トップ小説作成者・クレヨンえんぴつさん


プロローグ


タッタッタッタッタッタッタッタ

誰かの走る音が聞こえる。
誰かは分らないが、一見少年の様だ。
その少年は立ち止まると、しゃがみこみ両手で穴を掘り始めた。
その掘った穴の中におもむろに懐から取り出した
大きな丸い水晶のような石を取り出し、穴の中に入れた。
その後、少年がブツブツと訳の分らない呪文(らしきもの)を
唱えた後、穴に入れた石がいくつかの光る欠片に分かれた。
「後は送るだけだな・・。」
そう、つぶやいた瞬間に少年の背後から気配がした。
少年より少し大きめの大人だ。
「やっと見つけたぞ・・。」
ヤバイ!そう思った少年は最後の手段として考えたプランを実行に移した。
「移の力を!『リムルータ』!!」
そう唱えた瞬間、穴の中にあった欠片は全て激しい光を放ち、消えた。
「なんてこった!本当にやっちまいやがった!
貴様どこにやった!?」
少年は答えなかった。答える代わりに満面の笑みを返してやった。
あれは言葉の意味がすぐに分りそうもない、幼稚園児に拾わせるように
細工した。小学生とかが拾うとなると真っ先に逃げ出すだろうから。
あぁ・・どうか、この事を解決してくれる幼稚園児に拾われますように!
「本部に・・・ボスに連絡しねぇと!
あれが人間の手に落ちたら・・。
いや、大丈夫か。普通の人間だったらあんなもの逃げ出すに決まってる。生死に関わる問題だからな。」
・・どうか、普通じゃない幼稚園児に拾われますように!

そのころ、欠片は異世界に向かい飛んで行った。
運命の歯車が動き出したのか、それらは日本のとあるデパートの屋上に
ふわりと降り立った。




ドゴン!!

鉄でできた床に何かが叩きつけられたような音がする。
その方向から「痛てててて・・・。」と、声が聞こえる。あの少年の声だ。
続いて「ギーーー・・・」と音がなった後「カシャン」と鍵が掛けられたような音が高く鳴り響く。
さて、今の説明だけで状況を理解できたのは何人いるだろう?
正解はこうだ。少年は拷問に耐えた体そのままに牢屋に文字通りぶち込まれたのである。
少年はまず、怪我の確認をした。
左右両方の腕に赤いあざ、左頬は少し腫れ上がっている。
指のつめは全て先っぽから血が出ていた・・・のは先ほどまでのことで今は瘡蓋になっている。
「・・・・・・・・。」
ブツブツ言う声が聞こえる。少年の両手の手のひらから丸い光が1つずつ点る。
「・・・召喚。」
言い終わった時には2つの光は1つの光になり、何か、別の形になろうとしていた。
色んな動物の形になっては丸い光に戻る。この動作を繰り返し、最終的には光は犬のような形になっていた。
犬型の光から声が聞こえる。
「やっと呼び出してくれたね。」
「ごめん、いままで拷問されたりしてた。」
「で、どうなんだ?ウィスタルは。」
「無事に別世界に送り込んだ。でも・・・。」
「でも?」
「ごめん・・・。追っ手が意外と早く来てね。送る先の空間は最初から決まってたんだけど、
どの場所に行くかの細工が出来なかったんだ。
でも、6歳以下の子供が手にするようには細工できたよ。」
「微妙だね。拾ったやつが捨てるかもしれないし・・・。」
「運を天に任せるしかないよね。」
「どこに落ちたか念視しようか?」
「お願い。」
すると、犬型の光が床に液体のように広がり犬ではない別の形になろうとしていた。
「念視できる?」
「ちょっと待って・・・なんか見えた。映し出すよ。」
すると、液体状の光が一瞬光り輝き、光は何かの画像を映し出した。
「この場所の近くにウィスタルが落ちたみたいだよ。」
「これ・・・何の看板?」
「あっちの世界の移動用の機械が集まる所らしい。あっちでは『駅』と呼ばれてるようだよ。」
「あっちでは『漢字』って文字が使われてるらしいけど僕には読めないね。」
「僕はある程度読めるけど?」
「代わりに読んでくれない?」
「うん・・・・え〜と・・・春に・・日に・・・『かすかべ』って読むらしいね。」
「かすかべ・・・?」

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