動物達の住む島がありました。ここは、みんなが啀み合うことのない平和なところで、そこは鳥とコウモリ、狐と狸、そして兎と亀が住んでいました。
最初は少ない動物の数でしたが、時が経つにつれて各種多くなってきた為に、
それぞれが分担して生きていくことを約束して、山と海の二カ所に別れ、
山の村には狐と兎が、海の村には狸と亀という風に別れて住みました。
しかし、それとは別に鳥とコウモリは素晴らしい情報能力があることを理由に、
鳥とコウモリは、どちらの村にも住むことになりました。
こうして別れていても互いが尊重して平和に住んでいる間に
、毎年行う変わった習慣がありました。その習慣とは、
山の村にいる狐の女性を、狸の住む海村へ行かせて一年間留ませます。
それと同時に
狸の村にいる狸の女性を、狐の住む山村へ行かせて一年間留ませます。
それぞれ互いに女性を一人を向かわせ行った先で、その女性が、そこで支配する習慣でした。
今年も、その候補者を出すイベントが催されました。
行った先で自分が支配者になれるの訳ですから今年も候補者がいっぱいです。
しかし今年は、ずるかしこい女狐がいたのでした。
その女狐の名前は「赤狐」と言います。赤い毛並みを持つところから人々から呼ばれていました。
その赤狐は裕福な仕事をもっていてお金を沢山持っていたので、
誰にも飼われていないコウモリと鳥を飼うことを理由に
自分以外の候補者はどういうやり方で自分を売り込むか
情報収集を行っていました。
もちろん、そういう情報を手に入れる訳ですから、自分以外の有力な候補者には姑息な手を使いました。でも、自らの手を汚すわけにはいきません。
そこで赤狐はコウモリに高額のお金を用いて依頼しました。
コウモリは喜んで、それを引き受けましたが、
鳥は姑息なやり方が嫌な動物であると同時に、お金を受け取らず自由な考えを持つ動物だったからです。
あらゆる手を使った赤狐の方法は功を奏し、今年の狐村からの代表は、その赤狐に決定しました。
赤い狐は、その時に使ったコウモリと鳥が気に入って一緒に海村に向かいました。
しかし狸と亀の住む海村では評判が悪く、そういった悪い行為の行いを見落としていませんでした。
愕然とした赤狐の悲しむ姿を見て同情した鳥は女狐の良いところを海村に住む動物達に主張しました。
鳥によってなんとか人気がとれてきた赤狐でしたが、女狐は自分の実力の無さに気がつきました。
実力で人気を保っていた訳ではなく不正を働いた方法で海村に来たからです。
そこで赤い狐は、いまの海村の人々がどういう事を思っているのか鳥とコウモリを向かわせようとしたが、鳥は、ここでも断固として拒否しました。
この時、鳥の考えていた理由は、何もないところで臨機応変に対応し、そして自らの考えで進んでいこうとしない思想に気がつき、変に思ったからです。
それでも女狐の依頼することが強くなってきました。
この時、鳥は自分の立場を知って、そして女狐と一緒に行動し、そしてこの村に来て同情して代弁したことを、心から後悔したのでした。
飼い主がいるのだから一緒に居なければならない義務もありますが、何もやらない権利は与えられているので鳥は拒み続けました。
女狐は、やむを得ずコウモリに依頼しました。
そうやってお金を与えて、その場その場を凌いでいる内にコウモリが次第に肥えていき、鳥の存在意味が無くなってきた状態にあるものでしたが、その時の女狐は気がつきませんでした。
やがて、そうした関係により赤狐はコウモリに信頼をおくようになりました。
その時にコウモリは、「今の内に鳥のヤツを追い払っておけば俺は好きなようにできる」と思いました。そこでコウモリは嘘をつこうとしましたが、その前に村にいる狸にお金をあげて嘘の情報を報じるように依頼し、そうした下準備をして女狐に言いました。
コウモリ「鳥が赤狐の悪い噂をまき散らして、そして鳥の評判が上がってます。
このままでは、あなたが良くない立場に置かれてしまいます。」
赤狐はその言葉に驚きました。
そうして鳥は追放されました。一緒にいることを義務とされている勤めを下ろされることに、何の義理のない鳥にとっては未練のないことでしたが、コウモリとは違って忠告できる立場にいることを気にしました。
その大切さを赤狐へ言いますが赤狐は聞き入れてくれません。
「持ち主の意向がそうなのだから仕方がない」と諦め、山村へと飛び立ちました。
飛んでいく途中に村の状況を見て衰退する村に眼を見張りましたが、それよりも鳥は自分がこうなったことの原因に気がついたのでした。
これはコウモリの如くんだものだったのだと思いましたが、それを選んだのも赤狐でしたので、気にもとりませんでした。
鳥が山村にたどり着いた時に一番さきに眼のついたのは兎でした。
うさぎ「何やってるんだよ。お前は赤狐に飼われていたのだろう?逃げてきたのかい?
鳥「いいえ。」
うさぎは、それ以上の鳥の事情に関して聞きませんでしたが、今の状況を誰かに告げないといけないと誰も分からないと教えてくれました。
もちろん鳥には分かっていました。その言葉に、こう答えました。
鳥「分かっています。」
そう言うと兎は、その言葉を聞くなり、そのことに関して言葉を交わさなくなりました。
しかし自分のことよりも海村と、赤狐がどうなっているかが、どんどん気になってきました。
うさぎから貰ったお茶を速く飲んで、真っ先に村長の家へ向かいました。
赤狐のとった今までの事情と海村の状況を報告していると、
鳥から発せられる言葉に山村村長の表情が驚きに変わっていく様子が眼にとれるようでした。
急いで村長の飼っている鳥を海村へ、確認の為に飛ばしました。
その後、村長は村の雄志ある者を集めました。
青い毛のある狐の才腕(さいわん)と、三色の毛並みを持つ兎の秀龍(ひでりゅう)の二人です。
二人は剣を持って、海村へ向かいました。
鳥も、赤狐をこうしてしまった自分の責任を感じてか、
一緒に海村に向かいました。
随分の時間が経ち、日も暮れて月が出てきたときに、ここで夜を明かすことにしました。
その時に鳥は、疑問に思ったことを質問しました。
鳥「何も今、ここで夜を明かさなくても、あと一山を超えれば海村に着くのに、
どうして行かないんだい?」
秀龍「その方が好都合いいからだよ。
休んでから村の様子を見ることができるしね。」
松明の火の様子を見ながら、そう答える言葉には疲れが感じとれました。
才腕「なあ秀龍。お前は、どうして今回の件に志願したんだ。」
松明の火で照らされている秀龍は耳をほじりながら言いました。
秀龍「俺は色々な所を見てまわりたいと思っている。だからだ。」
才腕「なんだ。それ程大した事じゃないな。」
火が消えないように松明をくべる才腕は、その火のついている棒をとって自分の顔の近くに、もってきていました。
秀龍「お前こそ、どうして志願したんだ。何にも意味がないぞ。」
才腕「・・・・・実はな。
今回の海村の件で荒れている赤狐は俺の恋人なんだ。」
鳥は、その言葉を聞いて、才腕に自分が監視役にいて、その附が無さを伝えました。
才腕「ははは。お前が何をしたって、
あいつは同じようなことをして、今みたいになっていたさ。」
そう言うと、手にもった松明を、もとにあった場所に戻し、何かを思い出すように無口になりました。
秀龍「先に寝るぞ。」
夜が明け、びっしょりと汗に濡れ顔色の悪い才腕に気になってか、
秀龍が質問すると昨晩は悪い夢を見たことを言いました。
その夢は
恋人の赤狐が何かの中で、もがき苦しんでいる姿の夢だったらしい
のです。
荷物を整えた一行(いっこう)は山村に着きました。
状況は惨憺たるありさまで、鳥が飛び立ったときよりも酷いものでした。
目的は赤狐の様子を見ることだった三人は村を治める赤狐の居そうな場所を探しました。
しかし何も出てきません。それどころか村に住んでいる者も外に出てこようとはしないのです。
肝心の赤狐の情報より、むしろ赤狐以外の情報が多く分かりました、
この村の状態の原因は山村のやったこと、
そしてその原因となる者は鳥のせいとし、情報が配されていたことでした。
沢山のところに、その情報が掲示されて網羅されていた為に
この情報は容易に手に入れることができました。
それだけ人を惑わす悪情報が蔓延していたのです。その時に何もないと油断した一行は、武装した亀兵に囲まれてしまい捕まってしまいました。
牢屋内にて。
三人は、その中でこの村で何が起き、そして何が目的だったのかを話し合った。
山村と海村との関係を良く思わない外村が行ったことではないかという所で話が尽きてきた丁度その時、牢屋を開ける軋んだ音がした。
亀兵「出ろ!」
亀の兵に牢屋から出されて三人は赤狐の前に座らせられていました。鳥は驚きました。以前の時の姿とはうって変わって、どす黒く醜い姿に変わっていた。
才腕「赤狐。覚えてるだろ?俺だよ。」
そう言う才腕の言葉に赤狐は答えた。
赤狐「こちらに来て、それほど経ってはいないけれど、
しっかりやってるわよ。気にしないで。」
才腕の表情が険しくなり近くにあった剣を抜くと偽物だと才腕が叫んだ。
すると目の前にいた赤狐は、ぶくぶく膨れ上がり、
10メートルもある高さの醜くて大きなコウモリの姿に変わっていた。
才腕「赤狐をどこにやった?」
化物「あまりにも小さな狐だから俺が食ったよ。
骨の無い動物だったから食べがいがなかった。
でも、あの小娘の悲鳴は甘美だったな。」
緊迫した空気だったこの室内が、いつの間にか風のような音と共に剣が舞った。
突き刺し、そしてそぎ落とす紫色の肉から黒い血が多少飛ぶ。
しかしコウモリには痛くもない表情であった。
一瞬たじろいた才腕を見たコウモリは、
横から攻めている才腕にコウモリの息を吹きかけた。
その息は毒とも思える黒い煙で才腕は倒れ込んだ。
よく見ると、毒を受けたその腕は、真っ赤にただれて腫れていた。
とても剣は振るえそうにない重傷だ。
才腕「なんだコイツ・・・この様子では逃げさせてくれそうもない!」
そう言う才腕の声の後に、化け物の口のから赤狐の声が聞こえた。
耳を疑いつつ化け物の口から赤狐の顔が見えた。
驚いた鳥は、女狐へ鳴いたが聞こえない様子だった。
鳥「倒すことより、あの赤狐を助けよう。」
秀龍「でも、どうやって助けるんだよ。こんな状況で!」
鳥「お前が時間を稼いでいる間に、僕があいつの顔に出て目をつつく。
いくら化け物でも眼の痛みには適うまい。
その時の悲鳴を上げるだろうから、その隙に飛び込んで赤狐を助けろ。」
秀龍「そんなことできるのかよ!」
鳥「理屈をこねている場合じゃない!」
秀龍は自らの身を使って耐えた。
壁に打ち付けられ、床にたたきつけられ傷つきながらも、それでも耐えた。
そして鳥が化け物の眼をつついた。鳥の言う通りに、化け物は大きな口を開けた。
しかし、その時の秀龍の体はボロボロで、とても赤狐を助け出せる状況ではない。
秀龍は、自分の体が、化け物の攻撃に耐える力の無さに悔しくて叫んだ。
すると腕をやられていた才腕が、横から攻めていた読みが良かったのだろうか、
もう片方の腕で赤狐を抱え込み口の外へ出ようとしていた。
しかし、その時には口が閉じようとしていた。
鳥が果敢に、もう片方の眼を突いた。
耳をも張り裂けんばかりの苦痛を叫び出す化け物。
その隙に二人は脱出できたのだった。
すると、どうしたことだろう。
先ほどまで大きかった化け物が、元の大きさのコウモリに戻ったのだ。
才腕「なんだコイツ。こんなに小さいのか。」
鳥「コイツは、金とか名誉とかの肩書きに頼るものが無ければ何もできないのさ。」
鳥がそう言い終えると、才腕はコウモリを、もう片方の無事な手を使って剣で真っ二つにしました。
もとの静けさを戻したこの場所で、赤狐は才腕の元に行きました。
でも、その泣いている赤狐を見る表情は、とても厳しく、気に入らない様子です。
「私が全て悪いのよ」と言って泣き出す赤狐に才腕は厳しく言い放ちました。
「そうだ。すべてお前が悪い」と怒濤の声を上げました。
今にも殴りそうな雰囲気のなかで赤狐が思わず眼を閉じたとき、
両脇から優しく包み込まれる感触を赤狐は感じました。
その才腕の優しさに、さっきまでの静かな泣き方から、更に激しく泣き出した女狐。
この時、これが彼女の本当の泣き方らしいと秀龍は察しました。
才腕「まだ、お前が言わないと いけないことが あるだろう。」
と言うと、
女狐「ごめんなさい。私が馬鹿だった。」
才腕がため息をついて赤狐の髪をやさしく撫でると、
赤狐は才腕の頭を両手で掴んで激しくキスをしました。
鳥「才腕! 赤狐に負けるな!」
先ほどまで倒れ込んでいた秀龍と鳥と共に大きな笑い声と冷やかしの声も、
二人は気にせずに元の仲に戻ったのでした。
さて、この島で起きた大きな事件の後、
これらのことを重く見た山と海の村長は会議を行ったのでした。
おわり