タイトル「誰も知らない冒険」 ふたば幼稚園では、交流会の準備の真っ最中。 しんのすけは、おふざけ半分で、テーブルクロスをしき、 ネネちゃんはイライラしながらテーブルを拭き、 風間君はマジメに道具を運んでいる。 マサオくんは、せっせと掃除してるし、 ボーちゃんは雑巾で窓を拭く。 今回の交流先は、しんのすけの大好きな ななこさんのいる大学。 お菓子、料理を食べ、ゲームをしたり、 お仕舞いには映画を見るのだが・・・。 「もうっ!なんで映画が戦隊ヒーロー物なのよ! あたしは、ラブストーリーがよかったのに!!」 どうやら、ネネちゃんのイライラの原因は、 映画が自分好みでなかったことだったようだ。 「しょうがないだろ?大学の人は ボクらによかれと思ってその映画を選んだんだから。」 風間君がネネちゃんを宥めるように言う。 しかし、ネネちゃんは野獣のような顔で 風間君をにらみ、 「じゃ、何よ!アンタはその映画が面白いって 思うの!?え!?どうなのよ!?」 と大声で怒鳴る。 そこへ、よしなが先生が走ってくる。 「コーラ、二人とも。ケンカは止めなさい。」 そして、二人の間に入る。 さらに、三十分後・・・。 最後の長テーブルに、テーブルクロスをかける。 しんのすけ、ネネちゃん、マサオくん、風間くん、 ボーちゃん、よしなが先生の六人で。 「いち、にの、さんっ!!」 先生の掛け声で、みんなはクロスを宙に浮かせる。 すると・・・。 カラン、という音と共に、何かがクロスから出てくる。 みんなは えっ、と思い、音をさせた物を見る。 それは、見たこともないものだった。 赤いリボンの真ん中に、青い玉。 鈴かと思ったが、それは音を出す為の穴がなかった。 一見は猫や犬の首輪みたいだったが、 そうにも見えない。 ネネちゃんはそれを見て、 「なぁに、これ?」とありのままを感想を口にする。 しかし、よしなが先生も、風間くんも、 ボーちゃんも、首を振る。 すると、しんのすけがそれを手に取り、 「オラ、このアクセサリーの持ち主探してくるー!」 といい、教室を後にする。 続く。 ※注意!キャラ崩壊の可能性あり。 それでもよし、な方だけどうぞ! 誰も知らない冒険〜第二章・茶色の犬〜 しんのすけは手にガラス玉のついたリボンを持ち、 走った。いや、走っているというよりは、歩いているが。 「お。」 しんのすけは木の下にいる子犬を見た。 見た目は自分の飼っている犬、シロにそっくりなのだが しかし、色が違う。 シロは名前の通り、真っ白なのだが、 その犬は茶色だった。 「おお、シロそっくり!」 しんのすけは、与えられた使命を忘れ、 木の下の子犬のところへ一直線。 「よ!」 しんのすけが声をかけても、犬は俯いて しょんぼりとしていた。 「何?嬉しいことがあったの?」 そんなしんのすけに犬は飽きれる。 「ボク、大事な首輪を無くしたんだ。 あれは、ボクの宝物なのに・・・。」 そして、しんのすけに視点を移したとき、 黄色のポケットからチラリと見える赤いリボンに 犬は驚く。 「!!それ・・・・。」 しんのすけは、犬が何を指すか、分かったらしく、 ポケットから首輪を取り出す。 「これ?」 すると、犬は嬉しそうに首を縦に振る。 「うん!ありがとう!・・・えーと・・・。」 しんのすけの名前を知らなくて、戸惑う犬に、 「オラ、野原しんのすけ。しんちゃんって呼んでね。」 と、暢気に自己紹介する。 犬はニコニコ笑い、しんのすけから首輪を受け取る。 「ありがとう。しんちゃんにお礼をしなきゃ。 そうだ!時間を上げるよ。」 しんのすけは戸惑って、 「え?時間って?オラ・・・。」 しんのすけの返事も聞かず、犬は呪文を唱える。 「大丈夫だよ、君がそっちの世界にいる間、 時間は止まってるから。じゃあ、いってらっしゃい。」 間もなく、しんのすけの体は光に包まれる。 「うわぁ、ましぶい(眩しい)ゾっ!」 そして・・・・。 しんのすけの目の前の視界が眩しくなくなる頃には、 別の場所にいた。 見慣れた幼稚園の敷地ではなかった。 うっそうと木が茂る森、夜みたいに真っ暗な空、 生暖かい風、海草のような気持ちの悪い草・・・。 それは、しんのすけの恐怖心を煽るのに十分な 風景だった。 「・・・怖いよ・・・。父ちゃん、母ちゃん、 ひま、シロ・・・。」 しかし、誰も呼びかけに応える者などいなかった。 「どうしよう・・・。」 しかし、こんな所にいるのも嫌だ、と考えたしんのすけ。 行く当てもなく歩くのだった。 続く。 ※シリアス展開なので、注意してください! 第三章〜首飾り〜 しんのすけはてくてくと歩いた。 すると、木の隙間から火が見えた。 「おおっ!火遊びしてるのかな?」 などと暢気に言いながら、火の傍に近づく。 火の台を囲うように、人がたくさんいた。 しかし、みんな大人で殆どが男。 「ん?誰だお前?」 茶髪の男がしんのすけを睨む。 気の弱そうな男が、 「ここらの子じゃなさそうだね・・・。」 とつぶやく。 しんのすけは、男を無視し、女の人を探す。 すると・・・。 橙のシャツ、白のデニム、綺麗な黒髪・・・。 間違いない。 しんのすけの大好きな、ななこさんだった。 「ななこおねいさーん!」 しんのすけは嬉しくて、駆け寄る。 だが、ななこは物珍しそうな目で、しんのすけを見て、 「キミ、誰?あたし、あった覚えが無いけど・・・。」 と言う。 しんのすけはその言葉が胸に、心に、体に、 どっしりと圧し掛かった。 「!!そんな・・・!!」 しんのすけはその場でうな垂れる。 そんなしんのすけを無視し、男達とななこは 話を進める。 「誰が行くんだよ?一人はななこで決定だけどよ・・・。」 茶髪の人相の悪い男は、皆をジロリ、と見回す。 「い、嫌だよ!僕、赤い物なんて一つも持ってないし・・・。」 と気の弱い男は言う。 「じゃあ、後は誰だよ。今回の・・・、 この、首飾りに選ばれた人間は・・・。」 茶髪の男は目の前に、首飾りをぶら下げる。 鎖は銀、宝石は赤色、宝石の周りは金で出来ている。 「あ、もしかしたらその子かも・・・。」 気の弱そうな男が言うと、 のう一人の男は合点したかのように頷き、 「そうか!」 と言う。 「え?選ばれたって、何のこと?」 しんのすけは訳がわからずに、キョトンとする。 「な、行ってくれよ!行ってくれるととても助かるんだ。」 男は、首飾り無理やりしんのすけに渡すと、 逃げるように去った。 「しょ、食料とマントの入ったリュック、台の下だから!」 と、弱そうな男も逃げていく。 続く。 ※注意!キャラ崩壊あり! 第四章〜雨〜 しんのすけは、ななこと一緒に森の中を進む。 青色のリュックを背負って。 「いや〜、オラ、ラッキーだな〜。 こんな首飾りもらえるなんて。」 と言い、首飾りを手で遊ばせ、ルンルンと飛び跳ねる。 ななこは冷淡な顔でしんのすけを見つめ、 「あなた、断ればよかったのに。 それは、龍への生け贄の印なのよ。」 と言う。 しんのすけは目を皿のようにして、 「え?生け贄って、何?」 と質問を投げる。 「簡単に言えば、龍の食事になるのよ。」 と優しく言うななこ。 「え!?お、オラ、美味しくないのに!!」 としんのすけはやや抜けたことを言う。 「だから、断れば・・・。」 と言いかけたとき、ポツポツ、と雨が降り始める。 直に矢のような降り注ぐ雨に変わったのは言うまでもない。 「おわ〜っ!!」 しんのすけはリュックを傘代わりにする。 しかし、無駄なことだった。 リュックは脱ぐに滲み、リュックは色を変える。 そして、しんのすけを頭を濡らした。 「あっちの木の下に!」 ななこは大木を指さす。 しんのすけはすぐに賛成し、大木の下へ・・・。 流石に木の下は濡れていなかった。 「あ〜あ・・・。お菓子や干し肉、濡れちゃったぞ・・・。 でも、マントは濡れてないや・・。」 しんのすけはリュックの中を見てブツブツ言う。 「しんのすけ君。」 ななこは顔をタオルで拭くと、しんのすけに話しかける。 「しんちゃんでいいよ。なあに?」 としんのすけは返事を返す。 「あなただけ、先に行きなさい。 この森を抜ければ、直に村があるの。 そこに、優しいお爺さんがいるから・・・。」 しかし、しんのすけは目の色を変えて 「ダメだぞ!ななこおねいさんも一緒に・・・。」 しかし、ななこは首を振り、 「いいわ。どうせ、私は・・・。 必要のない人間だから・・・。」 と悲しげな顔で言う。 「そんなことない!」 しんのすけは雷のような声で怒鳴る。 「ななこおねいさんは必要な人だぞ! オラは、ななこおねいさんが、大好きなんだぞ! だから、そんな事言わないで欲しいぞ・・・。」 しんのすけはさらに続ける。 そんなななこの目に涙が走る。 「ありがとう・・・。しんちゃん。」 そして、涙を拭き、ニッコリとした笑顔になる。 「よし!マントと付けて!走るわよ。」 しんのすけはコクリ、と頷く。 リュックからマント出し、背中に付ける。 そして、二人は手を繋ぐと走り出した。 続く。 |