「文学横浜の会」
特集
「 箱 根 駅 伝 」
2011年の見どころ
ー2011年箱根駅伝出場大学ー
今回は早稲田大の三冠(出雲駅伝、全日本大学駅伝の優勝と箱根駅伝の制覇)なるかに注目が集まっている。
それを阻もうとするのが東洋大、駒沢大だ。
1万メートルの持ちタイムをみると、早稲田大、東洋大の二校が他を圧倒している。
持ちタイムからみればこの二校が他を引き離しているが、果たして持ちタイムどうりに行くだろうか。
そうはいかないのが箱根駅伝であり、過去の結果を見てもそれは明らかだ。
そしてこの二校に引けを取らない持ちタイムを持っているのが駒沢大で、密かに優勝をもくろんでいるだろう。
毎回言っている事だが、箱根駅伝の各区間が20キロ余りのレースでは、同じような実力の選手でも、
体調やその日の調子によって1・2分の開きがでてしまう。
いくら持ちタイムが良くても大ブレーキでもおこせばもっと大きな差がつく。
それに競技場での走りと路上では違うから、やはり持ちタイムは参考程度にしかならない。
だからこの三校以外から優勝チームがでない訳ではない。いやそうなった方が見ている方は面白い。
毎年箱根を目指して新入生が各大学に入学してくる。以前と比べて高校生のレベルも格段に上がっているのは、
高校駅伝を目指したり、あるいは箱根駅伝を目指す中学生高校生が増えたからだろう。
いまでは高校生で5千メートルの持ちタイムが13分代の選手も珍しくなくなった。
そうした有力選手の獲得競争も激しくなっていると聞く。前々から言われていた事だが、
箱根駅伝を大学の有力な宣伝手段だと位置付けている大学もあり、有力選手の獲得合戦は益々熾烈になっている。
早い話が高校2年の終わり頃から、もう大学から声がかかる選手もいるとの事だ。
熱心なのはいいが、あくまでも大学スポーツだと言うことを、関係者は肝に銘じてほしいものだ。
国内から有力選手の獲得が難しければ、海外から、と言うのが手っ取り早い。
特にアフリカから来た選手は、1年次ですでに日本記録に匹敵する記録を出す選手もいる。
箱根駅伝では留学生の出場枠は1人と決められているが、大きな戦力であり、
日本人選手の刺激になる事は間違いないが、安易なチーム作りにならないように望む。
今年新しく入学した中から、今回も多くの1年生がエントリーされた。
5千や1万メートルの記録は良くても、20キロを超す距離に適応できるようになるには時間がかかるがら、
その中の何人が実際に走るかは判らないが、早くも頭角を現している新人がいる。
各大学での育成の成果だとは思うが、高校生の質の向上もあるのかも知れない。
そして高校時代から名の通った選手が、偶然か、今年は早稲田大、駒沢大そして東洋大に集中したように思える。
高校生の方でも優勝できそうな大学を択ぶ傾向なのかも知れないが、それでは面白みは半減する。
でも大学に進学してから伸びる選手もいて、3年、4年になってエントリーされる選手もおり、
そうした選手を待ち望む気持ちは強い。
<予想>
毎回のことながら、これは全く個人的な楽しみだ。
今回は東洋大、早稲田大、駒澤大が最も有力視される。恐らくこの3チームの中から優勝チームが出る、とみる。
しかし3校ともそれぞれ不安材料をかかえている。
東洋大は今シーズンぱっとしない柏原の出来具合であり、早稲田大は山をどう克服するかであり、
駒沢大は新しい戦力が期待通りの走りができるかだ。
箱根駅伝では幾ら持ちタイムで他を圧倒していても、それはあくまでも参考にしかならない。
予想される3校以外から優勝チームが出ない、と言う訳ではない。
もしそんな展開になれば見ている方ではより面白いし、密かに期待もしている。だから箱根駅伝は面白いのだと。
1区間でもブレーキを起こしたチームが優勝から遠ざかり、何れにしてもレース直前までの調整が全てだろう。
面白そうなのが拓殖大だ。有力な留学生がおり、恐らく2区(ぴょっとしたら5区)を走ると思われるが、
区間新を狙った走りをすれば、チームは活気づくし、上位のチームの走り次第では面白い存在になる。
82回大会で優勝した亜細亜大を率いた岡田監督が拓殖大の監督に就任して初めての駅伝で、そのレース運びにも注目したい。
シード権争いも今回は前回以上に予断を許さない。
優勝候補に上げた3校以外は全てシード争いに巻き込まれる可能性があり、その3校にしてもアクシデントに見舞われれば、
シード落ちの可能性もある。今回はシード争いが面白いかも知れない。
一区間でも大ブレーキを起こしたり、或いはチームの歯車が狂えばどんなに持ちタイムが良くてもシード落ちだろう。
・優勝に最も近いチーム
早稲田大、を挙げる
1年生ながら上尾ハーフを制した大迫選手、同じく1年生ながら好記録を出した志方選手の加入、
そして復活した三田選手の存在が大きい。それに昨年活躍した2・3年生も健在で、アクシデントがない限り優勝候補の筆頭だ。
1区でつまずかない限りレースをリードするのは間違いないが、弱点は山登りだ。
大ブレーキを起こさないような走りをして、他の区間で挽回する気持ちで走れば5区の走者も楽だろう。
登録メンバーから見ても優勝の最有力チームだ。
・対抗として
対抗として駒澤大、東洋大をあげる。
<駒沢大>
2校の総合力は互角とみるが、駒沢大の勢いをかう。
前回のレースは予選会上がりで2位だったが、その時に活躍した現2年生は健在で、
それに由布選手をはじめとする有力な1年生の加入が大きい。
卒業した前4年生の穴を埋められるかとなると、経験不足が気になるが、
若さがいい方向に傾けば早稲田大を脅かすかも知れない。
<東洋大>
何と言っても柏原選手の出来次第だろう。昨年のような活躍をすれば往路優勝は堅いが、
2位以下にどんな差をつけられるかを含めて昨年同様1区・2区をどう乗り越えるかにかかっている。
戦力的には全日本大学駅伝で活躍した1年生の設楽兄弟等、新戦力加入もあって、
恐らく昨年よりチーム力はアップしているとみる。
だが、どうしても柏原選手の出来が気になり、新戦力も、どのチームにも言える事だが、長い距離への不安は付き纏う。
・波乱を起こすとすれば
拓殖大、明治大をあげる。
拓殖大
有力な留学生の存在と予選会を1位で通過した実力は侮れない。恐らく留学生は2区を走ると予想する。
留学生で実力の秀でた選手と言えども初めての選手を過大に期待してはいけないかも知れないが、
2区をダントツにトップで走ればチームは勢いずくだろう。他を慌てさせられれば面白い。
明治大
1万米の持ちタイムが28分台の選手が4人いるのは心強い。
前回は4区を終えた時点でトップだった実績もあり、山さえ克服できれば面白いレースができる。
前回、後半は失速して結局10位シード権入りしたが、そうした経験は貴重だ。
更に上を目指す意気も上がっているだろうし、侮りがたい。
・上位を窺うのは
日体大、城西大、中大、の各大学をあげる。
日体大
1万米の持ちタイムが28分台の選手が3人いる。有力な1年生の加入もあり、
もともと箱根駅伝では実績のあるチームなので、調整さえしっかり出来れば上位を伺う力はある。
城西大
このチームも1万米の持ちタイム28分台が3人いる。
前回は6位でシード権を得て、シード権を維持したい気持ちは強い。特別な選手がいるわけではないが、
チーム力で戦う。
中大
このランクに上げたのはやはり実績だ。26年連続シード権の実績はやはり金字塔だ。
チームとしては取り立ててエースとなり得る実績を持った選手は今回もいない。全体としての持ちタイムも良い訳ではない。
全日本大学でもシード権を失ったが、ここにきて1万メートルの持ちタイム28分台の選手が3人でて、
箱根駅伝に標準を合わせて調整しているのが判る。
シード権を確保するか、或いは上位の3チームを脅かすレースをするか、興味は尽きない。
・先ずはシード権
山学大、東農大、青学大、国学大、帝京大、中学大
予選会で見るように、チーム状態次第でこれらのチームも上位に食い込むことも可能だ。
全員がベストコンデションなら、どのチームにも上位を脅かす力はある。
<振り返って>
今年も充分にテレビを観ながら楽しんだ。真剣に走る学生達のレースは観る者を飽きさせない。
箱根駅伝がなかったら自分は正月の二日間、きっと時間を持て余して過ごすだろう。
ましてや自分の卒業した大学や贔屓にしている大学、或いは注目している選手が走っていれば画面から目が離せない。
毎回の事ながらチーム事情が分からないのに、勝手にレースや優勝チームを予想する事の難しさを思う。
個々の実績や持ちタイムから勝手に予想して楽しむのだが、選手のコンデションは身近にいる者にしか判らないし、
長い距離を走るとなれば選手の能力を超えた何かが作用する。
特に4年生の最後の箱根ともなれば、ましてや箱根駅伝を走る事を目標に入学した学生には気持ちの持ち方が違う。
それがトップ争いともなれば観ている方にも伝わってくる。
今回はそうしたマイナスとプラスが早稲田大にみられ、プラスの方が勝って優勝に繋がったと思う。
さてレースが終わって冷静に振り返れば、やはり早稲田大のチーム力が勝っていたし、
東洋大も柏原選手だけではない事が実証された。そして駒沢大も戦前3強と言われた評判通りの力を見せた。
当分この3大学が他のチームより頭一つ抜け出ている状況が続くと思われる。が、
毎年一学年毎に新しい選手に入れ替わる大学駅伝で、来年はどんなチームになってどんなレースをするのか今から楽しみだ。
と同時に国学院大学のシード権確保や、拓殖大の7位も箱根駅伝に新しい風を感じる。
特に拓殖大のレース運びには来年どんな躍進をとげるのか、ひょっとして3強を脅かす存在になるのではと思わせる。
反面、嘗ての優勝経験校の神奈川大、日本大や山梨学大がシード圏外に沈み、順天大や大東大は今回本戦に出られなかった。
それだけ各大学が箱根駅伝に力をいれているのだろうが、それが有力な高校生選手の獲得競争や、
留学生選手の導入に安易になっていないかと危惧する。
そうした危惧と同時に、今回も直前に故障者が明らかになって、大学スポーツとはいえ、
選手達はギリギリの練習に打ち込んでいる事が伺え、不安を覚える。
それだけ真剣に取り組んでいるのだから傍がとやかく言う事ではないとは思うが、自分を見失ってはいないだろうか。
今シーズン東洋大の柏原選手が不調だったと聞くが、余りに周りに取り上げられ過ぎた結果ではないか、と思うのだ。
大学スポーツはあくまで大学スポーツで、プロ・スポーツではない。
<往路>
まず早稲田大の一年生・大迫選手の飛び出しで始まった。ついて行ったのは日大の堂本選手で、
結果的にそれが成功したことになるが、後続のグループの中には力のある選手がいたにも関われず、
追わなかったのが結果的に大迫選手の独走を許して2分近くの差をつけられてしまった。
2区では1万米の持ちタイムの最もいい拓大のマイナ選手が飛び出すと予想していたが、調子が良くなかったのか伸びず、
東海大の村澤選手が日本人選手としては久しぶりに区間賞を取った。同様に明治大の鎧坂選手も好走し、
結果的にエース区間と言われるこの区間での勢いが最後まで続いて東海大、明治大には好い結果をもたらした。
反対に日大も1区,2区と好走して2位につけていたのに残念な結果に終わったのはどうした事なのだろう。
さて、今回も5区の柏原選手に襷がトップとどのくらいの差で渡すのかが最大の関心事だった。
前回、前々回と4分以上の差を逆転したのだから今回も、と言う訳だ。
で、トップの早稲田大とは2分半余りで追う柏原選手という流れになり、俄然注目が集まる。
今シーズンの柏原選手は元気がなかったので、いくら調子を取り戻したとは言われても、と観ていた。
でも、さすがと言うべきか、5区で東洋大がトップにたつ。トップには出たもののその後なかなか差がつかなかった。
結果的にこの区間での差が最後まで響いたと思われる。
早稲田大の優勝は5区を走った猪俣選手の頑張りも大きい。
トップにたった柏原選手は流石だが、やはり今回の調子は今一だったのだろう。
箱根の山は年間通して練習ができなかった選手にはそんなに易しいコースではない。
山に限らず、箱根のどの区間も、年間通して練習をできなかった選手には過酷な結果を齎す。
<復路>
復路は東洋大に27秒差の早稲田大がどこで逆転するかしないか。
そしてトップ争いに駒沢大が絡んでくるかに注目していた。
6区の早稲田大・高野選手と東洋大・市川選手のデットヒートは観ていて面白かったが、箱根の下りは観ていてハラハラする。
前回は中大の山下選手が転倒し、今回は高野選手が足を滑らせて転倒した。
幸い大事には至らなかったからいいものの、ぞっとする。だから面白いとの意見もあるかもしれないが、、。
転倒したにも拘わらず、高野選手の気迫は市川選手のそれを圧倒していた。それは画面を観ていても判った。
何度もつばぜり合いを演じて、ほぼ下って残り3キロ当たりから徐々に差を広げ、結局36秒の差をつけて7区に繋げた。
今回早稲田大が優勝したのは6区の区間の頑張りが大きかった。早稲田大優勝の最大の功労者だ。
往路のトップ東洋大と3分25秒差の駒沢大は6区区間新の走りで3位に上がり、何処までトップ争いに加わるかとみていたが、
7区と連続区間賞にも拘わらず、トップ争いには加われなかった。結果的には駒が足りなかったということだが、
今回は1区に有力な新人を投入したにも関わらず、慎重に行き過ぎた結果ではないか。でも結果論にすぎないか。
復路の面白さはトップ争いに劣らず、順位争い、とりわけシード権争いにもある。今回は東海大と明治大の順位争い、
中央大と拓殖大の順位争い、そして国学院大、日体大、青山大そして城西大によるシード権争いにみるものがあった。
順位争いをした中央大の塩谷選手の走りには感動したし、シード権争いでの
ラスト百米辺りで国学院大選手がコースを間違えたのには観ている者誰もが唖然としただろう。
今回も大いに楽しめた。
結果: (K.K)
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