「文学横浜の会」

 新植林を読む


2008年11月3日


「新植林41号」

「巻頭言」

 ハリケーン災害、サブプライムローンの負債問題、列車同士の衝突事故等、世の中には様々な事がおきて、 当事者にとっては不運だと思われがちだが、考えようによってはそうでもない、と思っている当事者もいる。 それにしても世の中もう少し落ち着いてほしいと筆者は言う。多くの者の願いだろう。

短歌「夏に入りゆく」         パスカルこと子

 10作の中から、
「悠々と旋回しつつ鷹まいてシェラネバダは夏に入りゆく」
「高原の星空をゆく飛行機の一瞬光り流星と紛らう」
「故里の南部風鈴さわやかな異郷ネバダの涼風誘う」
 作者の身近な近辺を自由な形で詠んでいます。

随筆「国際結婚」  津川国太郎

「私の国際結婚が失敗におわった理由について考察してみたい」として、 失敗の経緯、原因について記している。何も国際結婚だからというのではなく、失敗の元は同じだと思うが、 原因となる要素が多くなるということではないかと、国際結婚の未経験者としてはそう思う。 でも、失敗の原因はやはり個人に帰することだろう。

短歌「帰省」       中條喜美子

 日本に帰省した折りの10作の中から、
「故郷の五つの墓地に参りなば雨匂いたち線香煙る」
「居酒屋の三しんの音と歌姫に朴念仁の夫も踊りぬ」
「汽車を待つ別れの駅の琴平にスイと燕が通り抜けゆく」

エッセー「おじゃまでしょうが(室戸岬にて)」    中條喜美子

 家族揃っての作者にとっては12年振りの帰省の最中、 ふと見かけたネコをとらえて、帰省の一端を綴っている。

創作「着物を着た娘」           シマダ・マサコ

 着物を着た異国を旅する不思議な娘の物語か。 結局、不可解な娘を書いただけ?

随筆「わが、うから、はらから」     花見雅鳳

 作者は米国に生まれ、時代の雲行きから父を残して日本に戻る。 戦争を挟んで幾多の波乱の人生を生きて、再び米国で生きることになり、それ以来40年以上になるという。 それは運命としかいいようがないが、作者の戦争を憎む怨念は強い。 それだけ筆者の「親への、妹への」思いの強さの裏返しではないかと思う。
「親子の絆、家族愛を無惨に断ち切った憎い戦争!」

短歌「記憶の回路」     テリー・ネルソン

 10作の中から、
「散るものは散るままにあれ櫻花風のひずめは記憶を醒ます」
「掌の裡に夢ひとつ秘め老いて来ぬ妹と尋ねむ母の古里」
「惚け夫を背負いて生きる大仕事神よ給えよしばしの命」

随筆「在米半世紀の回想録(その五)   井川齋
   ジャパニーズ・アイデンティティとの決別(1)

 スクール・ボーイをしていた渡米後1年と数ヶ月経ったころから、 スミス家を離れてカンブリア時代に知り合った猪瀬一雄氏と村上郷平氏のアパートに転がりこむまで。
 ベースボールと野球を通して奮闘する様がよく判ります。また当時のアメリカの一面がかいま見られます。

随筆「コメディハウスの人生(三)」  黒田素子

 ここには17のコメディハウスの登場人物を紹介している。 よく判らない文章もあり、書かれた人には理解出来ない人達もいますが、人間の一面であることは確かだろう。
「頑張ろう、人生」で終わっているが、結局、何処で生活しようが、そういうことだ。

インタビュー「北米俳句史断章(上)」  長島幸和

 「北米の俳壇の歩みはすでに百年を超えています」ということで 「米国の俳句の流れ、特色、あるいは俳壇におけるエピソードなど」について、 「橘吟社」現主催者である宮川惠子氏へのインタビューを載せている。

随筆「叶わなかった?夢」  清水克子

 大なり小なり誰しも心に「夢」をもっている。 筆者は父の「夢」と自分の「夢」とをだぶらせて思いを巡らせているようにみうけられる。

私小説「インディアン サマー(三)」 杉田広海

 体調不良の中、保険会社との遣り取り、同棲相手のシーナとの軋轢等、 物語りはこれからどんな展開をするのか楽しみです。

他に連載物  SF小説「銀河の旅人」 (十二)  桑波田百合

文芸誌 in USA 新植林
第四一号・秋期・2008年10月
e-mail:shinshokurin@kdd.net
homepage: http://www.shinshokurin.com
定価:6ドル+TAX


<金田>


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