小説 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ はやぶさ号殺人事件 <プロローグ> 平成19年8月某日 埼玉県春日部── 野原一家は家族総出で荷物を纏めていた。 夏休みを利用して熊本にある妻みさえの実家に帰省するのだ。 普段この家族がみさえの実家に帰る時や,みさえの両親が上京する時は,航空機を使っているが,今日はJRの寝台特急「はやぶさ」を利用して熊本へ行くのだ。 はやぶさ号は東京を出発し,1日掛けて表日本側を通って熊本まで行く列車で,寝台特急と冠詞が付く位でベッドが設置されている。 この家族は夫ひろしの実家,秋田へ帰省する際に1度「寝台特急」を体験しているので,別段それに対する不安などは無かった。 寧ろ,来年で6歳になる長男しんのすけは旅行に期待しているし,まだ0歳の長女ひまわりは横を向きながら笑って“はいはい”をする不自然な姿勢をしている。 今日の埼玉県の天候は晴れ(快晴では無い),東武春日部駅へ出発した野原家の足取りは軽い。 つづく <序章> みさえ「シロはお隣に預かって頂いてるからね。」 しんのすけ「シロ大丈夫かな?あのおばさん『カルピス』薄ぅく作るからなぁ。」 みさえ「確かに少しけちなのよねぇ。ああ言う所にその人と形(なり)が出るって言うかぁ──って何言わせんのよ!」 ひろし「自分から言ったんじゃねぇか。」 春日部を出発して,東京に着いた頃には日が西に傾いていた。 広い東京駅に当該の列車が到着していないが,既にホームに待機している野原一家。 するとひろしが若い頃の思い出話しを披露するのである。 ひろし「オレが大学に進学する頃な,まだ国鉄がJRになって暫くの事だ──」 しんのすけ「出たっ!昭和生まれ!」 ひろし「うるせぇ!その時おれは寝台特急を使って秋田から上京したんだ。」 みさえ「そうだったの。」 ひろし「“電車の中で寝てみたい”って言う単純な考えでな,その車内で面白いコンビに会ったんだよ。剰りに強烈だったんで今でも覚えてる。」 しんのすけ「ねえねえ父ちゃん,そのコンビって“よゐこ”より面白い?」 ひろし「え?どうなのかなぁ。」 みさえ「何よそれぇ?つまり大した事ない話しなんじゃないの?」 ひろし「いやいや,“よゐこ”って分かり難くないかえ?」 みさえ「確かに“よゐこ”って微妙ねぇ。」 しんのすけ「じゃ藤原啓治!」 ── ── ひろし「その人コンビじゃないから!」 みさえ「つぅか声優よ。」 その頃,同じホームには警視庁捜査1課の警部補である蓮池真一(はすいけ・しんいち)がはやぶさを待っていた。 久し振りに休暇が取れるので,有給を使って故郷の熊本県八代市に帰るところなのだ。 ホームの階段を上がってきた女性がいた。 彼女は曾我 恵(そが・めぐみ)。 女性でありながら,元・陸上自衛隊の1等陸尉出身と言う異例の肩書きである。 彼女も故郷である八代市に帰る予定だ。 いま彼女は社長業を営んでおり,会社の九州進出を目論んでいる。 曾我ははやぶさの発車番線が分からなかったので,近くに居た蓮池に訊ねた。 曾我「すみません,はやぶさ号はここで良いでしょうか?」 蓮池「全然違いますよ。はやぶさ号は新横浜から出発するんですよ。」 曾我「あら,いっけなぁい。わざわざ有り難うございます。」 蓮池は口から出任せを言った。 曾我は気付かず階段を降りていった。 5分後,鬼の様な形相で階段を上ってきたのは曾我だった。 蓮池「軽い冗談の積もりだったんですがねぇ?」 「何が軽い冗談よ!良かったわ,私が気付くのが『のぞみ』に乗る前で。」 「新幹線に乗っちゃえば九州なんて直ぐじゃないですか(笑)」 「──ったく。あんた何者?」 「私?私ですか?私は警視庁刑事部捜査1課の警部補で,蓮池と言います。」 蓮池は内ポケットに手を潜らせてから,警察手帳を開いた。 曾我(捜査1課なら優秀な警察官の集まりじゃない。信じられないわ。) 蓮池「あなたは?」 「私は曾我。職業は──専業主婦かしら。」 2人は自己紹介をした。 蓮池「曾我さんは何号車ですか?」 「2号車よ。あなたは?」 「私は──」 蓮池は切符を見て確認した。 蓮池(同じか──。) 一方野原家は── ひろし「おーい,みんな切符持ってるか?」 みさえ「しんちゃん,持ってる?」 しんのすけ「勿の論だゾ。きちんとオラのお尻の間に──」 みさえ「すなー!」 ひろし「俺たちは2号車か。」 また,野原家も2号車であった。 〈間もなく列車が参ります。〉 そしてはやぶさ号が東京駅にやってきた。 本日の日中の気温は30℃を超す真夏日であったので,間も無く午後6時に成ろうと言うのに熱気むんむんであるが,はやぶさ号の車内は冷房きんきんで,涼しかった。 つづく <第1章> 〜すべてのはじまり〜 午後06時04分,東京駅を出発したはやぶさは東海道線沿いに快走する。 2号車の車内に,横田と言うパチンコ店店長の男が居るのだが,この男の詳しい話しは後とする。 蓮池「それじゃあなたも八代出身なんですか?」 曾我「奇遇ねぇ。私は昭和30年生まれの52歳。」 「私は昭和40年生まれの42歳です。」 ここには蓮池・曾我と横田が居た。 横田「あのぉ,皆さんはどちらまで── 曾我「ほんなこつ地元はいっちょん変わりよらんばってん。」 蓮池「とこっではやぶさには自販機があったごた?」 曾我「探しに行ってみようごた。」 元々声も小さく気の弱い横田は,2人の熊本弁に圧倒され話し掛ける事すら出来なかった。 その頃みさえとひまわりは廊下で景色を見ていた。 みさえ「ほら,ひま〜。」 すると間も無く車掌がやって来た。 車掌「お客様,そろそろ消灯でございますのでお休み下さい。」 みさえ「あ,すみません。」 野原家のベッドに戻って来たみさえ。 みさえ「そろそろ消灯なんですって。」 ひろし「そうか。おや?」 ひろしの携帯電話が揺れている。 着信表示には〈部長〉と示されている。 ひろし「もしもし,部長!こんばんは。どうなさいました──はい──はい」 みさえ「電車の中なんだから静かにね?」 ひろしは右手を挙げて合図した。 やがて通話が終わった。 みさえ「何の用だったの?」 ひろし「いやぁ,課長が痔で入院しちゃって営業部が大変なんだって。痔は辛いんだよな。」 「あなたも痔には苦労したからね。」 「ただでさえお盆で人手が足りないのに課長が入院しちゃったからな。やっぱ俺,みさえの両親にご挨拶したらすぐ戻るよ。一応係長だしな。」 「そうなの?残念ね。ま,今は仕事を忘れて──。」 「そうだな。」 つづく <第2章> 〜第1犯行〜 〈バァァァァァンッ!!〉 〈キャアアアアアッ!!〉 ひろし「何だ今の音と悲鳴!?」 みさえ「銃声じゃない?この車両よ!?」 しんのすけ「んん──騒がしいゾ。」 みさえ「しんちゃん寝てなさい。」 ひろし「ちょっと行ってくる。」 みさえ「大丈夫なの?気を付けてね。」 しんちゃん「オラも行くゾ!」 みさえ「あんたはここに居なさい!」 ひろしは声がした方に行ってみた。 そこには頭部を拳銃で撃たれ,血を流し変わり果てた姿の横田さんが居た。 ひろし「何じゃこりゃぁ!」 曾我「どうしたの?」 ひろし「し,し,死体がっ!」 蓮池「どうしました?落ち着いて下さい……。警視庁の者です。確認をしますので皆さんは取り敢えず戻って下さい。」 曾我「実は私,元・自衛隊員なの。協力出来る事が有ったら言って。」 蓮池「頼もしいです。」 ひろし「俺は元・卓球部でSF初段なんだ。」 蓮池「足手まといです。戻って下さい。」 ひろしはベッドに戻った。 ひろし「あの野郎!水谷 豊みたいな面しやがって。『相棒』気取ってんじゃねぇよ。」 みさえ「聞こえたわ。どうやら殺人事件みたいね。物騒で怖いわ。大丈夫かしら。」 しんのすけ「あんたの方がこわいゾ。」 みさえ「し・ん・ちゃ・ん?」 ひろし「おいおい止めとけって。どっちにしろ警察も居る訳だし,犯人だって下手に動けないだろ?」 蓮池は携帯電話の写真撮影機能で残忍な現場の撮影をした。 蓮池「んー。残念ですがお亡くなりに成られています。曾我さん,110番をお願いします。」 曾我「わかったわ!」 蓮池は遺体の体にそっとカーテンを被せて合掌した。 曾我「次の停車駅で捜査課の刑事が来るわよ。」 蓮池「曾我さんには,これから先お手間をお掛けする事と成りますが,予めご了承下さい。」 曾我「OK!任して頂戴!」 蓮池は早速,職務質問と事情聴取を始めた。 蓮池の目には一際目立つ女性が映った。 宇和佐真澄(うわさ・ますみ)。おばさんパーマの中年だ。 宇和佐「それで聞いてよ!殺人事件らしいわよぉ。」 噂話しが好きらく,外人の友達に楽しげに話している。 この外人,名前はジェンキンズと言い,男性でアメリカ人らしい。 蓮池「お2人とも事件の事について何かご存じなんですか?」 宇和佐「実はね?男性が歩いてるのを見たのよ!」 ジェンキンズ「クレイジー・ファック!」 蓮池(この人達あやしいな。情報がいやに早い。) 蓮池は他に情報を持っていそうな人を探した。 蓮池(そう言えば“元・卓球部でSF初段の男性”が居たな。よく考えたら第1発見者じゃないか。) 蓮池は野原家のベッドを訪れた。 蓮池「お休みのところ申し訳無いです。警視庁の蓮池です。少しお話しをお聞かせ願います。」 一家は自己紹介を始める。 ひろし「取り敢えず私は双葉商事営業部・野原ひろし,35歳。そして──」 みさえ「妻のみさえです。29歳で専業主婦をしています。息子のしんのすけと娘のひまわりです。」 蓮池「ひろしさんにみさえさんに,しんのすけちゃんとひまわりちゃん。ご家族でお住まいはどこですか?」 ひろし「春日部です。今日は妻の実家がある熊本に帰省しておりまして。」 蓮池「なるほど。で,しんのすけちゃんはどこですか?」 みさえ「何言ってるの?しんちゃんならちゃんとここに──」 みさえが後ろを振り向いても誰も居なかった。 みさえ「──え?」 つづく <第3章> 〜第2・3犯行〜 みさえ「やだ!しんちゃんが居ない!」 ひろし「何だって!?」 蓮池「落ち着いて下さい。捜して来ます。」 ひろしとみさえが立ち上がる。 蓮池「みさえさんはここに居て下さい。」 みさえ「でも──。」 ひろし「俺が蓮池さんと探しに行ってくるよ。みさえは待っててくれ。」 その頃しんのすけは,車内のトイレの前に居た。 しんのすけ「おしっこおしっこおしっこおしっこ・・・」 〈ガチャン〉 しんのすけ「ぬおおおおおっ!!」 しんのすけは叫んだ。 その声がしんのすけを捜していた蓮池とひろしの耳に入った。 ひろし「しんのすけの声だ!」 蓮池「あちらですね。」 声は1号車と2号車の間のトイレからだった。 ひろし「しんのすけ!」 しんのすけ「父ちゃん──死体が──。」 ひろし「何じゃこりゃあああああっ!!」 しんのすけが扉を開けたトイレの中には,直径100mm,長さ600mm程度の鉄管で心臓部を貫かれている死体が有った。 蓮池「連続殺人事件になってしまった・・・。」 蓮池はトイレの壁に気になる物を見つけた。 蓮池「血で染まった手形じゃないか。遺体の手よりは小さいけど,しんのすけちゃんの手よりは大きいし,だとしても位置が高すぎる。」 手形の高さは床から1,600〜1,700mmの高さだったので,身長の低いしんのすけには到底届かない。 しんのすけ「しんのすけちゃんだなんて余所々々しいゾ。『しんちゃん』で良いんだゾ。」 蓮池「そうだね,しんちゃん。」 ひろし(死体に動じねぇなぁ──) 〈キャァァァァァッ!!〉 曾我「今の悲鳴,何!?」 曾我は声のする方に行ってみた。 場所は2号車と3号車の間の幌(ほろ),そこには首を絞められた跡のある死体があった。 ごく僅か石油の臭いがした。 蓮池「どうしました!?」 曾我「死体が──。」 「油の臭いがしますね。火は付けぬよう皆さんお願いします!」 深夜 大阪駅停車── 府警の刑事2人と地元の警察官2人が車内に入って来た。 所轄の刑事「大阪府警捜査課の者や。」 蓮池「警視庁の蓮池です。」 「1人目の死因は“拳銃で頭部を撃たれて即死”で良さそうやな。」 「その様ですね。2人目は残酷な殺し方ですね。」 「鉄パイプでブスリやな。」 「はい。そして3人目は首を絞めて殺してます。」 「一体だれのしわざなんや!?」 警察官「警部補!遺体の内ポケットから免許証が有って,身元が割れました。 横田龍太郎(よこた・りゅうたろう)32歳。神奈川県川崎市でパチンコ店の店長です。 糀谷浩二(こうじや・こうじ)35歳。東京都大田区で警備会社の事務職です。 大鳥居昭(おおとりい・あきら)38歳。ゼネコンの社長の息子で専務です。」 車掌「夜も深いですし,お客様に余計な不安を煽るのは避けたいです。遺体だけ運んで頂けますか?」 蓮池「私もその方が良いかと。」 所轄の刑事「良し!わてらは直ぐに署に戻るで。捜査員を2人乗車させろや。ほな,行くで。」 はやぶさは予定の30分遅れで大阪駅を出発した。 つづく 第4章 〜不意打ち〜 蓮池「皆さん,集まって下さい。」 蓮池ははやぶさの乗客を集めた。 〈主な乗客リスト〉 ○宇和佐眞澄──噂好きの中年女性 ○ジェンキンズ──宇和佐の友達でアメリカ人男性 ○野原一家 ○蓮池眞一──警視庁刑事 ○曾我 恵──元1尉・現社長 ○金正元(かねまさ・はじめ/キム・ジョンゲン)──在日朝鮮人 ×横田龍太郎──射殺 ×糀谷浩二──刺殺 ×大鳥居 昭──絞殺 【凡例】生存○ 故人× 蓮池「皆さんご存知とは思いますが,これまでに3人の方が亡くなっています。 情報をお持ちの方は,仰って下さい。」 宇和佐「確か男の人が歩いていたのよ。」 「先程も仰ってましたね。特徴など覚えていますか?」 「確か──黒いネクタイだったかしら?」 全員がある男に注目した。蓮池だ! 蓮池は黒いネクタイをしていた。 曾我「あ──っ!あんた実は犯人なのー!?」 蓮池「ちょっとォ,それはないでしょう!!」 みさえ「でも黒いネクタイってあまり見かけないわよ。喪服じゃあるまいし。」 ひろし「警察って言うのもウソなんじゃねぇの?」 しんのすけ「かなりアヤしいゾ。」 曾我「あんたの警察手帳,本物?」 乗客は蓮池を怪しいと思い始めた。 徐(おもむろ)に蓮池は懐(ふところ)に手を入れて,拳銃を取り出して天井を打った。 〈パァァァァァンッ!〉 蓮池「俺は警察だっつってんだろっ!手前ぇらは俺に従ってりゃいいんだよ!!」 曾我「は・・・・,い・・・・」 もうみんな唖然だった。 今までの蓮池では考えられない言葉遣いだったり,みんなキレた蓮池は初めて見た。 宇和佐「や,や〜ね〜。冗談に決まってるじゃない──」 ジェンキンズ「疑ッテ,スイマセンデシタ。by 〓SoftBank」 金正「人ト ヲ|= Eト」 ※ キムチ食いてぇなぁ。 その時だった。これは恐らく犯人も予期せぬ事態だったと思う。 彼らに更なる試練を神は与える事となる。 機関士(大阪を30分遅れちゃったからなぁ・・・。回復運転をしなきゃな。) はやぶさは制限速度を越して危険な運転をしていた。 本当に一瞬の事だ。車両が少し浮く感じを覚える。 ガタガタガタガタガタ・・・ ガッシャ────ンッ!! はやぶさは脱線した。 機関車および1・2号車,ついでに3号車の“車体”は著しい被害を受けた。 しかし,どう言うことか“乗客”は,じゃっかんの打撲こそはあるものの,ほとんど致命傷にいたらない状態だった。 しまいには,機関士が機関車から出てくる始末だ。 機関士「みなさん申し訳ないです。脱線しちゃったみたいで──。」 みさえ「脱線しちゃったじゃないわよ!」 ひろし「おい,まわり見てみろ,がれきに埋もれて車内から出れそうもないぞ!」 しんのすけ「ケツだけ歩きも今回は役に立たないか。」 ジェンキンズ「何デスカ?ケツダケアルキ。」 「知らないの?外人のお兄さん,勉強不足だゾ。ケツだけ歩きができる人は,日本に数えるほどしかいないんだゾ。」 機関士「そうなんですか!?私できますよ。」 はやぶさの車内でケツだけGPが開催された。 その様子はまさに圧巻そのものであった。 では,そのGPの全貌をお見せしよう。 宇和佐「レースは,スピード部門とパフォーマンス部門の2つです。」 曾我「審査員は蓮池さん,宇和佐さん,そして私の3名です。」 <第一走者>野原しんのすけ(5)埼玉 蓮池「よーい」 〈バァァァァァンッ!!〉 (本物のピストルで撃った) しんのすけのスタートダッシュは素晴らしかった。 おそらくしんのすけのMT比は高いのだろう。 ズボンとレーンの摩擦音がキュッキュッと唸る。 しんのすけ「それ!いくゾ!」 さらにラストスパート「おならターボ」を決めた! 〈ヴゥ────ッ!!〉 <審判合議会> 宇和佐「結果は,10″77でした。」 蓮池「素晴らしいスタート,そしてラストの『踏ん張り』でしたね。」 曾我「ただ,それについて少し難ありで,狭い車中で危険なガスを噴出するのは如何なものと,乗客からブーイングが。」 宇和佐「じゃあ,3秒加算で良いですね?」 <第二走者>機関士(27)JR西日本所属 蓮池「よーい,ドン」 機関士「んっ!んっ!」 ひろし「ごにょごにょしてるだけで,びくともしないぞ。」 みさえ「───きもちわるい。」 曾我「ちょっと?あんた(機関士)大丈夫?」 <第三走者>ジェンキンズ(32) 蓮池「レディー?」 〈バァァァァァンッ!!〉 〈キャイイイインッ!!〉 曾我「今の何!?」 宇和佐「──ま,まさか。バイオハザードちゃぁぁぁん」 蓮池「もしかして撃っちゃいました?」 蓮池はスタート合図用のピストルを誤発して,宇和佐の愛犬「バイオハザード」を撃ってしまった。 宇和佐「バイオハザードちゃぁぁぁん」 蓮池「申し訳ないです。暗くて気づきませんでした。」 「悪いけど1人にさせて──」 「はい。」 ジェンキンズ「眞澄サンハ Biohazard ヲ我ガ子ノヨウニ育テテイタンデス。」 蓮池(かわいそうなことをしたなぁ。) はやぶさが脱線した事による恐怖感を“ケツだけGP”と称してもみ消すようにみな心を踊らせていたが,この一件で,みんなの精神状態はまいってしまった。 <第5章> 〜六人のサムライ〜 宇和佐は暗い車内の端の方へ一人で向かった。 愛犬であるバイオハザードの死が相当な衝撃だったのだろう。 みさえ「ヴァイオレンス(乱暴)な警察官ね。」 ひろし「シロ,お隣のおばさんに預けてて良かったぜ── な?しんのすけ。」 しんのすけ「蓮池さん。宇和佐さんにちゃんと謝った?」 蓮池「ええ。ただ宇和佐さんも落ち込んでいらして,一人になりたいと仰ってます。」 「オラんちも“シロ”っていう,綿あめみたいな犬を飼ってるんだゾ。 もともとシロは道に捨てられてた捨て犬で,オラの友達がみんな飼うのが難しいからオラが飼うことになったんだけど、 最初はおうちの中でうんちしちゃったり,母ちゃんのお洋服をぼろぼろにさせたりで。 母ちゃんはその時『もう一度捨ててこい』って言ってたくらいだけど、 今は家族の中で一番お利口さんだゾ。 オラんちのみんなは,シロが大好き。 だからきっと宇和佐さんもバイオハザードが大好きだったんだよ。」 みさえ「しんちゃん──」 しんのすけの発言に少し驚いたみさえだった。 蓮池「ありがとう,しんちゃん。宇和佐さんが落ち着いたら,もう一度ちゃんと謝ります。」 曾我「良いお子さんね。あんたが羨ましいわ。」 ひろし「シロをバイオハザードと引き換えにするなんて恥ずかしい。」 みんなざ少しほのぼのし出した時,車内にけたたましい銃声が鳴り響いた。 蓮池「行ってみましょう!」 銃声のする方に向かうと,そこには変わり果てた姿の宇和佐が── 友達のジェンキンズは叫んだ。 ジェンキンズ「眞澄サァァァァァン!!」 すると驚くことに宇和佐は苦しそうにしながらも,声を出した。 宇和佐「ジェンキンズ── あたしはまだ死んじゃいないよ──」 蓮池「宇和佐さん,本当に申し訳ないです。」 「何いってんの── あんた犯人捕まえるまで許さないわよ──」 「勿論です。宇和佐さん。」 宇和佐は最後の力を振り絞って叫んだ。 「だから──絶対捕まえてね!!」 「分かりました。」 「バイオハザード── いまからそっち(天国)に行くからね──」 宇和佐さんの体から力は全て抜けた。 蓮池は泣きながら大きな声で叫んだ。 「チクショウ!絶対に捕まえてやる!」 ジェンキンズ「モウ,ウンザリダ!私一人デモ脱出スル!」 ジェンキンズは電車に僅かにあった隙間から脱出を試みが,彼は運が悪かった。 脱線・衝突の衝撃で崩れていたコンクリートの一部が落下して,後頭部を直撃した。 金正「ハハハハハハ」 蓮池「何が可笑しいんですか?金正さん。」 「可笑しいから笑うのさ。ハハハ。」 「あなた日本語が喋れるんですね。」 「いま死んだアメリカ人だって喋ってたじゃねぇか。」 金正はラジコンのコントローラのような物を取り出した。 「なんです?それは。」 「フフフ。ここをこうすると──」 金正がコントローラのボタンを押した。 <ブ────ン> 何かの飛行音がこちらに近づいてくる。 金正「手めぇら皆殺しだ!!」 その飛行物体は人形で,しかもサブマシンガンのような物を抱いていた。 <バババババババ> その人形は手にしているサブマシンガンを発砲し始めた。 ひろし「うわ──っ!?何だこれ??」 「ヒヒヒ。この人形を操作しているのは,この私だ。」 みさえ「あんたが連続殺人事件の犯人だったのね!?」 「その通りだよ。手めぇら蜂の巣にしてやるぜ!!」 <バババババババ> 曾我「みんな!こっちへ来るのよ!」 ベッドのある方に左手で手招きをする曾我。 右手には,なんとサブマシンガンがあった。 しんのすけ「曾我さん,これどうしたの?」 曾我「フフフ。さっきあの韓国人の鞄からパクってきたのよ。」 蓮池「・・・曾我さん」 野原一家は曾我を信じた。 何故なら彼女は元・自衛官だからだ。 蓮池は少し呆れたが期待をした。 曾我「あたしに任せなさ〜い!」 <バババババババ> 曾我は手に持ったサブマシンガンで,車両の天井を門型【П】に撃った。 すると撃ったところから,天井仕上げの重みで廊下に壁を作るように,ぶら下がった。 金正「なに!?壁を作りやがった!」 操作していた人形は見事その壁にぶつかって跳ね返り,金正の方に猛突進。 金正「うわぁぁぁぁぁっ!!」 なんと死んでしまった。 哀れなものである。 となると,この閉ざされた車両に残されたのは?── ▽野原しんのすけ(5つ) 腕白幼稚園児・埼玉県出身 ▽野原みさえ(29) プロ専業主婦・熊本県出身 ▽野原ひろし(35) 双葉商事係長・秋田県出身 ▽野原ひまわり(0つ) スーパー乳児・埼玉県出身 ▽蓮池眞一(42) 警視庁警部補・熊本県出身 ▽曾我 恵(52) 元陸上自衛隊・熊本県出身 脱出なるか!?六人のサムライ!! つづく。 〈第6章〉 〜栄光の朝日〜 はやぶさ号で次々と殺人事件が起こった。 そして不幸は続くように福知山線を思い出すかのような脱線事故まで発生してしまう。 犯人であった金正は死んでしまい電車の中で生き残った六人は,この車両から脱出しようと決意する。 しかし現実はそう甘くなかった。 脱線事故の影響により出口は塞がれ,どうすることも出来なかった。 この状況では六人の助け合いが重要視されてくる──はずなのだが── 曾我「王様だ〜れ?」 なんと!?リーダーを決めようとして王様ゲームをしているではないか。 一般人なら絶対に考えつかない展開である。 蓮池「畜生!俺じゃない。」 彼は目立ちたがり屋なのでリーダーという存在が大好きなのである。 みさえ「同じく私も王様じゃないわ。」 ひろし「同じく……」 しんのすけもひまわりも王様ではない。 「五人とも王様じゃないって事は──残るは。」 五人の目線は一人の女に集中した。 曾我「王様はわたし〜♪」 このおばちゃん,蓮池以上にリーダー好きで,その上自己中心ときたものである。もう手のつけようがない。 絶対に放し飼いには出来ないタイプだ。 <よりによって──> 五人は肩を落とした。 この人がリーダーになったからにはろくな事が起きない。 曾我「さぁリーダーは私よ。何を命令しようかしら。とりあえず皆には体力検査でも受けてもらおうかしら。きついわよ〜。」 意味不明である。あんたたちはこの電車を脱出するためにリーダーを決めたのではないのか? それがなぜ体力検査に? 簡単である。曾我がただ単にえばりたいだけなのである。 脱出なんてのは二の次三の次。 とにかく皆に自分の偉大さを認知して欲しいだけなのである。 ひろし「曾我さん──なんで体力検査なんですか?そんなことより脱出方法でも考えましょう。」 ひろしの鋭い突っ込みが飛ぶが,曾我はそれをハエを払うように言った。 曾我「ばかねぇ。体力を検査することによって自分の肉体を知り,体を鍛え,脱出するときに大いに役立つってもんでしょうが。」 全く無理やりな意見である。 それをまた平然として言うのだから敵わない。 <そんなもんかねぇ。> そして騙されて納得してしまう五人も,もう大馬鹿野郎である。 結果的に考えると,おかしいのは曾我だけではない。みんな馬鹿なのである。 こんなことで脱出できるのかよ!? みさえ「51,52──なんであたしたち旅行に来て腕立て伏せやってるの?」 ひろし「俺は腹筋をやってるぞ!──65,66」 蓮池「私はけん垂です──くく」 しんのすけ「ところでケツダケレースで出てきた機関士がいないゾ!」 曾我「大人の事情よ!つっこんじゃダメ!」 ひまわり「タタイ,アイアイ,タイヤー」 ※ あたしのセリフ少なくない? 体を鍛え,脱出に備えた一行だった。 すると窓から朝日が! 蓮池「助けが来ました。」 曾我「瓦れきを重機で取り除いてるわ。」 みさえ「助かったのね。」 しんのすけ「もう朝だゾ。」 ひろし「本当なら広島あたりだな。」 徐々に視界が広がり,栄光の朝日が六人を照らすのであった。 つづく。 〈第7章〉 〜再 会〜 みんな,はやぶさから脱出した。そして外の新鮮な空気を体内に取り入れるのだ。 みさえ「久々に外へでれたわ。」 ひろし「閉じこめられてる時間が夜だったからよかった。」 蓮池「そうですね。いま夏ですから日中は蒸し風呂なんでしょうね。」 事故現場近くで話していると聞き覚えのある声がした。 機関士「みなさん大変でしたね。」 しんのすけ「あ、機関士だ。」 みさえ「ちょっと!あんたどうやって脱出したのよ!?」 機関士「みなさんひどすぎます・・・私はみなさんが筋肉トレーニングをしている頃からずっといたのに,なぜか乗客リストから除名されてるし。」 曾我「あれは筋肉トレーニングじゃなくて体力テストよ。」 機関士「私も一応,空気いすを続けてたんですが──」 ひろし「じゃあ“六人のサムライ”は“七人の侍”だったのか・・・」 みさえ「なんのこと?」 「バカヤロウ。俺はエスエフ初段だ。」 別の車両に乗っていて難を逃れた大阪府警の連中がやってきた。 捜査員A「蓮池警部補〜!」 蓮池「あ,あなた方は無事だったんですね。」 捜査員B「一つ後ろの車両やったさかい著しい損傷は受けへんかったんですわ。」 「まだ車両の中に数体の遺体があります。犯人は車内で死にました。」 捜査員A「姫路市消防局の坂本さんです。」 坂本「警察と消防が協力し合って早期解決をめざしましょう。」 蓮池「はい,あ,名刺をお渡ししますね。」 二人は名刺を交換した。 「蓮池眞一?」「坂本武士?」 見覚えのある名前の、二人は記憶をたどった。 〈あぁ────っ!!〉 「大学の後輩の蓮池か?」 「そうゆうあなたは坂本先輩!」 蓮池と坂本は同じ大学の同じ剣道部に所属していた。 「そうかぁ,蓮池は警察官になったのか。警視庁といえば剣道の強ごうチームじゃないか。けい古が大変だろう?」 「いいえ,私は剣道部じゃなくて,剣道同好会なんですよ。レヴェルがぜんぜん低いんです。 それより大学時代,日本の学生剣道で五本の指にはいるほど強かった坂本先輩が,なぜ消防官を?」 「私は剣道なんか趣味の一つだったからね。おやじも消防官だったから今も消防官をしているのさ。」 《昭和六十一年・夏》 坂本「蓮池ー!気合いをださんかー!」 蓮池「はい!」「やあ────っ!!」 大学の武道場で剣道のけい古をする二人。 夏の日差しが道場の屋根を焼き付け室内は蒸し風呂状態。 そんななか面や防具をつけて三尺九寸もの長さがあるしないを振り回しているんだから気が狂ってしまう。 坂本「お前は面を打つとき右手が先にでるから小手ががら空きなんだよ。」 蓮池「坂本先輩が鋭すぎるんですよ。」 「バカモン。そういうことじゃないだろ。」 坂本「蓮池,お前の弱点はもう直ったのか?」 蓮池「勝負して試してみましょうよ。」 曾我「そしたら私も参加するわ。自衛隊時代は剣道部にいたのよ。」 しんのすけ「オラも経験者だゾ〜!」 《第一回剣道グランドプリックス》 機関士「試合はトーナメント式で行います。まずはじめにしんのすけ経験者と坂本六段による試合です。」 試合会場は事故現場近くの公園,しないや防具は四人分曾我が持っていた。なんでだ? 坂本「しんのすけくん,おじさんは試合となると燃える性分でね。手加減しないよ。」 しんのすけ「おかまいなく〜。」 「・・・試合を始めようか。」 坂本(とは言え正直消防官が忙しくてあまり剣道をしてる暇は無かったんだよな。 でも相手は幼稚園児だし・・・) 坂本「いや────っ!!」 しんのすけ「太平燕(タイピーエン)──っ!!」 かけ声とともにしんのすけの竹刀は坂本の面に深く入った。 蓮池「まずはしんちゃんが一本を入れた!技は面です!」 みさえ「太平燕って熊本の中華屋に行くとあるっていう・・・」 曾我「横浜の生馬麺(サンマーメン)みたいなものね。」 蓮池「両者ともよそから来た人は想像がつかない料理ですね。」 つづいて二本目(※剣道は三本勝負)。 坂本(太平燕はあのキクラゲがおいしいんだよな・・・ジュル) しんのすけ「からしれん小手〜!」 しんのすけは小手を打った。 みさえ「からしれんこんって・・・」 坂本(私はからしは抜いてしまうな。辛いし。) 《第一トーナメント勝者》野原しんのすけ 機関士「つづいては曾我さんと蓮池さんの試合ですね。」 曾我「かかってらっしゃ〜い。」 蓮池「私の予想だと坂本先輩が勝って決勝で試合するつもりだったのに。」 「妄言抜かしてんじゃねぇ!勝つのはあたしよ! 突きぃぃぃぃぃっ!!」「ぐゎあァァァァッ!」 機関士「凄まじい曾我さんの突きが決まりました。」 蓮池ののど元は赤くなっていた。 蓮池(このババァ強すぎ!) 曾我「二本目行くわよ!おスネっおスネっおスネっ!」 「剣道にすね技無いから!なぎなただから!」 「うるさい!相手の足下を痛めつける作戦よっ! バンブーブレードビーム!!」 「ぎゃあああああ!」 坂本「邪剣だ・・・」 《第二トーナメント勝者》時間切れにより曾我 惠 しんのすけ「と言うことはオラはあのオバサンと試合するの?」 曾我「そうよ,よろしくね。」 「棄権!」 一同「賢明な判断だ。」 その後,曾我は 「あんたらの中で一番強いのはこの私よ。」 と調子こきはじめたのは言うまでもない。 <アメリカ合衆国・ハワイ島> 謎の男「金正も間抜けな死に方だな。この野原一家っていうのは厄介だな。消せ。」 舎弟「わかりました。」 つづく。 <第8章> 〜そろそろやばくなってきました〜 大阪空港から飛行機で熊本に行こうとする野原一家,蓮池,曾我。 そのころ熊本では・・・? よし治「『熊本空港』が『阿蘇くまもと空港』に変わりよったとば気づかんかったたい。正直よかネーミングとは思えんたい。 第一あそこは阿蘇やのうて益城(ましき)たい。大して近うもなか! そして熊本ば平仮名で書きよるとも時代に流されすぎよる証拠たい。」 と,お堅い戯れ言を抜かしていた。 ところで一行は「チンクヮス航空」という,まるで原作に登場しそうなお下品な航空会社を利用していた。 客室乗務員「きょうもチンクヮス航空をご利用いただきましてありがとうございます。 この飛行機は熊本行きです。携帯電話のご利用は周りのお客様のご迷惑となりますのでご遠慮ください。 運行中揺れることがございますのでお立ちのお客様は──」 ひろし「立って乗ってる乗客もいるんだ。」 しんのすけ「ち○かす航空だって!」 みさえ「チンクヮスよ!!!」 曾我「なにがなにが?」←興味あり 蓮池「お下品ですねぇ。」 一同がたわいもない話をしていると前方のスクリーンに,ひじきハンバーガーのようなものが映っていた。 ひろし「お?ワクドナルドの新商品PRか?うまそうだな……ジュル」 スクリーンの音声〈失礼。これは私のお尻です。〉 「おえ゛ぇぇぇぇ!」 〈申し遅れました。私,結解 婆ヶ(けつげばあが)と申します。皆さんはこれからGESU島へ行き,研修を受けていただきます。〉 「聞いてねぇぞ!そんなこと!」 〈教えてませんからねぇ──〉 そのころ管制塔のレーダーからチンクヮス航空893便の表示が消えた・・・ よし治は熊本空港でしんのすけ達の到着を待っていながら,ワンセグでニュースを見ていた。 ワンセグ〈速報です。ち○かす──失礼いたしました。「チンクヮス航空893便との更新が途絶えた」との情報が入っております。〉 よし治「なんですと!!」 驚きのあまりよし治は口に含んでいた発泡酒を吹き出してしまった。空港まで車で来ているのに。 機内には野原一家と蓮池そして曾我しか乗っていない。なぜ他に乗客がいないのか?それは扱いが面倒だから。ご都合主義なわけ。そろそろこの小説の方針を理解してね。 曾我(GESU島?── 聞き覚えがあるわね。) <第9章> 〜複雑な縦社会〜 到着したのは中・小規模なビルが立ち並ぶ街のようなところ。ここがGESU島だという。大阪から飛んで半日飛行機の中だったので多分日本ではないが,看板などを見ると漢字かな混ざり文の日本語が・・・。 蓮池「どうやら我々はケ○毛バーガーに拉致られたようですね。」 みさえ「結解 婆ヶよ!」 しんのすけ「ケツ毛バーガーってなに?」←興味あり いきなり曾我が何かに閃いたかのように叫んだ。 曾我「思い出した!ここは私の会社の関連施設よ!!」 蓮池「なんですって!?」 結解 婆ヶ「その通り!私たちは曾我プロジェクトのグループ力を利用して世界征服をもくろんでいる。」 曾我「金正はあんたたちの特派員で,目標は曾我プロジェクト代表の私だったわけね!?」 「都合よく電車が脱線してくれて。始めは焦ったが貴様らを飛行機で拉致る手だてとなった。」 結解の説明が終わると一斉に黒服が野原一家を囲んだ。 結解 婆ヶ「一般市民のあなた方はこの場にいりませんので,消えていただきます。」 ひろし「ちょっと待て!さっきから話が通じねぇよ。俺たちが何で死ななきゃいけねぇの?意味わかんねぇし。」 みさえ「だいたい曾我プロジェクトがなんぼのもんなのよ?私たちを殺すリスクを負うまでして手に入れたいグループ力なの?」 しんのすけ「なに?オラ達殺されんの?」 「しんちゃんは黙ってなさい!」 「でもそんなの関係ねぇ。」 すると曾我は眠たげな目をして口を開いた。 曾我「実は曾我プロジェクトは陸上自衛隊女性部が前身なの。主に国家機密事項を扱った女性隊員の集まりで,様々な事情で民間で働かせてもらえない元・隊員達なの。 男性の隊員にも似たようなのがあるらしいけど,詳しいことは聞かされていない。 私たち曾我プロジェクトは表向き不動産会社となっているわ。しかし裏では自衛隊基地の建設予定地確保をしている。 てなわけで防衛省の直轄でリーダーは私。警視庁より地位は上よ。」 蓮池「ただもんじゃねぇ・・・」 「世界有数の軍事設備や兵器を取りそろえている団体だからね,核兵器もあるし(※この話はフィクションです)世界征服を夢見るには事足りるわね。 でも,いくら曾我プロジェクトの関連施設運営者と言えど所詮あなた達は一般企業にすぎないのよ。表向きは茨城県『いばらぎGESU島ランド』なんですから。」 みさえ「I☆BA☆RA☆GI☆KE☆N」 結解 婆ヶ「飛行機から発信される電波を切って太平洋上空を旋回し時間を稼いでから茨城県入りしたからね。」 蓮池「てっきりどこか遠い国にでも連れてこられたと思いましたよ。」 少しの隙も曾我は見逃さなかった。彼女は腰から拳銃をつきだし結解 婆ヶに突きつけた。 曾我「これでも私は元・陸上自衛隊よ。やくざかなんかから買ったおもちゃの拳銃じゃ野原さん達を殺せないわ。」 黒服はそう言われると引き金を引いた。銃口から出てきたのは世界中の国旗だった。 結解 婆ヶ「くそ!穴留組(あ○るぐみ)の奴ら,騙したな!」 蓮池「結解 婆ヶ,あなたを脅迫と拉致の現行犯で逮捕します!」 ひろし「── 一件落着か。」 結解 婆ヶ率いるいばらぎGESU島ランドのメンバーは茨城県警に身元を移された。 そして曾我以外のみんなは曾我に驚きの眼差しを向けていた。 みさえ「社会科に弱い私にも分かるように説明して!」 しんのすけ「五歳児とゼロ歳児が眠くならない短さで!」 曾我「まぁ掻い摘んで言えば私たち曾我プロジェクトは陸上自衛隊のOGの一部で構成する,陸上自衛隊の基地建設予定地確保のための不動産会社。 その曾我プロジェクトが用地を買収しようとしているのがいばらぎGESU島ランド。 私たちが国家レベルのグループなのが向こうに伝わってるのはどこかで情報漏洩があったのね。これ以上 この仕事を続けていくのは無理があるかしら?」 そう言うと曾我は何か寂しげに空を見上げていた・・・。 つづく。 <最終章> 〜長かった往路〜 ひろしの携帯電話が鳴る。着信の表示は「部長」とある。 ひろし「野原です。」 部長「あ!野原君か,やっとつながった。いまどこだね?」 「茨城です。」 「I☆BA☆RA☆GI 熊本に行ってたんじゃなかったのかね!?」 「話すと長くなります。」 「まぁいいや,聞いてくれ!この間 野原君がプレゼンした企画が重役会議でokになったよ。課長が入院している件もあるし,野原君,今すぐ会社に来てくれよ。」 「部長,申し訳ありません。私はいま家族旅行業務を遂行中です。」 「WAHAHA!そうかね。何だか分からんがゆっくりしていきたまえ。ただし旅行が終わったらすぐに戻ってくるように!」 そう言えば双葉商事の課長はいま痔で入院しているんだった。 曾我「これがいばらぎGESU島ランドのパンフレットよ。」 ●ラーメン 沈々軒(ち○ちんけん) ●喫茶 UNKOイズム ● 以下,自主規制。 みさえ「何の施設なのよ・・・」 その後,野原一家と曾我は羽田から熊本へ飛ぶんだが,よし治が待っていてくれるのはいいけど,赤い顔をしているんじゃねぇ。まぁ野原一家は熊本観光を楽しんだらしい。 いっぽう蓮池は警視庁に戻った。結解 婆ヶの事件の担当となったからね。 今,テレビのニュースでは「はやぶさ号殺人事件」「曾我プロジェクト」「いばらぎGESU島ランド」の事を面白がって取り上げている。それを見ながら野原一家と曾我そして蓮池は,はやぶさ号で見た朝日を,しとやかに思い出していた。 終わり。 <モノローグ> 〜思わぬ新人警官〜 結解 婆ヶの件は検察に引き継ぎをしている段階だ。季節は秋。みんな衣替えをして冬の準備をしているある日のこと── 捜査一課長「きょうは新しいメンバーをお迎えしている。」 蓮池(どうせむさ苦しい男が来るんだろう。) 「女性警察官だと聞いている。」 「なに!?女性?それは誠ですか?課長!」 「人事課の課長がそういってるんだ。」 「わくわくしてきたぞ!」 警察官「蓮池警部補は女性が好きですねぇ。」 〈ガラガラガラ〉 捜査一課の引き違い戸が開いた。その奥には,なんと── 曾我「ど〜も〜!今日から皆さんと一緒に働く曾我 惠!警部です。」 一同「おう!よろしくな。」「よろしくね曾我さん!」 蓮池は唖然としていた。なんで曾我が・・・? 蓮池「なんでアナタが警察官に?そしてなぜ“警部”?」 曾我「分かってないわねぇ。私は“スゴい”のヨ!」 「えぇぇぇぇぇ!?」 実はこの二人,はやぶさ号の事件がある前に一度会っているのだが,序章でひろしが少し話した「おもしろいコンビ」も含めて,また別のお話で。また,ハワイの謎の男が何者かもそのときに・・・ 【茶の間のしんちゃんより皆さんへ】 長い間ご覧いただきありがとうございました♪ 感想など,どしどし募集いたします! まだまだお話は続きますのでお楽しみに^^ |