「ねぇ、何でそんなに不機嫌なの?せっかく人が愛情を込めて作ったのに・・・」

テーブルの上にはクリスマスの定番の骨付きチキンのから揚げと、
コールスロー、ビーフシチュウに、ガーリックトーストが湯気をあげ、
食べられるのを今か今かと待っている。ちなみに、冷蔵庫には、
当然のことながら、ケーキ(ブッシュド・ノエル)が入っていたりする。

「クリスマスってキリストの誕生日だよ」

ほとんど無表情でクリスマスの由来を話す樹。
それを聞いて「当然じゃない?」という顔で、首を傾げる由紀子。

「それがどうかした?」

「私達には関係がない」

「・・・そうかもしれないけど、せっかく人生を楽しく過ごせるイベントなんだから、
参加しないと損だと思わない?」

「損得よりも、本当にキリスト教を信じている人に失礼じゃない?」

「あら、そんなことわないと思うわよ。だって、クリスマスをきっかけにして、
ボランティアに励む人だっているし、教会の礼拝に参加する人だっているわよ。
それはキリスト教の信仰にそった行いだと思うけど?」

「じゃあ、由紀子はしたの?」

「・・・してない・・・わね・・・」

反論をしたい気持ちはあるものの、どうも上手く言葉が見つからない由紀子。
何を言っても、樹に言い負かされる気がしてしまい、せっかくのご馳走を前に、
どこか知らない人の家にでもいるような姿になっている。
そんな由紀子の姿をしばらく真面目な顔で樹が眺めていたかと思うと、
急に「ニヤッ」とすると、お腹を抱えて笑い出した。

「はははははっ!!な〜んてね♪」

「えっ?」

「本当はこうして由紀子が一生懸命作ってくれたのは嬉しいんだよ。
でもね、『クリスマス』だからって言うのが引っ掛かってね」

ニヤニヤしながら、行儀悪く両肘をテーブルに乗せ、顔を両手の上に乗せ、
目を細めて由紀子のほうを見る樹。それを見て、ちょっと不機嫌になる由紀子。

「・・・イッちゃん、もしかして、『クリスマス』だから特別なのを作るくらいなら、
いつも手の込んだものを作って欲しい・・・なんて言いたいんじゃ・・・」

「あ、わかってくれた?」

「遅いよ」という言葉を表情で表されると、さすがに由紀子もカチンときた。

「・・・そんなことを言う人には夕飯は・・・ヌキ!!」

ちょっと目に涙を浮かべながら、苛められた仕返しをしようと試みる。
でも、その前に樹が手を伸ばしてチキンを口に運ぼうとする。

「抜きにするということは、これはそのままおいしく食べられなくなってしまう。
それは、このニワトリさんや、牛さんや、野菜さんそのものや、それを育てた人に申し訳ない。
ありがたく、おいしく頂かせていただきますよ。
もちろん、愛のスパイスを入れてくれた由紀子にも感謝♪」

「頂きます」とニッコリ笑顔で言うと、チキンをおいしそ〜にほおばる樹。
その姿を見て、由紀子はため息を一つつくと、さっきまでのことを忘れて、
自分も食べることに専念することにした。

「ん〜、おいしいよ由紀子!!やっぱりいつもこんなのを作って欲しいな♪」

「イッちゃん・・・たまにはイッちゃんが作ってよ・・・」

シチューをスプーンで一口すくって運んだ後、手を休め、
顔を子供のように笑顔にしている樹にお願いしてみる。
樹も料理は出来るのだけど、なぜか二人が部屋で食べる時は
由紀子が作る役となっている。

(別にイッちゃんに食べてもらえるだけで幸せだからいいけど・・・)

たまには樹にも自分の為に想いを込めて作ってもらいたい時だってある。


「あ〜、おいしいな・・・由紀子の料理は私だけのもの・・・」

「ねぇ、今度のお正月は・・・」

樹にせめて手伝いくらいはしてもらいたいと思う由紀子。
一人で作るのが嫌ではないけれど、一緒に作ったほうが、
例え失敗したとしても、心に残る思い出になるから。

・・・そんな由紀子の気持ちを知りながらも、からかうことをやめない樹だった。

(だって、由紀子の困ってる姿って、可愛いからね!)




恋人なんだけど、恋人らしくないクリスマスを迎えている二人に乾杯♪