プレイのヒント2

改訂2:2004/05/15


B: デフェンダーの目的はデクレアラーに約束のトリックを取らせないことだ。
デフェンスはデクレアラーと違い、協同作業になる。しかし、デフェンダーはお互いのカードを見ていないので、デフェンスの計画を立てにくい。
このため、カードの出し方でハンドの情報を知らせるようにしている。
この約束事を知っておくことが必要だ。

まず、オープニング・リードから始めよう。
オープニング・リードでは
最初、スーツを選ぶ。スーツを選えば、カードはほぼ自動的に決まる
ノートランプでは、自分達の長くて強いスーツを選ぶ。
スーツ・コントラクトなら、損のないスーツ、例えば、ソリッド・スーツか短いスーツを選ぶ。
そして、ソリッドでないAのあるスーツから、ローカードはリードしないことだ。リードするなら、Aをリードする。
パートスコアの場合は、切札のリードを検討する。ダミーに短いスーツがある時は有効だ。
適当なスーツがなければ、スポット・カードだけのスーツからリードする。
スーツが決まると、スーツの状態(ハイカードの有無・枚数)によって、リードするカードを決めるルールーがあるんだよ。

・シーケンスはトップから。
  KQJQJ10はトップから。
ただし、AKで始まるシーケンスはKから。
・くず3枚やダブルトンはトップから。
  973Q3はトップから。
・シーケンスのない4枚以上のスーツはフォースベスト。
  K975KJ93は上から4枚目。

例06a Q54
874
AQ5
10852
  Sがデイラーで17HCPWが8HCPNが8HCPWが7HCPで、Sはコントラクトを3NTにきめた。

A72
QJ10
J9873
743
 7
  17  

●オープニング・リードの選択
ミニブリッジの場合は、ダミーのハンドを見てからリードするので、楽だ。ミニブリッジではオークションがないので、ノートランプでは、初めのうちは、自分の長くて強いスーツを選べば無難だろう。
この例では、ダイヤモンドに決める。リードするカードは、上記のルールから、フォース・ベストフォース・ハイエストともいう)で、7になる。
ESのハンドを公開すると、次のようになる。

例06b Q54
874
AQ5
10852
  コントラクトは3NTだが、ウイナーは3つ。
あと6つはスペードとクラブをエスタブリッシュするしかない。
7のリードに対し、Nから5E2をプレイした。
何故でしょう。
A72
QJ10
J9873
743
986
9653
K102
A6
  KJ103
AK2
64
KQJ9
 

Eはパートナーが長いスーツからリードし、7がフォース・ベストであると仮定する。ルール・オブ・エレブンから、7よりランクの高いカードは4枚しかないことが分かる。。
7より高いカードはダミーに2枚、自分が2枚あるので、デクレアラーにあるのは6以下のカードしかない。
従って、ダミーから5が出た時点で、7が最高ランクであることが分かる。だから、2をプレイしたのだ。
 
A: へえ。どうしてそんなことがわかるの。
 
 
B: リードがフォース・ベストなら、
11-(リードされたカードの数)=リーダー以外にある,リードされたカードよりランクの高いカードの枚数
という関係が成立する。この式をルール・オブ・エレブンというんだ。
このデイールでは、11−7=4となるから、E10でなく、2をプレイしたのさ。
依然として、リード権はWにあるから、こんどは3をリードする。ダミーから、QEはこれをKでとり、10を返す。
デクレアラーはAで勝ち,ダミーから2をリードし、E6、デクレアラーは K W3をプレイする。デクレアラーはQをリードし、W4N5EAでとる。
E9をリードする。
この後、デクレアラーはどうしてもスペードをプレイせざるを得ず、WAで勝ち、残りのダイヤモンドを取って、3ダウンとなる。
WQをリードした場合、どうなるか検討してみなさい。多分、3NTはメイクするよ。
オープニング・リードはこのように勝負を左右する重要なものなんだ。
 
A: 例06で、N2に対し、WAでなく、6をプレイするのは何故ですか。Aをプレイしたっていいと思うけど。
 
B: いいところに氣がついたね。
デフェンスに関して、いろいろな格言があるが、次の4つは覚えておいておいたほうが良い。
  • パートナーのリードしたスーツを返す。(リードバック)
  • 右にみては弱いもの、左にみては強いもの。
  • セカンド・ロー、サード・ハイ。
  • アナーをカバーする。
2に関しては、Wは2番手なので、「セカンド・ロー」の格言から、ローカードをプレイしたのさ。
はじめにAをだしてしまうと、相手側を安心させてしまうことと、そのトリックの最終プレイヤがパートナーだから、もっと低いカードでパートナーが勝つかもしれない。それで、ローカードをプレイする。これがセカンド・ローだ。
この対句がサード・ハイなんだが、これはこういうことだ。
パートナーのリードに対し、最低のハイカードで勝ちなさいということさ。
例題07            
(a) 874     (b) 874  
2 Q65   2 QJ65
           
 
 
(c) K74  
2 AJ5
     
(a)では、Qをプレイする。
(b)では、Jをプレイする。これで、QEにあることが分かる。
(c)では、Jをプレイし、AKのために保存しておく。
 
A: それから、例題06で,EAで勝った後に9をリードするのは何故ですか。
 
 
B: 本当はダイヤモンドを返したいのだが、ダイヤモンドはない。
Wはクラブで34とプレイしているから、クラブにはウイナーがないことが分かる。この手法をシグナルというのだけど、後で説明する。
Wに勝たせるとすると、スペードかハートをリードするしかない。
こういう時に参考にするのが、「右に見ては弱いもの」の格言だ。
これはダミーが右側の時のリードの選び方を示したもので、ダミーの弱いスーツをリードしなさいということさ。それで、ハートのほうが弱いからハートをリードしたわけ。
3でなく、9をリードするには意味があるけど、これはもう少しゲームになれてから説明しよう。
 
A: 「左に見ては強いもの」というのは。
 
 
B: これはダミーが左側の時のリードの仕方を示した格言だ。
この場合は、ダミーの絵札のあるスーツ、特に単独または不連続の絵札があるスーツをリードしなさいということだ。

例題08            
(a) 874
Q54
    (b) K74
KJ54
 
     
             

Wからリードする時、いずれの場合も、スペードよりハートのリードが望ましい。
 
A: 「アナーをカバーする」というのは。
 
 
B: アナーというのはA,K,Q,J,10のことだ。この格言は、ダミーからアナーがリードされたときの2番手のカードの出し方の心得を示したものだ。
Nがダミーで、君がEだとする。

例題09            
(a) Q54     (b) QJ54  
  K92   K92
             

(a)でQがリードされたら、Kをプレイする。4がリードされたら、「セカンド・ロー」でローカードをだす。
(b)では、Qがリードされても直ぐKをプレイしないで、引続きJがリードされた時にKをだすことになっている。
目的は味方のアナーを生かすためだが、詳しいことは後で説明しよう。
 
A: それから、リードバックですが、これにも、約束事がありますか。
 
 
B: パートナーのオープニング・リードには理由がある。
ノートランプの場合は、長いスーツからのフォース・ベストかもしれない。
スーツコントラクトのときは、シングルトンかもしれない。
リード権をとった時、特別の理由がない限り、パートナーのリードしたスーツを返すことを優先する。
この場合、そのスーツが4枚以上の時はオリジナル・フォースベストをリードし、3枚以下のときは、トップカードを返すことになっている。

例題10            
(a) 875     (b) 875  
4 K93   4 K932
             

(a)では、Kをプレイし、勝ったらなら、9をリードバックする。
(b)では、Kが勝ったら、2をリードバックする。
これで、パートナーはEの枚数を推測できる訳だ。
 
A: シグナルというのは。
 
 
B: シグナルというのはカード(普通,スポット・カード)を使ってハンドの情報をパートナーに伝えることだ。
これは高いカード、低いカードで2種類の情報を表す。いわゆる二進法だね。
しかし、使うカードによっては、高・低が明瞭でない時がある。その時は、2枚のカードの出し方、即ち、ハイ・ローとロー・ハイでシグナルを完結させる。
この方法で、次の3種類のシグナルを送ることができる。
  • アティチュード・シグナル
  • カウント・シグナル
  • プリファーランス・シグナル
もっとも多く使われるのは、アティチュード・シグナルなんだ。他の二つは使わない人もいるし、使うタイミングがあるので、最初のうちは使わないほうがよいだろう。

アティチュード・シグナル

パートナーのアナー・リードに対する要望を示すシグナルです。昔は、カムオン・シグナルといった。

続行 =高いカード(またはハイ・ロー)
停止 =最低カード(またはロー・ハイ)

例題11          
(a) 4S J1095
83
K73
Q642
    (a') J1095
83
K73
Q642
 

K

Q7
102
6542
AJ984
  Q7
102
6542
AJ984
         

(b) 4H QJ95
Q32
AQ
KQJ10
    (b') QJ95
Q32
AQ
KQJ10
 

K

82
J1098
K7654
53
  82
J1098
K7654
53
         


(a)Kのオープニング・リードはAKxKQxからのリードと予想される。
Eはハートが2枚なので、まず,10をプレイする.これは「続けよ」というシグナルになるので、Wは続けて、Aをプレイし,E2をプレイする。これで,Wは続けて、
4をリードしてくる。これをラフし、Aをとって、1ダウン。
(b)Kのオープニング・リードに対し,Eはスペードが2枚なので、(a)と同じようにハイ・ローでシグナルをおくればよいようにみえる。
しかし、ダイヤモンドに切り替えてくれれば,1トリックとれる。したがって、この場合はわざとローをプレイする。これで、Wはダミーのハンドをみて、10をプレイする(左に見ては強いもの)。デクレアラーはQをプレイするが、EKで勝ち、8をリードする。
ハイ・ローとシグナルをおくっていれば、Kで、トリックはとれない。
なぜか、考えてごらん。
 

A: うーん。KAQの後だから生きるんではないかな。
 
 
B: Kでとれないのは、Eがラフした後では、何をリードしても、デクレアラーはリード権を得て,すぐ切狩りして、クラブで走るからさ。そして、ダイヤモンドを1枚デスカードする。
 
 
A: なるほど、そうか。参考まで、他のシグナルも一寸説明してください。
 
 
B: 残りののシグナルも上手に使うと効果があるが、使用前にパートナーとよく打ち合わせておくことが必要だ。初めのうちは使わないほうがよいだろう。

カウント・シグナル

相手方のリードしたスーツの枚数を示すシグナルです。
ダミーにエントリーのない,長いスーツがある時に有効だ。

偶数(2/4) =高いカード(またはハイ・ロー)
奇数(1/3) =最低カード(またはロー・ハイ)

例題12            
(a) 4S/S KQJ106     (b) KQJ106  
932 A87   93 A87
  54       542  
Sはダミーのハートをエスタブリッシュしようとしている。
Nには、サイドスーツにエントリーがない。EAを持っていて、Sの最後のカードのときAで勝ちたいと思っている。
ESのハートは13−8=5枚だ。パートナーの枚数が分かれば、Sの枚数も分かる。
このような時、Wはカウントシグナルを使い、枚数をパートナーに教えることができる。
(a)の場合は、S5のリードに対し、W2をプレイする。これで、EWが3枚であることが分かる。
(b)の場合、S5のリードに対し、W9をプレイする。これで、EWが2枚であることが分かる。
 
A: プリファーランス・シグナルというのは。
 
 
B: プリファーランス・シグナル

プリファーランス・シグナルというのは、パートナーにリードすべきスーツを教えるシグナルです。普通、そのスーツにエントリーやウイナーがある。

高ランク =高いカード
低ランク =最低カード

例題13            
(a) 4S/S QJ87
KQJ2
KQ3
74
    (a') QJ87
KQJ2
KQ3
74
 
2
A109763
A95
Q86
1   2
A109763
A95
Q86
  15        

(a)Sはコントラクトを4Sに決めた。Wは一か八かでAをリードしたら、パートナーはボイドで2をデスカードした。Eはラフできる。何をリードするか。10をリードする。(高いランクのスーツ)。E4でラフし、ダイヤモンドをリードする。WAで勝ち、ハートを再びリードする。Eはラフして、4Sは1ダウンする。
ESのハンドは(a')のとおりでした。まあ、こういう風に使う。
 
A: おもしろそうですね。
 
 
B: 今のは、リードした方が、シグナルを送るケースだ。
もう一つ、デスカードでシグナルを送る手段もある。デスカードというのはフォローできなくて、他のスーツのカードをプレイすることだね。

このスーツをリードせよ =高いカード
(またはハイ・ロー)
このスーツはリードするな =低いカード
(またはロー・ハイ)

リードして欲しいスーツがあれば、そのスーツの高いカードをデスカードするのだ。
B:
例題14          
(a) 4S K963
KQ4
873
K75
    (a') K963
KQ4
873
K75
 

K

-
A109653
94
98632
  -
A109653
94
98632
       

(a)で、WKのあと、Q,Jとリードしてくる。相手側はいずれもフォローした。
Eは3トリック目、10をデスカードする。これで、Wはハートをリードし、ダウン1。
 
A: なるほど。いろいろあるんですね。
 
B: デスカードに関連して、カードの捨て方の注意事項を二三あげておこう。
デクレアラーがスーツ・エスタブリッシュしてくると、カードの捨て方に苦労するが、次のことを守るようにしたほうがよい。
  • パートナーのカードを一枚確保しておくこと。
  • ダミーの長いスーツを捨てない。
「パートナーのスーツを残せ」というのは、リードバックのためだが、「ダミーの長いスーツを捨てるな」というのは、こういうことなんだ。

例題15      
  AQ83    
J107 9642
  K6  

Eのハートはクズばかりだけど、これを捨てるとダミーの3がエスタブリッシュしてしまう。
次例は、味方のスペードにデスカードする場合で、不用意にダイヤモンドを捨てると、メイクしてしまう。
B:
例題16            
(a) 1NT 432
J54
AKQ5
764
    (a') 432
J54
AKQ5
764
 
  6
8

AJ8
Q832
6432
QJ
  AJ8
Q832
6432
QJ
  12        

 
A: カードを捨てるにも注意が必要なんですね。よく分かりました。
 
 
B: 最後に、シーケンスのカードの出し方について補足しておこう。
連続しているカードのことをシーケンスというのだ。普通、AKQKQJのように、アナーが3枚連続したものをいう。スーツ・コントラクトでは、2枚連続したものもシーケンスに含める。
シーケンスからリードまたはプレイする順序にはつぎのような約束がある。

・オープニング・リードする時 =トップから (例A
例外】AKではじまるシーケンスの場合、Kからリードする流派が多い。パートナーとよく打ち合わせこと。
・パートナーのリードが、
ローカードの時 =ボトムから (例B
ハイカードの時 =トップから  (例C)
・オポーネントのリードに対し、
  =ボトムから  

例A      
プレイするカード
(a)
AKQ   K
(b)
KQJ   K
(c)
QJ10   Q
(d)
AK5   K
(e)
KQ3   K
(f)
AKQ432     A

    ノートランプのみ   スーツ・コントラクトのみ

B:
例B       プレイするカード
3 765
AKQ2 Q
(b)
KQJ J
(c)
KQ2 Q
(d)
QJ10 10
(e)
QJ2 J
例C        
(a)
K 765
QJ10 Q
(b)
QJ Q
(c)
Q6 6
(d)
J109 J
(e)
J10 J
         

ここで説明した約束事も、パートナーは違う風にとらえているかもしれない。約束事には流行があるんだね。
初めてのパートナーとはよく打ち合わせることが必要だ。
だいぶ長くなったので、このくらいにしておこうか。
 
A: いろいろ、たくさん有難うございました。それにしても、約束事が沢山あるのには驚きました。早速使ってみます。