問 題 動 物 園
〜狼牙の痕〜

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あるところに動物達だけの住む島があった。

そこの動物達の数は次第に多くなり、やがてそれぞれが村として独立した。

その時、仕事の分担をすることを決定すると同時に村間の仲を保つことを約束しあった。

 

そういう中、亀村という名前のついた村があり、その外れに森があった。

いつからか、その森は周りからアルフレッドという名前で呼ばれ親しまれていた。

ここに一匹の狼が住みついている。この者の名前は狼牙(ろうが)。

その狼はこの森に最近になって住み始めた。

理由は狼牙そのものが周りに対してそこまで対応できず元々無口だったこともあるが、

仲間に裏切ぎられ、そして恋人と思っていた者が善意ある占い師ではなく、

邪教の教えを抱いた占い師だったということも分かり、

それらの衝撃的な傷を受け人知れず森に住むことになり、

いつしか森に住む一匹狼と呼ばれるようになったのである。

 

斧を振り上げ薪を割る狼牙の元に鳥が舞い降りた。その鳥は何の理由も寄こさず、こう告げたのだった。

鳥「村長が今すぐ会いたいそうです。」

 

それを聞いた狼牙は斧を小屋にしまい込むと身支度を整え村長のところへ向かった。

そこで受けた村長の依頼は「学び小屋で起きている問題解決せよ」というものであった。

 

身支度を整え村長のところへ出たところもあり、そのまま学び小屋へ向かうことになった。

移動する間。狼牙の肩に止まっている鳥は言った。

鳥「学び小屋の生徒が、次々と自殺するのは珍しいね。」

狼牙「・・・・・珍しいことではない。」

鳥「これから学び小屋へ行って責任者に会うの?」

そう言う鳥に頭を撫でて狼牙は言った。

狼牙「いいや。当分は学び小屋の様子を見るだけだ。」

 

狼牙は学び小屋の様子に着目した。

学び小屋はより孤立した状況にある訳だから

関係者によって適切な指示を受けているのが基本的な姿勢である。

だが、その状況を自分の利益に繋げようとする者が必ずいる。そこでそれを観察しようと試みた。

この時に狼牙は思った。教育を監視する委員会があっても、

そこもいずれ腐敗はくるのから、どこからも影響を受けない、

その子供達の親が中心となる金銭を問わない、本来の責任を取るべき親と第三者が大切だと思った。

 

そしてその間、鳥に、どういう者がより多く自殺しているのかを情報の収集をさせた。

その結果、多くの片寄りは図書館などに行くような勉学に熱心な人間が目につく。

 

何も手がかりのないまま日が過ぎていく中で、行方不明者が出た。

真っ昼間に調査する訳にもいかず、その夜、狼牙は徹底的に調べることにした。

だが校舎内にはそれらしき手がかりになる物が一つもなかった。

その後、狼牙は校庭にある倉庫に目を移した。

音を立てずに道具を移動して調べていると下へ延びる階段を発見した。

驚いた様子で鳥と目を見合わせた。

 

狼牙「俺は、ここの様子を見てくる。お前は、外の様子を見ておけ。」

 

剣を抜き、片手に松明に火を灯しながら、階段を下る。降りていくほど、

マットと汗くさい臭いが濃くなってきた。

階段を下り終えると細長い廊下が続いており、その遠くでぼんやりとした光が見える。

光りある方向に向けて歩き、光元にある部屋に到着すると、

そこには何かの血で書いたと思われる邪教の魔法陣が描かれ、

何か、もとある形のない肉が散らかって放置されていた。

部屋の片隅にある制服をあるのを見ると、どうやらこれが生徒らしい。

 

狼牙「ここで何かの儀式をやったようだ。」

 

この場で、この儀式をやった人間の手がかりを探そうとするが、

あるのは倉庫特有の臭いだけで、儀式以外の物は見つからなかった。

仕方なくこの場を去り階段を上る。

そして上空から見て動きがなかったかを聞き、

何もなかったことを聞くと狼牙は学び小屋をあとにした。

 

後日、いつものように学び小屋を環視する部屋に行き、そして鳥の集めた情報を眺めていた。

だが、これといった事は分からなかった。そういう中、校長へ誰かが電話をしたらしい。

手に持っている資料を放り投げ、慌ててテープを回しヘッドホンに聞き入った。

 

??「持ってこい。」

校長「わっ・・・分かりました。」

 

怯える様子で受け答えている校長。

やがて会話が終わると、テレビに校長が校舎から出る映像が映し出された。

学び小屋内の様子は、しっかりと記録しているので、その状態のまま、外へ飛び出した。

 

尾行するとすぐにも分かってしまうので鳥が見る上空から見た校長の車を観察させながら、

尾行されていると思われない付近の道を案内させ目標を追った。

目標車が到着したのは、どこだか分からない海だった。

周りはすっかり暗くなっており、風が強く吹き雨が降るかもしれない様子だった。

そういう中で多量の紙を持って車を降りた校長。

双眼鏡をとり、集音機から延びたイヤホンを耳に取り付けて様子を伺う。

だが、ここからは、その紙が何なのかは分からなかった。

やがて一隻の船が港に到着し、サングラスをかけたひとりの者が現れた。

 

狼牙「コウモリだ。」

 

早く出せと言わんばかりに手を差し出すコウモリに、

怯えて震える校長が多量の紙をコウモリに手渡した。

この様子を村長へ報告する為に鳥を飛ばした。

狼牙は鳥が飛んでいった様子を見て剣を抜き、

その船に乗ると中に乗っているコウモリを次々と殺していった。

これまで沢山の生徒を殺してきた事に対してその怒りを露わにし、

次から次へと現れるコウモリを殺した。

 

やがて狼牙は校舎内で起きた記録をすべて提出し、自分の住んでいた家に帰った。

仕事も一段落ついたところで剣の手入れをしようと刃を見て驚いた。

そして自らの剣の赤色になっている事に気がついた。

驚いて川へ行き、汚れを落とそうとするが落ちない。そして、剣の落とした血が川に広がった。

来る日も来る日も、剣についた汚れを落とそうとする狼牙。

だが、一向に落ちないその汚れを洗っている内に、自らのやった行為に気がついた。

その血の付いた剣を自らの喉元に突きつけたその時、

一匹のウサギが草むらから出てきた。

そのウサギは秀龍だった。

秀龍が言うには、これまでお前が何をするかを見ていたらしい。

だが自殺はいけないと狼牙を止め、

そして秀龍が何故自分に相談しなかったのかを尋ねるのだが、何も答えない狼牙。

秀龍は言葉を続けた。

コウモリが悪い、その恨みは秀龍にもあることを自分にもあることを告白した。

そしてそのコウモリは自分の山村にも存在すると言った。

 

すると狼牙は告げた。

コウモリとはいえ他の村の者であり、それらも殺していたかもしれないと言った。

 

秀龍は、他の村にいるコウモリとはいえ、

そこの村の住人にかわりないことに許されることではないと思った。

だが秀龍は、それでも許さなければならない という山村の決まりがあり、

そして同時に、同じ訓練所で友に鍛えた仲である。

この友であることを主張する秀龍だが狼牙はうつむいたまま何も言わなかった。

 

この場を離れる訳にはいかなくなった秀龍は、すぐさま 

これまでのいきさつを 山村の村長へ鳥を飛ばす。

そして任務外である自殺を止めようとし、一緒にいることにした。

 

数日後、鳥が帰ってきて、その鳥が持ってきた手紙の返事は

『狼牙を離れ、山村に帰宅せよ』という指令だった。

 

悔しいながらも絶対に死ぬなと言いい残し、その場を去った。

 

その後、山村に帰った秀龍は村長の家へ向かい村長のいる部屋にドアを叩くと勢い良く入った。

 

秀龍「なぜ同じ仲間の自殺を救ったらいけないのですか!」

村長「おいおい。今、お客様がいるのだぞ。ジーフリトさんだ。」

 

この状態に居合わせたお客は、戸惑っていた。

 

村長「すみません。少し席を外してもらえませんか?数分だけでいい。」

 

驚きながら、客は村長の部屋を静かに閉めた。

 

村長「おまえは、ただ命令に従っておけばいい。余計なことは考えるな!」

秀龍「しかし村長!同じ仕事仲間ですよ。私にとっては同僚で・・・」

村長「だまれ!お前一人で何ができると言うのだ・・・・・余計なことをするな!」

 

その言葉を聞いて秀龍は納得いかない様子で、

ずかずかと部屋を出ると強くドアを叩きつけて、この場を去った。

山村の村長は後ろで腕を組み、窓を向き外の様子を見ていた。

外ではもう、雪が降っていた。子供達がボール遊びをしている。

村長は思わずうつむいた。

 

そこに一人の伝達係が部屋に入ってきた。

良い知らせと悪い知らせがあるということだ。

 

良い知らせは、この亀村に一人子供が生まれた事。

悪い知らせは、狼牙が死んだ事。

 

伝達係に分かったと告げると、お客が部屋に入ってきた。

お気の毒にと言う言葉と友にジーフリトが部屋から出た後、

一人だけになった部屋で書棚にあるブランデーを茶飲みに入れて一気に飲んだ。

 

おわり

 

 

 

 

問題動物園「狼牙の痕」制作:原田

  

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