「文学横浜の会」

 新植林を読む


2020年12月23日


「新植林65号」



「巻頭言」

 コロナ感染症の蔓延や自然災害で苦しむ人間と、それとはかけ離れた別天地に住む人間がいる。
つまりは格差社会と言う事でもあろうが、このコロナ騒ぎはまさに下々を苦しめ、 人間社会も世知辛くなった、と言っているのか。日本においても同じだと感じた。

随筆「喜寿の米大陸横断貧乏旅行(後半)」    入江健二

 「家族と車でアメリカ大陸を横断したい」との夢を、喜寿を迎えて計画を練り、 予定では11日間のアメリカ大陸横断旅行記。
その後半部(7月6〜7月11日日)。

 読みながら私もアメリカの広さを実感できました。 そこにはニュース等で知るアメリカとは異なるアメリカがあるんでしょうね。

最後の句「米大陸 行けども行けども 同じ国」には作者の実感が読み取れました。

エッセイ「おじゃまでしょうが(再会の旅)」   中條喜美子

 今回は親族の法事で日本を訪れた際の知人・友人達と再会した話です。
昔の友と再会するのは、取り分け外国で生活していれば、心躍る事で、文章の端々にそんな印象を受けました。

特に東北大震災の被災地の宿に泊まった経緯に引き付けられた。

小説「福島ラプソディ(八)」          中野隆一郎

 ホームレスと福島の原爆被災地が関係しているようですが、 毎回色々な人間が登場して、この先どのよに展開するのか。

小説「踏みはずした男」             シマダ・マサコ

 縁あってアメリカで生活している裕子に、大学時代のクラス会案内が届き、30年振りに裕子は日本に帰り、 クラス会に出席する。どうやら幹事は銀座の飲み屋のマダムのようだ。裕子は毎年クラス会に出席するようになる。

 学生時代、裕子は文芸部に属して、将来を嘱望されていた男がいた。その男ともクラス会で再会するが、 小説と言うより30年を経た学生時代の知人のその後、との読後感だった。

ノンフィクション「八十才 ホームレス(六)」  柳田煕彦

 アメリカに戻っても多摩川でのホームレス仲間を気遣っていた。とりわけみっちゃんの事が気にかかって、 はっさんに国際電話をかける。みっちゃんはいい人と結婚して、相手親からも可愛がられていると言う。 コロナ騒ぎの中、ハッピーエンドでこの稿も終わるようだ。めでたしめでたし。

それにしてもホームレスで生き抜くにはそれなりの知識、適性も必要なんですね。

ノンフィクション「私見・環境と人間(八)」   清水克子

 千日回峰行を成し遂げた塩沼亮潤さんの事を書き、修行とは「人は、向上するためにいろいろ修行する」といい、 「日常生活で普通に暮らしていても、修行だと思うこともある。」と作者は言う。

随筆「在米半世紀の回想録(第二十五稿)」    井川齋
   オレゴン大学・大学院在籍期(その十)

 この稿では作者のアメリカに渡る経緯と金銭に関することを記している。 作者には唯一の跡取り息子でありながらそれを放棄し、姉に迷惑をかけたとの思いも感じ取れる。

過去を振り返る事は自分自身を見つめなおす事にもつながるのだろう。

小説「インディアン サマー(二十七)」     杉田廣海

「30フィートのセールボート」を介して羅府新報社の大山さんと親しくなり、 また大山さんを介して山川さんとも出会ったが、二人を介して人の輪が出来て人付き合いのなかった身には誤算だった。

そうした人の繋がりのの中で有名な直木賞作家も、大山さんが連れてきた。

文芸誌 in USA 新植林
第65号・2020年 秋期
e-mail:shinshokurin@aol.com
homepage: http://www.shinshokurin.com
定価:7ドル+TAX

<金田>


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