トップ小説作成者・ネネちゃんのうさぎさん


〜みさえのシンデレラストーリー〜

ここはお城のふもとにある小さな村。ここにはみさえという娘(といっても29
歳だが)がおったそうな。
「はぁ〜あ、いつになったら白馬に乗った王子様が現れるのかしら、、、」
これは未だ独身のみさえのいつもの口グセである。
「さ、今日からりんごダイエットよ!ジムなんて通うお金がないし!」
と、みさえは森へりんごを採りに行く事に。ところがりんごが1つもありません。
「おかしいなぁ。いつもは山ほどあるりんごが、、」
しかたなくみさえは帰ることに。
「しゃーない、買い置きしてたカップ麺でも食べるか」
するとみさえの目に掲示板のチラシが飛び込んできた。
『お城のメイドさん大募集!採用されたアナタには玉の輿とお見合いできるチャ
ンス!』
「こ、こ、これだー!」
こうしてみさえはメイド試験に挑戦することに。
しかしどうやって挑めば試験に有利なのか。
「そうだ!こういう時にこそ電話でおケイに相談よ!」
おケイはとなりの村のお城でメイドをしている。
「もしもしおケイ?あのさー、今度メイド試験受けようと思ってるんだけど
なにかアドバイスしてくれない?」
「じょ、冗談でしょ!?」
「何よ、あたしはマジよ」
「うーーん、しいて言うならみさえは無理だね」
「はぁ?何でよぅ」
「いい?これは私の考えだけど、おそらく審査員は可愛さやスタイルを重視
して決めると思うの。だから、、」
「はいはい、そっからは聞かなくても分かる!みさえの場合、三段腹でスタイル
はNG、小じわが目立つから可愛さもNG、ついでに言うと、その歳でメイド服
ってどうよ?、、でしょ」
「ま、そんなカンジ」
「でもさー、あんただって結構歳でしょ。メイド姿もきついものがあるんじゃ
ないのー?」
「私は10年前のスタイル&可愛さを維持してるから」
「、、、分かった。とりあえずありがとう」みさえは受話器を置いた。
それから一週間、みさえは試験をクリアするため、様々な苦労をしたという。
そして試験当日
「よし!これなら勝てる!」
みさえはなんとか三キロ減らし、若く見える化粧をし、可愛く見える洋服も
買った。ちなみに服は高級ブランドショップの物。
「うっしゃあ!行くぜ!」
こうしてみさえはお城へと向かった。

「、、でかい、、さすがお城ね、、」
みさえはお城の前に立っていた。
「これどうやって入るんだろ?」
みさえは巨大な門を前に立ち往生していた。
「ジャンプ、、は出来ないし、根性で開けるか?」
すると、みさえの目にある物がとびこんできた。
「インターホンあった」
みさえはインターホンを鳴らした。
ビーッ、と言う音が城中に鳴り響く。押してよかったのかコレ?
「メイド希望の方ですね?城の中へどうぞ」
インターホンから声が返ってきた。今の声、子供?
ギギー、と門が開いた。
みさえはおそるおそる城の中へ入っていった。
城の中へ入ると、フルーツのような、甘い香りがした。
(なんだろ?この香り、、)
「さ、試験会場はこちらです」男の召使いが案内する。
(なんかこの人もフルーツの香りがする)
階段を上って行くと、ドアがあった。
「お入りください」召使いがドアを開けた。
「あ、どうも」
入ると、みさえは思わず鼻をおさえてしまった。なんだこのフルーツ臭は!?
部屋には長細い机と、5人の子供達。
「あの、こんにちは、、」
「ま、とりあえずそこすわれば〜」子供のひとりが机の前にある椅子を指した。
「あ、はい」みさえは椅子に腰掛けた。
「はじめまして、僕は審査員のトオルといいます。」
「ネネでーす」
「ボー、、」
「マ、マサオです」
「オラ、しんのすけ!すきなものはきれいなおねいさんとアクション仮面と
チョコビとぉ、、」
「しんのすけ!名前だけ言えばいいんだよ!、、あっ、すみません!
じゃ、あなたの名前と年齢を教えてください」
「はい。えと、名前はみさえです。年齢は、、29歳です、、」
「ほうほう、見かけによらず、、」
(えっ、若く見えたのかしら!?)
「若いなあ、34あたりだとおもったゾ」
「そりゃどうも、、」
「しんのすけ!失礼だろ!」
「でも、29歳には見えないわよねぇ」
「ぼく、、も、34歳かと、、思った、、」
「ほうほう、やっぱりボーちゃんとオラは気が合いますなぁ」
「えへへ、、」
「うわーん!ぼく29歳に見えちゃったよー!」
「マサオくん、それでいいんだよ、、」
「アハハ、、ハ、、」

みさえは笑うしかなかったそうな。
「じゃ、となりの控え室で待機しててください」
みさえは奥の部屋へと案内された。
その部屋には二十代前半くらいの女と五十代半ばほどのおばさんがいた。
「どうも、こんにちは」
「こんにちはー」
「私はみさえ。あなたたちは?」
「わたしはミッチーっていいまーす」
「あたしゃキタモトだよ、よろしくね」
「みなさんはどうして試験に?」
「わたし、ヨシリンってゆう彼氏がいるんですけど、ヨシリンの大切にしてた
フィギュアを踏んじゃったんです。そしたらアイツ、すっごく怒っちゃって
たちまち大ゲンカです」
「ふんふん、それで?」
「で、たまたまこのチラシが目について、あんなヤツより玉の輿に乗って
幸せになろうと思ったんです」
「そうなの、、キタモトさんは?」
「あたしゃ、子供の頃からお城に入るのが憧れでね。一度でいいから、城の中を
見てみたかったのさ。玉の輿は別にいいからさ」
「そうだったの」
「で、みさえさんは?」
「えっ、あ、あたしは、、」
すると突然ドアが開いた。
「皆さん、どうやらもう希望者がいないみたいなので、ボクら審査員といっしょ
に王様の部屋に移動しましょう」
「ここから、、階段を、904段上れば、、王様のへや、、」
「きゅ、904段!」
一同は階段をのぼった。現在348段目。
「き、キツ〜い、、」
「あたしの足にゃこたえるよ」
「ちょっと、この城にはエレベーターって物はないの?」
「あるけど、足がくっさ〜い、王様せんようのやつしかないゾ」
「もう一台作れよな、、」
二時間後
「さ、着きましたよみなさん」
「もう、、ダメ、、」
「みさえおばさん、お化粧くずれてるゾ」
「おばさんって言うなーっ!!ところであんたたちなんで平気なのよぉ」
「ま、もう慣れましたから」
「それにみさちゃんとはとしが24もはなれてるしね」
「うんうん!」
「くっそ〜、こいつら可愛くねえ、、」
「王様、メイド希望の者たちを連れて参りました!」トオルがドアをノック
した。
「よろしい、連れてきなさい」ドアの向こうで声が返ってきた。
「じゃ、入ってください」トオルがドアを開けた。
みんなが部屋に入った。
「ようこそ我が城へ!私は、世の中で一番足のいい香りがする王様。
またの名を王者ひろしと言う!」
「こいつ、、」
「色んな意味でイタいですね、、」
「で、どの者を採用しますか?」
「君達はどう考えているんだ?」
「うーん、一番メイド服が似合いそうなのはミッチーって娘かな。
でも、一番おそうじとかお料理がおじょうずそうなのはキタモトさんだね」
「みさえさんはどうするの?」
「あの人、、どれもあてはまらないよね、、」
「ドロボー撃退係、、とか、どう、、?」
「おおっ、いいね!みさちゃんのこわーいすっぴんを見たら、どんなドロボー
だってにげちゃうとおもうゾ」
「じゃ、それに決定でいい?」
「さんせーい!」
「勝手に決めるなぁー!!」
「うるさいなおばさんは、まったくぅ」
「またおばさん言いやがったなテメー!」
プルルルル、、ミッチーのケータイが鳴った。
「ちょっとすいません、はいもしもし、、ヨシリン!?
な、何よ。え!許してくれるの?ありがとーヨシリン、、
愛してるぅ。ううんわたしの方が愛してるってば!んもー、じゃ、早く帰るね。
うん。じゃね」
ピッ、ケータイを切った。
「というわけであたし帰りまーす!だって愛しのヨシリンが待ってるんだもん!」
ミッチーは早々と階段を下っていったそうな。
「で、残ったのは、キタモトさんとみさちゃん」
プルルルル、、今度はキタモトさんのケータイが鳴った。
「はいはい、キタモトだよ。あ、ロベルト。え?うどんが食べたくなったって?
鍋に作りおきしてたじゃないか。えっ、全部食べたって!?
仕方ない子だねえ、、分かった、今から戻るよ」
ピッ、ケータイを切った。
「というわけで、あたしゃ帰るよ。あたしの姉の息子のロベルトと一緒に住んで
るんだけど、あの子日本食好きでねえ。あの子が自分で何でも出来るからって
言うから来たのに、、」
キタモトさんはしぶしぶ階段を下りていったそうな。
「てことは残ったのは、、、」
『はぁ、、、』
「何全員でため息ついてんのよ!!」

「君達、ほんっとにもうメイド希望者はいないのかね?」
「はい、残念ながらもう、、」
「『残念ながら』ってなんなのよ!」
「しかたないよ。アレしかいないんだから」
「、、、とうとうアレ呼ばわりか、、」
「しかたない、みさえ、採用!」
「よかったねー」
「うれしくない、、、」
「みさえさんにはここで一週間ほど働いてもらい、その実力しだいで玉の輿との
お見合いができます」
「ちょっとまって、もし仕事をこなせなかったら?」
「もちろんお見合いはさせぬ!ここでずーっと働いてもらう!」
「そ、そんなぁ」
「じゃ、まずオラのおへやのおかたづけね」
「じゃあ、その次はネネのウサちゃんのお洗濯ね!」
「じゃ、悪いんですけどビデオの録画を、、」
「もえPだな」
「ちがーう!今日はふしぎ魔女っ子マリーちゃんだ!、、ハッ!」
「やだー、風間くんってそんなシュミだったの?」
「前からうすうす気づいてたけどね、、」
「ああ、、、ボクのエリートなイメージがぁ、、」
「ま、そう気をおとすなよ」
「気を落とさずにいられるかぁ!!」
「合格しないほうが良かったのかも、、」
みさえは心底後悔するのだった。

「じゃ、とりあえずコレ着といてください」
ネネがみさえに渡したのは、黄ばんだ布だった。
「なに?このボロ布、、?」
「メイド服よ」
「なっ、、!?」
みさえは自分の想像とは明らかにちがう物を前にあ然とするのだった。
「コレをどうしろと?」
「だからぁ、そこの個室で着替えてきてよ。
 ぜっ               たいにだれものぞかないから!」
「うんうん!」
「何もそこまで自信たっぷりに言わないでほしいなぁ、、」
5分後
「もーいーかい?」
「もういいよ、、」
みさえは「体に黄ばんだカーテンを巻きつけたよーな」状態になってしまった。
「みさちゃん、お似合いだゾー!」
「ありがとよ、、、」
「じゃ、オレは髭剃りの時間だから」
ひろしは部屋を出て行った。
『ボーン ボーン ボーン、、』大きな古時計が三時をしらせた。
「やったー!おやつの時間だ!」
「たしか今日はたいやきだったわ」
「ぼく、しっぽの先まであんこが入ってるのがいいな」
「、、あんこ、は、つぶあん、、が、いい、、」
「じゃ、そーゆーことでー」
こうして部屋にはみさえだけが取り残された。
「、、ったく。どいつもこいつもオランダも、、」
他の部屋の場所は分からなかったため、みさえはとりあえずこの部屋を掃除
する事に。
「あれは王様のイスね、、ちょっと座ってみちゃお」

「さっすがぁ、いい材質使ってるわねぇ」
くるくるとイスで回るみさえ。
『ピンポーン!ウィィィン、、』
イスが上昇した。
「ちょっ、、なにコレ!?」
『降りて下さい』
3mほど上昇したところでアナウンスがなった。
「えーっ!?この高さから!?」
『降りて下さい』
「あーもう!分かったわよ!見てなさい、中学の頃カンガルーのみさちゃんと
呼ばれた飛びっぷりを!とりゃーっ!!」
みさえは見事に腹から落ち、その後三分間のたうちまわることになった。
「いてててて、、なんで腹から落ちるのよ〜」
するとみさえは、イスがあった場所の床にぽっかり穴があいていることに気がつ
いた。
「ん、、、?」
穴をのぞいてみると、ダンボール箱がしまってあった。
「なにコレ?」
みさえは箱を取り出した。
するとドアがあき、あいつらが帰ってきた。
「ずいぶん小っちゃいたいやきだったなー」
「私はショートケーキがよかったのよねぇ」
「おばさん、おかえりーっ、、て、おーっ!?」
「イスがあがってる!」
「なん、で、、」
「いや、ちょっと色々あって、、アハハ、、」
『じーーーーーっ』
「話します、、」
みさえはこれまでの事をすべて話した。
「なるほど、イスで遊んでたら突然動いたんだね」
「そうなの」
「ねえ、これってなにが入ってるのかな?」
「気になるわね」
「じゃ、あけちゃお〜」
しんのすけが箱をあけた。
「な、なにコレ?」
中には茶色い杖や、たくさんの書類が入っていた。
「これ、ふつう、、のつえ、じゃない!」
「ふつうの杖じゃないって?」
「よく分からない、、けど、すごい、パワー、を感じる!」
「おお!この紙のもじ、オラにも読めないゾ!」
「しんのすけだから読めないんだよ!貸せ!、、え、アレ?、、僕にも読めない
 !?」
「フゥー、今日も髭剃りの刃折っちゃたぜ。
 って、何やってんだお前らァーーーーーー!」
「す、すみません王様。でもみさえさんが、、」
「うるさい!お前らも連帯責任だよ!邪魔なガキはいなくなるし、おやつ代も
出さなくていいし、一石二鳥だよ!」
「ひ、ひどい、、あんまりだわ、、」
ネネが泣き出した。
「ピーピーうるせぇなあ、お前らなんかいてもいなくても同じなんだよ!」
『バシッ!』
みさえのビンタがひろしの顔に直撃した。
「痛って〜。おい!王者に向かって何すんだよ!」
「何が王者よ!王者ってのはねえ、自分だけじゃなくあらゆる人たちのことを大
切にする人のことを言うのよ!いてもいなくても同じ?ふざけんじゃないわよ!
今ここにいるじゃない!世の中には同じなんてこと一つも無いのよ!
箱にわけわかんない物入れて、それで責任負わせるなんてバカじゃないの!!」
「あ〜っ、バカって言ったなテメ〜」
「言ったわよ。悪い?」
「う、うう、うううう、、うえ〜ん!!
 生まれて初めてバカって言われた〜もうお前らなんかクビ!クビだもん!」
「こんなバカおやじのいる城なんかこっちから願い下げだわ!
 みんな!帰るわよ!」
「ほっほ〜い!」
みさえと五人の子供たちは城を出て行った。みさえがブランド物の服を忘れずに
持って帰ったのは言うまでもない。

「さて、、これからどうしようか、、」
みさえがつぶやく。今、城の門を出たところである。
「ま、責任はみさちゃんにあるわけだし、オラたち5人はみさちゃんのうちに
イソーローさせていただきまーす!」
「えーっ!そんな勝手にぃ」
「みさえさん、居候させていただくのは構わないんですけど、相応なスペースが
みさえさんの家にあります?」
「、、えっ!?」
「あたしたち、狭い家に住むのはイヤよ」
「は、ははあ、、」
みさえの家は、、お世辞にも広いとは言えません。
30分後
「ここなんだけど、、」みさえが小声で言った。
「これって、、、」
「ボー、、、」
猫のひたい程の土地に建っている猫のひたい程の家。三匹のこぶたの三番目の
子豚の家をおもいっきり平べったくした家。原始時代から建ってそうな家。
さまざまな罵声が飛び交うなか、みさえはドアを開けた。
「おじゃまするゾー、、おおっ!」
「うわっ!」
「きゃっ!」

「なにコ、、」
「それ以上言わないで!言うな!今片付けるから、ねっねっ!」
みさえはしんのすけたちを無理やり外に押し出した。
「今の何だったのかしら、、?」
「さあ、、でも思い出さないほうがいいと思うよ」
「この物語を読んでいるみなさんへ!ちょっとスゴイものをみちゃったけど文章
 あらわせないのでご想像でおねがいするゾ!」
「はあ、、もう、入って、いいよ、、」
みさえがぜえぜえ言いながら出てきた。
「みさちゃん、三キロやせた?」
「ふっ、あったりめぇよ」
みんなはおそるおそる部屋へ。
「おお〜、びふぉーあふたーってカンジ〜」
「こぢんまりとした可愛いへやねぇ」
「、、いい、ね、、」
「じゃ、アップルティーでも出すね」
みさえがアップルティーを注いだ。
「はい、どーぞ」
子供たちの前にそれぞれ置かれた。
「これ、、?」
「飲んでよ、おいしいわよ」
「いや、でも、、」
「ちょっと、ねぇ、、」
「なんか、かわいそうでのめないゾ、、」
「え?かわいそうって、、?」
「ぼ、ぼく、なんかフラフラする、、」
「ボ、ボー、、、」
マサオ、ボーがたおれた。ネネ、トオル、しんのすけもそれに続いた。
「ちょ、ちょっとあんたたち、どうしたのよ!」
「み、みさえさん、早く救急車を、、」
「うん!今呼ぶわ!」
みさえも付き添い、しんのすけたちは村の病院へと運ばれた。
「、、で、この子たちはどうしちゃったんでしょうか?」
みさえが組長先生、、じゃなくて、院長先生に説明をもとめた。
「はい、まず最初に言っておきたいのはこの子たちが人間ではない、ということ
 なんです」
「え!?じゃ、この子たちは?」
「この子たちはりんごを素としてつくられた、妖精です」
「よ、妖精!?」
「はい。今、そのりんごの事を調べたのですが、どうやらこの村の森のりんごと
 一致しています。おそらく何者かが魔法をかけ、妖精にしたのでしょう」
「で、あの子たちのぐあいは?」
「今はぐっすりねむっていますよ」
「よかった、、」
「しかし、問題があります。実は、あの子たちにかけられた魔法が解けかかって
 いて、消滅してしまうかもしれないのです」
「消滅!?」
「はい、消滅をふせぐ方法はただひとつ、妖精から人間になれる魔法のミルクを
持っているベイビーアゲハをつかまえる事です!」
「ベイビーアゲハ、、?」

みさえは虫取りあみを持って森の中にいた。
『ベイビーアゲハはその名の通り、赤ちゃんのアゲハチョウです。
 昼間の十二時から三時まではお昼寝をしているので、捕まえるならその時が
 チャンスです!』
現在、午後十二時半。
「よし!あいつらのためにも、いっちょ頑張るか!!」
みさえは森の中をずんずん歩いていく。
「赤ちゃんのアゲハチョウってことは芋虫って事?だったらヤだなぁ」
みさえは湖に出ていた。湖の真ん中にはハスの葉が浮かんでいて、そこに何かが
たくさん集まっている。
「なーんだあ、こういう事だったの」
ハスの葉の上には、見た目が人間そっくりの赤ちゃん(ただしサイズは蝶)に
アゲハ蝶の羽がついた可愛い子たちが集まって寝ていたのだった。
「お昼寝中失礼しますっ!!」
みさえは網を大きく振りかぶり、あっという間に三十数匹を生け捕りにしてしま
った。(湖が浅かったので歩いていけました)
「えーっと、魔法のミルクは、、あれ?なーい、この子は、、あれー、どの子も
持ってないじゃない!」
そうこうしてる間に、ベイビーアゲハたちが一斉にウワンウワン泣き出した。
「ひいい〜っ、ごめんなさいカンベンしてもうしませ〜ん!」
みさえは泣き声とともに発生する超音波に耐えかねて網を放り出し逃げ出して
しまった。
「はあはあ、、いったいどうなってんのよ、、はっ、そういえば、、!」
『魔法のミルクは貴重な物なので、ベイビーアゲハの中でも一番強い、ボスしか
持ってないんです。小さいからって甘く見ないほうがいいですよ、ボスは大人
一人倒すことくらい、わけないんですから、、』
「そうだった、、でも網もないし、、どうしよ、、」

そのころベイビーアゲハたちは、、、
「とと!とーととっとと!」訳 ボス!怪しいヤツがこの森に入ってきました!
「おーお、おおおっおーお!」訳 アイツ、どうやら魔法のミルクを狙ってる様
 です!
「うー、うううーおー!」訳 ボスのお力でぶっとばして下さい!
「たい、、、」訳 いいだろう、、、

「はあ、、なんか疲れてきた、、」
みさえは座りこんでしまった。
「たあー!たい!」訳 ちょっとそこのオバさん!
「え?上から声が、、」
「たいやーー!!」
みさえが上を向いた瞬間にベイビーアゲハが一匹突進してきた。
『ゴツン!!』
「いった〜い、、、」
「たひぃ、、」
二人はたんこぶができるほどの衝撃でぶつかった。
「あっ!その首にぶら下げてるのは魔法のミルク!てことはアンタボスね!」
「た!たたいのたいや!」訳 そ!あたしがボス!(ベイビーアゲハのひまわり
バージョンだと思ってください)
「一度見つけた獲物は逃がすワケにはいかないわよぉ!」
みさえが飛び掛ってくる。
「た!」ひらりとかわす。
「まだまだぁ!」
「たいっ!」体当たりしてくる。
「いたっ、、全然平気よっ!」タックル攻撃。
「たっ、、たいの!」訳 痛っ、、たくないっ!
いつの間にか他のベイビーアゲハたちがこのバトルの成り行きを見守っていた。
「そのミルクがあれば、、みんなが消えなくてすむの!
 そりゃあ、あいつら話すこと話すこと可愛くないけど、まだ知らない事沢山
 あるし、探せばいいところだって沢山あるはず!
 勝手に作りだされて、こんなに早く消えちゃうなんて、私は許さない!!」
「た、、」
「どりゃああ!!」みさえのパンチがボスに直撃した。
「たっ、、、!!」
ボスはパンチを当てられた自分自身に驚いているようだった。
トサッ、ボスが地面に落ちた。
「お願い、、ミルクはまた作ればいいかもしれないけど、命は無理なのよ、、
たとえ魔法で作り出された命でも命には変わりないんだから、、」
みさえは自分でも知らないうちに泣いていた。
そしてその涙はボスにも届いたようだ。
「、、たぁ」ボスはそっとミルクを差し出した。
「、、いいの?」見ていたベイビーたちも一斉にうなずいた。
「ありがと、、みんな本当に、、ありがとう、、、」
みさえはなにか暖かいものをもらった気がした。
そして急いで病院へ向かうのであった。

病院
「う う〜ん、、」
魔法のミルクをのませると、しんのすけたちが目を覚ました。
「みんな!私のこと、おぼえてる?」
「おー!メイドさんにさいようされたはいいものの、たった一日でおいだされち
ゃったみさちゃん!」
「、、、おぼえてるようね」
「あの〜、僕たちどうしちゃったんでしょう?」
みさえは今までのいきさつをすべて話した。
「僕たちがりんごの妖精だったなんて、、」
「だからアップルティーがのめなかったのね」
「ともぐい、、になる、、から、、」
「でも、みさえさんのおかげで人間になれたんですね!」
「いや〜それほどでも〜」
「しんちゃんじゃないんだけど、、」
「じゃ、そろそろ家にもどりますか!」
「ほっほ〜い!組長先生もバイバ〜イ」
「バイバ〜イ!」
「院長です!うぅ、、、」
こうしてみさえたちは家路についた。
「おー!みさちゃんのうち、おひさしぶりぶり〜!」
「ほんの二時間前に来たじゃない」
「でも、だれがりんごだった僕たちを妖精にしたんだろう?」
「誰って、、魔女か魔法使いじゃない?」
「ちっちっち、今どきそんなのいるわけないゾ」
「そうですよみさえさん、もっと科学的に考えなきゃ」
「たかがおとぎ話、されどおとぎ話よ」
「あ、そ、、」
「じゃ、まずは資料を集めに図書館へ行こう!」
「ラジャー!」
「ブ、ラジャー!」
「まった!」
「どうしたんですか?」
「あの図書館はアテにしないほうがいいと思うけどなぁ、、」
「あの図書館って、村の図書館ですか?」
「うん」
「だいじょぶだいじょぶ!オラたちがついてるゾ!」
「そういう問題じゃなくて、、」
あまり気乗りしないみさえを連れて、村の図書館へ。
「みさえさん、この自動ドアが開かないんですけど、、」
「ああ、ここは勝手口から入るのよ」
「なんで?」
「えっ、、さあ、とにかく入るわよ!」
「あやしい、、」

勝手口をあけて中に入った。近くにある散らかった机に熟睡している女性が。
「もう、、またこんなに散らかして、、」
「あ、おはよう姉ちゃん」女が起きた。
「むさえ!何がおはようよ!今何時だか分かってんの!?」
「分かんなーい」
「コイツ、、」
「よ、寝起きおばさん」
「おばさん言うな!あたしが何歳だか分かってんの!?」
「わかんなーい」
「くっ、、」
「みさえさんの妹さんですか?」
「そうよ。時々恥ずかしくなるけどね」
「ちょっと、それどうゆう意味よ」
「だってそうじゃない。外に働きに出るのは面倒だからって、父さんの図書館
 継いだのはいいけど、本は積み上げっぱなし、あんたは一日中寝てばっか、
 あげくの果てには自動ドアが動かない、、どっからどう見ても恥ずかしいじゃ
 ないのよ!」
「本は積み上げたほうが芸術的、睡眠を大事にしよう、電気料金払うのを忘れて
 おりました。これで満足?」
「ぐるるるる、、」
「みさえさん、唸らないで!」
「ところでむさちゃん、オラたち魔法のことについて調べてるんだけど、なんか
 いい本ない?」
「あるかもしんないけどないかもしんない」
「つまり勝手に探せって事ですね」
「Zz、、」
『、、、、、、』

「でも、こんな所でどうやって探そう、、?」
途方にくれるみさえたちであった。
「でもなんとしても見つけて、魔法のことを調べ、平和だったりんごの僕たちを
 妖精にしてしまったヤツに仕返しをしなければ!そう、これが僕の氏名なんだ
!!、、、ハッ!」
「、、妙にあつくない?このへや」
「『使命』が『氏名』になってるわよ、、」
「かっこ悪いね、、」
「うん、、、」
「ねぇ、オラ思ったんだけど、みさちゃんだったら妖精に何させる?」
「うーん、肩でもたたいてもらおうかな」
「じゃあ、もしみさちゃんの家がすごーく広かったら?」
「召使いでもやらせようかな、、ん?」
「僕たちってたしか、、」
「お城の召使い、、だったよね」
「つじづまが合うわね、、」
「なんかヘンな本みつけたゾ!」
<ヒロッチルノ三世 華麗なる成長の過程>
「こ、これは、、」その本の表紙には、あの通称バカおやじの写真がでかでかと
印刷してあった。
「もしあの推理が正しければ、、」
みさえはページをめくって行く。
「あった!」そこにはこんなことが書かれていた。
『ヒロッチルノ三世が自分の城を持つことになった。
 初代ヒロッチルノから伝わる魔法の杖と書類を三世に授ける』
「杖と書類って、、」
「やっぱり。あの椅子の下に家宝を隠していたのね」
「で、りんごを妖精に変えて、召使いとしてはたらかせていたんですね」
「でも、りんごが無くなってしまった。おまけに魔力が弱くて、妖精をつくった
 としてもすぐに消えてしまう」
「で、人間のメイドをぼしゅうしてたってわけですな。う〜ん、オラの名すいり
 〜」
「さーてトオルくん、あなたの『氏名』はなんだったかな?」
うふ、と微笑みをうかべるみさえなのでした。

一同はみさえの家に戻り、作戦会議。
「りんごの恨みはりんごで返してやろうじゃないの!」
「おーっ!」
「でも困ったことに、あのクソおやじが全部とっちゃって無いのよねぇ」
「バカおやじから悪化してません?」
「他の村へとりにいけないの?」
「りんごが採れるのは世界でこの村だけなのよ」
「その設定はどうかと思いますけど、、」
「、、ご、、の、、が、いをこめたとき、、さいこうの、、りんごがつくられる
だろう、、むずかしいなコレ」
「しんちゃん、なによんでるの?」
「さっき図書館でかりた本。でも漢字ばっかでよめなーい」
「ちょっとみせて。、、5人の妖精が願いをこめたとき、さいこうの毒りんごが
つくられるだろう、、だって」
「おー!ボーちゃんすっごーい!」
「ありがと、、」
「ねえ、あんたたちさっきまで妖精だったんだし、やろうと思えばできるんじゃ
 ない?」
「えーっ!そんなムチャですよぉ」
「そうよ、ネネつかれてるのにぃ」
「オラめんどくさーい」
するとみさえは、家をとびだして、クマをかついで戻ってきた。
「できないとは、いわせないわよ。それともクマちゃんと一緒に晩ご飯のおかず
 になりたいのかい?うふっ」
「やります!」即答だった。
「毒りんごができるまで、なんて本よく見つけたわねぇ。えーっと、まずは5人
 が円形をつくり、内側をむきます」
「どういういみ?」
「輪っかをつくって、真ん中を向けばいいのよ」
「できました。次はなんですか?」
「5人が中心に手をかざし、願いをこめながら気を集中させます」
「どういういみ?」
「真ん中に手を向けて、食べた人がどうなってほしいかお願いするって事よ、、
 ってちょっとみんな待って!」
『食べた人がもえPかマリーちゃんになりますように』
『食べた人がリアルおままごと大好きっ子になりますように』
『食べた人がリアルおままごとをやめさせてくれますように』
『食べた人が、、石あつめを手伝ってくれます、、ように、、』
『食べた人がまずレースクイーンになって、次にのりかになって、次に小宮の
 えっちゃんになって、それからそれから、、』
「ストーーップ!!」
『えっ?』
「みんなバラバラのお願いしたってしょうがないでしょ!それに復讐はどうなっ
 たのよ!」
「あ、わすれてた」
「あたしが最高の復讐プラン考えたから、あんたたちはそれを願いなさい!」
「最高の?」
「復讐プラン?」
こうしてみさえの指示で毒りんごがつくられた。
「あたしが毒りんごを渡してくるわ。なぜなら、、」
「なぜなら?」
「これは魔女のコスプレをする一世一代のチャンス!」
「そこかよ!」
「なによ、あの童話のあのお妃さんだって、毒りんごを渡すとき魔女のコスプレ
 してるじゃない。もうこの歳でできないと思ってたけど、まさか出来る日が
 来るなんて!」
「でもいしょうはどうするの?」
「村のはずれにハロウィン用の衣装を売ってる店があるから、そこで買ってくる
 わ。みんなお留守番よろしくぅ!」
ノリノリのみさえは衣装屋さんへ。
「ごめんくださーい、、」
「なにしらばっくれてるのよ!私の大福食べたのあんたでしょ!」
「大福大福うるさいわねえ、大福みたいにでっぷりしたおなかしちゃって」
「言ったわね!顔に大福の粉みたいなおしろいぬりたくって!」
「なによ!」
「なによ!」
「あのー、誰か来てますよ?」
「ふんっ!!」
「ひいっ!」
「あ、あーらごめんあそばせ。うちのスタッフのよしながが大福を食べられたく
 らいでブーブー豚のようにほざいておりまして」
「あーら、でもまつざか店長もこの前ドレスに虫食いができたくらいでギャーギ
 ャー泣き叫んでましたが、あのドレス安物じゃありませんでしたっけ?」
「くっ、、聞いてたの?」
「はい、しっかりと。上尾ちゃん、接客たのむわ」
「はーい、何かお探しですか?」
「魔女のコスチュームを探してるんだけど」
「白魔女、黒魔女、老婆の魔女がありますがどれがよろしいですか?私は老婆が
 良いと思いますが」
「白魔女をいただくわ!」
みさえは少し疲れて帰ってきた。

「みさちゃん、おっかえりー」
「ただいま、、」
「どんなの買ったんですか?」
「着替えてみせてぇ」
「はいはい、ちょっと待っててね」
五分後
「もういーかい?」
「もーいーよ(なんか前もやったなコレ、、)」
ジャジャーン!とみさえが登場。(イカリングに出てきた白魔道士のミサりんを
想像していたたけるとありがたい)
「みてみて!可愛いっしょ!」
「、、かっ、かわいいわよね!みんなっ!」
「オラにふられても、、まっ、いいんじゃない?」
「かわいいと思いますよ(やっぱり魔女っ子といえばマリーちゃんだけど)」
「でも、、」
「うーーん、、」
「みんなっ!お願いだから正直な感想をお願い!」
『29歳でそのカッコはないでしょ』
「やっぱそうよね、、でも買いなおしに行きたくないしなー」
「じゃ、オラたちがいってくる!みさちゃん、おサイフ借りるゾー」
「いってきまーす!」
「財布を勝手に持ってくなぁー!」

「ごめんくださーい」
「やっぱり大福食べたのあんたじゃない!人のおやつを勝手に食うな!」
「あーら、食われたくなかったら名前でも書いとくのがマナーでしょ」
「ふん!いいわよ、戸棚に入ってる限定30個の特性プリン、あんたのだけど食
 っちゃうから」
「ちょ、ちょっと、あのプリンだけはやめてちょうだい!」
「あーら、食べられたくなかったら名前でも書いとくのがマナーでしょ。いただ
 きまーす!」
「待ちやがれーー!!」
「あ、いらっしゃいませ。えーと、何をお探しですか?(こ、子供だ、、)」
「魔女の衣装が欲しいんですけど」
「ああ、さっきのお客さまも魔女の衣装を買っていったんですよ」
「みさちゃんは、どの中から買ったの?」
「はい、黒魔女、白魔女、老婆の衣装から選んでもらいました」
「で、上尾ちゃん的にはどれがいいとおもった?」
「は、はい、私は老婆が良いと思ったんですが、、」

「、、で、なんで老婆なわけ?」
「まあまあ、すっごくにおうゾー!」
「それを言うならにあうだろ」
「でも、すっごく似合ってるわよー!」
「さっきよりしっくりきてますよ」
「すごく、、いい!」
「ありがとよ、5才児たち、、」
「でも、毒りんごをわたすならそれらしい演技をしないとね。よし!ネネが特別
 演技指導してあげるわ!」
「ネネちゃんが?」
どことなく不安なみさえであった。

裏庭
「た、食べるだけで若いコにモテモテですよ、、」
「カーット!ダメ、ぜんっぜんダメ!もっとね、魔女独特のニュアンスを出して
 ほしいの!」
「ニュアンスって言われても、、」
「いい?圧迫感を出すのがコツよ。魔女がせまってくる事で、相手はもらわなけ
 ればいけないような錯覚におちいるのよ。だからもっといやらしい薄笑いをう
 かべて、腰を曲げて、足をちょこまか動かしながら相手に近づくのよ!はい、
 テイク2!」
「え、え〜っ!」
「さっさとやる!!」
「、、ネネちゃん、なんか燃えてるゾ、、」
数時間後、、
「カーット!みさえちゃん、だいぶよくなったわ。これならあのバカおやじも買
 わざるを得なくなるはず!」
「ほ、ほんと!?、、疲れた、、」
「みさちゃん、オラおなかすいたー」
「僕たち、おやつから何も食べてないんだっけ、、」
「じゃ、みさえちゃん、ごはんよろしくね。あー疲れた」
みんなはぞろぞろと家に戻っていった。そしてみさえは、
「なんで、、なんであたしが、、」と、すすり泣きながら6人分の晩ご飯をつく
 るのだった。

そして翌朝、一同は城の前に来ていた。
「じゃ、みさえちゃん、練習通りおねがいね!」
「まかせなさい!」
「老婆のみさちゃん、ヘマするんじゃないゾ!」
「大丈夫よっ!じゃ、行って来ま〜す!」
「がんばってねー!」

みさえはインターホンを鳴らした。りんごの召使いはすべて消えてしまっている
から、ヒロッチーニが出てくるはず。
「はい、、どなたっスか、、?」
相当やつれた感じの声がインターホンから返ってきた。
「ふっふっふ、、今日は貴方様に喜びを与える魔法の代物を持ってきたんじゃ
 よ、、」
「あの、セールスならお断りですけど」
「いえいえいえ、、このりんごを食べれば、貴方の望みがなんでも叶うのさ。
 望みはなんだい?」
「オレの望み?、、そうだな、オレもずっと独身で寂しいしぃ、若くて美人の
 お妃さんでももらいてえなあ」
「了解、了解、、あとはこのりんごを食えば願いは叶うぞえ。さっさとこの
 門を開けな」
「へいへーい!今開けますよ〜ん♪」
門がゆっくりと開いた。
「ふ、チョロいチョロい」
ひとまずみさえの潜入は成功した。

みさえは城の中に入った。前回来た時のようなフルーツ臭はすっかり消えていた
が、そこらじゅうにクモの巣がはりめぐらされ、床はホコリだらけというひどい
ありさまだった。
「またずいぶんと汚したわねぇ。ま、一人でこのお城を掃除するのはムリだから
 ね」
「みさちゃーん!」
振り向くと、しんのすけたちが来ていた。
「あんたたち、ついて来ちゃったの?」
「だって、あのおやじがイタイ目見るとこ、みんなでみたいんだもん!」
「でも、あんたたちの事、あいつは知ってるのよ」
「だいじょぶだいじょぶ。オラたちがここではたらいてたとき、工作して遊んで
 から」
「ど、どういうこと?」
「こういうことー」
しんのすけたちははさみとのりを取り出し、窓につけてあったカーテンを切り取
ってのりでくっつけ始めた。
「できあがりー」
あっというまに魔法使いの衣装ができあがってしまった。
「すごい!五歳児とはおもえない出来栄え、、」
「これを着てみさちゃんの弟子って言えば、オッケーだゾ」
「じゃ、みんないくわよー!えいえい、」
『おーーっ!!』
すると階段からひろしが降りてきた。
「ぜえぜえ、、エレベーターの電気料金払わなきゃな、、。
 あ、どうも魔女さん」
「あいよ。りんご持って来たからね」
「どうも、、これを食えば願いが叶うのか、、」
「あ、ひとつだけ忘れないで。これは寝なきゃ効果が出ないから、必ず寝る事。
 いいね?」
「はいはい、じゃ、とっとと出てってくれよ」
ヒロッチーニは足早に自分の部屋に戻っていった。
「出てくわけないじゃん。ねーえ?」
「うんうん!!」

「でもヒロッチーニの部屋に行くには904段の階段があるんだっけ、、めんど
 いなぁ、、」
「でもエレベーターは壊れてますし、、」
「のぼるしかないわよ」
「そうそう、のぼらなきゃ話が進まないしね」
「だね、、」
「うわーん!ぼくにもしゃべらせてよー!」
「しゃあない、登るか、、」
二時間後
「到着!」
「はぁはぁ、、やっと着いた、、」
「ねぇみさちゃん、オラの大事なアクション仮面人形がなくなっちゃったゾ」
「えーっ、どっかに落としちゃったんじゃない?」
「オラ、階段をさがしてくるね」
「じゃ、あたしたちは先に部屋入ってるからね」
「ほーい」
しんのすけは階段を下り始めた。

みさえたちはヒロッチーニの部屋に入った。
「よしよし、ベッドに寝てるわ。りんごも無くなってる」
「作戦成功ですね」
すると、眠っていたはずのヒロッチーニが指をパチンとならした。
ガシャーン!とみさえたちに鳥かごがかぶさったのはそれからすぐである。
「ヒロッチーニ!なぜ!?」
「あんな変装、オレが見破れないとでも思ったか!」
「思ってた」
「ガクッ。まあそれは良いとしよう」
「あのりんごはどうしたんだ!」
「冷蔵庫に保管してあるよ。あれを食えばお妃さんもらえるし、、」
「(そこはだまされたのか、、)」
「実はオレ、妖精の魔法を教わったときに、邪魔者を消す魔法もおぼえたんだよ
 ね。今試してみよっかなー♪」
「えぇ!?」

一方、しんのすけは、、
「やれやれ、、アクション仮面のお人形さーん!んもう、どこいっちゃたん
 だ?」
階段を探しまわるしんのすけ。
「お?なんだアレ、、もしかして!」
階段のすみのほうに人形が落ちていた。
「やっぱり!ご無事でよかったゾ、アクション仮面!、、お?」
階段にそった壁を見ると、バカでかいヒロッチーニの自画像がかけられていた。
「ほうほう、いままでまじまじとカベなんて見たことなかったから、こんなでっ
 かい絵があったなんてしらなかったゾ。もじもかいてある」
『ヒロッチルノ三世 自画像』
「そういえばあのオジさん、ヒロッチルノっていうんだっけ。みんなヒロッチー
 ニとかバカおやじとか好き勝手呼んでるけど、、。」
そのとき、だれかが下から階段をかけあがってくる音が聞こえた。
コッコッコッ、、
「、、だれ?」
「そっちこそだれじゃ?」
そこにはおじいさんが立っていた。
「おお、オラしんのすけ。で、アンタだれなの?」
「わしゃ、この絵にかいてある男の父さんじゃよ。みんなからは銀ちゃん、と
 呼ばれておる」
「ほうほう、ヒロッチーニさんのお父さんですかぁ」
「ヒロッチルノだけどな。ま、いいけど」
「ところでどうしてここにきたの?」
「ああ、それがな、ヒロッチルノにりんごを妖精にする魔法を教えたときに
 うっかりほかの魔法もおしえてしまってのう」
「おお、それってどんな魔法?」
「それが、、邪魔者を消す魔法なんじゃよ」
「ほほう、それまた大変な魔法を教えちゃいましたなぁ」
「でしょでしょ?でさぁ、アイツは調子にのるとどんな事もしちゃうタチなんだ
 よねぇ」
「わかるわぁ、そんなカンジするもんねぇ」
「でね、邪魔者を消すなんて大変な魔法を使っちゃったら困るでしょ。
 だから、その魔法をオラの魔法で忘れさせようって思ったの。で、今ココに
 いるってワケ」
「なるほど、いろいろとめんどうですなぁ」
「イタっ!イテテテ、、」
「ど、どうしたの!?」
「いやいや、、わしももうトシでなぁ。こんな階段を上っていると腰が、、イタ
 タタ、、」
「だ、だいじょうぶ?」
「だいじょうぶと言われればだいじょうぶなんじゃが、、しかし弱ったのう、
 ヒロッチーニがいる部屋まではまだ階段を上らなければならんし、、」
「じゃ、オラがかわりに魔法をかけてきてあげる!」
「おお、それは助かる!じゃ、いまから魔法のかけ方を教えるから、この初代
 ヒロッチルノから代々伝わる杖を受け取ってくれい」
「あれ?でも、この杖はあのオジさんがもってるんじゃないの?」
「こっちは予備じゃ」
「おお、さすがご都合主義ですなぁ」
五分後
「よし。これで教えることはなにもないぞ。じゃ」
「じゃ!」
こうしてしんのすけは銀ちゃんから魔法を教えてもらい、銀ちゃんは家に帰って
いった。
場面はかわってヒロッチーニの部屋へ。
「やめてやめてやめてーー!!」
「やめないやめやいやめなーーい!!」
これは邪魔者を消す魔法を使われたくないみさえと使いたいヒロッチーニの言い
争いである。十五分ほど続いた。
「ふう、、このままではラチがあかん!もう使うぞ!ジャマジャマキエテナク
 、、」
「ひいいっ!!」
そのとき、きゅうにドアが開いた。
『しんのすけ!!』
「おおっ!ちょうどいいタイミング!ワスレロワスレロナクナレホイ!」
「う、うわあっ!」
ヒロッチーニはしんのすけが使った魔法の衝撃でたおれた。
「お、おまえなぜ魔法を、、」
「銀ちゃんに教えてもらった」
「銀ちゃんって、、親父!?」
「そうだゾ。ところでさあ、みんなオラをほったらかして遊んでたんだな!
 ズルいズルい!オラもまぜろー!」
『遊んでねーよ!!』
「ひいいっ!みんなこわいゾ、、あ、ところでヒロちゃん、毒りんごたべた?」
「あ、忘れてた。もぐもぐ、、」
「あ、食べちゃった」
「おやすみー。Zzz、、」


ヒロッチーニはお城の舞踏会に来ていた。
「でへへ、、どの王女さんも若くて可愛いにゃ〜♪どの娘がオレのハニーになる
 のかな〜♪あれ、でも、、あの娘も、あの娘も、あの娘も、、全員イケメンの
 王子と一緒じゃないかぁ!!くっそー、どうしろっていうんだよー、、」
その時!
「よ!」
なんとヒロッチーニの目の前に天使があらわれたのだ。
「わ、わあっ!な、なんなんだお前は!」
「オラは天使。今日はあんたの運命のひとになるひとをご紹介しにきたゾ」
「えっ、マジ!はやく見せてくれよー!」
「まあまあ、あわてない。そのひとはあんたの目がさめたら目の前にいて、鳥か
 ごに入ってるひとだゾ」
現実世界では
「ちょ、ちょっとぉ!あんたたちだけ出てズルいわよ!」
「だって、ぼくたちは小さいからかごのすきまから出れましたけど、みさえさん
 はいくらなんでもムリですよ」
ひとり鳥かごの中に取り残されたみさえだった。
そのころヒロッチーニは、、
「じゃ、ヒロちゃん、1、2、3で目を開けるんだゾ。いーち、にーい、、」
「さんっ!」
ヒロッチーニは目をさましてとび起きた。
「どこ、どこ?オレの運命のひ、、」
ヒロッチーニの目の前には鳥かごに入ったみさえがいたのだった。
「は?なにいってんの?」
「みさえさん、毒りんごの内容って、、なんでしたっけ、、?」
「えっと、食べた人が天使から妻になる人のお告げをされて、目がさめたときに
 目の前にいるのが妻になる人で、その人は若くも美人でもない、、」
「若くも美人でもなくて、、」
「ヒロちゃんの目の前にいたのは、、」
「、、え!?あたし!?、、ってことは、あたしの白馬に乗った王子は、、」
「オレの、、若くて美人のお妃さんは、、、」
ガクッ。バタッ。
ヒロッチーニとみさえは仲良くともだおれしたのだった。

それから一ヶ月後、、
みさえと子供たちは、ヒロッチーニのお城に移り住み、ヒロッチーニは呼びやす
いように「ひろし」に改名させられてしまったそうな。
「これでデメタシデメタシってわけで、、」
「全然めでたくなーいっ!!」


〜終わり〜 かも。

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