トップ小説作成者・茶の間のしんちゃん2さん


   小説クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶコメンテーター」

 <プロローグ>ざれ言
 「埼玉県春日部市」ここにはご苦労なことに“毎年”幼稚園の年中組に通っている野原しんのすけ (Shinnosuke NOHARA) という男がいる。別に彼は“毎年”年中組を修了して進級するときに“単位を落としている”だとか“出席日数が足りてない”だとかいう理由で留年をしつづけているわけではない。じゃあ,なぜ平成に元号が変わって20年以上たつ今も彼が幼稚園児の肩書きで四半世紀近く「しんちゃん」と呼ばれ続けているのか――
 どれだけ考えても明確な答えが出てこない“2÷3”的,無限小数なみな脳内のやかましさを,一瞬で静かにしてしまう魔法の言葉がある。
 多分しんちゃんは「サザエさん時空」に迷い込んでしまったのだろうね。
 つづく。

 <序 章>ひとり言
 春日部市の中心である春日部駅から徒歩15分,近いのだか遠いのだかよく分かんない場所に,しんちゃんたち野原一家が住む木造モルタル2階建てスレートふきの3LDKがある。多分東南の角地だと思うその土地は,それなりの庭もあり,ほどほどの植栽。犬小屋と駐車場まである。結構な場所だしペットとマイカーまであるのだが,あふれ出んばかりの庶民感はどこからくるものなのだろうか。
 玄関を入って左にある角部屋8帖は居間として使っているので,テレビ,こたつ,サイドボードがある。しんちゃんの母に当たる野原みさえ (Misae NOHARA) はそこでワイドショーの街頭インタビューを見ていた。ショッキングピンクの将棋ジャケットを羽織った無敵のインタビュアーが
 犬蔵大蔵相が公然わいせつで逮捕されましたね。
 最低の人間です! 一省庁の大臣として信じられないし恥ずべき行為だ。
 まさかあの真面目そうな犬蔵さんがねえ……とみさえ。
 轟運輸相が4000万円もの金額をエイアール西日本から受け取っていたようです。
 たぶんそのお金で若くて綺麗なお姉さんがいるお店にいったんじゃない?
 するどい推測だね。多分そうだろうね。
 ところでおじさんはどこのお店がお勧めなの?
 私はやはり六本木の……
「お前は何をやってんだ?」
みさえはテレビの画面へお茶の間ジャックよろしく映るわが子に問いかけた。しんちゃんの妹,野原ひまわり (Himawari NOHARA) も0歳児のくせにあきれた表情を見せた。0歳の妹にあきれられたら万年5歳児のプライドもあったものじゃないな。

 17時になりしんちゃんが帰ってきた。大好きな特撮「アクション仮面」がそろそろ始まる時間かな。
「しんちゃん,あんた昼間テレビに映ってたわよ」
「かっこよく映ってた?」
「元が元だからね」
「元がかっこいいからテレビにもかっこよく映ってるか〜」
「あんたねー。どこで撮ってたの? あれ春日部の駅前よね」
「けっこうテレビ局の人が来てたゾ」
 その後,どこか頼りない大黒柱の野原ひろし (Hiroshi NOHARA) が霞が関の会社から帰ってきて,家族4人で団らんの時間だ。
 今日のメニューは,ごはん,玉ねぎと油揚げのみそ汁,たらの塩焼き,いかリングフライ,そしてサラダだ。夕飯としては十分のメニューだね。
 その後4人は,昼間の街頭インタビューにしんちゃんが出演した話題を楽しんでいた。

 それではここでもう1人の家族を紹介する。飼い犬のシロだ。ローマ字でつづるほどでもないな。彼の非凡な才能は残念ながら今回の物語で多く触れられるか分からないが,決して軽視しているわけではない。
 つづいて妹のひまわりについても,いかんせん0歳であるのでろくすっぽに口を利かない。音声付の映像ならではのアニメーション的表現ないし吹き出しつきの漫画的表現だからこそ“ひまわり”はキャラクターが生きてくるのであって――って,さすがにくどいか?
 つづく。

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