ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱
黄飛鴻之二 男兒富自強 ONCE UPON A TIME IN CHINAU
1992年
監督・製作・脚本: 徐克(ツイ・ハーク)
製作総指揮: レイモンド・チョウ
李連杰(リー・リンチェイ)、關之琳(ロザムンド・クァン)、
甄子丹(ドニー・イェン)、熊欣欣(ション・シンシン)
医師でありながら少林拳法の使い手という実在した人物、黄飛鴻(ウォン・フェイフォン) をジェット・リーこと李連杰(リー・リンチェイ)が演じた「ワンチャイ」シリーズの第2弾 が本作であります。黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)の育った当時の中国は清時代の末期(日本で いう幕末)で、アヘン戦争によりイギリスの勢力下に入り、1844年にはフランス、アメリカの 圧力により開国を迫られており、1851年には民衆が大蜂起する太平天国の乱が起き、まさに動 乱の時代であったと言えます。 その中で黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)は「鉄線拳」「五形拳」「十字拳」など独自の拳法を創出(特に「無影 脚」は“影が出来ないほど早い蹴り”と言われるくらい凄い技)し、国の平和のために孤軍奮闘 した人物といえます。
ちなみに「ワンチャイ」シリーズ第1作「天地黎明」は、押し寄せる列強諸国に揺れ動く中国が舞台 でハシゴを使ってのアクションなど見所も多いです。また共演陣が超豪華で香港四天王の 元彪(ユン・ピョウ)、張學友(ジャッキー・チュン)などが出演しています。
時は清時代の末期、西洋の文化の波が訪れ始めた頃の中国。ウォン・フェイフォン(リー・リンチェイ)は 医学会に出席するために、弟子のリャン・フー、そして欧州の留学から帰ってきた 叔母(というより恋人)のイー(ロザムンド・クァン)とともに仏山(フーシャン)から列車で 広東省広州に向かっていた。しかしその広州は、西洋文化を排斥しようと過激なテロ活動を繰り返す 宗教集団「白蓮教」が勢力を握っており、教団の力は街中に信仰者がいるほど絶大で、政府も手をやいているの が現状だった。洋服を着るイーを襲ったり、西洋の医者が出席する医学会を襲撃する白蓮教団をどうにかしよ うと考えるフェイフォンだったが、農学会を発足させた孫文という人物がこのフェイフォンの考えに深く同意を してくれたのだった。孫文は、医学会で通訳がいなくて困っていたフェイフォンを助けて くれた人物である。しかし彼は実は、現在の中国という国のありかたに疑問を感じ、友人で外国語学校を経営す る陸という人物らと共に台湾で革命を起こそうとしているのだった…。
白蓮教団によって襲撃された外国語学校の生徒たちをかくまってもらおうと、政府に頼みに行くフェイフォン だったが提督(ドニー・イェン)の返事は冷たいものだった。そこでフェイフォン、イーらは子供達はや陸・ 孫文と共にイギリス領事館にかくまってもらうのだった。そこには白蓮教団に襲われた外人の商人などが 運び込まれており、フェイフォンは東洋医学をもって西洋医学と共に彼等の治療にあたるのだった。そしてそのとき 孫文は陸と誓いをかわし、一足早く仲間の待つ台湾への港に向かうのだった…。 孫文と陸の革命計画を電報により知り、陸の引き渡しをイギリス領事に求めるも拒否された政府の提督は、 白蓮教団に領事館を襲撃させ、その隙に領事を殺し、陸を逮捕しようとするのだった。リャン・フーを陸に変装させ なんとかその場を逃げ出すことに成功したフェイフォンと陸は、そのまま白蓮教を壊滅させるため教団本部に 向かうのだった…。
「香港のスピルバーグ」こと徐克(ツイ・ハーク)と「少林寺」「阿羅漢(あらはん)」の “マスター・オブ・リアルカンフー”李連杰(リー・リンチェイ)の黄金コンビで作られた 「ワンチャイ」シリーズ(しかし李連杰の主演は第3弾までで、それ以後は趙文卓(チウ・マ ンチェク)「酔拳」では成龍(ジャッキー・チェン)が演じてる)の最高傑作が本作と言いきっ てしまってよいと思われます。実は、この第2作目はオリジナルストーリーであり実在の話では ありませんが、それでも当時の「時代」を十分に感じる設定・ストーリーや、美し過ぎるアクションに は、徐克(ツイ・ハーク)の手腕の凄さを認めざるを得ません。
ストーリーでは、敵・味方がはっきりと別れてはおらず、黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)・白蓮教団・ 提督率いる政府それぞれの考え方に、民主主義を訴え革命を起こそうとする孫文・陸らが絡み合い、非 常に深いストーリーとなっています。またシリーズを通して黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)こと李連杰 (リー・リンチェイ)が、拳法の達人でも通して叔母(というより恋人)の關之琳(ロザムンド・クァン) にはいつもドキマギした態度をとってしもうのも笑えます。(ちなみに二人のロマンスは第3弾『天地争覇 』の方がしっかり描かれています)
本作のアクションの見所は、白蓮教団のクン大師こと熊欣欣(ション・シンシン)とのテーブル を積み上げて作った不安定な祭壇の上での対決と、長い布を濡らし結って作られた「布の槍」(とんでもない 弾力性と破壊力!!)を自在に使いこなす政府提督こと甄子丹(ドニー・イェン)との一騎撃ちでしょう。ワイ ヤーアクションの真髄を感じるのは祭壇での対決ですが、自分は提督との対決(2度ある)に芸術を感じるほ どの深い感動を覚える事ができました。ふたりともまるで、演舞しているかのような美しさと激しさを お互いにぶつけ合っているように見えます。
ちなみに主題歌は、カラダが自然に動いてしまうような力強い超名曲「男兒當自強」《成龍 (ジャッキー・チェン)》です。オープニングの白蓮教団の後の演舞で流れますが、とても いい曲でバックの演舞と共に、これから始まる黄飛鴻の活躍へと感情を高まらせてくれます。 他の香港映画よりも厚みの感じるこの「ワンチャイ」シリーズの最高傑作。ぜひ御覧になって みて下さい。