忘れ得ぬ鳥達
6,神栖市−利根川河口〜利根川下流域 
 オオタカ(亜種シロオオタカ)  2016・12・5  オジロワシ 幼鳥  2010・2・13
今から4年前の冬、利根川下流域の草原で冬鳥を観察していた時に利根川と並行して流れる常陸利根川の土手の上から葦原を見渡すとかなり離れた草原の中の木立にとまる白っぽい猛禽を見つけました。白っぽかったのでケアシノスリかもしれないと思い、そっと土手を降りて葦を隠れ蓑にして接近を試みました。そしてこれ以上接近出来ないところまでなんとか飛ばれずに到達して改めて双眼鏡で確認したところ・・・眉班が明瞭、尾羽の長さと鷹斑、鋭い眼光、頭部と全体サイズのバランスなどどう見てもオオタカ。しかし余りに白い、しかも大型。もしかしたらとの想いを胸に帰宅し、図鑑や文献等を調べました。先達の方々のご意見も伺い、自分なりに亜種シロオオタカとしました。この時は後ろ姿のみで正面からの観察が出来ないまま、葦原を低く飛び行方不明になってしまい翌日から何度か再会を目指しましたが成らず。一期一会の鳥見の典型となったのです。その後年明けには筑波山方面で目撃されたとの情報もあり、茨城県南部地域を移動しつつ暫く滞在していたものと思われます。 この画像を改めて見て、もう10年も経ってしまったんだとの感慨を抱きました。オジロワシを初めて見たのは夏の北海道を訪れた1998年の夏、知床半島のウトロ付近でのことでした。その後は何度か足を運んだ冬の北海道で、また冬の奥日光でも観察することが出来ました。そのオジロワシ゛がマイフィールドに現れたと聞き、いそいそと出かけて行ったものです。神栖市のゴルフ場周辺を悠然と汎翔していたその鳥はまだ嘴の黄色や尾羽の白が出ていない1年目の幼鳥でした。とは言え幅広い翼を広げて飛ぶ様はさすがイーグルと呼ぶに相応しい貫禄あるものでした。時には頭上低くを輪を描いて飛び。ファインダーの視野から飛び出してしまうほどだったのです。どうやら塒を近くのゴルフ場の中にとっているようで、時々ゴルフ場に姿を消してはまた葦原上空に現れることの繰り返しでした。しかし姿が見られたのはこの冬のみで翌年以降にその雄姿を見ることはありませんでした。
1 ソリハシセイタカシギ  2002・3・20 クロトキ幼鳥   2004・10・17 
この鳥は多くのバーダーが一度は見てみたいと憧れる鳥で、日本の何処かに、特に南西諸島から九州方面でしばしば、時には東日本にも姿を見せることがあります。波崎の防波堤に囲まれた砂浜、今では増設された漁港となり姿を消してしまった鳥観察の名所に姿を見せたという情報により早朝から出かけました。しかし到着時には姿はなく、暫く待ったものの見ることは出来ず諦めて別な場所に移動するべく現地を離れました。約1時間後に姿を見せたとの情報により引き返し、今度は首尾よく間近で観察することが出来ました。その特徴ある姿と特異な嘴を使った独特の餌取の様子を堪能しましたが、多くの撮影画像の中でこの写真は珍しく足先までを露出したもので、驚いたことにカモ類やカモメ類にも引けをとらない立派な水掻きを持っていることを初めて知りました。比較的似ているセイタカシギにはない特徴で、一般の図鑑などでもこのことに触れているものは少なく私的には貴重なシーンだと思っています。 クロトキという鳥については名前を聞いたことはありましたがどのような鳥なのかは全くと言ってよい程知識がなく、まして関東で迷鳥として見ることが出来るなど思いもよらないことでした。当年生まれの幼鳥のようで頭部も黒っぽい羽毛に覆われています。特徴ある頑丈そうな嘴で盛んにドジョウや蛙などを捉えて丸呑みする様子はなかなか迫力のある光景でした。利根川河口から10キロ以上上流の神栖市矢田部付近の利根川沿いの湿地に短期間滞在してくれました。その後ネパールへの鳥見旅行の際にこの鳥の成鳥を見る機会がありましたが、この時ほど近くでじっくりと見られたわけではなく、いかに貴重な経験であったのか、今更ながら印象深く思い出されます。この時以降国内でこの鳥を見るチャンスは今に至るまでありません。是非もう一度頭部が黒々と裸出した成鳥をじっくりと観察することが出来たらなぁと思っています。
銚子漁港とは利根川河口を挟んだ対岸の波崎漁港、そしてそこから利根川を遡った茨城県神栖市は漁港、砂浜、利根川河川敷の葦原、利根川堤防外側の草原、湿地や水田など鳥達にとっては多様な生息環境が広がっています。夏季、河川敷の葦原ではコジュリン、オオセッカ、コヨシキリといった日本でも局地的にしか分布していない鳥達が繁殖しており。冬季利根川下流域の水田や芦原はハイイロチュウヒやコチョウゲンボウなど越冬猛禽類の塒や餌場としても重要なエリアとなっています。そのような中で時折驚くような鳥が渡来し、一時的に滞在したり一冬を過ごしたりすることもあり、今後とも大きな期待が持てる探鳥地域であると思います。上記の他にも私が観察出来た魅力ある鳥として、オオアジサシ、ハイイロウミツバメ、コスズガモ、大、小のグンカンドリ、オオノスリり、クロツラヘラサギ、アメリカコアジサシなどが挙げられます。自宅からの距離は80Km以上あり決して近いとは言えないのですが私にとっては大切なマイフィールドとして親しんできました(2020・5・15 記)