五月会行政視察報告

視察者:井坂善行、逢野博之、柏冨久蔵、金児和子、辻宏康

視察日:平成13年2月1日(木)、2日(金)、3日(土)

視察場所および視察目的:

    @(大分県臼杵市)バランスシートの導入経過と内容について

    A(大分県由布院温泉観光協会)まちづくりについて

    B(福岡県北九州市)エコタウン事業について

   視察後、市役所前で記念撮影

【報告】

@(大分県臼杵市)バランスシートの導入経過と内容について、および私の感想

【バランスシート係であった日廻文明氏からOHP・冊子をもちいてレクチャーをしていただいた】

1.平成9年1月、初当選なった後藤市長が初登庁。就任挨拶は役所の仕事が済んだ5時10分から全職員を集めて行われた。新市長の話は、(市役所は市民のための役所である。)(市民のための市役所だから、窓口業務をおろそかにして市民に迷惑をかけることを避けるために、閉庁後の就任式となった)(大きなサービス小さな経費を心がけてほしい。)というものだった。そして、3日に一回の「フロム市長トウ市職員」というA4一枚のメッセージが始められ、現在500号を超えている。

2.平成7年度の臼杵市の歳出決算額は約128億円。臼杵市の人口は約37,000人。経常収支比率は91.8%、公債費負担比率22.4%、起債制限比率15.6%という、大分県下で最悪、九州でも屈指の悪い財政状況だった。市長は(「予算は余産」として予算の執行残を消化しないこと)(自治体を経営するには自治体を出入りするお金と、資産(ストック)とサービス供給の変化を掌握することは不可欠である)と考え、自治体会計のシステム上の欠陥を痛感した挙句、「大切なバランスシートがありません」という「フロム市長」を出した。

3.平成10年4月、企画財政課の中に係長一人だけのバランスシート係がスタート。5つの部の庶務係長が集まって研究会が発足した。平成10年10月には、他の自治体にも呼びかけて「臼杵市バランスシートシンポジウム」を開催。田中元則自治省財政局指導課課長補佐と石原俊彦関西学院大助教授の基調講演を行った。

4.バランスシートとは、貸借対照表のこと。地方公営企業を除く普通会計を対象として作られた。普通財産の評価は売却可能時価、行政財産の評価は取得原価にもとづいて計算された。貸し倒れ引当金は市税未収額に関する不能欠損額の5年間平均を計算して計上している。行政財産の減価償却は、インフラ資産(道路、橋梁、農道等)については耐用年数20年・残存価額50%、インフラ外資産(学校等の建物)については耐用年数40年・残存価額10%の定額法に基づいて計算している。持分に計上している、社会資本を形成するための補助金として受け取った国庫支出金と県支出金は、形成された社会資本の減価償却に応じてみなし償却している。退職金給与引当金は職員が入ってきたときから、払うことが発生している事項で、企業では当然計上されるべきものなので、それにならって期末時の自己都合退職の平均退職金に職員数を乗じて、40%の引当率を掛けている。市債残高のうち償還時に地方交付税の補填措置が見込まれている優良起債については、これまでは率でしか措置予定額を説明できなかったが、今回は実際の金額を積み上げることにより、金額を明示した。

5.バランスシートが役立った。

・退職金を引当金として注意を払うだけでなく、後年の退職者急増に備えて、退職手当基金を創設した。

・起債のうち、償還時に元金と利子を地方交付税に上乗せして補填がされることになっている金額について  も、金額を算出して欄外に注記する方法で明らかにした。

     ・決算時でのプラスの資産とマイナスの資産(負債)と資本を項目別に示すことにより、財産の中身と財政の状     態を知ることが出来、財政改善に役立つ。

  【感想】

  バランスシートや複式簿記などの用語も内容もあまり知らなかった私だが、今回の視察でこれこそ市の財政に欠かすことの出来ないものではないかと思った。市の資産の現実を見ずして、よき財政運営はありえない。商売をしている和泉市民の友人は、「えっ、そんなん市にないのん?会社や商売やったら当たり前のことやん。」と驚いていた。それなら、私も今にして理解できることがある。以前、和泉市の姉妹都市であるアメリカ・ブルーミントン市の女性市長フールさんが来られたとき、同時にこられていたシティ・マネージャーについてたずねたら、彼は傾きかけた市の財政を立て直す専門家であって、市の要請によって市から市へと移っていくのであると説明を受けた。そのときは何のことやらわからなかったが、多分このような市の経営をうまくする専門家なのだろう。

和泉市もぜひ早くバランスシートを取り入れてもらいたいものと、切に願っている。

 

A(大分県由布院温泉観光協会)まちづくりについて

約40年前、東宝映画の演出部にいた27歳の中谷健太郎氏は、お父様の逝去に際して大分の湯布院町に帰り、同時に実家の旅館〔亀の井別荘〕を引き継ぐことになる。

当時、大々的かつ近代的な温泉町を目指す温泉が多い中、氏は由布岳の麓にゆったりと落ち着いた桃源郷のような温泉町を作りたいものと東奔西走された。そして、ほとんど無名に近かった由布院温泉を、今のような憧れの温泉郷へと変身させることになったわけである。

町を歩くと、日本情緒豊かでしかもメルヘンチックなお店が軒を連ね、その上、そば打ちの体験店やオルゴール館、さまざまな美術館、加えて映画祭や音楽祭、お祭りなど本当に一日ではとても見きれないスケールの大きな町並みが広がっている。中谷氏の経営する〔亀の井別荘〕は、ひとり一泊3万円以上する一流旅館ながら、年間通して稼働率90%以上という。驚異的! これもひとえに中谷氏の長年の並々ならぬご努力と一流の美学が支え築いてきたものなのだ。

〔亀の井別荘〕を案内していただき、長年のご苦労をしのばせるお話をあれこれ聞きながら、われわれはすっかり圧倒されていた。帰り際、奥様やお嬢様も交えて記念写真を撮らせていただき、氏の著作や観光協会の冊子等を手に入れて、夢のような町由布院を後にしたのだった。

ローマは一日にして成らず。由布院もしかり。歴史と伝統にあふれたわが和泉市をジャパネスクで彩られた町に変身させたいと願っている私は、道の遠さと険しさを思いながら由布院を去ったことだった。

本当にインパクトのあった視察だった。町づくりがどれほどの努力とエネルギーと根気が必要か、いかに人間関係作りが大切かをしっかり思い知らされた。勉強になりました!

由布院温泉≪亀の井別荘≫にて
左端から中谷健太郎氏と奥様、五月会議員連

 

2月だが、温泉のため湯気を上げている湖
湖畔のお店から湖を望む

 

B(福岡県北九州市)エコタウン事業について

エコタウン事業で有名な北九州市だが、中でも資源循環型社会、ゼロエミッションを目指してOA機器のリサイクルをしている株式会社リサイクルテックを見学・視察した。同社は、三菱化学・リコーの100%出資会社で、平成12年8月通産省のエコタウン事業補助金を受けて、操業開始した。現在月200トンのOA機器をリサイクルしている。工場では、ほとんど女性でパートの職員が手作業でたくさん積み上げられたOA機器を分解・分別していた。それまでは破砕して土中に埋められていたものを、プラスチック・ガラス・アルミ・鉄・IC基盤・モーター・ケーブル・他部品に分別してそれぞれの再生工場へと出荷し、再利用するわけである。もちろん利益が出るものではないが、限られた資源を少しでも再利用できることと、また再生しやすいように始めから製品を作る工夫もできるのではないかと思われた。再生の道がないものは、まず作らない・売らない・買わないくらいの勇気と正義が必要ではないかとも思った。

 

明政会・五月会会派行政視察

2月17日・18日・19日

福岡県福岡市『DNA計画について』14時〜15時

   市長室/行政経営推進担当

熊本県熊本市『子育て窓口の4部署一元化について』

   13時〜14時  担当:本田様

熊本県水俣市『ごみの23種類分別収集について』

   10時〜11時  担当:中村様