問 題 動 物 園
〜泉でおきた問題の葉〜

 

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森の中で三匹の動物がテーブルを挟んで、うさぎと犬と猫がカップを持ったまま何かを話した後、

三人とも飲み物を口にしようとした丁度その時、

この静かな一時を破ぶるかのように、ここへ、どたばたと走ってくる者がいました。

うさぎが横目で音の方のする方向へと目を向けると、そこには亀さんがいました。

 

進化亀「うさぎさん。なんだか泉がおかしいです。すぐに来てくださいっ。」

 

そう言って、うさぎの服の裾をひっぱって、兎をせっつく亀さん。

 

兎「二人とも早く来いよ。」

 

引っ張られながら諦めた表情で息をつきながら亀の言う場所へ赴くことになりました。

 

亀「ここです。この泉です。」

 

息をきらしながらそう言う亀に兎は言いました。

 

兎「たった山を二つ越えたぐらいで何を息をきらしているんだい?俺の方なんともないよ(笑)」

 

そういう兎に猫が続けて言いました。

猫「どこがおかしいの?早く教えてよ。いつもこの時間だったら塀を伝っての散歩に行くのに。」

 

それを聞いた犬さんが答えました。

犬「嘘を言うな。お前はいつも近所の家の近くで、ひなたぼっこをしているくせに・・・・・。」

 

そう言う日常的な会話に嫌気がさしたのか、亀さんはむっと表情で言いました。

亀「ちょっと聞いてくださいよ・・・用件をこれから言うんですから。」

 

そんな中で兎さんが指を指しました。

兎「ひょっと亀さんの言うことって、あの水のつぶての事かい?」

 

これから喧嘩になりそうな3人でしたが兎の言う言葉に我に返ったかのように兎の指す指の方を見ました。

そこの方をよく見ると、沢山の太陽を浴びた葉っぱから落ちた水の滴が泉に落ちずに止まっていました。

 

猫「ホントだ。他の方はどうなんだい。亀さん。」

 

亀さんは、この泉の大きな見取り図をポケットから広げて、みんなに見せました。

 

亀「今のところこの一カ所だけです。」

 

犬さんは、考え深げに腕を組んで言いました。

犬「これは関わりたくないような簡単に済むような話じゃないようだ。この頃、こういうことが多い。」

 

犬さんの言う言葉に間を入れずに合図地をいれるかのように、亀さんは言葉を発しました。

 

亀「そうなんですよ。この図の左側を見てください。この泉は川とかの流れは一切ありません。

この泉の大きな特徴は、沢山の木々の葉から伝った水が、この泉の源となります。」

 

兎「つまりは、こういう事かい?」

 

木に体をもたれて左右の腕を組んで頭を支えている格好で言いました。

 

兎「今のところ、この一カ所だけで何も問題が無ければいいけれど、

こんな事が多く起きたら、この泉はやがて濁って枯れ果ててしまう。そうだろ?」

 

亀さんは何度も頷きました。

亀「はい、そうです。念のために他で変なことが起きているか他の泉でも調べましたが、

今のところは、ここだけのようです。」

 

犬さんは首を傾げて言いました。

犬「その葉っぱを、もっと調べてみよう。色々と分かるかも知れない。」

 

真剣に考え込む犬さんに、猫さんがもっと気楽に考えようよと言いましたが聞き入れてはくれませんでした。

 

犬「おいっ!ちょっと来て見ろ。」

 

兎さんと猫さんが、どこかを見ていた視線から、犬さんの言うところを見ました。

 

犬「よーく見てろ。」

 

犬さんの手の平から泉からすくい取ったとも思われる透明色の水を問題の葉にかけると、

水の玉が葉の上をつたっていきましたが、

その下の泉の落ちずに、そのしずくが空中で止まりました。

 

兎「今度は沢山、水をかけてみよう。さっきみたいに手だけじゃ無理だけど。」

亀「じょうろを持ってきて来ました。」

 

猫「お前気が利くねー。さっきここに来るまでに持ってこなかった筈なのに、

どこから、それを持ってきたんだい?」

亀「あんまり深いこと考えないほうが、いいですよ。」

 

猫からそう言われても動じる様子も見せずに泉の水をすくって、

その葉っぱにかけようとすると、今度は僕がやると言わんばかりに

猫さんが亀さんの手元からじょうろを取って、その葉にかけようとしました。

 

猫「あれ・・・」

犬「おいっ。冗談なんかやめろよ。さっさと水をさせ。」

 

猫は驚いた表情でじょうろを離しました。

するとどうしたことでしょう。今度はそのじょうろが空中で止まりました。

 

亀「不思議ですね。」

 

亀さんが、そう言ってじょうろの取っ手を掴みつつ離そうとすると、

じょうろは下の方に落ちてしまいました。

 

猫「さっきは動かなかったのに。」

犬「なあ、今どういう感じになった?掴んだ感触とかいうかさ・・・?」

 

亀「掴んだ時は猫さんが言うように確かに硬直していました。

でも・・・・・掴んで離そうとすると動きました。」

 

猫「なあ兎。これをどう思う?」

 

そう言って兎の方を見ると兎は言いました。

 

兎「決まってるじゃないか。こういう時は日本人らしく記念撮影!そうだろっ?」

 

犬さんと猫さんは待ってましたとばかりに三人が固まってカメラ目線でポーズをとり始めました。

 

犬「俺達がいつから日本人になったんだよ。まあ、いいけど」

猫「ちょっと待てよ。顔がテカって写るとみっともないから拭いとかないと・・・」

 

亀さんはしょうがないと思いつつも、常に携帯しているカメラを取り出して撮りました。

 

亀「いいです?3、2,1・・・。はい、おわり!」

 

猫「いいねー写真を撮ると安心するね。」

犬「そそっ。なんかこうお落ちつくよ。安心剤みたいなね。」

猫「おっ。犬にも分かるか?コレ。」

 

疑問を持ちつつ、そうかなあと思いつつ兎は首を傾けた。

 

亀「ところで、コレどうします?この不思議な葉。

これ以上、こんな葉っぱが増えたらヤバいんじゃないです?」

 

猫「そりゃあ、こんな葉っぱが沢山増えたら、

他のこの葉っぱを使っている人がいて困るといけないしな。お前はどう思う?」

犬「うーん。まだ判断をだすは難しい。

この葉はどういう種類なんだ。もっと調べてくれないか?」

 

またもや腕を組みつつ判断を決めかねている犬さん。

先ほど広げて見せてくれた、ここの図を広げて亀さんが調べました。

 

亀「面白いことが分かりました。」

犬「聞かせてくれ。」

 

亀「はい。ここの葉はもともと、A島で管理されてきたものらしいです。」

兎「この木の葉が?」

亀「はい。細かく言うと葉ではなく、この枝がここまで伸びるまでです。」

兎「そうしたら、こっちにあるもう片方の葉っぱも調べてくれないか?」

 

犬「何をするんだ?」

兎「まあ見てて」

 

兎「とりあえず同じ水が同じ水の量で流れるのを

公平にする為に水をスポイドで吸い取って、

問題の葉とこっちの葉にかけて比べてみよう。」

 

犬「水は全く同じ泉から取り出されたものだから、

水質に関しては同じものだから、その点は気にしなくても良いな。」

 

兎はスポイドで適量に泉の水をとった後、『問題の無い葉』に水をかけてみました。

するとさっきと同じように葉の上で水の玉がつたって流れた。

 

猫「そしたら同じ葉にさっきの、じょうろでかけて見よう。」

兎「今、やるところだ。」

 

じょうろで、『問題無い葉』にかけて見ると、やはり同じように流れた。」

 

兎「それでは『問題の葉』に、じょうろで水をかけてみよう。」

 

じょうろで問題有る方をかけてみようと兎が手を離すと、

先ほど亀がなった時のように、じょうろが空中で止まった。

 

兎「それでは、このスポイドで『問題の葉』にかけて見よう。」

 

すると『問題の葉』では、水が流れた。

 

兎「これで分かったろう。誰が使ってもこのじょうろでは、

この『問題の葉』には水をあげる事ができない。」

猫「そのじょうろが怪しいんじゃないのか。

何というか、水を与えないようにする為のイタズラというか。」

 

犬「・・・・・まだよく分からない。おい、亀。

これは今回だけだったのか?他にも似たような事が起きたんじゃないのか?

はっきり答えろ。」

 

少し考えたような仕草を見せて亀はゆっくりと口を開けた。

 

亀「実は、今回だけじゃないんです。」

犬「やっぱり!」

猫「ということは今回初めて使った、そのスポイドでやっても

いつかは同じ問題が起きるかもしれないな」

兎「心当たりがあるよ、この件。」

 

猫が驚いて兎の方を見ると、こう言った。

兎「じつは、ちょっと前、僕に呪いをかけた魔法使いと、

この葉を運営しているところが偶然にも同じなんだ。」

 

猫「ただの偶然だろ?まだ2つしか共通点しかない。」

兎「いや3つだ。でも呪いのせいで言えない。

それはあのいじわるな魔法使いのせいだから。

彼は自分が何をやったか分かっていないようだが実際は彼が生き続ける限り・・・・・。」

犬「どうして黙っている。言わないと分からないだろう。」

 

兎「お前にこの呪いの苦しみが分かるか?

いいや、分かっても分かって欲しくない。この苦しみは絶対・・・・・。」

猫「うさぎ・・・・・。」

 

この後、この動物達は同じ事のないように願ってこの泉を後にした。

3日後。

その葉は内々で見張ることに決めましたが動物達はこれで問題が無くなるとは思えず、納得しませんでした。

後日、兎村でこの『問題の葉』に関し世界で取り上げられます。

あわてて『問題の葉』の別ライバルの葉は、別の葉と合わさって生きることを余儀なくされました。

そしてこの木に水を与える動物は、

もはや超巨大化し老朽化した現在では内部腐敗での崩壊は時間の問題かも知れないと冷静に判断。

彼の判断は公だろうが民だろうが関係ありません。

そして魅力なく透明でない葉には用がないと、

『問題の葉』から『魅力のない葉』というレッテルを貼られて、今もなお淘汰するのでした。

 

 

おわり

 

制作:都城市 原田

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