トップ小説作成者・フォーリンラブさん


「そうなのよ。ネネがこんなに言ってるのに全然聞いてくれないのよ。」
「そうなんだ。でも、仕方ないんじゃないかな。だって・・・。」
「うん。僕も、そう、思う。」
「そうだよ、ネネちゃん。だって、相手が・・・。」
「もー!!何よ!ネネの言うことが聞けないてゆーの?!」
「でも・・・」

3人は声をそろえて言った。

「しんちゃん(しんのすけ)は、高校生以上の女の人じゃないと興味ないから。」

「もー!!!みんななんて知らないんだから。
ネネ1人でしんちゃんを落としてみせるんだからー!!」
ネネは走って行ってしまった。

「困ったなあ。ネネちゃんも、しんのすけも。どうしようか。」
「僕らで、しんちゃんの、年上の女の人好きを、直そう!」
「え!ボーちゃん、そんなことできるの?!」
「わからない。でも、やってみる価値は、ある!!」
ボーちゃんの鼻水が一瞬キラリと光った。


しんちゃんを見るとドキドキが止まらないの。
でも・・・しんちゃんが年上の女の人にしか興味ないのも知ってる。
幼稚園中を虜にした酢乙女アイでさえあしらわれているのも知ってる。
でも・・・ネネは好きになっちゃったんだと思う。

「あっ、しんちゃん・・・。」

しんちゃんは1人で死体ごっこをしてる。
いつもなら、絶対に
「しんちゃん!何やってるのよ。一緒にリアルおままごとしましょ?」
って言えるのに、もう言えない。

「おっ、ネネちゃん。一緒にどう?」
しんちゃんは眠そうにしながらネネに話しかけてきた。
でも・・・「・・・ネネ、今忙しいから!」

ネネちゃんは走ってっちゃったゾ。
どーもあの日からネネちゃんはオラを避けてる気がするゾ。
・・・まっいっか。
「しんのすけ。ちょっといいか?」
ん?この声は・・・逆行で眩しいけど、このカクカク頭は風間くんか。
「ん〜今忙しいんだよね〜また今度にしてくれる?」
「どこが忙しいんだよ、どこが!いいからちょっとこい!」
「うひ〜〜〜風間くんったら強引なんだから〜〜〜」
オラは教室に連れ込まれた。



「しんのすけはさ、いつから年上の女の人好きなんだよ。」
教室に入って、風間くんが唐突に聞いてきた。
「んん〜、わかんないゾ。」
教室にいたボーちゃん、マサオくんもつっこんできた。
「どうして、年上の、女の人、好きなの?」
「それも高校生以上限定なんて・・・、僕たちまだ幼稚園児なのに。」
「だって、綺麗なお姉さんって、大体高校生以上のお姉さんしかいないんだもん。」

・・・?
つまり?
「じゃあ、綺麗だと思うのが高校生以上ってだけってこと?」
「ん〜そうかも。じゃ、オラそろそろ鬼のいないかくれんぼやらなきゃ!じゃ!」
そういうとしんのすけはさっさと教室から出て行ってしまった。

この話はまるでしたくないかのようだった。

「風間くん、マサオくん。僕、イイ考えが、ある。」
「え、何?ボーちゃん。」
「ななこお姉さんに、協力してもらって、しんちゃんの、お姉さん好きを、
直す。ちょっと、荒療治だけど。」
「ななこお姉さん?」


僕は、ネネちゃんの恋がうまくいってほしいという気持ち以上に、
しんちゃんの、年上のお姉さん好きの、理由が、知りたかった。
だから、少し、しんちゃんにはカワイソーなことをすることになってしまうけど。
ごめんね、しんちゃん。

「ななこお姉さん。僕と、お散歩、してください。」
僕とななこお姉さんが、仲良く散歩してるところを、しんちゃんが見たら、
きっと、・・・
「きいいー!なによ!ななこのバカー!ボーちゃんのバカー!
なによなによ!あんな年齢離れてて何がイイのよー!!!!」
・・・ってなりそう。

「え?ボーちゃん、急にどうしたの?でも、イイわよ。」
「ありがとう、ございます。」
僕の作戦は、始まった。


「本当にこんな作戦でしんのすけは大人の女の人好きが治るのかなあ。」
「でも、やらないと、ネネちゃんに怒られちゃうよ〜。」
「そうだね、じゃあマサオくん。そろそろ僕たちもボーちゃんの指示どおり
動かなきゃ。」
「うん!あ、風間くん!もうきちゃった!」
「よーし!行くよ!」
僕とマサオくんは三輪車に乗って追いかけっこを始めた。
もちろんボーちゃんの指示どおり。

今日は、変なの。どうしてボーちゃんが・・・?
でも、すごいいい天気だし、こうしてお散歩できて、よかったかも。ふふ。
「ボーちゃん。誘ってくれてありがとう。」
紅葉もきれいだし。ちょっと立ち止まって見たいな。
「ボーちゃん。ちょっと止まって紅葉を見てもいいかしら?」
わー、やっぱりとってもキレイ。ボーちゃんも見てるのかな?
・・・ん?あれ?ボーちゃん?

「・・・ななこおねいさん。」
作戦を、始めなきゃ。
止まってたら、作戦は、始められない。
僕たちが、風間くんたちの前を、通ったら、作戦は開始されるから。
しんちゃんが幼稚園から帰る前に、やらなきゃ!
「行きましょう!」
僕は、少し強引にななこおねいさんの手を引っ張って、歩き続けた。

「あ、きたよ。」
いつもより意志の強い瞳をしたボーちゃんのアイコンタクトを受けて、
僕らは作戦を開始することにしたんだ。
三輪車とはいえ、うひょー!気持ちがいいな!
僕・・・いや、この俺様にできねえ作戦なんて、ねえからなあ!

ああ、またマサオくん、性格が・・・。
ちょっと運転するとすぐ性格変わっちゃうようになったよなあ。
まあ、そのほうが、扱いやすいからいいんだけど。
「よし!マサオくん、行こう!」

「おうよ!」
俺たちの作戦はこうだ。
公園で散歩を楽しむななこさんとボーちゃんを俺たちがちょっとちゃかすわけよ。
それで、そのまま幼稚園に戻ってしんちゃんにそのことを伝える。
そしたら、しんちゃんは絶対飛び出してくるだろ?
ななこさんは、俺たちにちゃかされてるからちょっとは赤くなってくれるだろ?
そこに、しんちゃんがきたら、勘違いするだろ?
ボーちゃんと2人でいるななこお姉さんが赤くなってる!ってよ。

「あ!ななこお姉さんにボーちゃん!あれ〜?なにしてるんですかあ?」
「ひゅーひゅー!おあついねえ!昼間っから!」
「え、え、そんなんじゃないわよ・・・」
「・・・。」
「ボーちゃん?」

作戦どおり、ななこお姉さんの顔は赤みを帯びてきた。
よーし、次のステップだ!
僕は幼稚園に向かうためハンドルを右に切った。
ろくに確認もしないで。

「危ない!!!」
誰かが発した声で、前を見ると、そこには自転車の車輪が見えた。
「うわあああああああ!」

「風間くん!」
「風間くん!」
「きゃああ!」

みんなが目を塞ぐ中、ボーちゃんだけが動けた。
僕の三輪車を突き飛ばしたのだった。
僕は、その勢いではじきとばされ、幸いにもかすり傷ですんだ。

「ボーちゃん!!!」
「ボーちゃん!!!大丈夫?!」
みんながボーちゃんに駆け寄っていく。
僕もよろめきながら進むと、ボーちゃんが横たわっていた。
僕の代わりに引かれたのだ。

「もしもし!救急車お願いします!」
電話ですぐに救急車を呼んだわ。だって、ボーちゃんが・・・
まさか私が引いてしまうだなんて・・・。

「野原さん・・・。」
まさか、自転車に乗っていたのが、みさえさん、ひまわりちゃん、
そして、しんちゃんだったなんて・・・。
すぐに駆けけてくれた救急車にボーちゃんが乗せられたの。
そして、1人だけ同乗できるといわれ、すぐに名乗り出たの。
だって、心配じゃない。

「私たちも病院にいくわよ!しんのすけ!乗って!」
私はいかなきゃ!絶対に!!今すぐに!
この太ももの力、見せてくれるわああああ!!!


「・・みんな、いっちゃったね・・・。
ねえ、風間くん・・・。しんちゃん、一言もしゃべってなかったよね?
やっぱり、ななこお姉さんがついていっちゃったの、ショックだったのかな?」
「・・・うん。その可能性はかなり高いと思うよ。
もう途中から目が点だったもん。・・・それより、ボーちゃん、大丈夫かな。」
「きっと大丈夫!ななこお姉さんの言葉にうなづいてたもん!大丈夫って。」
「ほんと?それなら良かったあ。
・・・今日はもう、帰ろうか。」
「うん、そうだね、じゃあ、また明日!」
「うん、ばいばーい!」


次の日、バスに乗ると、包帯をしたボーちゃんが乗っていた。
「ボーちゃん!大丈夫なの?」
「うん、もう、大丈夫。軽いケガ、だったから。」
「そうなの?よかった・・・僕をかばって・・・本当にごめんね?」
「ううん、全然、大丈夫だよ!しんちゃんの、昨日の、様子は?」
「ああ、それなら効果てき面だよ!目が点になってたもん!」
「そう。」
ボーちゃんがホッとしている。
僕の身代わりになってケガをしたことをまるで忘れてるくらいに、
ボーちゃんの興味はしんのすけに向けられているんだあ。
でも、なんで?

「ねえ、ホント、これで、少しは、ネネのこと、見てくれるかな?」
3人には感謝してるの。
ネネのために、作戦を立てて、実行してくれて。
ボーちゃんは、それが基でケガまでして・・・。
だから、ネネ、絶対しんちゃんを振り向かせるって決めたんだから!
みんなのためにも!がんばらなきゃ!

「うん、きっと大丈夫だよ。あ、今日はしんちゃん、バス乗るみたいだね。」

足が重いゾ。
昨日は全然寝れなかったからかな。
おけげでひっさしぶりぶりにバスに間に合ったけど。
寝ようとすると、ななこお姉さんのあの、ボーちゃんを心配した顔が
出てきちゃって全然、眠れなかったんだゾ。
「よっ、みんな。」
ボーちゃんだ。
ケガ、大丈夫かな・・・。
でも、ボーちゃんを見ると・・・だめだ。ななこお姉さんの顔が・・・。
ああ、昨日救急車で行っちゃったあと、2人でたくさんお話したのかな。
ボーちゃんったらあああ!ずるいゾオオオ!!

しんちゃんが、僕の顔見るなり、悶えてる。
やっぱり、昨日の作戦は、成功したんだ。
ケガして、痛かったけど、これで、知れるかもしれない。
なぜ、しんちゃんが、高校生以上の人、ばかり、綺麗だと思うのか・・・。
話してくれるかも。
そう思うと、ワクワクしてしまう。
ごめんね、しんちゃん。こんなに傷つけて。でも、僕は、知りたいんだ。
・・・そう、ただなんとなく!



「これからがネネの勝負ね。」
傷ついた男の心を癒すのが、男を落とすテクだってテレビで見たことあるわ!
まさに、今じゃない?!
しんちゃんは、あ、いたいた、鉄棒でなまけものごっこしてる。
見たところ、だいぶ落ち込んでるみたいね。
よおおし!行くのよ!ネネ!

「・・・ふうう。」
何もする気になれないゾ。
ボーちゃんを見ると、ななこお姉さんのことが頭にいっぱいになって・・・。

「しーんーちゃん?今日、変じゃない?」
「そう?」
「変よー。朝から、ため息ばかりついて。」
「オラ・・・お年頃だから・・・ふう。」
「昨日までは元気だったじゃない?なにかあったの?」
「・・・・・・。」
「・・・あたり?」
「・・・・・・ふう。」
しんちゃんの眉毛が明らかにハの字型の変わったわ。
こうやって気付いてあげて、話させてあげて、そうするといいって、
包容力のある女って思われるって雑誌に書いてあったもの。
ふふ、さあ、しんちゃん、ネネに話して?

「・・・いい。」
「え?」
「オラ、オラ、・・・眠いだけだゾ。・・・くかー」
ネネちゃんと話してたら本当に眠たくなっちゃって、
オラ、なまけものごっこしたまま眠っちゃったんだゾ。


「ちょっとひどいと思わない?!」
顔を真っ赤にして、涙目になりながらネネちゃんが教室に入ってきた。
僕たちはもちろん事情を理解できずにポカンとしていると、
ネネちゃんが今あったことをすごい早口で話してきた。
「しんちゃんったら!ネネが話してるのに寝ちゃったのよ?!」
ん・・・?
話してる途中に寝る・・・?
僕は違和感を憶えたが、ボーちゃんも同じように違和感を感じていたらしく、
首をかしげている。
そして、僕らがなんとなく感じた違和感を言葉にしようと悩んだとき、
マサオくんがサラッとそれを言葉にした。
やっぱり純粋だからかな?
アイちゃんに恋してるからかな?
理由を考えてしまうほどに、
僕とボーちゃんはその言葉を発したのがマサオくんということに心底驚いていた。

「でも、話してる途中に寝ちゃうなんて、
しんちゃん、ネネちゃんといるとき、本当にリラックスできてるんだね。
僕だったら絶対眠れないもん。」
「なによおにぎり!ネネといたら眠れないってどーゆー意味よ!」
頭に血が上っていたネネちゃんは、マサオくんが言いたいことを理解できず、
マサオくんに詰め寄っている。
「ちちちちがうよ。ぼぼぼぼぼくはただ、しんちゃんは眠っちゃうくらい
ネネちゃんに気を許してるってことが言い・・・・」
そこまで話したところで、ネネちゃんに胸ぐらを捕まれていたマサオくんは
緊張と怖さと息苦しさで泡をふいて気を失ってしまった。
僕らも下手なことは言えないね、とボーちゃんとアイコンタクトをした。
「で、で、でも、僕もマサオくんと同じ意見だなあ。
相当気を許してなきゃ、本人の前で寝ちゃうなんてしないと思うよ?」
「僕も、そう、思う。」

そうかもしれないわね・・・。
落ち着いてみたら、確かに、ネネだって友達とお話してるときに
寝ちゃったりなんかしないもの。
ママとお話してるときは、たまに安心して寝ちゃったりするけど・・・。
「じゃあ、それってネネはしんちゃんにとって、安らげる存在ってこと?」
「そうかもしれないね。」
気を失ったマサオくんをほっといて、
ネネたちはもう一度しんちゃんのところにいくことにした。
ネネのことがそういう存在に少しでもなってるなら、
しんちゃんを起こせるのはネネってことよね。
2人にも協力してもらって、誰の声でしんちゃんを起こせるか、
やってみることにしたの。

まずは、ボクから。
これで、起こしちゃったら、ボクも、マサオくんのように、なっちゃうのかな・・。
不安だけど、話しかけてみる。
「し、しんちゃん。朝だよ。」

しんちゃんは、目をつぶったまま、あくびをかいている。
「くかー。くかー。」
よ・・・よかった。

ボーちゃんはセーフ。
次はネネちゃんだ。ああーしんのすけ、頼む!起きてくれ!
これで起きなかったら、僕らまで・・・。
あ、ボーちゃんも祈るような眼差しでネネちゃんを見てる。
「しーんちゃん!起・き・て?」
すごい可愛らしい声、いかにもぶりっこっぽくネネちゃんがしんのすけに
声をかける。しんのすけ!起きてくれー!!!
僕らの願いも虚しくしんのすけは気持ち良さそうに寝ている。
や、やばい・・・。
こっちを振り向いたネネちゃんの顔は鬼のような形相に・・・ってあれ?
ちがう。涙をこらえてる。そんなにしんのすけのこと・・・。
僕らはちょっとネネちゃんのことがかわいそうになった。
しかし、その気持ちも一瞬のうちに変わった。

「風間くん。風間くんの番よ?」
やっぱり機嫌が悪いことには変わりはなかったようで、
僕がやらされることに。
・・・やれやれ、僕の声で起きるわけないじゃないか。
「おい、しんのすけ、起きろよ。」
特に2人よりも大きい声で言ったわけでもない、
しんのすけに触ったわけでもない、
なのに、こいつ・・・どうして・・・。
「ん〜〜〜〜〜〜〜!」
しんのすけは鉄棒から降りると大きなあくびをしながら伸びをしたのだ。
そして、僕にとって最悪なことを言った。
「あら!もしかして!風間くんが起こしてくれたの?
オラ、やっぱり風間くんの声じゃないと起きれないのね。
オラって一途〜。」
気持ち悪い声で・・・、身体をクネクネさせながら・・・、頬を赤らめて・・・、
さ、最悪だ。
後ろを振り返れない。すごい殺気を感じる。
それが誰のもので、誰に向けられてるか、振り返らなくてもわかる。
ポン
僕の肩を誰かが掴む。
いや、誰かなんていわなくても誰かわかる。
「風間くん・・・さっき言ったこと、適当に言ったのね?
ネネ、少しでも期待したのが、バカだったのね?」
ネネちゃんが僕を見てる。
こ、こ、怖すぎる・・・。


「ぎゃあああああああああ」



風間くんが、気を失った。
・・・ご愁傷様。
でも、しんちゃんは、どうして風間くんにも、ああゆう態度、なんだろ。
疑問だらけに、なってきちゃった。
・・・あれ?

「ボーちゃ〜ん!」
ボクを呼ぶ声の方を向くと、ななこお姉さんが、立っていた。
ボクは、慌てて、ねねこお姉さんのほうに、向かった。
「大丈夫?心配で、近くまできたから、きちゃったの。」
「大丈夫です。」
困ったような顔の、ななこお姉さんは、しんちゃんじゃないけど、
すごくキレイで、しんちゃんの言うことも少しわかるような、気がした。

また、ボーちゃんったら、ななこお姉さんとお話してるゾ。
幼稚園の柵越しに話す2人は、まるで、、まるで、、恋人みたいで・・・
オラはその光景を見ていることができなかった。
くっそーーー!!!
オラ、知らないゾ!ななこお姉さんなんて!
オラというものがありながら、ボーちゃんとばっかり仲良くして!!


しんちゃん・・・。
ななこお姉さんとボーちゃんが話してるのを、
あんな悲しそうな、悔しそうな、怒ったような顔で見てる・・・。
ネネの入り込む隙間なんてないのかな・・・。
あ。
しんちゃん、走って教室の中に行っちゃった。
そうよね。好きな人が、別の男の子と話してたら誰だって・・・。
失恋かなあ。
あの日だけだったもんね。
ネネに優しくしてくれたの。
ネネはブランコに1人乗って、想いを整理し始めていた。



教室に戻ったのはいいけど、ムシャクシャして、ああー!イライラするゾ!
ん?マサオくん?こんなとこでなに死体ごっこしてるの?
「マサオくん!起きて〜。」
マサオくんの両肩を揺さぶると、マサオくんはすぐに目を覚ましたんだゾ。
「ん?あれ?しんちゃん?ぼくは・・・?」


しんちゃんとしゃべってると、しんちゃんは、ぼくとしゃべりながらも
どこかをチラチラ見てて。ぼくはその視線の先が気になって、
ちょっと見てみたんだ。そしたら、よくわかんないけど、ボーちゃんと
ななこお姉さんがしゃべってるのが見えて。
ああ、しんちゃん、気になるんだなあ。
「・・・ぼくもわかるよ。しんちゃん。アイちゃんが他の男の子と話してると
ぼくも気になって気になってさ。でね、ぼくばっかり嫉妬してやきもちやいてると
悲しくなっちゃって。そんなときに、ネネちゃんに教わったんだあ。
押してばかりいるからだめなのよ!時には引かなきゃ!って。
雑誌に書いてあったんだって。だから、ぼく、アイちゃんのところに行くの
ガマンして他の女の子とばかり仲良くしようとしたときがあったよ。」


「押してばかりいるから・・・引く・・・。」
わかったゾ!
オラが別の女の子と仲良くしてるところを見れば、きっとななこお姉さんは・・!

「しんのすけ!ひどいわ。私というものがありながら・・・。
私が間違っていたわ。ごめんなさい!これからは二度としんのすけ以外の男の子と
話したりなんかしないわ!」
「ふっ。いいのさ。ななこ。わかってくれれば。」
ってなるはず〜。あは〜。
よ〜し!そうと決まればさっそく実行だあ!
は!あんなところにネネちゃんが1人でいるゾ!
よおおおし!

「・・・・なんだ。ってあれ?しんちゃん?」
ぼくは自分の気持ちを話し終わろうとしているとき、
しんちゃんが教室にいないのに気付いた。
外を見ると、しんちゃんがネネちゃんのところに向かっていた。
「あれ??よくわからないけどー・・・・うん。これでネネちゃんに
怒られなくてすむ。よかったあ。」

ブランコに乗って下を向いて、溜息をひとつついたとき、
誰かの影がネネを覆ったの。
誰?
それがしんちゃんだったらどんなにいいか、
そう期待することもできないくらいネネの気持ちは落ち込んでいたの。
どうせ違うに決まってる。
だから、聞こえた声にネネは、思わず顔を上げたわ。

「お嬢さん。どうしましましま(←どうしましたかと言いたい)。
オラが、ついてるゾ。」


「・・・・・・しんちゃん。」


そこに、しんちゃんがいるなんて。
言葉にできない気持ちで胸がいっぱいになって・・・、
気がつけば、一粒の涙がこぼれてた。
顔がくしゃくしゃになるくらい泣きたかった。

でも、それを我慢して、
涙で潤んだ目で、一生懸命しんちゃんを見て、
自然に笑顔になったの。
そして、こう言ったわ。自然と、心からでてきた言葉だったの。

「ありがとう。」


その顔はいつものネネちゃんじゃなかった。
いや、オラはそう思ってしまっただけなのかも。
素直に言うのは照れくさいけれど。

とても、とても、可愛いく見えた。
・・・思わず、眺めてしまうほど。


しんちゃんがネネを見てる。
どうしたのかしら。
ネネの顔、あ、もしかして、泣きそうだったから、腫れてて変とか・・・?
だから、なにも言わず見てるの?
そう思ったら、急に恥ずかしくなってきちゃった。
ど、ど、どうしよう。
えーーーっと・・・。こういうときは、どうしたらいいんだっけ。
頭が真っ白!
どうしよう!
こうやってずっと見つめ合ってるのは・・でも、そんなに悪くないかも・・・
ってだめだめ、どうしよう!

ネネちゃんの顔が赤くなったり、にやけたり、・・・変なの。
オラの見間違いかも。
うん、きっとそうだゾ。
オラが高校生以上のお姉さん以外にときめくはずがないんだゾ。
はっ!そうだゾ、ななこお姉さんに見せつけてやらなきゃ!
「ネネちゃん!オラと一緒に、滑り台で遊ぼう?」
「はっ!う、うん。ネネも遊びたいと思ってたところ。」
オラたちは、2人で滑り台で遊ぶことにしたんだゾ。
もちろん、ななこの様子を伺いながら。
オラに妬きもち焼き芋妬いちゃって〜。ぬあ〜んって。

しんちゃん、ネネちゃんと遊ぶのに、夢中になってる。
今なら、ななこお姉さんに、協力を頼めるかも。
「ななこ、お姉さん。ボクたちに、協力、してもらえませんか?」
「え?協力って?どうしたの?」
「実は、ボクたち、しんちゃんが、どうして高校生以上の、女の人好きなのか、
知りたいんです。でも、教えてくれなくて。
ななこお姉さんが、聞いてくれたら、しんちゃんも素直に答えてくれるかも。」
「そうなの。確かに気になるかも・・・。面白そうだし、うん。協力するわ。
じゃあ、さっそくしんちゃんに聞いてみるわね。
しーんちゃ・・・。あ、でも今すごいネネちゃんと楽しそうに遊んでるわ。
なんだか、私といるときより楽しそうよ。ふふ。
本当は、高校生以上の女の人だなんて、嘘なのかもしれないわね。
じゃあ、また、機会があったら聞いてみるわ。行かなきゃいけないの。
ボーちゃん、お大事にね。」
「さよおなら。」

振り返ると、確かに、しんちゃんはとても、楽しそうにネネちゃんと遊んでる。
でも、誰と遊んでも、こういう感じかもしれない。
・・・そうだ。風間くんと、遊ばせて観察、してみよう。
ボクは、もうしんちゃんを観察、するのが、楽しくて、楽しくて仕方なかった。
「ボ。ボ。風間くん。起きて。」
ネネちゃんの関節技を、くらって気絶していた風間くん。
両肩を揺らすと、なんとか、目を覚ました。
「ううん。ボーちゃん。どうしたの?あれ?僕は・・・?」
「風間くん。ネネちゃんを呼んできてくれる?話、あるの。
しんちゃんには、聞かれたくない話、だから、
風間くん、しんちゃんと遊んでて、くれない?」
「あ?うん、いいよ。」
まだ起きたての風間くんは、頭が回らないせいか、すぐに引き受けてくれた。

頭痛いなあ。僕、なんで気を失ってたんだっけ。
まあ、いいや。
「ネネちゃん。ボーちゃんが話があるって。」
「え?うん。なにかしら。」
しんのすけと遊んでてご機嫌だったネネちゃんはすぐにボーちゃんの元に向かった。
そして、僕はしんのすけと遊ぶことに。


ボクは、ななこお姉さんが、協力してくれる、話をネネちゃんにした。
その間、風間くんと遊ぶ、しんちゃんの表情をチラチラうかがいながら。
ネネちゃんと、遊ぶとき、しんちゃんは、確かに、とても楽しそうだった。
じゃあ、声だけで起きてしまうくらい、仲良しな、風間くんと遊んでるときと、
どう違うのか。
ボクは、注意深く2人の様子を、観察した。
ボクは、はっきりと感じた。
そう、明らかに、いつもと違った。
それは、しんちゃんではなくて・・・、

「か、風間くん・・・。」
風間くん、すごく、すごく、楽しそう。

しんちゃんのくねくねとか、気持ち悪いって言いながらも、嫌じゃないって感じだ。

そんな、まさか。血の気が引いた。ボクは、違うと、自分に言い聞かせた。

気を取り直して、しんちゃんを見ると、しんちゃんも、やっぱり楽しそう。
風間くんとしんちゃんの組み合わせじゃ、参考にならなかった。
ボクは、この作戦が、失敗したことを感じた。
そのときだった。
「あ、そろそろ塾の復習やらなきゃ。」
「え〜〜〜?せっかくいいところだったのにい。
風間くんったら、わたしより、仕事の方が大事だっていうのおおお?」
「そうだよ!仕事の方が、お前なんかより、よーーーっぽど大事さ。」
「いやああん。風間くんったら、い・け・ず。」
「やめろおおお!僕に触るなあああ!」
「いかないでええ〜〜〜〜〜。」
「離せよ!」
風間くんは、風間くんの腰に捕まったまま引きずられるしんちゃんを、
無理やり、はがすと、そのまま、教室に戻っていってしまった。
ボクは、ちょっと、安心した。風間くんが、勉強をとったことに。
そして、離されたしんちゃんも、そのまま、その場で、うずくまると、
「ダンゴムシ。コロコロコロコロ・・・。」
と遊び始めたから。

それを、ボクと一緒に見てた、ネネちゃんも、同じ気持ちだったらしい。

「もしかして、ネネのライバルって、ななこお姉さんじゃなくて、
風間くん?って思うところだった。良かったあ〜。」
ネネ、でも、今日、あの日以来初めて、優しくしてもらっちゃった。
でも、あの日のしんちゃんはかっこよかったなあ。はあ。

隣でネネちゃんも、妄想に浸っちゃってるし、今日は、もう、この作戦は止めよう。
明日、しんちゃんと、マサオくんで遊んでもらおう。




次の日・・・


ネネちゃんと、風間くん、にはこの作戦のこと、話したら、
すぐ、協力してくれると言って、くれた。
そこで、リアルおままごとを、3人でやることにして、
2人の、様子を、伺うことに。

「マサオくん。オラたち、リアルおままごとに誘われなくてラッキーだったね。」
「うん!本当にね!ぼく、いっつも最初に誘われるから、
今日もすごいびくびくしてたんだ。じゃあしんちゃん、2人だけど遊ぼうか!」

「作戦どおりね。じゃあ、ちょっとリアルおままごとするふりして、
2人の様子見ましょう!」
「う、うん。(昨日、僕としんのすけが2人で遊んだときに表情見れたはずだよなあ。どうして、またマサオくんと?)」
言えるわけないでしょう・・・、2人の表情があまりにも楽しそうで
キモチ悪かっただったなんて。
ネネは目をこらして見ていたけれど、
ネネといたときの方がしんちゃん楽しそうにしか見えない!
・・・でもこれは、あんまり主観的すぎるからなあ。
ネネが遊んでたとき風間くんは気を失ってたし。
ボーちゃんに客観的な意見を聞くのが得策ってやつね!
「ボーちゃん。どう?」
「ぼああ。うーん。うん。たぶん、ちょっと、マサオくんには、かわいそうだけど、ネネちゃんといるときの方が楽しそう。というか、表情がちがった、と思う。」
「ホントッ?!」
その言葉が嬉しくって、ネネは作戦のことなんて忘れてしんちゃんのところに
向かったの。だって、嬉しいじゃない?

「・・・ボーちゃん。今の本当にそう思ったの?」
思わず僕は聞いてしまった。
だって、友達と遊ぶのにいちいち表情なんか変わるなんて、
おかしいじゃない!
「うん。なんていうのか、わからないけど・・・。なんか、ちがうと、思う。」
そう言ったボーちゃんも、なにがちがうのかわからないって感じだ。
雰囲気的なものかな。
「そう。じゃあ、僕も少し見てみるかなあ。」
「うん。ちょっとちがうように、見える、と思う。」
こうして僕たちは少し見ることにした。


やっぱり僕には違いなんてわからないや。
とゆーかボーちゃん気にしすぎだよ。
「僕には、違いがあんまりわからないなあ。
もういいんじゃない?みんなで一緒に遊ぼうよ。」

「うん。そう、だね。」
ボクも、最近少し、気にしすぎていたかも。
ボクらは久しぶりにみんなで、フツーに、遊んだ。
その日のしんちゃんも、とても楽しそうだった。
そんなしんちゃんは、とても、ボクらを、楽しくさせてくれる。
おバカで、てのやけるしんちゃんは、とても魅力的だ。
あの日のしんちゃんは、特に。

ボクは、見てしまっていたんだ。
ネネちゃんが、しんちゃんを好きになってしまったあの日のことを。


あの日、ネネちゃんは公園で、1人でいた。
ボクは、声をかけようと思ったけど、キレイな石がたくさん落ちていて、
そっちに夢中になっていた。
ちょうど、そこは、草木の茂みがあって、ネネちゃんのいた位置から、
ボクを見ることは、できなかったと、思う。

夢中になっていたから、いつ、しんちゃんがきたのか、わからない。
でも、あの人がネネちゃんのところに現れたとき、しんちゃんは公園にいた。
「なにすんのよ!」
ネネちゃんの声で、ボクは、顔を上げた。
「・・・・・」
「ネネ、知らないわ!そんなのもってないわよ。」
一方的にネネちゃんが怒鳴っていて、もう1人の声は聞こえない。
「知らないっていってるじゃない!」
「・・・・・」
ボクは、ネネちゃんの声のあまりの迫力に、動けなくなっていた。
「いやよ!」
「知っているんだ!キミがもっているのを!」
もう1人の声が急に大きくなって、聞こえたんだ。
「それは僕のなんだ!返してくれないか?!」
「知らないってば!」

「わっはっはっはっは!アクショーンビーム!」
突然、高らかな声がして、滑り台の上を見たら、しんちゃんがいた。



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