・・・・もういいんだしんのすけ・・・お前は・・先に・・行け・・・ ・・なに言ってるんだゾ!!オラたちは大親友なんだゾ!!オラ 最後までちゃんとお助けするんだゾ!! ・・・・しんのすけ・・ありがとう・・・・・ 照れなくてもいいのにぃ〜あは〜 ・・・さ・・よう・な・・ら・・・ ・・え??・・・・か・・・ ・・・・・ま・・・・ ・・・・・・・ ・・・・ 「しんのすけ!!起きなさい!!もうこんな時間なのよ!また幼稚園バスに 遅刻しちゃうじゃないの!!早くお着替えしてご飯食べなさい!!」 「ぅーん・・・ほっほ〜い・・・」 あれ?妙にダルいゾ。 なんだか今日の夢はとってもリアルでとってもイヤな感じだったんだゾ。 ん??あれ??内容が・・・思い出せないゾ・・。 まあ、夢なんてそんなものさっ。 「しんちゃんご飯よっ」 「ほ〜い」 オラはこのとき夢と一緒に大切なものまで忘れていたことを知らなかった。 プップ 「幼稚園バスがきたわよ!しんのすけ!行くわよ!」 「ほい!準備〜オケ〜」 「あら・・珍しいわね・・・」 ガチャ 「おはようございます、よしなが先生」 「あら、しんちゃん、今日はちゃーんとお時間に間に合ったのね」 「当然だゾ!じゃ、行くゾみどり!」 「こらっしんのすけ!みどりじゃなくてよしなが先生でしょっ!」 「いいんですよ、野原さん。・・・いつものことですから・・」 「あはははーそうですか;;お騒がせしてすみませーん。じゃあね、 しんちゃん。いってらっしゃい」 「ばいばーい」 オラはいつもどおり?幼稚園バスに乗り込んだ そしていつもの面々にあいさつした 「よっみんな」 「しんちゃんおはよー」 座った瞬間に話しかけてきたのは、ママの料理の味付けのよ〜にしつこく おしゃべりしてくる桜田ネネちゃん 「今日風間くんおやすみらしいわよー、まったくぅ、せっかく考えた リアルおままごとの設定がむちゃくちゃよ・・・今日のは風間くんがいないと できない設定なのにぃ」 「ほんと?!よ、よかったぁ」 「なによ、おにぎり!!」 マサオくんはもう泣きそうになってるゾ 「ひ、ひぃ!ち、ちがうよ、ネネちゃん・・僕は、そのぉ、か、風間くんが 大丈夫かなって心配になっただけだよ」 「それもそーね、風間くん、金曜までは元気だったし、今日のお遊戯会のこと とっても楽しみにしてたし、それを休むなんて・・・これはなにかあるわね。 女の血が騒ぐわぁ。・・・しんちゃん!!風間くんからなにか聞いてない??」 「ほ、ほい!オラ、聞きたいことがあるんだけど、みんなが今話してる 風間くんって誰のこと?もしかして・・・オラに内緒でみんなでお友達 ひっかけてたなんてずるいゾ〜〜〜!!!」 「え?!」 みんなとってもびっくりしてたんだゾ。 今まで黙ってたボーちゃんがやっと切り出したゾ。 「しんちゃん、風間くんを、覚えてないの?」 「うん、オラ風間くんなんて子知らないゾ。」 「かすかべ防衛隊の、メンバーの、名前を、言ってみて!」 「え〜、めんどくさいゾ。オラにボーちゃんにマサオくん、ネネちゃんの4人! どう?合ってるでしょ?」 「しんちゃん。しんちゃんがいつも、耳をハミハミしてたのは、誰?」 「ハミハミ?」 その時だった。 「しんのすけー!!僕の耳をハミハミするなぁー!!」 ハッとした。 オラにだけ聞こえた声。 なんだかとても身近なのにとても懐かしい。 オラは、この声を知っている。 でも・・・ 誰??? ダメだゾ・・思い出せない。 「ボー??」 ボーちゃんが心配そうにオラの顔をのぞきこむ。 「オラ、覚えてない。でも知ってるかも・・・。」 「ってことは、しんちゃんは記憶喪失ってjことね。このネタ 次のリアルおままごとに使えるわ。」 ネネちゃんはメモを取り始めた。それを止めさせたいのか マサオくんが口を挟んだ。 「で、でもおかしいよ!なんでしんちゃんは風間くんのことだけ 忘れちゃったんだろう?」 「んー・・・それもそうね。今日はしんちゃんの記憶喪失の秘密について 探りましょ!かすかべ防衛隊!ファイヤー!」 「ファイヤー!!」 でもオラは正直全然気分が乗らなかったんだゾ。 でも言うことを聞かないとネネちゃんは怖いって知ってるから。 でも本当ならもう別の遊びがしたいゾ。 「しんちゃん!」 「ほい!」 「これでどう?!」 ネネちゃんの手にはモエPのストラップが握られていた。 「これでもなんにも思い出さない?」 「モエモエピピピ!モエピピピ!だゾ!」 「そーじゃないわよ!モエPは風間くんが大好きだったじゃない。」 「だから、オラそんな人知らないってば〜ふ〜やれやれ。ネネちゃんも ママの料理のお味に似てしつこ〜いんだから。」 「きーーーー!!!なによ!!せっかくネネは親切に風間くんのこと 思い出させてあげようとしてるのにい!いいわよ、もうネネ知らない!ふん!」 「あ、ネネちゃん!!・・・しんちゃん、ネネちゃん行っちゃったよ。 待ってよー!ネネちゃーん!」 「オラ知らないゾ。知〜らないも〜んだ!!」 「しんちゃん。いつから思い出せないんだろう。なにか、不思議なことに、 あったりした??」 「んー・・・そういえばオラ、今日夢を見たゾ。すっごいリアルで 起きたとき体がだるかったゾ。」 「どんな、内容?」 「それが思いだせないんだゾ。」 「実は、僕も、今日、不思議な夢を見た。しんちゃんの夢かは、 同じかわからないけど、もしかしたら、なにかつながってるかもしれない。」 「ボーちゃんやるう!聞かして聞かしてー!」 「僕の見た夢は・・・卒園式の夢。みんな泣いてた。僕は泣いてなかったけど。それで、その中でも、風間くんはすごく悲しんでた。たぶん、私立の小学校に 行っちゃうから、みんなに会えなくなるからだと思う。そしたら、変な黒いやつが現れた。なにかを言ってたけど、・・・僕も、思い出せない。そしたら、 風間くん、そいつの言ったことにすごい耳を傾けてた。風間くんは・・・」 「はーーーーい!!ひまわり組のみんなは1回教室に戻ってねー!」 よしなが先生が呼んでいるゾ。 「行こう、しんちゃん。」 オラはそんな話すぐに忘れて教室に戻った。 「今日はひまわり組のみんなにお知らせが2つあります。 1つ目は悲しいお知らせで、もう1つは嬉しいお知らせです。 まず、嬉しいお知らせからにします。今日、みんなに新しいお友達を 紹介します。はーい、入ってきてね。」 ツカツカ オラはボーぜんとした。オラだけじゃない。みんな。 そのこは、5歳とは思えないカワイイ姿をしていた。 まるでお人形さんみたいだゾ。18歳未満に興味のないオラも 将来が楽しみですなあと言いたくなるくらい。 「風祭薫です。」 オラの隣にいたボーちゃんがつぶやいた。 「風間くんそっくり。」 同じことを離れたところにいたネネちゃんもつぶやいていたらしい。 「マサオくん。あの子風間くんにそっくりじゃない?」 「そうかなあ。でも、言われてみると・・・うん。ネネちゃんに女装させられた ときの風間くんみたい。」 あの藍色の髪に二重で大きくて真っ黒な目。おまけに声や名前まで かぶってるわ。おかしいわ。ネネはあの子を知ってる・・・。 その時だった。 「ネネちゃん。僕、あの子を知ってる気がするんだ。」 マサオくんまで同じことを考えてたなんて。 「ネネも・・・あの子見たことある気がするのよ。しんちゃんたちは どーかしら!!聞いてみましょ!」 ネネたちは教室のはじっこにいた2人の元に駆け寄った。 「ネネたち、あの子を知ってる気がするの。2人はどう?」 「オラ知らないゾ。」 「僕も、わからない。」 ネネはがっかりした。4人とも知ってたらなにか素敵なことが 起きそうな気がしたのに。 「こら!そこの4人。まだ先生のお話は終わってないわよ。 次に、悲しいお知らせです。実は、風間くんが行方不明になりました。」 「ええっ??!」 ネネたち3人はびっくりした。 「まだよくわからないんだけど、みんなも風間くんを見かけたら すぐに先生やママたちに知らせてね。」 「はーい!!」 みんなが返事をして解散した。 「ネネ、あの風祭薫って子、怪しいと思うんだけど。」 「なにが?」 「どう考えてもおかしいじゃない。風間くんと見た目も声も名前もかぶってるし 風間くんが行方不明になった日に転校してくるなんて。」 「ほほう。においますな。」 「僕は、1回、風間くんのお母さんに、話を聞きに行くのが、イイと思う。」 「久しぶりのボーちゃん探偵局の出番ね!」 「ボー。」 「じゃ、幼稚園が終わったら風間くんの家に行きましょう。」 「うん。それまでかくれんぼしない??」 「じゃ、マサオくんがオニね!」 「そんなー!!」 オラはいつもとはちょっと隠れ場所を変えて 木の茂みの中に隠れた。 でもすぐにチョンチョンとマサオくんがオラの背中をつつく。 「あーもう見つかっちゃったゾ。マサオくん腕を上げたなぁ。」 と、振り返ると、そこには風祭薫の姿があった。 「アンタ、誰?」 「今日転校してきた風祭薫よ。あなたがしんのすけ??」 「いかにもたこにも。オラ、野原しんのすけ5歳。」 「静かに。かくれんぼしてるんでしょう?」 「おお、忘れてたゾ。で、なんの用?」 「あなたに大切なものを渡しておくわ。絶対になくしたり 誰かに渡したりしないでね?理由は、話すときがきたら、話すわ。」 「なに?これ。」 「それはマジカルストーンよ。詳しくは今は話せないわ。」 「飴みたい。食べてイイ??」 「絶対にダメ!!!飴に似せてカモフラージュしてるの。」 「静かに。もー見つかっちゃうじゃない。」 「くっ・・・」 「薫ちゃんもかくれんぼやる???」 「アリガトウ。でも私はいいわ。それじゃ。」 薫ちゃんは行ってしまった。 すると、マサオくん、ネネちゃん、ボーちゃんがやってきた。 「ちょっとしんちゃん。怪しいって言ってた子となにしゃべってたのよ!」 「ん、2人だけの、ひ、み、つ。」 「もういいわよ!もう幼稚園も終わるから、お家に帰ったら 風間くん家に集合よ。」 「ほーい。」 プップ 「おっかえり〜」 「しんのすけ!風間くんいなくなっちゃったんだって?! どうしちゃったのかしらね〜風間くん。」 「うん、オラそんな子知らないけど。」 「知らないわけないでしょ!!これ、風間くん家持ってって。 少しですが、気持ちですって言ってちゃんと渡すのよ?」 オラは果物がたくさん入ったカゴを渡された。 「ほーい。」 バタン 玄関を出たオラに疑問が湧いた。 「風間くんって子のおうち、どこだっけ??」 みさえに聞いても教えてくれなさそうだし・・・ とりあえず歩こ〜歩こ〜 しばらくしたけど誰にも会わないゾ。 オラもう疲れちゃったゾ。 なんか持ってなかったかなぁ? ポケットをゴゾゴゾと探すと 「おっ」 薫ちゃんにもらった飴があったゾ。 「いただきまぁ〜す。」 ペロペロ 「まずい・・・出しちゃお」 「あ!しんちゃん!!」 「!(ゴクリ)飲んじゃったゾ・・・うげえ・・」 「しんちゃん、着替えなかったんだね。一緒行こう??」 「ほい。マサオくんお迎えにきてくれたなんて、オラ感激。」 「た、たまたまだよお。」 こうしてオラたちは風間くんの家に向かった。 これがのちに大変なことになるなんて、この時はまだ知らなかった。 「着いたよ。しんちゃん。このマンション見てもなんにも思い出さない??」 マサオくんは困った顔をしてオラを見ている。 「うー・・・ん、マ、マングローブマンション??」 「しんちゃん。マングースマンションだよ。」 「そうとも言う〜。」 「ところで、まだあとの2人は着てないみたいだね。」 「いや、どこかに隠れてオラたちのことを見張っているのかもしれないゾ!」 「しんちゃん、考えすぎだよ〜。」 「さあ、隠れてもムダだゾ!!出て来い!」 その時だった。 「くっ・・・さすが、やるわね、しんのすけ。」 「ひいいいいい!」 「なあんだ、薫ちゃんかぁ。」 「なんだとはなによ。私も風間くんのママの話を聞きたくって。 一緒に言ってもいいかしら。」 薫ちゃんのウインクにマサオくんはアイちゃんのことも忘れ デロデロになって言った。 「うん。もちろんだよ。」 「ありがと。」 「ううん。そんなあ〜。」 「マサオくん、鼻の下伸びてるゾ。」 そこにちょうどネネちゃんとボーちゃんがやってきた。 「あ、あんたは!!」 「覚えてくれたの?私も一緒に行っていいかしら?」 「もちろんだよ!」 「ボーッ。」 「いいゾ。」 「・・・これだから男ってのはぁぁ!!!」 ネネちゃんは早くもウサギを懐から取り出し ボクッ 殴り始めた。 しばらくして気が済んだのか 「もういいわ。行きましょ。」 ピンポーン 「はい、風間です。」 「こんにちは。あ、あの、風間くんのことでお話を聞きたくてきたんですけど」 「ああ、マサオくんね。アリガト。じゃあ、いらっしゃい。」 「ありがとうございます。」 オラたちはエレベーターで8階に向かった。 「本当に風間くんいなくなっちゃったのかなぁ。」 「ねえ、なんか実感ないわぁ。」 そうして風間くんの家に入ることができた。 「あ、あの、おばさんが最後に見た風間くんの様子を教えてください。」 「いいわよ。夜中に、寝ようと思ったらトオルちゃんの部屋から うなり声が聞こえてきたのよ。だから、大丈夫か心配になって 様子を見に行ったのよ。そしたら、悪い夢でも見てたのかずいぶん汗をかいて うなされていたわ。それで、何度も起こそうとしたのよ。でもトオルちゃん 起きなくって。仕方ないからお水だけ枕元において、寝たのよ。」 「ボーちゃん、どう?なにかわかった??」 「ボー。夢・・・。おばさん!風間くん、なにか寝言とか、言ってなかった??」 「そうねえ。少しだけしゃべってたかしら。確か・・・マッシュルームだとか 卒園だとか誰だ、とか。1番多く言ってたのは、僕が僕じゃなくなる?とか なんとか。よくわからなかったわ。それじゃ、またなにか聞きたいことが あったら聞いてね。本当に今日はありがとうね。」 風間ママが部屋から出て行った。 「?・・・マッシュルーム。ネネ、知ってるわ。・・・なにかしら。あ!!」 「僕知ってる・・・僕が僕じゃなくなる・・・そう。風間くんが言った言葉。 なんだろう。あ!!」 ネネちゃんとマサオくんは2人は同時に叫んだ。 「今日の夢!!」 「そうよ、ネネの夢に出てきたのは黒い男。マッシュルームって名前だったわ。 夢の中でその男が風間くんを連れて行ったの。そして・・・」 「僕の夢は、風間くんが風間くんじゃなくなっちゃったんだ。風間くんは 黒い男の放った光に包まれたら・・・」 「風祭薫とエノキダケに分解された!!」 またまたネネちゃんとマサオくんは2人同時に叫んだ。 さらにボーちゃんが切り出した。 「・・・僕の夢では、卒園式で風間くんは黒い男になにか話して風間くんは それに聞き入ってた。そして、そいつと一緒に、消えた。僕の夢、ネネちゃんの 夢、マサオくんの夢って、順番だと思う。」 「じゃあ、私たちの夢はぜんぶつながってるってこと??」 「たぶん。」 「みんななんの話してるのかオラサッパリだゾ〜。」 「しんちゃん!!今日の夢、なに見た??!」 「おおっ。も〜オラ思い出せないし、思い出せないならそれでいい、 あきらめの良い男だから。」 「はあ〜しんちゃんは思い出せないみたいね。」 その時だった。 パチパチ 拍手の音がした。 「ご名答。まさかこんなに早く分かってくれるとは思わなかったわ。」 「風祭薫!!どういうことよ。説明しなさいよ!」 「いいわ。全員そろったから、ちょうど話そうと思ってたのよ。」 みんなゴクリとつばを飲んだ。もちろんオラ以外。 「私はさっきみんなが言っていたように風間トオルの半身。パズルの 1ピースってところね。そして、もう片方のピースがエノキダケ。 やつが問題よ。分解されたときに私は風間トオルの善意を、 エノキダケは風間トオルの悪意や弱い部分をもらったのよ。エノキダケは 風間トオルに戻る気なんてないわ。分解したのはマッシュルームよ。 彼はタイムポリスっていういわゆる警察に指名手配されているわ。 でも、風間トオルを分解した目的とかはわからないわ。」 ネネちゃんがつっこむ。 「ちょ、ちょっと待って?話がよくつかめないんだけど・・・」 「ちょっと難しいわね。いいわ。順を追って説明するわ。 まず、私やマッシュルームは未来人なの。未来からタイムマシンをつかって やってきたのよ。私たちの時代では君たちはもう大人よ。そこでマッシュルームと大人になった風間くんは出会った。そして、マッシュルームは昔の彼を利用 しようと考えたのよ。詳しいことはまだ不明なんだけど、そうとしか考えられないわ。そして、マッシュルームは卒園式のときの風間くんに会いにタイムマシンで 行ったの。過去を変えるために。そして、風間くんを言葉で誘惑し、 私とエノキダケに分解した。こんなとこね。」 またまたネネちゃんがつっこむ。 「で、でも、どうしてしんちゃんの記憶がなくなったり、私たちがこんな 夢を見たり、今日風間くんが行方不明になっちゃったの?」 「それは、きっとマッシュルームが風間くんを利用する上で、しんのすけの 記憶が邪魔だったから、消したのよ。そして、君たちに同じ夢を見させたのは 私。君たちに協力してほしいの。だから、より状況をわかってもらおうと思って 未来の力で連続した夢を見てもらったの。最後の質問が1番大事なところよ。 マッシュルームは今日から卒園式までの過去を変えたいのよ。だから、 そのためには今日から先の風間くんがいてしまっては2人風間くんが存在することになってすべてがおかしくなってしまう。だから、彼は今日の風間くんをさらったのよ。私やタイムポリスも阻止しようとしたのだけれどあと1歩のところで、 先を越されてしまったの。このままだと、すべての時空に影響を与えてしまわ。」 この長い話をボーちゃんだけがすべてを理解できたらしい。 「じゃあ、マッシュルームの企み、阻止しないと、風間くんも、僕らも、 この世界も、未来もぜんぶおかしくなっちゃうって、こと??」 「そう。そういうこと。」 「なら、話は簡単よ!マッシュルームさえやっつけちゃえばいいんでしょう?」 「えええ、僕、怖いよ。」 「あんた、このままどんどん世界がおかしくなっちゃってもいいわけ?? 酢乙女アイもおかしくなっちゃうかもしれないのよ?」 「ア、アイちゃん・・・。ぼ、僕やるよ!アイちゃんは僕が命に代えても 守るんだ!!!」 「僕も、協力する。」 「オラ、ななこお姉さんがおかしくなっちゃたらいやだし、やるゾ!」 「ありがとう、みんな。それじゃ、作戦を言うからよく聞いてね?」 こうして、世界の平和を守るべくかすかべ防衛隊が出動するのであった。 しかし、風祭薫は、ひとつ大事なことを言うのを忘れていた。 「まず、マッシュルームはさっきも言ったけど未来人よ。だから、未来の力を 使ってくるのは間違いないわ。それに対抗できるのは、やっぱり未来の力。 だから、私と一緒に未来の世界に来てほしいの。そこでまず、どの未来の力が 1番自分にあっているか未来の力を選ぶのよ。」 「未来に行けるの??!」 みんなが声をそろえて叫んだ。 「ステキィ〜、未来にいけるなんて・・・夢みた〜い。」 「ちょ、ちょっと待って!あなたたちの思う未来と現実の未来は 全然ちがうわ。もう、未来はマッシュルームの傘下にあるの・・・。 だから、過去に戻ってきたのよ。未来をマッシュルームの手から 取り戻すために。そして、今日から卒園式までの間で起こそうとしている マッシュルームの新たな陰謀を防ぐために。」 「なんだか燃えてきたわ。早く行きましょうよ!!薫!!」 「ネネちゃん、待って。これから大事なことを言わなきゃいけないの。 未来はマッシュルームの傘下にあるってことは、私たち、見つかったら 間違いなく捕まってしまうわ。だから、それなりの覚悟が必要なの。 それからマッシュルームの組織なんだけど、マッシュルームがトップ。 次に、風間くんのもう片方のピースのエノキダケがナンバー2ってとこね。 ナンバー3がしいたけ。他の下っ端がぜんぶまつたけよ。」 「まつたけ??!薫ちゃん!下っ端どもはオラに任せて!!」 「しんのすけ・・・まつたけは食べれないよ。」 「なあんだ、オラがっくりだゾ。」 「はあ〜。」 みんながため息をつく。 その時だった。 「くくく、楽しそうな会議だな。俺っちも混ぜてはくれねえかい??」 「だ、誰??!」 黒い渦が突如部屋に現れて、そこからしいたけが現れた。 本当にしいたけだゾ。 「みんな!こいつがナンバー3のしいたけよ。気をつけて!!」 「うわああ」 みんな風祭薫の影に隠れた。 「はっはっは。薫っちもこっちにきちゃえばそうとうな位をもらえたのに・・・ 俺っちは残念でならねえよ。そいつらまとめて地獄に送ってやらぁ!!」 「やれるもんならやってみなさい!!」 ボンッ 「薫ちゃん??!」 薫ちゃんの体が大きくなった。大人だ。 「あ。私、未来ではもう大人だから幼稚園に入るために薬を使って 小さくなってたのよ。切れちゃったみたいね。でも、この方がやっぱり 動きやすいわ。」 「か、薫ちゃん!!オラ、薫ちゃんにメロメロだゾ。」 大人に戻った薫ちゃんはななこお姉さんと同じくらいかわいかった。 「ちっ!戻っちまったかい。でも、俺っちの自慢のしいたけ術を 破れるかな!!!くらえ!」 しいたけがそういうと、しいたけが渦になってまるで竜巻のように オラたちに襲い掛かってきた。 「ボーちゃん!」 「ボー!!」 薫ちゃんがボーちゃんを抱っこした。 ボーちゃんは鼻水をのばして竜巻に巻いてゆく。 「ボー!!しいたけ返し!!」 勢いよくボーちゃんがその鼻水をとると、こまのように竜巻は 逆回転を始めてしいたけの方に進行方向が変わったのだ。 「な、なにい!!!ぐわああああ!!!俺っちはしいたけ嫌いなのにいい!!」 しいたけの竜巻をもろにくらったしいたけは、ただのしいたけに戻った。 「ふう・・・ありがとね、ボーちゃん。」 「ボオオ。」 ボーちゃんも頬が赤くなっている。 「ボーちゃん、抱っこなんかしてもらっちゃって・・・うらやましいゾ。」 「こらこら、キミたち。薫ちゃんは風間くんの半身なんだから、 そこ忘れないでよ!!ったく、なんで男の風間くんがあんなにかわいいわけ? ・・ってことは、未来の風間くんも超美形??!」 「ネ、ネネちゃん、未来の風間くんは未来の風間くんなんだよ?」 マサオくんのつっこみにネネちゃんは鋭いにらみを利かせる。 「でも、薫ちゃんは、幼稚園の卒園式のときに、分解されたのに、どうして 大人なの??」 ボーちゃんがふと気づいて質問する。 「それはね、私は、卒園式に分解されてしまった。私たちの時空では そのまま時が流れて大人になってしまったの。マッシュルームの時空では 風間くんは分解されていないから、風間くんのままよ。きっと、マッシュルームの時空の風間くんもマッシュルームに協力している可能性が高いわ。」 「時空って??」 「時空というよりも、世界って考えてくれた方が簡単ね。じゃあー、 世界は今3つあるって考えましょう??1つめの世界はここ。今私たちが いる世界。2つめは卒園式で風間くんが私とエノキダケに分解されて そのまま大人になってしまった世界。3つめはマッシュルームの世界。そこの 風間くんとマッシュルームが協力して、1つめの世界と2つめの世界に影響を 及ぼしているの。時間的にいうと、3つめの世界が1番進んでて2043年、 次が2つめの世界で2020年、最後が今の2007年、この世界って順ね。 風間くんを1つめの世界と2つめの世界にまず返すことが重要になってくるわ、 それからマッシュルームを倒しましょう。」 「おーーー!!!」 「じゃあ、未来に行くわよ!!!」 オラたちは風間くんの家を後にした。 「オラ、こんなにかわいい薫ちゃんが半身の風間くんって子を 早く見てみたいゾ〜。」 「それにしてもしんちゃんがもってるマッシュルームにとって邪魔な 記憶ってなんなのかしら。」 「それもサッパリわからないのよ・・・。私も風間トオルのころを 覚えているわけじゃないし・・・。」 「しんちゃんの記憶が、鍵を、握っている気がする!」 ボーちゃんの目と鼻水が光った。 「おお。オラって重要人物なのね〜。」 「しんちゃん、重要人物の意味分かってる??」 「もっちろん!14時ブーツでしょう?」 「ダメだ、こりゃ・・・。」 「あは〜それほどでも〜。」 「ほめてないよ・・・しんちゃん。」 「とにかく!かすかげ防衛隊ファイヤー!!!」 「ファイヤー!!!!!!!!」 それから歩くこと15分。 「ここがタイムマシンがおいてある場所よ。」 「ここ??!」 そこはただの何の変哲もない道路だった。 「ここよ。」 薫ちゃんが指差した先は真下。 「マンホールの、下??」 「そうよ、ボーちゃん鋭いわね。行くわよ!」 「ちょっと待った。」 「お??」 オラにまたあの懐かしい声が聞こえた。 「今、誰かちょっと待ってって言った??」 「ううん、誰も何にも言ってないわよ。」 「おっかしいな〜。」 「僕はここだよ。僕を置いていかないで!」 「どこ??どこだゾ。」 「なんでわからないんだよ。・・・」 「え?」 声は聞こえなくなってしまった。 振り返るとそこに黒い男が立っていた。 「見つけたゾ。」 今まで聞こえていた声とそっくりだった。 でも、それよりももっと冷たい寂しい声。 「今からどこに行くんだ??」 「うるさいゾ!お前がマッシュルームだな!お前なんかに オラとななこのこれからを邪魔させるもんかー!!薫ちゃん!!」 薫ちゃんの方を振り向く。 しかし、薫ちゃんからは返事がない。 「!!」 薫ちゃんが止まっている。薫ちゃんだけじゃない。マサオくんも、 ネネちゃんもボーちゃんも。 「気づいたか?今、動けるのは僕たちだけだ。未来の力はすごいだろ? しんのすけも薫となんか一緒に行くのはやめて僕と未来に行こう?」 「嫌だゾ!オラはこの世界が好きだゾ!オラ1人だけで未来になんか 行きたくない!オラはみんなと一緒に未来に行きたいんだゾ!」 「ふん。そんなの今だけさ。・・・まあいい。しんのすけ、お前はこっちの 人間だ。僕らと同じさ。僕たちの世界に来たくなったら僕を呼べ。」 そういうと黒い男は消えてしまった。 そして、みんなが動き出した。なにもなかったかのように。 「しんちゃん、行くわよ??」 「お、おお。」 「しんちゃん、変。」 「変じゃないゾ。」 「ボーちゃんのいうとおりだよ。なにかあったの?」 「マサオくんもしつこいゾ!なんにもないったらないんだゾ!」 オラは未来を自分勝手に変えてしまうやつらと同じ??そんなわけない。 オラは・・・オラは・・・。 「しんちゃん。しんちゃんは、僕らの、友達。絶対に、これ、変わらない。」 「ボ、ボーちゃん。」 「だから、なにかあったら、すぐ言ってね。」 「ボーちゃん。ありがとう。」 一瞬流れた涙をオラはすぐにぬぐった。 「みんな。準備ができたわ。これでマッシュルームと風間くんが協力して みんなの生活をのっとった未来の春日部にいけるわよ。」 オラたちはタイムマシンに乗り込んだ。 「出発おしんこーーー!!」 「なすのおしんこーーー!!」 シュン 一瞬だった。 「ついたわ。降りていいわよ。」 「ここが未来の春日部??」 「ここは地下だったでしょう?でも、油断しないで。絶対に 見つからないようにしないと。私のあとを絶対にはなれないで。」 「うん!!」 オラたちは錆びれた階段を登った。 そして、光が差したと同時に見えた外の世界を見た。 オラたちは目を疑った。 廃墟の町というのがふさわしい。 ここが未来の春日部・・・。 砂が建物に降り注ぎ、マッシュルームの手下のまつたけたちが 見回る。こんな・・・こんな・・・これがマッシュルームの仕業。 「マッシュルームだけは許せないゾ!」 みんなの心がひとつになった。 「こっちよ!静かにね!」 オラたちは進んだ。が、途中でまつたけたちに見つかってしまった。 「薫たちだ!!追え!!俺たちで捕まえて手柄にするんだ!」 「チッ!みんな!騒ぎにならないように!戦ったりしちゃダメよ!」 「はさみうちにしろ!!」 オラたちは建物と建物の間の通路に追い込まれてしまった。 「く・・・やるしかないの。でも、大きな騒ぎになったらマッシュルームに 見つかってしまう。ここは逃げ切らないと・・・。でも、どうしたらいいの。」 その時だった。 「しんのすけ!こっちだ!」 またあの声。でも、ここは信じるしかない。 「薫ちゃん!!こっちだゾ!」 そこには小さなドアがあった。たぶん、犬用のドアだったのだろう。 「行くわよ!!」 みんながそのドアに入った。 「ここは・・・?」 そこには不思議な装置や道具がたくさんあった。 これが未来の物。 「ここに今度は引っ越したのね??」 薫ちゃんが罰の悪そうな顔をした。 「悪かったよ、黙って引っ越して。君たちは・・・おお! 薫!この子たち予言の子どもたちか??!」 「まだわかりませんが・・・きっとそうです。」 「薫ちゃん、このおっちゃんとはどーゆー関係??」 「あはは。この人は、私の師匠。この人は、反マッシュルーム派として、 マッシュルームに対抗すべく発明をしているの。そのおかげで 私たちも会えたのよ。」 「師匠でしたか!オラ野原しんのすけ5歳!おしりおきを。」 「それをいうならお見知りおきでしょーが。」 「師匠。時間がないの。この子たちに合う未来の力を渡してほしいの。 そして、夢にまで見たマッシュルームとの全面対決よ!!」 「うむ。そうじゃのう。分かった、1人ずつこっちの部屋に来なさい。」 「いや〜ん、優しくしてね。」 「5歳とは思えないの・・・。じゃまずはそこのオニギリみたいな頭の子。」 「は、はいい!!」 「薫ちゃん。ここはどうしてまつたけたちに見つからないの??」 「ここは、師匠の作った特殊な装置で守られているのよ。だから、 1回ここに入っちゃえば、もうやつらには見えないの。」 「へえー。薫ちゃんってなんでも知ってるのね。すごいわ!!」 「ありがとう。疲れたでしょう??みんなが力を選ぶまで、みんな少しここで 休んでってね。」 「はーい。」 「オニギリくん。名前をなんて言うんじゃ??」 「佐藤マサオです。」 「マサオか。いかにもって感じじゃな。目をつぶれ。」 そういうと師匠は僕のおでこに手を置いた。 「は、はい。」 「お主は・・・臆病な心の奥に、人としての優しさと勇気を十分にもっておる。 これじゃな。お主の武器はその優しい勇気じゃ!!これをもっていきなさい。」 「ありがとうございます。」 「名前をなんて言うんじゃ?」 「桜田ネネです。」 「ネネか。カワイイ名前じゃないか。目をつぶれ。」 そういうと師匠はネネのおでこに手を置いた。 「はい。」 「お主は・・・自分に正直に、そしてそれを貫く強さを持っておる。お主の 武器はその強い意志じゃ!!これをもっていきなさい。」 「名前をなんていう?」 「ボー。」 「ボー?まあいい。目をつぶれ。」 そういうと、師匠は、僕のおでこに手を、置いた。 「はい。」 「お主は・・・心に自分の考えをしっかりともっている。その考えを広い視野と 感覚で感じたものじゃな。お主の武器はその鋭い感性じゃ!!これをもっていきなさい。」 「名前をなんていう?」 「オラ、野原しんのすけ。」 「しんのすけか。お前がのう・・・目をつぶれ。」 そういうと師匠はオラのおでこに手を置いた。 「ほい。」 「お主は・・・自由じゃな。その中にあふれんばかりの優しさがあるの。 そして・・・お主。もうひとつの心をもっているの。その者は・・・束縛じゃな。その奥に自分のことを置いておる。が、本当は素直で、純粋で、キレイな心 じゃ。それゆえに・・・なるほどなるほど。お主はこれを。その者にはこれをそれぞれに授けよう。」 「もうひとつの心??オラは1人だけだゾ?」 「薫からきいとらんのか?じゃあ、今から聞くと良い。」 「ほーい。」 「薫ちゃん。もうひとつのオラの心ってなんのこと?」 「もうひとつ・・・?ああ。それは・・・」 ドカーーーーン 大きな大きな音とともに壁が崩れた。 「いたけー!!!こっちたけー!!」 「しまった!!まつたけたちに見つかったわ!!みんな、逃げるわよ!」 「ボー!!ここは、僕に、任せて!!!」 「ボーちゃん?!」 「僕がもらった武器は、観察力を高めるこの・・・・メガネ!!」 ボーちゃんはそういうとド派手なメガネをつけた。 このメガネは、弱点や、相手の特徴などを、映してくれる。 「こいつらの弱点は・・・火!!!」 「見たまんまね。」 ネネちゃんが鋭いつっこみを入れる。 「ボーーーーー!!」 ボーちゃんがメガネのフレームのボタンを押すとメガネから 勢いよく火が噴射された。そしてボーちゃんは自身の鼻水を グルグルとらせん状に出した。 すると、火と鼻水が合体して、火がらせん状に出された!! 「すごいゾボーちゃん!!」 「すごいわ。」 「みんな!早く逃げて!!薫ちゃんを・・・頼む!」 「そんな・・・そんな逃げるなんてネネたちにはむりよ!!」 「・・・。」 ガッ 薫ちゃんがオラたちを抱え上げて走り出した。 「なにすんのよ薫ちゃん!!ボーちゃんが!ボーちゃんが!」 「我慢するのよ!!私たちの目的は風間トオルを元に戻すことよ!! ここで全員捕まってしまうわけにはいかないわ!! ボーちゃんを信じて先にいきましょう!!師匠もいるわ。きっと大丈夫。」 「薫ちゃん・・・」 そういった薫ちゃんの目には涙が浮かんでいた。 「それにしても、どうしてここの道には1人もまつたけがいないのかな。」 マサオくんが気づいた。やけにこの道だけ静かだった。 オラたちはまるで誰かに意図的に操作されているようにその道を進んでいたのだ。 「そういえば・・・罠かもしれないわ。でも、ここまできてしまった以上、 もうマッシュルームのところに行くしかないわ。」 「行くゾ!!」 前方に大きな建物が見える。 「あれがマッシュルームの宮殿よ。」 オラたちが近づくとやはり巨大な門が自動的に開いた。 待ちかねていたとでも言うように。 「やっぱり罠だったのね・・・。いいわ。行くわよーーー!!」 「オーーーーーー!!!」 オラたちはそういうとそのまま全速力で門をくぐりドアを開いて マッシュルームの宮殿に入った。 広い1階部分にもう誰かがいる。それも2人。2人ともよく似た姿をしている。 「エノキダケ!!」 「風間くんが2人!?」 薫ちゃんとマサオくんとネネちゃんが同時に叫んだ。 「ちがうわ。あの眠らされている方があなたたちの風間トオルよ。 エノキダケ。今日こそ観念して私と元の姿に戻りましょう??」 「誰が戻るかよ。今日こそお前を倒して大人の姿になるんだ!!」 「どういうこと??」 「卒園式のあの日、分解されたとき、マッシュルームは、私とエノキダケの強い方だけを連れて行くといって、私たちを勝負させたの。結果はなんとか私の勝ち。 でも私は怖くなって逃げ出したの。それでマッシュルームは怒ってエノキダケに のろいをかけたの。薫を倒さなければ一生その姿のままだ。って。」 「前置きはもういいか。いくぜ、風祭薫。」 「みんな。この戦いには決して手を出さないでね。いくわよ!!!」 みるみるうちにエノキダケの手はカマキリのように鋭い鎌のようになり、 風祭薫は鋭い剣を出した。 「行くぜ!!!」 エノキダケのいわば二刀流ともいえる鎌が風祭薫を襲う。 「くっ!!」 薫ちゃんはその鋭い鎌を受け止めるだけで精一杯だ。 防戦一方だ。 「こんなもんか!!薫!!」 薫ちゃんはついに追い込まれてしまった。 「まだまだこれからよ!!」 薫ちゃんはエノキダケの一瞬の隙をついて腰に差してあった短剣を抜き 一気にエノキダケに突き刺す。 「ぐっ!!」 エノキダケの表情が一気に苦しいものに変わった。 エノキダケがその場に座り込んだ。 「クソ・・・もとの姿になんか戻りたくねえ。戻ったってまた 1人ぼっちなんだ。あの卒園式の日、元の俺はすげえ後悔していた。 1人ぼっちになってしまう・・・そんなのが嫌だった。どうして 私立の小学校を選んでしまったのか、今でも覚えているさ。 今さら元に戻ってどうすんだ。薫よ。お前もいなくなるって わかっているのか??」 「いなくなる??!」 オラたちは全員驚きを隠せなかった。 考えてみればすぐ分かることだった。 忙しかったからか、それとも考えたくなかったのか。 どちらにしろ、風間くんを元に戻すなら半身の薫はいなくなる。 きっとボーちゃんは分かっていた。だから、別れをしたくなかったのだろう。 最後の風祭薫を見ていたくなくて。だから、命が危険にさらされても足止めという 覚悟をしたのだろう。ボーちゃんは本当に風祭薫が好きだったんだ。 「そう。私はいなくなる。いえ、正しくは風間トオルに戻るだけよ。 私はずっとみんなと一緒にいるわ。さあ、しんのすけ。あの日渡した マジカルストーンをちょうだい??」 「マジカルストーン??」 「渡した飴に似せた石のことよ!」 「あ・・・。オラあれ・・・飲んじゃったゾ。」 「ええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」 「今頃、オラのおなかの中で消化されてるゾ!」 「えらそうに言うんじゃないわよ!!!どーするのよー!!あれがないと 元に戻れないじゃない!!!」 「どうして??」 「あのストーンに風間トオルの意思や思い出、つまり、風間トオルに 戻るために必要なものがつまっているのよ!!!」 「どうりでおいしくないわけね・・・」 「しかもよ!!それの使用法は人の体にいれて溶かすこと!つまりしんのすけの おなかにあるってことはしんのすけの体で今溶けちゃってるのよ!! それが溶け終わってしまったら・・・私たちが元に戻っても風間トオルは 完全な記憶喪失の状態になってしまうわ。」 「ネネ質問よ!しんちゃんのおなかの中で溶けちゃったら しんちゃんはどうなるの??」 「分からないわ。別の人で溶かすなんて初めてだもの。」 「でも、しんちゃんも風間くんの記憶をなくしてるから、もしかしたら 記憶が戻るんじゃないかなあ??」 「マサオくん!!今日だけは冴えてるじゃない!!見直したわ!」 「今日だけって・・・ううう。僕って。」 「オラ、全然思い出せないゾ??あ、でも・・・マンホールの ところで声が聞こえた。」 「それはマジカルストーンのせいよ。どうしよう・・・。」 「オレに考えがある。聞きな。薫。」 「エノキダケ!!」 「二度もお前に負けたんだ。それに、こいつらとならもう一度 あのころのように友達として一緒にいられる気がするんだ。 だから、戻ってもう一度やり直そう。よく聞け。俺はもう動けねえからな。」 「・・・エノキダケ。・・ありがとう。」 「そこにいるガキの風間トオルがいるだろう。そいつを起こすんだ。 そして、そいつと一緒にこの時空の風間トオルを救出するんだ。」 「救出??」 「覚えているか?マッシュルームはお前らの時空の今日から卒園式までの 世界に変化をもたらそうとしている。マッシュルームは、世界戦争を おっぱじめようとしているのさ。そのために必要なのがそこで 寝ている風間トオルさ。こいつはマッシュルームの時空では、世界の政治を牛耳るまでの頭脳の持ち主となったんだ。だが、こいつは甘ちゃんだからな、世界平和のためにその頭脳を使ったんだ。」 「風間くんすごいなあ。」 「ああ。マッシュルームはそれが腹立たしかった。なぜその頭脳を持ちながら日本を自分のものにしようとしないんだってな。そして、その頭脳を我が物と するため風間トオルの過去を洗いざらいに調査した。 すると、風間トオルは心の中には大きな傷を負っていたんだ。 子どものころに、大好きだった4人の友達と離れ離れになってしまっていたこと。これを利用しない手はない。マッシュルームは、その4人と離れ離れになって しまって辛いだろうにと、占い師を装って近づいたんだ。風間トオルは 意地っ張りだからな。誰にもその4人のことは話してなかった。なのに、 この占い師は知っている。当然、すぐに風間トオルは占い師を信用した。 そして、マッシュルームは4人と離れ離れになってしまった卒園式まで 戻って、やり直さしてやろうと言った。その報酬は、自分の右腕となること。 風間トオルは迷ったが、離れ離れになったことをそうとう後悔していたんだな。 OKしてマッシュルームと契約をしたんだ。マッシュルームはその契約を 守ることもなく、逆に、当時卒園式の時空にあった風間トオルを分解して オレをここに連れてきた。そうすることで逆らえば自分の命は危ないと 知らしめるためだろう。それからはもうマッシュルームの好き放題さ。 そして日本はほとんどがその手中に治まった。だが、もうマッシュルームは 日本だけに満足できなくなった。それで世界戦争さ。勝手に世界で戦争を 起こさせて、最終的に自分が支配しようとしている。それにはさすがに 風間トオルも反対した。そしたら、マッシュルームがお前はここで見ていろって 牢屋に閉じ込めたんだ。どこの牢屋かはオレも知らない。その捕まっている 風間トオルなら、おれ達が元に戻る方法を知っているはずだ。」 「利用するだけして、使えなくなったらポイッってことね・・・。」 「そうだ。それで、次の利用するための駒として、そこで寝ている風間トオルだ。そこに寝ている風間トオルをさらった理由は、子どものころに人格を悪いように変えて元の世界に戻すためだ。人格を変えるのは、将来、世界征服を考えるように するためだ。そうなったら、またマッシュルームは風間トオルをさらい、 世界征服のために利用しようとしているんだ。もう悪の洗脳されきるまで 時間もないだろう。もう洗脳されたあとなんだ。今頃、夢の中で善と悪の狭間で 悪と戦っているはずだ。」 「ひどい!!とことん風間くんを利用しようとしているのね!!」 「オラ、なんだかわかってきたゾ・・・。」 「しんのすけ。お前の記憶を消したのは・・・お前にしか風間トオルを 救えないからだ。・・・チッ。まつたけどもがきやがった。早く行け! ここはオレが・・・。」 「あんたがいないと元の風間くんに戻れないでしょーが!!!ここはネネ たちに任せて!!エノキダケ!あんたも早く行きなさーーーーい!!」 「ひいいいいいい!!なんで僕まで!!!!!!」 「オニギリ!行くわよ!!絶対に風間くんを助けるのよ!!」 「・・・そうだね!!ネネちゃん!しんちゃん!あとは任せたよ!!」 「ファイヤーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」 「マサオくん!!!ネネちゃん!!!」 2人はまつたけが押し寄せるドアに走っていった。 その時だった。寝ているはずの風間くんの指がかすかに動いたのだ。 確かに風間くんはただ寝ているんじゃない。戦っているんだ。 オラはまだ全然思い出せないけど、確かにここにいる男の子を オラは知っている。 「しんのすけ!!風間くんを頼んだわ。私はエノキダケを!!行くわよ!!」 「ほい!!!」 オラたちはとにかく廊下を走った。 「ネネがもらった武器は・・・もちろんこれよ!!!」 「僕がもらった武器は・・・これだ!!」 「マサオくん・・・サングラス?!」 「ネネちゃんは・・やっぱりウサギのぬいぐるみなんだね・・・。」 「このうさぎはただのうさぎじゃないのよ!!ネネの意志の強さによって 威力がアップするんだからーーー!!!」 「僕だって!!このサングラスは僕の声で盾になるんだ!!盾になれ!!!」 「そうか!!」 「僕たち(ネネたち)2人一緒でもっと強くなるんだ!!」 「ネネが戦い」 「僕が護る!」 「・・・ネネは護る方が向いてると思うのになあ。」 「そ、そうかなあ??!き、きたよ!!」 「任せて!!ここから先は絶対に行かせないんだからーーーーー!!!!」 まつたけとの果てしない戦いが始まった。 「しんのすけ!!次こっち曲がってみるわよ!!」 「ほい・・・。」 「大丈夫??風間トオルをおんぶしてるんだもんね。少し休む??」 「うん・・・。でもなんかちがうの・・・オラの頭ん中がごちゃごちゃに なっちゃってるだけなの。」 「マジカルストーンの副作用よ。それに自分のじゃないマジカルストーンだもの。 きっと副作用が大きいのね。・・・しんのすけはここに隠れてて!! 私たちで探してみせる。なにかあったらこの携帯で私にかけて。」 「ほい・・・。」 風祭薫はエノキダケを背負いそのまま走り出した。 「うう・・・。」 オラじゃない感情がオラの中に出てくる。 「ママ・・・僕やっぱりみんなと同じ小学校に行きたいんだ。」 「ダメよ、トオルちゃん。イイ小学校に行かないとイイ中学校や高校、大学に いけなくなってしまうわよ。」 「でも・・・。」 「いいわね?」 「はい・・・。」 悲しい。寂しい。みんなともっと一緒にいたい。 「これが・・・風間くんって子の感情??」 オラの中に流れてくるオラじゃない記憶。 風間くん??ん・・・。 「僕は風間トオル。将来は超エリートになるんだ。」 「ほうほう。腸の絵となるのかぁ。」 「ちがうよ!!超エリート!!偉い人になるんだ!!」 これがオラたちの出会ったとき・・・? 「風間く〜ん。」 「なんだよしんのすけ。」 「相変わらず冷たいのね〜。しん子寂しいっ!」 「そんな気色悪い声で話しかけてくるからだよ!」 「あは〜ん、照れてるトオルもカワイイ。フッ」 「やめろーーー!!!耳に息を吹きかけるなーー!!」 風間くん・・・? オラは知ってる。 風間くんはオラたちとかすかべ防衛隊だった。 「ようし。今日のかすかべ防衛隊の活動は身近な人を励ますことに決定。」 「松坂先生を励まそう!!」 「かすかべ防衛隊ファイヤー!!!」 「ファイヤーー!!」 オラは・・・、オラは・・・オラたちは・・・なに? 「風間くん!!!起きろーーー!!」 オラは思いっきり風間くんを揺さぶった。 「まだおねんねの時間には早いですよ〜トオルちゃん。」 風間くんの反応はない。 「オラたちの記憶を教えろーーー!!あとちょっとで分かりそうなのに あとちょっとで思い出せそうなのに・・・思い出せないんだゾ!!!」 風間くんの指がまたピクッと動いた。 「ん・・」 風間くんがうっとおしそうな声をあげて眉間にしわを寄せた。 がんばれ!!洗脳なんかされちゃ絶対にダメだゾ!! オラは風間くんが起きるまで、自分も必死に思い出すことにした。 「ここでもない。こっちでもない・・・。エノキダケ!なにか 思い出せないの??」 「・・・風間トオルに見ろってマッシュルームは言った。ってことは 風間トオルにも世界が変わるところを絶対に見せたいはずだ。ってことは・・・」 「鑑賞室!!!」 「エノキダケ。鑑賞室はどこ??」 「ここからあと10階あがったところだ。エレベーターは使うなよ。」 「10階??!そんな・・・ちょっと休ませて。」 「休んでたらまつたけたちがやってきちまう。」 「でも10階も上れないわ!!」 そのとき後ろから声が聞こえた。 「大丈夫!!」 「誰?」 振り向くとそこにいたのは傷だらけになったボーちゃんだった。 「ボーちゃん!!無事だったのね!!」 「ボー。あのあと、必死にくいとめた。でも、別の道からまつたけたち、 この屋敷に向かい始めた。だから、僕は、食い止めるのをやめて、 屋敷に向かった。そしたら、下でネネちゃんと、マサオくんが頑張っててくれた。 僕に、先に行けって、言ってくれた。だから、僕、走った。薫ちゃんが無事で、 よかった。」 「ありがとね。無事で何よりよ。は!師匠は・・・?!」 「師匠とは、はぐれちゃったから・・・分からない。」 「そう・・・。でもボーちゃんが無事で本当によかったわ。」 「ボー。それより、僕の鼻水で10階まで2人を送り届ける。」 「なるほど!!緊急事態だし・・・わかったわ。」 「ボーーーーーーー!!」 「きゃーーーーー!!!!」 鼻水の上に乗って一気に10階上まできた。 「アリガトーボーちゃん!!休んでて!!」 下からかすかに声が聞こえた。 「グッド、ラック。」 「行きましょう!!エノキダケ。」 「ああ。オレももう自分で歩ける。アリガトよ。」 「ふふ。もう少しね!!」 私たちは鑑賞室に向かって走り出した。 僕は、すべての力を使い果たしたように、倒れていた。 「ボー。・・・誰!!?」 「ここまでくるとは思わなかったぞ。眠ってもらおう。」 「ボッ!!?」 バシッ ボーちゃんは後頭部を殴られ気を失った。 「こやつらは本当に危ないガキどもじゃ。・・・さあ、最後の仕上げじゃ。」 オラには分からない。オラにしか風間トオルは救えない、エノキダケの言葉。 マンホールで会った黒いやつに言われた、お前も僕たちと同じだって言葉。 なんとなくその2人の言った言葉は逆の意味をしている気がしていた。 ここにいる風間くんを救えるかどうかで、あいつらと同じになるかどうかが 決まる。そんな気がする。 オラは絶対にここにいる風間くんを助けて、みんなを助けるゾ。 「うーん・・・・・」 風間くんの声は次第に苦しいものになってきている。 悪に負けてしまいそうなのかもしれない。 オラにしか救えない。その意味って?? オラたちは友達だった。オラたちはかすかべ防衛隊だった。 オラだけにしかできない・・・。 ハッとした。 心臓がドクンドクンと大きな鼓動を立てている。 すべてが分かった。 「風間くん!!!オラたちは大親友だゾ!!風間くんがどんなになっても、 オラたちと違う道に行っても、オラたちはずっとずっと大親友だゾ!!だから ずっと一緒でいられるんだゾ!!!」 オラは涙を流していた。こんなに大切な友達を忘れていた。 「風間くん・・・オラたちは大親友なんだゾ・・風間くんが困ったときは オラがいつでもお助けするゾ・・・オラが困ったときは・・風間くんが オラをお助けしてくれるって言ったんだゾ?・・だから風間くん・・・ もう起きなきゃダメだゾー!」 オラは風間くんの耳をハミハミした。 「しんのすけー!!僕の耳をハミハミするなぁー!!」 あの時聞こえた声のとおりの言葉だね。 「よっ、風間くん。」 「・・しんのすけ・・・ありがとう。」 「風間くんったら〜愛しのオラのハミハミじゃないと起きられないんなら オラ毎日ハミハミしてあげるゾ〜?」 「遠慮しとく!!ったく、こんなとこでのんびりしてる場合じゃないだろう? 行くぞ?」 「なんで風間くん知ってるの!!」 「寝てる間もいろんな声が聞こえたんだ。善と悪の声が。 僕はずっと迷ってたんだ。でも・・・」 「でも??」 「うんん。なんでもない!ほら、行くぞしんのすけ!!」 「?風間くん顔赤くなったゾ??」 「なんでもないったらなんでもない!!鑑賞室に風祭薫とエノキダケが 行ったから、僕らはマッシュルームを倒しに行こう!!」 「ほい!!」 僕らはマッシュルームの部屋を目指して走りだした。 僕は本当に迷っていたんだ。善と悪、どちらにも魅力をあった。 だんだん悪の方に引き寄せられてたんだ。でもそのとき、 強くて大きい声が聴こえたんだ。 それがしんのすけの声だったんだ。 そんなこと恥ずかしくて言えるもんか。 僕がしんのすけに助けられたなんて笑っちゃうだろ? でも、こんな大親友がいてくれて、本当に良かった。 「ここが鑑賞室ね??」 「そうだ!ここにマッシュルームの時空の風間トオルがいるはずだ!!」 「行くわよ!!」 バン ドアを勢いよく開けて中を見ると確かに人が1人捕まっている。 「風間トオルね?」 「い、いや・・・ちがう!!!」 「なぜだ??!なぜあんたがここにいる!!!」 そこにいたのは間違いなくマッシュルームだった。 「エノキダケか・・・ぐっ・・早くおろしてくれ。」 「どうしてだ?!」 「風間トオルにやられたんだ・・・あいつはもう悪の塊になっている。 オレよりも風間トオルにとってイイ条件を突きつけたやつがいたんだ。 風間トオルはそいつについていってしまった・・・オレをここに 閉じ込めてな・・。」 「ウソだ!!風間トオルはあんたに従って仕方なく世界征服をすることを 受諾していたんじゃないのか?!」 「なにを言っている。あいつから言い出したのだよ。世界征服しようと。 アイツは最初から心が壊れてしまっていたんだ。そしてオレさえもこの扱いさ・・・。ここでずっと見せ付けられていたよ。やつがオレの名を語り、 日本を征服したんだ。オレは利用しようとして利用されていたんだ。」 「じゃ、じゃあ・・・本当の敵は・・風間トオルだったってのか??」 「そうだ・・。お前たち、元の姿に戻る決意ができたのか??」 「はい。」 「お前たちが元の姿になることで少しはオレの時空の風間トオルに対抗できるかも しれん。・・・・マジカルストーンがなくて困っているようだな。」 「そうだ。」 「マジカルストーンなどなくても戻れるさ。あの少年がすべてを思い出した。」 「本当か!!でもなぜこんなによくしてくれる?」 「ああ・・・。ここで5年間過ごすうちに風間トオルになにかしてやりたく なっただけさ。さあ、行け!!少年らはマッシュルームの部屋に向かっている。」 「はい!!」 私たちはマッシュルームの部屋に向かった。 「ここがマッシュルームの部屋か・・・。」 僕たちはついにこのすべての原因であるマッシュルームの部屋に着いた。 「マッシュルームめ・・・観念しろ!!」 僕たちは知らなかったんだ。本当の相手が誰かということを。 僕たちは勢いよくドアを開けた。 黒い服を着た男が1人立っている。 「・・・マッシュルーム!!お前は許さないぞ!!」 後ろを向いたままの男は笑い出した。 「なにがおかしいんだ!!」 すると男はやっとこちらを向いた。 「お前たちはなんにも分かっちゃいない。私が誰か・・・それすらも知らない。」 「・・・お、お前は??」 「私は君だよ。風間トオル。君だ。」 「なに言ってるんだ??僕がどうしてマッシュルームの部屋に・・・?」 「私が今回の首謀者さ。それも知らずにここまで来たのか。 しんのすけ・・・久しぶりだな。」 「オラお前みたいなやつ知らないゾ!!オラが知ってるのは、このうるさくて 細かくてそのくせ大事なときに失敗する風間くんだゾ!!」 「しんのすけ・・・ひとつもほめてくれてないな・・。」 「お??そうだっけ?いや〜細かいことは気にしない気にしない。」 「くっ・・・。」 「小さいころの私よ。今はそんなふうに友達面してても、卒園して 離れてしまえばコイツは私のことなんかちっとも思ってはくれなかった。 私は卒園式から一度もしんのすけとは会っていない。そんなものだ。 それならば、いっそ今からなくしてしまったほうが、後に楽になると 思わないか??」 「そ、そんな・・・。」 「そうだ。私は卒園してからずっと孤独だった。このしんのすけのせいで。」 「・・・。」 「お前が辛いと言うなら、私が消してやろう。そうすればお前はなんの 憂いをもつこともない。」 「風間くん!!なんとか言ってよ!!オラはそんな子に育てた覚えはないゾ!」 「・・・。」 「お前はそこで見ていろ。そして私とともに世界を手に入れよう。」 「風間くんのバカー!!」 未来の風間くんがオラに一歩ずつゆっくりと近づいてくる。 このままじゃ危ない・・・なにかなかったっけ。 ポケットをゴソゴソと探しているとなにかがあった。 出してみるとそれは師匠にもらったアクション仮面の圧縮スーツだ。 「オラに力を!!」 言われたとおりの合言葉を言ってみる。 ボンッ スーツはオラピッタリのサイズになってオラをまとった。 「おお。」 確か師匠に言われた。 「お前の武器は・・・その自由な発想力じゃ。だが、本当の武器は他に お主は持っているがの。これはお主の自由な発想力を生かす武器じゃ。 お主の想像と、声にあわせてそれは変化する。上手くつかうのじゃ。」 「よーーし!行くゾ!!風間おじさん!!」 「こい。」 「ファイヤー!!」 「カンタムパーンチ!!」 スーツはカンタムロボの手の形になり風間おじさんにとんでいく。 「ふん!!」 風間おじさんは黒い服から大きな杖を取り出しこうつぶやいた。 「標的はしんのすけだ!!」 すると手はオラの方にとんできた。 「そんなのってないゾ!!」 オラは必死で逃げ回る。 「とどめだ!!」 風間おじさんはオラに杖をかざす。 「カエルになれ!!」 杖から白い光がオラに向かってとんできた。 「エノキダケ!まだなの?!」 「うるせえな!あと少しだって言ってるだろ!!」 ・・・しんのすけ・・・無事でいて・・。あなたがいなければ この世界もあなたたちの世界も・・私たちの未来も・・助かりはしないわ。 私たちは全力で走った。 その思いはエノキダケも同じだった。 「くそ!!絶対に元に戻ってやる!!」 「そうね!!」 そのときだった。不思議な気持ちに襲われた。 やはり、私たちは風間トオルという同一人物だった。 一気に風間トオルだったころの記憶がよみがえりだしたのだ。 「しんのすけに近づいてきたからかしら。」 「ああ・・・たぶんな。」 やがて目の前に大きなドアが立ちふさがった。 「ここだ。行くぞ!!」 「ええ!!」 ドアを思い切り開いた。 そこにはカンタムロボの手から逃げ回るしんのすけがいた。 「とどめだ!!」 「カエルになれ!!」 風間おじさんが杖をふりかざし、白い光をはなった。 「マズイ!!」 とっさに反応した。 風祭薫がカンタムの手を エノキダケが白い光を それぞれが身代わりとなって受け止めた。 「キャッ!!」 「ぐッ!!」 「薫ちゃん!!エノキダケ!!」 エノキダケに変化が現れた。 「ぐ・・ぐ・・・」 カエルになってしまうのかと誰もが思ったその時・・・ 「ううう。」 エノキダケは大人の姿に戻ってたのだ。 「く・・・魔法と魔法が合わさり、中和されたか。運が良いの、エノキダケ。」 風間おじさんはチッと舌打ちをした。 「エノキダケ・・・これで元に戻れるわ。しんのすけ、こっちへきて。」 「こい、しんのすけ。」 「ほ、ほい!!」 オラの頭の上に2人は手を置いた。 「ふん、そうやすやすと思いどうりにさせるか!!」 風間おじさんはまた杖を振りかざした。 「トルネード!!」 杖から風が渦をまいていく。 「危ない!!」 全員が目をつぶった。 「・・・?」 「オラたちなんで無事なの??」 「しんちゃん!!僕たちがきたからもう大丈夫だよ!!」 「マサオくん!ネネちゃん!!」 「僕の盾でしんちゃんを守るから、2人を早く元に戻して!」 「ネネがあいつの動きを止めておくわ!!」 「こいつらがなぜここにいるんだ!!」 「マッシュルームの力よ!!」 話はさかのぼる。 2人は大量のまつたけに囲まれていた。 「ネネちゃん・・・きりがないよ!!」 「おにぎり!弱音を吐くんじゃないよ!きっともうすぐしんちゃんが 風間くんを助けてくれる。」 「で、でも・・・!」 「なによ!まだなんか文句あるの??!」 「ずいぶんたったよね??」 「・・・。」 「どうなっちゃったんだろう。大丈夫かなあ。」 「それもそうね・・・誰か教えてくれないかしら。」 「誰か!!!」 「・・その強い思い、私にまで届いたぞ。私はマッシュルームだ。 私は今身動きができぬ。から、ここから話す。かくかくしかじか・・・。」 「じゃ、本当の敵は未来の風間くんだったの?!」 「そ、そんな。」 「今、しんのすけやらはピンチに陥っておる。風間トオルは放心状態だ。 助けられるのはお前らだけだ。さあ!行くがよい!!!」 シュンッ ネネちゃんとマサオくんの姿がその場から消えた。 「しんのすけ。風間くんのこと思い出してくれる??」 「ほい。」 オラは目を閉じて今までのことを思い出した。 楽しかったことばかり。いつも怒るけど、それすらも楽しかった。 これからもずっと。 頭にのせている2人の手が熱くなっていく。 しばらくたった。 「しんのすけ。ありがとう。おかげで元に戻れたよ。」 「おっ??」 風祭薫ともエノキダケともちがう声にオラは上を向いた。 そこには超美青年・・いや、風間トオルが立っていた。 「か、風間くん!!ずるいゾ・・・1人でそんなかっこよくなって。」 「そんなに言うなよ。お前だって将来は女の子にモテモテなんだから。」 「ほ、本当に??!いや〜てれますな〜。」 「ふっ、相変わらずだな。・・マサオくん!ネネちゃん!ありがとう! 僕たちも加勢する!!」 「オラもオラも!!」 「チッ!!このままじゃマズイ!!おい、なにをしている!!早く手伝え!」 「待て待て。もう時期だ。」 「くっ!もう待てん!!」 「仕方ない・・・。」 ドカーン 地面が爆発した。 風間おじさんに向かっていったマサオくん、ネネちゃん、未来の風間くんが 爆発に飲み込まれ、ずーーーっと下の階に落ちてしまった。 「みんなーーー!!なにするんだゾ!!オラ、絶対にお前だけは許さないゾ!」 「やっと、しんのすけらしくなってきたじゃないか。なあ、子どものころの 私よ。」 「・・・。」 「見ろ。子どものころの私もお前を信じられなくなってるじゃないか。」 「風間くん!」 オラは風間くんの肩を揺さぶる。 「風間くん!!そんなわけないよね?」 風間くんは風間おじさんに聞こえないように小声で話しかけてきた。 「しんのすけ・・・約束できるか?」 「なにを??」 「僕たち、卒園してもずっと友達か?」 「なに言ってんの〜当たり前じゃない。オラたち、お互いの ほくろの数まで知り尽くした仲じゃない。」 「そうか・・・。」 風間くんはそう言うとオラを突き放した。 「未来の僕よ!僕はあなたに協力します!」 「やっと分かったか。ようし、このじゃがいも小僧を一緒に叩きのめして やろう。」 「はい!!」 「風間くん!!」 風間くんの目がオラになにかを訴えている。 オラはその目を信じてみることにした。 オラは風間おじさんと互角に戦った。 何回も倒れながら、ずっと戦った。 もらった武器もボロボロになった。 それでも戦った。 風間くんの目を信じて。 「イタタタタ・・・。大丈夫?マサオくん、ネネちゃん。」 「大丈夫・・・ってあなたが未来の風間くん??!・・・カッコイイ・・ ネネ、風間くんのお嫁さんになろうかしら・・。」 「・・・遠慮しときます。」 「風間くん!ネネちゃん!見て!」 マサオくんが指差した方にいたのは、気を失ったボーちゃんだった。 「ボーちゃん!!」 マサオくんとネネちゃんの2人はかけよろうとした。 「ホイッ」 その瞬間、後頭部にもろに衝撃を受け、気を失った。 「あなたは!!」 風間トオルはなにか間違いを見ている、そんな気持ちだった。 「なぜあなたが・・・。」 「やっと元に戻れたんじゃな〜。薫、エノキダケよ。」 「し、師匠・・・。」 「師匠とまだ呼んでくれるか。どうじゃ、わしと一緒に世界を征服せんか? あの風間のおじじはもうだめだ。頭が固くなってきた。だから、あの しんのすけと子どものころの風間に倒させてしまおうと思ってな。その分、 お前さんはまだ若い。思考も柔軟である。」 「師匠・・まさか!!僕を元に戻させようとしたのは・・・そのため?」 「そうじゃ。わしはもともとはマッシュルームの配下だった。それくらい 悪知恵があっても当然じゃろ??」 「師匠・・・僕はずっとだまされてきたのですね・・?」 「だましてなぞいない。本当にお前はいいやつだった。これからも わしと手を組もう?」 「そんなこと・・・、僕がはい、わかりましたとでも言うと思いましたか?」 「わかっとるよ。ここまできたら。だからお前も邪魔なだけよ。」 「ふっ・・・師匠。僕はとてもあなたを尊敬していました。それだけは 伝えておきます。では・・・」 「そうじゃの。勝負じゃ!だが、わしとお前とでは力に差がありすぎる。 よってここは頭脳勝負にする。反対は不可じゃ。ルールは簡単。 お互いが交互にある物や人や出来事についてのヒントを出す。その名称を 答えるだけだ。しかし、1つ目のヒントで分からなかった場合、2つ目の ヒントを出してもらえる。が、ヒントは3回しか出してもらえん。そして、 答えを間違えたり、3回ヒントを出してもらったりしても分からなかった場合、 負けじゃ。」 「負けた場合どうなる?」 「鑑賞室でマッシュルームと一緒に一生そこでつながれてすごす。」 「いいですよ。」 「ずいぶん自信があるようだな。では、はじめ!!」 「2012年に倒れた塔は?」 「ピサの斜塔!(これはフィクションです)」 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ 「お互いヒントはもう使えないですね。」 「そうじゃな。そろそろ決着がつくころであろうか。」 「・・・では次の僕の問題いきます。」 「ほう。」 「・・・世界の真ん中にいる虫は?」 「簡単じゃ!!マルガーリタじゃ!!(これはフィクションです)」 「外れです。やはりあなたも頭がずいぶんと固くなっている。 正解は蚊です。この問題は昔、小さいころにしんのすけが僕に出した問題。 子どもには適いませんね。あなたの負けです!!」 「ぐぐぐ・・・。」 「鑑賞室に!!」 僕は師匠のつくった武器の力で師匠を鑑賞室に送った。 心は虚しさでいっぱいだった。 「ボーちゃん、ネネちゃん、マサオくん。おきて。」 「ボー?」 「うーん。」 「はあい。」 「あれ?なにしてたんだっけ??」 僕は寂しさをこらえて言った。 「・・・大丈夫。なにもなかったんだよ。」 「そうなの??」 「そう。さあ、急いでしんのすけたちの部屋まで戻るよ!!」 「ボー!!」 「うん!!」 「そうね!!」 僕たちは再びマッシュルームの部屋を目指した。 「ハア・・・ハア・・・」 「・・・よく・・がんばったな、しんのすけ。だが、・・それもここまでだ! 最後は私が直接手をかけてやろう。」 そういうと未来の僕は杖から短剣を取り出した。 完全に油断している。 もう目にはしんのすけしか映っていない。 ・・・今しかない。 僕は思いっきり未来の僕に飛び掛ってしがみついた。 「なにをする!!子どものころの私よ!!」 「風間くん!!」 ボロボロになったしんのすけは目を輝かせた。 「僕のために師匠が作ってくれた武器。僕が目覚めたときにしんのすけが 渡してくれた僕の武器・・・。それがこれさ。」 それは爆弾だった。 「この爆弾は僕の思ったとおりの範囲、時間、強さで 僕の心とともに爆発するんだ。」 「ま、まさか・・・。」 「そのとおりだよ、未来の僕。あなたは僕と一緒に爆発してもらう! ・・・しんのすけ、ありがとう。お前のおかげで隙を見つけられた。」 「風間くん・・・?それって・・・それってどういうこと??!」 「・・しんのすけ、僕、お前にいつも口うるさかったけど、本当は すごい楽しかったよ。みんなでかすかべ防衛隊やったりしてるときが、 本当に好きだったよ。」 「なんでそんなこと言うの??風間くん!!」 ふとオラの頭の中に、昨夜見た夢が思い出される。 オラが見た夢のとおりだ。 このまま風間くんが爆発して、オラはなんにもできない・・・。 そんなの絶対にいやだゾ!! オラにあの夢を見させたのは、風祭薫ではなかった。 風間くんだ。そんな気がした。 「・・・・もういいんだしんのすけ・・・お前は・・先に・・行け・・・。」 「・・なに言ってるんだゾ!!オラたちは大親友なんだゾ!!オラ 最後までちゃんとお助けするんだゾ!!」 「・・・・しんのすけ・・ありがとう・・・・・」 「照れなくてもいいのにぃ〜あは〜。」 「・・・さ・・よう・な・・ら・・・」 「・・え??・・・・か・・・・・・・・ま・・・・」 ・・・・・・・ ・・・・ すべてが夢と同じだった。 すべての会話まで夢と同じだった。 風間くんは最後に笑った。 オラはなんにもできないのか。 オラは師匠の言葉が思い出された。 「本当の武器は他にある。」 オラの武器って? オラは武器なんていらない。 オラは助けたい。風間くんを!みんなを! その想いとともに元に戻っていた圧縮スーツが一気に広がった。 その瞬間すさまじい音とともに爆発が起きた。 「う!!!」 「なによこの爆風は!!」 「ひいいい!!助けてー!!」 「マッシュルームの、部屋から!」 「・・・・つかったんだな、僕よ。」 「え??なにか言った??未来の風間くん。」 「僕も、そろそろ消えると思う。」 「ど、どうしてよ??!」 「過去が変わったら未来も変わる・・・それだけだよ。 師匠が僕に伝えてくれた予言・・・3人の勇者1人の賢者現れるとき、 1人の賢者の命と引きかえにこの世界は晴れ渡るだろうってね。 僕がそうだとしたら、なにもおかしくはない。」 「なに?!じゃあ・・・風間くんは・・・。」 「たぶん・・・今の爆発は・・師匠が小さい僕に渡した武器だよ。」 「そ・・・そんな・・。」 「でも、まだかな・・・。」 「もしかしたら、しんちゃんが、風間くんを、助けたのかも!!」 「そうよ!きっとそうよ!行ってみましょ!!」 「うん!!!」 ものすごい爆発で壁は壊れ 今にもこの宮殿自体が壊れてしまいそうだ。 それほどの爆発だった。 ネネたちがついたときにもまだ白い煙が部屋を充満してた。 息ができないくらい濃い煙。 爆発のすさまじさを物語っていた。 「風間くーん!!」 「しんちゃーん!!」 何も見えない。 やがて声が聞こえた。 「ぐ・・・こっち・・。」 その声は風間くんのものだった。 「風間くん!!どこ??!」 「・・・こっち・・。」 やがて白い煙が晴れて人影が見え始めた。 そこにいたのは血を流し、ボロボロになった風間くんだった。 「早く・・し・・しんのすけを・・・。」 そしてその腕の中で気を失っていたのはしんちゃんだった。 「どうしたのよ!なにがあったのよ!」 ネネたちは驚きをかくせなかった。 「あの時・・・。」 風間くんが話し始めた。 「あの時しんのすけは・・・師匠からもらった武器を・・あたり一面に広げて 爆発を吸収したんだ・・。だから・・まだこの部屋が残ってる・・そして 本当の・・・しんのすけの武器は・・勇気。」 「風間くん!!もうしゃべらないで!!出血がすごいわ!」 「大丈夫。」 「僕が博士の家まで行って、救急セットをもってくる!それまで絶対に くたばるなよ!!子どものころの僕!それからしんのすけも!!」 「僕も!」 未来の風間くんとボーちゃんは走っていってしまった。 「大丈夫なのに・・。これは血じゃないよ。爆弾が爆発した瞬間 爆弾からあふれ出たものなんだ。」 「そうならそうと早く言いなさいよ!!」 「ご、ごめんなさい・・。でも、衝撃で体中あちこち壁にぶつけたから・・・ でもこれくらいですんで本当に良かったよ。・・・しんのすけは・・。」 「しんちゃんが?」 「しんのすけはマジカルストーンを飲んだろ?あれで、しんのすけの心は 知らないうちに僕の心を共有していたんだ。そしてあの時勇気ふりしぼって 祈ってこう叫んだのが聞こえたんだ・・。 ”オラの心も爆発させろーー!!”ってね。 あの爆弾は僕の心が爆発源となるからね。僕自身の心としんのすけの中の僕の心 が爆発したんだ。しんのすけのおかげで僕への負担は減った。 だから僕は生きていられてる。だけど・・しんのすけは・・・ 自分の中の僕の心を爆発させるなんて・・・バカだよ・・本当に・・。」 「しんちゃんの負担の方が大きかったってこと??」 「うん・・。倒したいっていう僕の悪の気持ちと助けたいっていうしんのすけの 善の気持ちでは助けたいって気持ちの方が強かったんだ。だからしんのすけの 心の方が強く爆発した・・・たぶんしんのすけの心まで一緒に・・。」 「そ、そんな!!」 「だから・・・しんのすけの心は今弱ってる。どうにかして勇気を・・う・・。」 「か、風間くん!!?」 僕は倒れた。やっぱりどこか折れているのは間違いなかった。 しんのすけを爆風から守ったのは僕だったから。 でも、僕だけじゃなかった。そう、僕がおじさんになったこの人も、 僕たちに覆いかぶさった。 僕はチラッと見たけど、爆発をもろにあびたこの人はもうピクリとも動かない。 僕は将来の自分が死んだなんて不思議な感じがした。それを見てるなんて。 と、思ったその時だった。 「う・・うう・・。」 風間おじさんが動いた。むしろ、動きはさっきよりも速くなっていた。 「みんな!!」 「ゲッ!!」 みんなもう戦う気力なんて残っていなかった。 僕は誰も護れないままやられてしまうのか・・・。そんなのは嫌だと思った瞬間。 「ここはーどこじゃ??」 この人は記憶を失ったらしい。そこで僕は閃いた。 「ここはあなたの書斎です。悪いやつがここを破壊してしまいました。 でもそいつらは僕たちが鑑賞室に閉じ込めました。」 「そ、そうなのか??お前たちは一体?・・私は誰じゃ?」 「あなたは風間トオル。この国を統治し、平和に導くであろうお方です。 私たちはあなたの家来です。悪いやつにこのしんのすけが心を弱めております。 どうしたら助けられるでしょうか?」 「ほう、そうだったのか。私は風間トオルというのか。ほう。心を弱めて おるのか。・・・それならばこの者が望んでいたことを叶えてあげるのじゃ。」 「ありがとうございます!!」 「では、わしはもう一眠りしてくるかのう・・・。」 風間おじさんは部屋から出て行ってしまった。 「風間くんやるぅ!」 「ネネ見直しちゃったぁ!」 「これくらい簡単さ。これで、未来は平和に戻っていくだろうね。 あいつに関しては一件落着ってとこだね。」 「そうだね!でも、しんちゃんが望んでいたことって・・・。」 「わからない・・・。」 僕たちはしばらく悩み続けていると未来の僕とボーちゃんが 救急セットを持って帰ってきた。 「大丈夫だった??!あれ・・・?風間おじじは?」 僕たちは今まであったことを話した。 「なるほど・・・しんのすけが助けたいって思ったのが風間おじさんにまで 作用したんだね。倒すのではなく助ける・・か。」 「それで・・しんちゃんの望んでたこと・・・知ってる??」 「聞いてないよ。」 「風間くん!風間くんは、なにか、心当たり、ないの?」 「僕?んー・・・あ!!」 ”風間くん・・・オラたちは大親友なんだゾ・・風間くんが困ったときは オラがいつでもお助けするゾ・・・オラが困ったときは・・風間くんが オラをお助けしてくれるって言ったんだゾ?・・だから風間くん・・・ もう起きなきゃダメだゾー!” 僕を起こしてくれたしんのすけの声が頭に響いた気がした。 「ま、まさか・・。」 「なに?風間くん!」 「・・風間くんが困ったときはオラがいつでもお助けするゾ。 ・・・オラが困ったときは風間くんがオラをお助けしてくれる・・・。」 「・・・。」 「それよ!!!!」 「風間くん!お助けして、あげて!」 「で、でも、どうやって?」 「ここは未来だよ、未来には人の心に侵入できる装置くらいあるよ。 僕持ってくるから。」 そして未来の風間トオルが装置を持ってきた。 「子どもの僕。しんのすけの隣に仰向けになって。」 「うん。」 「じゃあ、このコードでこの装置と君としんのすけをつなぐから。」 「うん。」 「戻ってきたいときはこの赤いボタンを押せ。」 「うん。」 「がんばるんだぞ!」 「わかってるよ、僕。」 「フッ、じゃ、いくぞ。目をつぶって。」 ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン 目を開けると、そこは色の違うキレイなシャボン玉がいくつもいくつも フワフワと浮いている一面銀色の場所だった。 「ここは・・・しんのすけの心の世界?」 よく見るとひとつひとつのシャボン玉に今までの思い出が描かれていた。 「これは・・・しんのすけの記憶?・・・しんのすけ。 しんのすけー!!いるのか?!!返事しろよー!!!」 僕はひたすらに歩くことにした。 歩くとどんどんシャボン玉はなくなり銀色の世界は黒いものに変わっていった。 どんどん歩くことも苦しくなってきた。 「しんのすけ・・・待ってろ。今僕が・・助けに・・行くからな!!」 この黒い世界に押しつぶれそうになる想いを僕は声に出しながら進んだ。 「・・・あ!!」 いた。黒い世界の先っぽにしんのすけがちょこんと座っていた。 「しんのすけーー!!!」 僕は走って駆け寄った。 「しんのすけ・・・帰るぞ。」 ゆっくりとしんのすけはこっちを振り返った。 「あんた・・・誰?」 「僕だよ。」 「ずっと前に見たことある気がするけど・・・ オラ過去にはこだわらない主義だから。」 「しんのすけ!!過去じゃないだろ!僕たちはずっと友達じゃないか!」 「オラ知らないもん〜だみのも〜んた。」 「今度は僕がお前を助けるんだ!一緒に帰るまで絶対に帰らないからな!」 「・・・オラ、君を助けたの?」 「・・・うん。しんのすけに助けられただなんて一生の恥だけどな。」 「ふうん。そう思うならなんで助けようとするの?」 「それは、僕たちがずっと大親友だからだよ!これからもそうでいたいの!」 「待ってたゾ、その言葉。ほいじゃ、帰ろうかな?」 「本当??」 「本当。オラ、男に二言はなタイプだから。」 「・・どんなタイプだよそれ。」 「あは〜ん、そんな・タ・イ・プ。」 「気色悪い声出すなよ!」 「トオルちゃんたら〜照れちゃってえ。」 「!しんのすけ!今なんて?」 「トオルちゃん?・・・オラなんで知ってるんだ?」 「しんのすけ。」 僕が流した涙が黒い地面に落ちた瞬間 辺り一面に花が咲いた シャボン玉が花火のようにきれいに割れた 僕は赤いボタンを押した 目が覚めるとマサオくん、ネネちゃん、ボーちゃんの姿があった。 「風間くん!どう?」 「大丈夫。時期に目を覚ますよ。・・・未来の僕は?」 「どこかに行っちゃったわ。」 すぐだった。 「うーん。おやすみみんな!!」 「しんちゃん!!」 「おっす!」 「良かったぁ〜。」 みんなで再会を分かち合った。 そして・・・ 「みんな。タイムマシンの用意ができたよ。きて!」 未来の風間くんが帰ってきた。 「はーい!!」 「未来の僕!!未来のみんなによろしく!!」 「さびしがりやのトオルちゃん、ぐれるなよ?」 「だー!もう分かってるって!さあ乗った乗った!」 僕たちはタイムマシンに乗り込んだ。 「じゃ、きみたちの2007年に送り届けるね!」 「ほーい。」 シュッ 「2007年についたよ。でも、昨日の夜に戻ったから。 風祭薫たちが現れたところだと、過去が変わっちゃうからね。 このタイムマシンから外に出たら、昨日の夜君たちがいた場所に戻るから。」 「ほい!!」 「じゃあお元気で!」 オラたちはみんな一斉にタイムマシンから降りて消えた。 シュッ そのあとすぐ未来の風間くんが乗ったタイムマシンは姿を消した。 「トオルちゃん。朝よ。起きなさい。」 「う、うん、ママ。」 「夕べはひどくうなされていたけど大丈夫だった?」 「あ、うん。大丈夫だよママ。」 「しんのすけーー!!起きなさい!もう幼稚園バスきちゃうじゃない!!」 「ほーい。」 「お着替えして顔洗ってご飯食べて歯磨いて!」 「母ちゃん!1番大切なことを忘れているゾ!」 「な、なによぉ?」 「う・ん・ち。」 「そうそう、やっぱり1番大切なのはなんといってもお通じよね〜・・・って! そうじゃないでしょ!あーーーー!!!もうこんな時間!!しんのすけ! 急ぎなさーい!!」 「やれやれ。朝からそんなに怒るとシワが増えるゾ。」 「誰のせいだと思ってるの!!!!待ちなさい!」 プップ 「よっみどり!」 「よっみんな。」 「おはようだろ?」 「もう〜風間くんったら相変わらずなんだからぁ。」 「しんのすけこそ、少しは学習しろよな!」 「2人とも、まあまあ。」 いつもと変わらない朝。 でもいつもと変わらない日常をこんなに大切に思える。 いつもよりもずっとずっとみんなを大切に思える。 僕、未来に向けてがんばるよ。ずっとこの4人と一緒に。 「オラもがんばるゾ。1人で先走っちゃいやだゾ?」 「・・しんのすけ。・・・分かってるよ。みんな一緒だ。」 春の風が優しく僕らを包む。 今までもこれからもずっと。 END |