トップ小説作成者・サイボーグMr.Whiteさん


≪いくつかの正義≫
「おねがいします、おねがいします。」
ふたば幼稚園の園長が弱弱しい声で叫ぶ。
「なあ、園長先生よこの合成写真とこの偽の書類、
そしてあんたのその怖い顔を警察に送りゃあんたは立派な犯罪者になるんだ。
約束通り今月は50万だ。いいな。
こっちは事実上、おめえんとこのガキどもを人質にとってんだ。」
三ヶ月前から園長は影黒組の組長にゆすられていた。
ふたば幼稚園は今危機に陥っている。

同じ頃、しんのすけら5人はある計画を立てていた・・・

「みんな。準備はいいか。」
しんのすけが重い口調で言った。
小学三年のときに子供っぽいからやめよう。といって解散した
春日部防衛隊を皮肉な形で再結成することとなった。
「ちょっと、待って。」
マサオが震えた声で言った。
「やっぱりやめようよ。こんなことしても園長先生喜ばないよ。」
「これはみんなで決めたことだろ。」
風間が言う。
「じゃあ、せめてもう一回あの組長と話をさせて。」
そういってマサオは走り去った。

そのときちょうど組長が幼稚園から帰ろうとしていた。
涙がこぼれ落ちる園長の顔がマサオの目に焼きついた。
「組長さん。そろそろ園長先生を自由にしてくれないか。」
「ふざけた事言うんじゃねえ。こっちだって商売なんだ。」
(ふざけたことしてるのはそっちだろ・・・)
マサオが心の中で叫ぶ。組長はマサオオ突き飛ばして車に向かう。
「組長、あんたの人生、ろくなことにならないよ・・・」
マサオの言葉も聴かずに組長は去っていった。

マサオが帰ってきた。
「マサオ、迷いはないか。」
マサオは小さくうなずいた。
「園長がこのことを知ったらきっと悲しむ。あの人はそういう人だ。
やるんなら、完全犯罪だ。」
しんのすけの声を始めに5人は動き始めた。

<しんのすけ、風間、マサオ編>
しんのすけたち三人は、組長が経営している美術館の絵や彫刻を
盗もうとしていた。風間が設計したものを元に以外に器用なマサオが
セキュリティーシステムを解くための機械を作った。
しんのすけは進入経路と脱出経路を確保した。
しんのすけたちの目的は影黒組を破産に追いやることだった。
深夜、行動は開始された。
次々にしんのすけたちは美術品を盗み出す。
しかしマサオの姿が見えない。しかしかまわず続けた。
出口に向かうとしんのすけはマサオと合流した。
「マサオ、どこ行ってたんだよ?」しんのすけが聞く。
「ちょっと、トイレに。」
「それよりも早く行こう。夜が明けてくる。」風間があせったように言う。

家に着くと盗み出した品は少しずつ暖炉で燃やした。証拠が残らないように。
「マサオ、何で断りもなく勝手にいなくなるんだ。」
風間の怒った口調にマサオはただ「ごめん」といった。
「まあ、いいじゃないか、うまくいったことだし。あとはネネとボーだな。」
しんのすけが心配そうに言う。

<ネネ、ボー編>
同時刻、ネネとボーは別の場所で行動していた。
あの組長は株も営んでいたのでそれを利用した。
その内容は組長の株一個十万円を十万個一円に遠隔操作するという
どこかで聞いたような事故に見せかける犯行である。
遠隔操作といっても実際に組長の部屋に忍び込み、
組長のパソコンを使用して行った。
犯行は順調に進んだ。ネネがあらかじめ防犯カメラのスイッチを
きっておいたのでばれる心配はない。
「やった、どんどん買われてく。」ネネがうれしそうに叫ぶ。
「しっ、声が大きい。それよりそろそろ逃げる。」ボーが言った。

「きっとしんちゃん達うまく言ってるわよね。」
帰りの車の中でネネは言った。確かに、うまくいってた。

あの組長は今の状況を知らない。いや、わかるわけがない。
もう、この世にいないのだから・・・そして五人もそのことを知らない。
ある一部を除いては・・・

<刑事・真田光太郎>
しんのすけたちは一息ついていた。
みんなが眠ろうとしたとき、インターホンが鳴った。
ネネが出ると、黒い服を着た若い男が立っていた。
「失礼、警視庁の真田です。野原しんのすけさんはいらっしゃいますか。」
「俺が野原ですが、何か?」
「影黒組という暴力団を知っていますか。」
「えぇ」
「その暴力団の組長が三日前何者かに殺されました。」
しんのすけを含めた五人は当然驚き、マサオにいたっては叫びそうになった。
「そのことについて話がしたいので、今日の午後四時警察署に来てください。」
男は帰っていった。

「うそだろ・・・三日前って言ったら僕たちが盗みに行った日じゃないか。」
風間は混乱している様子を隠せない。
「何であの時そんな人は知らないって言わなかったのよ。」
「どうせすぐに調べられるさ。俺たちはあいつに何度か会ってる。」
ネネの怒った口調にしんのすけは冷静に答えた。

午後四時、しんのすけは春日部警察署に向かった。

「久しぶりですね、しんのすけくん。」
「えっ?」
「覚えてないかもしれませんが、僕、小学校のとき同じクラスだったんですよ。
まあ、入学して半年で転校しましたがね。」
「あっ、思い出した。光太郎君か。そうか、気づかなかった。」
光太郎は思わぬ要求をしてきた。
「実は、今回の事件、君に力をかして欲しい。」
しんのすけは唖然とした。

しんのすけはしばらく黙っていた。
「ずいぶん唐突だな。事情を説明してくれよ。」
しんのすけの声はところどころ裏返っていた。
「実は僕の父も刑事でね、
五年前、父が担当していたある事件が迷宮入りになりかけたとき
まだ高校生だった君の助言ひとつで事件は解決した。と言う話を聞いてね。」
しんのすけはそんなことすっかり忘れていた。
「しんのすけくん、携帯電話持ってる?持ってたら番号教えてよ。
これからいろいろ話もしたいし、相談にも乗って欲しい。」
「ごめん、携帯なくしちゃって・・・」
これは本当の事だった。しんのすけはあの犯行を行った日、
携帯電話をなくしていた。
「番号は覚えてるんだろ?だったら外の公衆電話でかけてみたら?
誰か出てくれるかもしれないよ。」
しんのすけは光太郎の言う通り公衆電話で自分の携帯に電話をしてみた。
そのとき丁度光太郎の携帯にも電話がかかってきた。
「ちょっと失礼。」といって署の中に走っていった。
光太郎の姿が見えなくなってすぐ、こちらも誰かが電話に出た。
「もしもし?」「もしもし、この電話の持ち主ですか?」
どこかで聞いた声だ・・・・・・・・・・・・・・・光太郎だ!
しんのすけはすぐに電話を切った。しんのすけの手は震えていた・・・

少したって不意に後ろを振り向くと、いつの間にかそこにはストラップをつかみ
してやったりという自分の顔の前でしんのすけの携帯を
ブラブラさせている光太郎がいた。

<仲間割れ>
その後光太郎としんのすけは何事も無かったかのように別れた。
しんのすけはすでに悟っていた。
あれは宣戦布告。光太郎はすでにしんのすけを疑っていた。

しんのすけはその日あったことをすべて風間たちに話した。
「そんな・・・まさか捕まらないわよね。」
「わからない。でも、かなりまずい・・・」
みんなうろたえている。しかし、風間は冷静だった。
「もう過ぎたことは仕方がない。それより気になることがある。
しんのすけ、おまえ携帯車に置いてきたよな。」
「え、うん・・・」
「なのに美術館に落ちていた。この際詳しいことはどうだっていい。
今いえるのは・・・この中に裏切り者がいるってことだ。」
部屋の中は物音ひとつしなくなった。
「だってそうだろ。車にあったしんのすけの携帯が落ちていた。
誰かが持ち出したってことだ。まあ、誰かは大体わかるけど。」
マサオが口を開いた。
「僕だって言うのか・・・」
「他に誰がいる。まず僕はやってない。しんのすけがやるはずもない。
ネネちゃんとボーちゃんも違う。別行動だったからな。残るはお前だけだ。
もともと君は乗り気じゃなかったからな、この作戦に。」
「風間!」
しんのすけが叫んだ。しんのすけはあきらかに怒っていた。
マサオは何も言わずに出て行った。そして風間も。
そしてその日二人は戻って来なかった・・・

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