中級室 | シグナルとデスカード | 2006/02/05 |
1. まえがきコントラクト・ブリッジでは,デクレアラーはパートナー(ダミー)のハンドをみてプレイ計画を立てることができます.しかし,デフェンス側はパートナーのハンドを見ることはできません.見ることができるのは,パートナーのプレイするカードだけです.したがって,デフェンス計画はデクレアラーのプレイ計画に比べ,難しくなります. このため,オープニングリードにおけるカードの出し方,3番手,2番手におけるカードの出し方でハンド情報をパートナーに伝えることが考案され,その有効なものは定石となっています. これらの基本的なことは[初級室」で学びました.しかし,これらの標準手法も時代と共に変わってきています. 例えば,スートコントラクトで,AKxxからのオープニングリードするとき,Kが常識でしたが,最近はAからのリードが多くなりました. また,カウントシグナルはオポーネントがリードしたスートで使うものでしたが,今では,パートナーのリードしたスートでも使うようになってきました. また,プリファーランス・シグナルも他のシグナルと組み合わせて使うプレイヤーも増えています. この講座は,このような最近のシグナルとデスカードの動向をまとめたものです.皆さんのデフェンス技術向上の手助けになれば幸いです. |
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2. シグナル2.1. 標準シグナルシグナルはデフェンス側の情報伝達において有効な手段です. シグナルは3種類あり,その標準的な使用法は下表のようになっています.
これらのシグナルの拘束力は次のようになります.
2.2. 最近のシグナル最近のシグナルやデスカードはパートナーに特定の情報を与えて判断させる傾向にあります.また,ハイとローを単独のスポットカードで示し,2回目のカードで他のシグナルに使うようになりました. しかし,パートナーがリードした時にカウントシグナルを使うことが大きな変化でしょう.まず,これから説明しましょう. 2.2.1.パートナーがリードした時パートナーのアナーのリードに対し、3番手はシグナルを出します。 (1)アティチュード・シグナルアティチュードシグナルはパートナーがアナーをリードした時に有効なシグナルです. 次の例をみてください.
次の例も,アティチュードシグナルが有効な場合です.
次の例はアティチュードシグナルの特殊な用例です.
(2)カウント・シグナルしかし,アティチュード・シグナルが有効なのは,パートナーのリードをサポートするハイカードがある時とか,スートコントラクトでダブルトンの時ぐらいでしょう.
次の例は3NT/Sで,WはSAをリードし, Eは2をプレイしました.これがアティチュードなら、EにQの無いこと,即ち,SがQを持っていることは分かります。Wにしてみれば、残りの5枚の分かれを知りたいところでしょう。デクレアラーが2枚なら,Kを続けてリードしてQがドロップできます。それは、S2がカウントシグナルなら、それが可能です。 □カウントシグナルを常用するときパートナーのリードに対し,カウントシグナルを使う場合です。
□アテチュードシグナルが無意味のときアティチュ−ドシグナルを使う場合でも,パートナーのリードとダミーのハンドから、アティチュードシグナルが無意味のときはカウントシグナルを使います。
(3)プリファーランス・シグナルプリファーランスシグナルは次のような場合に使います。
□他のシグナルが無意味のとき(最初のトリック)ダミーがシングルトンの場合は、アティチュードもカウントも意味がありません。 このような時はすぐプリファーランスでウイナーの所在を知らせます。
次の例はダミーがソリッドの場合です.
4Hに対し,SJをオープンリードして,ダミーがハンドを公開すると,図のようにAKQとスペードがソリッドでした.これには,アティチュードもカウントも意味がありません.このような場合,スートプリファーランスシグナルを使います.Eはクラブをリードして欲しいので,2をプレイします. デクレアラーはすぐ切狩りをするでしょう.NからHK,Eは7,Sは9をプレイし,WはAでこのトリックをとります.そして,C9をリードします.EはH3でラフし,DJをプレイします.SがAでとらなければ,WはKでとり,もう一度クラブをリードするでしょう.SがAでとっても,WのDK,CKは生きるので,コントラクトは落ちます. □他のシグナルの後での発信カウントシグナル常用の場合、カウントシグナルの後でプリファーランスシグナルを使うことがあります.
4Sに対し,パートナーはHKをリードしてきました。Eは8をプレイして偶数枚を示します. WはEにハートが4枚か2枚あることは分かります.いずれにせよ,Sが2枚は持っているので,HQを続けてリードします.Eはここで9をプレイします.これはプリファーランスシグナルで,ダイヤモンドにハイカードがあることを示します.Wはダイヤモンドに切替え,DJをリードします.これで,コントラクトは落ちます. 2.2.2 オポーネントがリードした時オポーネントがリードした場合、カウントシグナルを使いますが,場合によってプリファーランス・シグナルを使います. (1)カウント・シグナル
オポーネントがリードした時に,右図のようにダミーがエントリーのない長いスートをもっているときはカウントシグナルが有効です. Sの3NTに対し,WはS6をリードしました. S3,S10と続き,SはSKで勝ちました.そして,DKをリードします.Wは2をプレイして,奇数枚を知らせます.これで,EはSのダイヤモンドが2枚であることを知り,2回目のリードのときAでとります.これで,デクレアラーはダイヤモンドを使えなくなります. このとき,Wはどのカードをプレイしますか.3も8もシグナルの完結になりますが,この回プレイするカードを「ハイカードの所在」を示すのに使用したらどうでしょう.D8がハートへの切替を示すなら,Eはハートをリードし,HQが生きます. (2)スートプリファーランス・シグナル□カウントシグナルの後カウントシグナルを発信したあと,プリファーランスシグナルを使います. 2つほど例を示しましょう.
3NTに対し,WはHJをオープニンリードします.ダミーから5,Eが8,SがQで勝ちました.デクレアラーはD6をリードします.Wは3をプレイします(カウントシグナル).DQ, D7と続き,Eはこの時点で,デクレアラーのダイヤモンドは2枚であることが分かります.そして,1回ダックします.Nは続いて,DJをプレイし, EがKをプレイし,Wはここで8をプレイします.これは,ハートが役立たずなので,スペードにハイカードがあることを示しています(スートプリファーランス).EはS4をプレイし,WはKで勝ち,S10をリードします.これで,コントラクトは落ちます.
3NTに対し,WはC4をオープニンリードします.3トリックまでの進行は右図のとおりです.2巡目のEのD2はカウントです.3巡目のEのD5はクラブを示しています(オポーネントのダイヤモンドとハートが強そうです.スペードはダミーのKを追い出せばエスタブリッシュ可能です).WはC2をリードします. |
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3.デスカードデスカードの使い方も変わってきました. 標準的な方法は次表のとおりです.
しかし,スポットカードが6,5,4のような場合はハイローの判断がつきにくいこともあります.また,防衛に有効なスポットカードはシグナルに使えません. このあいまいさを避けるため,デスカードしたスートで「デスカレッジ」を知らせ,カードでそのスートのカウント情報を知らせる手法が考案されました.(Count discard) 次の例をみてください.
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4. BTS法このように,最近,シグナルの使い方が変わってきています. 北米でも,パートナーのリードに対しカウントシグナルを使うプレイヤーも増えています.
しかし,まだ,標準化したものがありません. ここでは,Master Point Press社から出ている,"Bridge Technique Series”双書の"Defensive Signaling" の方法を紹介しましょう.シリーズ名をとって,便宜上, BTS法とします. 4.1 パートナーがリードした時あらかじめ,アティチュードかカウントを決めておきます.例えば,スートコントラクトの場合は「アテチュード」,ノートランプの場合は「カウント」とします. そして,オープニングリードがAまたはQのとき,パートナーはアティチュード・シグナルを発信し,Kのときは,カウントシグナルを発信します.
リーダーがAKJxxxのスートを持っていて,カウント情報が欲しい時には,Kをリードし,アティチュード情報が欲しい時はAをリードします.パートナーはこの要求があったとき、所定のシグナルを発信します。 ただし,AとQのリードに対し,デスカレッジが明白な場合は,カウントシグナルを発信します.
ただし書きの事項は次のような場合です.
パートナーが2Sでオープンしているので,SAをリードします.S9をプレイしてエンカリッジを示します.Wは5を続けます.これをKで取ります.Wは多分2枚のスペードでしょう.3枚なら,ローカードをリードしてくるはずです.切札にハイカードがあることを期待して,6をプレイします.WはHJでラフし,DAをリードしてコントラクトは落ちます. 4.2 オポーネントがリードした時最初のカードはカウントシグナルに使い,2回目のカードはスートプリファーランスに使います.
4.3 デスカードBTS法では,デスカード・イコール・デスカレッジです.これを
と云っています.即ち,デスカードしたスートにはウイナーがないことを示します.そして,カードをカウントシグナルに使います. 例を示しましょう.
Wはパートナーがスペードをビッドしたので,SAをリードしますが,デクレアラーはラフし,HKをリードします.WはAでとり,EはD7をデスカードします.これで,Eがダイヤモンドへのシフトを嫌っていることが分かります.また,ダイヤモンドが奇数枚であること知らせており,デクレアラーのダイヤモンドが4枚であることが分かります. 標準方式では,クラブへのシフトを示すため,C4をデスカードしますが,これはWにはデスカレッジと解釈されます. 新方式では,この不具合が解消されます. 4.4. まとめ4.4.1.パートナーがリードした時のシグナル(1)スートコントラクトの場合シグナルはアティチュードを使う.ただし,Kのリードに対しては,カウントシグナルを使用する. ただし,アティチュドが無意味な時,カードのシグナルはカウントを示し,アティチュードもカウントも無意味な時はシグナルはプリファーランスを表す. (2)ノートランプコントラクトの場合シグナルはカウントを使う.ただし,AやQのリードに対しては,アティチュートシグナルを発信する. ただし,カウントシグナルの発信が無意味の時はプリファーランスとする. 4.4.2.オポーネントがリードした時のシグナル最初にプレイするカードはカウントシグナルを意味する.2回目にプレイするカードはプリファーランスシグナルを意味する. 4.4.3.デスカードデスカードしたスートはデスカレッジを意味し,プレイしたカードはカウントを意味する. |
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5.参考事項5.1.参考図書
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