トップ > 小説 > 作成者・ラリー・コーエンの友達とすれ違った人さん
大衆が行き交う雑音の繁華街。 生のエネルギーを奪うかのような人混みの中を、 野原しんのすけと風間トオルが歩いている。 しんのすけから借りたハンカチを無くした風間は、 しんのすけにハンカチを買ってあげる為に一緒に買い物にきていた。 「しんのすけ、グズグズするなよ。本当にこの先に店があるのか」 「もちろんもちろん、もちろんろん」 お姉さんに夢中のしんのすけ。 「こらしんのすけ、だからお前はいつまでたっても駄目なやつなんだ」 「そんな事言ってもトオルちゃん、見たいものは見たいでしょう」 「トオルちゃんって言うのやめろ! だいたい見てるだけでいいのか? モテるようになりたいなら僕みたいなデキる男にならなきゃ」 「デキるって何ができるの? もえPのものマネが出来るの? 」 「そうそうそう、もえもえピピピッもえピピピッってちがーう」 「しっかり出来てるよ」 「そっそれは、しんのすけ達がいつもやってるからさ」 「ふ〜ん」 怪しげな顔をするしんのすけ。 「そんな事より、ほら着いたよ店に」 「おぉ〜」 二人は立ち止まって店を見上げた後、店に中へ入っていった。 「もえPのもえもえハンカチもいいし、アクション仮面ハンカチもいいし、 ほしのあきちゃんのハンカチも捨てがたいな」 しんのすけは両手にハンカチを取り、首を傾げながら選んでいる。 「早くしろよしんのすけ。外でまってるから」 風間は待ちくたびれた表情で言い、店の外へ出た。 「まったくせっかくの休日だっていうのに。それもこれも僕のせいか」 風間は近くの電話ボックスに入った。 ポケットからサイフを取り出し、十円玉を入れ電話をかけた。 「ママ、ちょっと遅くなるかもしれない」 わかったわトオルちゃん。あんまり遅くなっちゃ駄目よ」 「わかってるよママ」 電話を切った直後、公衆電話が鳴り出した。 「もしもし」 「電話を切ったら撃つ」 「えっ。何ですかいきなり、フォーン・ブースみたいに」 「物わかりがいい奴だな。自分の状況がよく分かってる」 しんのすけが、電話ボックスに近づいてきた。 「来るなしんのすけ」 「何だよ風間くん。うるさいな」 銃声が響く。 「しんのすけ」 風間は叫んだ途端、あきれた。しんのすけはお姉さんに目を奪われ、 何もなかった。そして電話ボックスの中へ。 「どうしたの風間君」 「どうしたのじゃないだろ、危なかったんだぞ。今僕は電話で脅されていて、 ここから出たら殺されちゃうんだよ」 「ほぉほぉ、フォーン・ブースですな」 「おい風間。俺の話をきけ」 「いったい何が目的なんですか」 「それは言えないな。よし、まず何かやってもらおうかな」 「ちょっと待ってください。僕たち子供ですよ」 「だから何だ。回りを見て見ろよ。さっきの銃声で人だかりが出来てるだろう」 「繁華街からだいぶ離れたのに変だなぁ」 「いや、それは近くで臼井義人のサイン会があったからな。よし叫んでもらおう」 「何をですか」 「もえピー愛してるって叫べ」 「嫌ですよ」 「もっと人が多く集まってからの方がいいのかな」 「わかりました。もえ・・・」 「おいどうした」 風間は凍り付いた。 野次馬の中に、ネネちゃん、ボーちゃん、マサオくんがいた。 「おーいみんなー」 しんのすけが手を振る。 「さあ、言え死にたいか」 「分かりました」 風間は、電話ボックスのドアを開けた。 「僕は、もえピーを愛しています」 大勢が一斉に引いた。 ネネちゃんとマサオくんは笑い転げた。ボーちゃんは無表情。 しんのすけは、風間の肩に手をかけた。 「ま、薄々気付いていたけどね」 「ちがーう。言えって言われたんだよ」 つづく |