朝、ボーッとしながらテレビを見ていると、
番組の司会が「今日は『キスの日』なんですよ」と言っている。
へ〜っ、「キスの日」か・・・語呂合わせじゃないな〜。
3月3日が「耳の日」で、十一月十一日が「電気の日」だっけ?
・・・5月23日じゃあ、どうやっても違うもんな〜。
まてよ、これ、お姉さまに教えてあげよう!!

根が単純な私は、その後、仕事に行く途中にメールを打った。


知ってる?今日はキスの日なんだって。
だから、思いを込めてキスを送るよ♪

歩き中の紘子



橋の上を歩きながらキスのマネをするのは、
車を運転する人達からヘンに思われるからと、
気持ちだけを込めて、心の中では投げキッスをしているつもりで送信する。

へへ〜、仕事で忙しいだろうから、もし本当にキスしたら、
「紘子、今はダメ−!!ほら、離れてくれないと仕事が出来ないよ〜!」
なんて言われてしまうんだろうな。そんなことを、顔の表情を緩ませながら考えていた。


いつも昼から重役出勤の私が珍しく午前からの出勤。
・・・という事で、お昼に休憩があったので、時間に追われているお姉さまに電話をする。

お姉さまは、今、ポスターのデジタル版権を手掛けている。
物が遅れて入ったのと、もともとの締め切りが短いということで、
「終らないかもしれない・・・」と、久しぶりに泣き言めいた言葉を朝、言っていた。

ちなみに、メールと電話は日常茶飯事的に使っている私達。
以前はPCでのメールが中心だったのに、今では・・・皆無。
理由は、PCのメールで長々と書くと、その返事に2・3時間はお姉さまは費やす。
(もちろん、私もそれくらいは使っていたんだけど・・・)
仕事をしていなかった以前は問題なかったのだけれど、
今は、それほどの時間をメールに費やせるほどの時間がない。
・・・というのが一つ。なんだかんだ、電話の時間も長いから、
結局の所、お互いの声を聞きたいというのと、書くのが面倒・・・なのが理由かな?

毎日が同じ時間ではないけれど、仕事に行く前、休憩時間、仕事帰りは掛けている。
こんなに掛けても話が尽きない・・・というわけじゃない。
だいたい、お姉さまの仕事の進み具合を聞くのが話のメイン。
あとは、私の泣き言とか、愚痴とかだし。
う〜ん、私、話題を作るのが下手だからな。
恋人ってなに話せばいいとかってないけれど、いいのかな〜、こんなんで。

おっと、わき道にそれてしまいましたね。
で、版権の締め切りに追われている中で、いきなり他の仕事の打ち合わせが入ってしまった、
まさに泣きっ面に蜂状態のお姉さま。その打ち合わせのために1時くらいに家を出るといっていたから、
正午を少し回った頃に電話をしてみる。ワンコールで切った後、少したってからお姉さまからのコール。
本当は「キスの日」のことを話したかったけれど、店舗の中でだったし、
どこで誰が聞いているとも知れないもの。や〜めた。

「打ち合わせにもう行くの?」
「後、少ししたら。文房具屋さんに寄るから、私の時計で13時くらい、12時45分にでようかと」
「そっか・・・がんばってね」
「うん、名前を売ってくるよ」

本当に短い電話。でも、ほんの少しでも、相手の声が聞けただけでとても嬉しくなるんだな。
たとえ、お姉さまが迷惑だとしても・・・私は掛けちゃうんだな。寂しがりやですからね。
でも、本当にえらいよな、お姉さま。手持ちの仕事がギリギリ終るかどうかなのに、
行かなくても大丈夫な打ち合わせに行くんだから。少しでも、顔を広めたいからだって。
私だったら、手持ちの仕事を優先させて、絶対に行かないといけない打ち合わせじゃないなら行かないよ。

多分、打ち合わせが4時間ぐらいで、行き帰りがあって、
19時くらいに帰ってくるんじゃないかと言っていた。
「じゃあ、帰ったらメールくださいよ」
「19時くらいだよ」
「今日、中番だから、終るの19時ですよ」
「んじゃ、帰ったらメールするね」
「お願いね!」
と、帰ってきたよメールを催促しておいた。
もちろん、それイコール「その時間に電話してもいい」だったりする。私の中では。


今日はものすごく仕事が忙しく、あっという間に時間が経っていった。
昨日もそう。・・・でも、なぜか仕事が減っていかないのはなぜ?
本当なら、定時で上がらないで少し仕事を片付けようかとも思ったけど、
どうやら、休みの日に外出時にもらった風邪のウイルスでノドが痛いのと、
お姉さまから「早く帰ったよ!」のメールが入っていたから、すぐに上がる。

バックルームのロッカーで着替えた後、

電話いい?・・・なら電話して。(笑)

とメールを入れておく。ちょっとだけ、パートの人と仕事のことで話をしていたら、携帯が光った。
「ごめん、ちょっと今、仕事してる。買い物してから、改めて掛けるね」
「わかった」
なんて失礼なやつでしょう、私って。どうせなら、全部終ってから掛ければ良いのに。
・・・でも、いきなり仕事でやっていないのを見つけてしまったら、やりたくなるのがサガってもんで。

その仕事を終えた後、夕飯の買い物も済ませる。
そして、駐車場まで歩きながらお姉さまにコールをする。
すぐにコールバックがきた。ごめんね〜、何度も掛けさせて。

「お疲れ〜」
「うん」
「でも、早かったですね」
「まあね。4時間ぐらいかかるかもって言っていたんだけど、結局、打ち合わせ自体は早く終ってね・・・」
そのあと、少しばかりお姉さまの仕事の話が続いた。本当は「キスの日」の話をしたいから、
途中で切りたいんだけど、そうすると、機嫌が悪くなるからな〜、お姉さま。
「で、制作の人と話をしてきて、顔を売ってきて帰ってきたのが今なの」

ほっ。ようやく終わった。
坂をてくてく歩いて、丁度、従業員の駐車場に着いていた。
よし、車の中に入れば、思いっきり話ができる。
さすがに、仕事場の近くで「キス」の話をしていて、
誰かに聞かれでもしたら、後で何を言われることか・・・。

車の運転席に乗り込み、エンジンをかける。
「ねぇ、朝のメール読みました?」
「え?なに?」
・・・お姉さまの部屋は携帯の電波が悪い。
だから、話し途中で切れることもしばしあるし、
こんな感じで話を聞きなおされることもある。
ただし、電波だけのせいで聞きなおされるのではないけれど。
単に、お姉さまが人の話を良く誤聴する人なのと、
私が話す場所や時間によっては声をひそめて話すから。

「だから、『キスの日』の話ですよ!」
「あ〜、あれね。うん、読んだわよ」
「知ってました?」
「うんにゃ、知らない」
「知りたい?」
「うん、知りたい」
「じゃあ、教えてあげます。テレビで・・・」

そう、なぜ5月23日が『キスの日』なのか。
全世界でその日があると思います?
でも、それなら、もう少しメジャーでもおかしくないとおもいません?
実はこれって日本だけなんですよね。
テレビで説明してたけど、なんでも、時は今から昔、昭和23年。
GHQ(さぁ、歴史を思い出して!)の命令により、
映画の中で「キスシーン」を出すことになり、それが公開された日。

なんでそんなことが命令されたのか。
映画のワンシーンに「キスシーン」を入れることになったのか。
なんでも、「キス=民主化」のシンボル・・・なんだそうです。
その当時の映画(邦画)にはキスシーンはなく、
その映画の撮影の際も、俳優さんはキス直前までなんども口をゆすぎ、
キスシーンの際も、二人して消毒綿を含んでいたとかいないとか。

―そうしてまで撮る必要があったのかは少々疑問だけど、
その甲斐あってか、現在、いわゆる西洋的キスが一般的になっているわけ。
「だから、メールを送っている時、気持ちはお姉さまにキスしていましたよ!!」
そう、もちろん気持ちだけ。
本当にするのは、この次会った時に、思いっきり・・・しましょうね。

皆さんは「キスの日」の事を知っていましたか?




・・・後日談・・・

「ねぇ、何で『キス』って口なんでしょうね?」
「なんで?」
「だって、相手の体に触れるなら、それこそ鼻でも、頬でもいい気がするけど?」
次の日。なんとなく疑問を抱いたのでぶつけてみた。
私なりの答えとしては、口は粘膜だから・・・要は皮膚とは違うから、
触れたときの感触が他の場所よりも敏感に感じられるからかと。
より相手のことを感じられるからと言うわけで、はい。

お姉さまの答えは何かと思ったら、これがまた、「納得!」と思えるお答えでした。

「口って生命を維持する場所でしょ?だからじゃない?」
「鼻は?息するのに必要ですよ」
「でも、鼻はなくても生きていけるでしょ?口で呼吸できるし」
「口だってなくても大丈夫じゃないですか?」
「それは無理。だって、食べないと生きていけないじゃない?」
「鼻からの流動食」
「今だからできるけど、昔はなかったじゃない」
「そうだけど・・・」
「口を預けるということで、その人に自分を委ねるって事なんじゃない?」
「な、なるほどね・・・」

確かにそう。内臓を除いた体の部分で生命の維持に絶対必要なのは限られている。
口もその一つ。お姉さまが話すように、僅かの時間でも、相手の口でそれを塞いでしまうのだから、
お互いの信頼の上でなされる行為と言われたら・・・確かに納得してしまう。
ふむふむ、いい事をさらっと言ってくれるね、ねぇ、お姉さま♪


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