位の東洋大までの差は3分51秒。9チームが10位以内のシード権内にいた訳だ。

 8区では駒沢大は2位と1分6秒差で襷を受ける。この区間は駒沢大唯一の1年生選手。 粒ぞろいの選手層の中では、比較的手薄と言われたが、そこは駅伝、トップを走る強みで実力以上の走りをする。 しかし区間14位の走りで、2位前川選手・東海大に27秒差に詰められた。8区区間賞は奥田選手・中央大。

 シード権争いは区間4位・5位と快走した中央学院大と亜細亜大がそれぞれ7位・8位と9位以降をやや引き離した。

 9区は駒沢大のエース塩川選手の走りにつきる。27秒に詰め寄られた差を、区間新の走りで、 一気に2位との差を2分27秒差に広げた。まさに駒沢大の描いたレース展開になった訳だ。 要所に配置できる選手層と、それに応えられる選手の力だ。 反対にそれまで2位を走っていた東海大は倉平選手のブレーキで、 順位を6位に落とす。2位に浮上したのは日大だった。

 9区を終えた時点でのシード争いは10位の神奈川大、11位の早稲田大、12位の大東大の争いになった。

 10区は安定した走りで駒沢大がそのままゴール。四連覇達成。
 その後ろではシードを巡り熾烈なレースが展開された。逃げる神奈川大、追いかける早稲田大。 早稲田大の高岡選手は、一時、7秒余りの差に詰め、区間新の走りでもそれ以上詰められなかった。 結局、22秒差で神奈川大がシード権を獲得した。区間賞(区間新)は山田選手・日体大。

 ー 総合成績 ー
 1位:駒沢大、2位:日体大、3位:日本大、4位:中央大、5位:順天大、
 6位:東海大、7位:亜細亜大、8位:法政大、9位:中央学大、10位:神奈川大
11位:早稲田大、12位:大東大、13位:東洋大、14位:帝京大、15位:山梨大、
16位:城西大、17位:拓殖大、18位:専修大、19位:明治大

(K.K)


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