小劇場は活きている

劇団舞台処女 『よろめきジャック』

イ・ソンゴン(大阪大学演劇学博士課程)

※翻訳 キム・ユビン(劇団舞台処女)


 大阪にはソウルの大学路のように密集はしていないがあちこちに20カ所ぐらいの小劇場が隠れている。その中には150席以上の規模の劇場もあって、手を伸ばせば照明器が触れそうな小さい舞台も多い。今回私が訪れたLOXO DONTA BLACKという劇場もその中の一つである。大きさは大学路恵化洞1番地と同じぐらいだが、看板がよく見えないためわざわざ探さない限り現われなさそうな小さい劇場だ。
 しかし日本内で結構知られている劇団「THE KIO」が「劇団が劇場を
プロテュースする」というスローガンをかけて1999年に建てられた劇場だそう。ロクソドンタフェスティバルという、若い劇団を支援する行事も7年目続けているそうだ。こんなに目立たない劇場でも演劇人たちはずっと何かを切ったり叩いたり貼ったりしながら叫びながら手作業に盛り上がっている。



舞台処女の20回目舞台

 まちかどおとめの<よろめきジャック>という今回の上演作でも、かれらの汗の臭いと共に活きている小劇場の元気な息音が聞けた。まちかどおとめは韓国語で「舞台処女」という意味だ。1991年、旗揚げ当時の団員のほとんどが初めて舞台に立ったからだという。若い劇団として知られているが今年20周年を迎える。

<よろめきジャック>は我々がよく知っているイギリスの童話「ジャックと豆の木」にモチーフを置いた作品である。ジャックがお母さんのおつかいで牛を売りにいく途中にあるおじいさんに出会い、牛と豆を交換した。その豆を庭に捨てたら一晩中に空まで育ってジャックはその豆に木を登って空にあがって巨人の宝物を盗んで来るという話だ。本公演ではこの童話が含んでいる社会的なメッセージを注目して倒産寸前の会社を主な舞台にして話を展開していく。
 経験の多い職人が設計図無しで家を建てた感じというか、舞台と物語の構成は少し荒い気がしたが、むしろ強いアピールとエネルギー、社会批判的なメッセージで客席を圧倒した。



現代人とジャックの魔法の豆

 正規職と非正規職、男性と女性社員の差別、解雇、出世に対する
強迫など、この䤢の頂点で逆説的に資本主義社会の一番の原初的で恐ろしい顔と対面することになったのだ。

 トランプでの13のKは王(KING)、12のQは女王(QUEEN)だ。
そしたら11のJ、つまりジャック(JACK)は誰なのか?正解は部下、下人、船員、労働者等だ。ちなみにスペードジャックのモデルはカール大帝の12勇者の一つのホグラーだと言う。とにかくここでジャックは死んでも王には成れないし成ってもいけない。これがゲームの法則である。
 現代社会でのジャックは誰なのか?小劇場の隅で、二人の娘に
お土産であげるためにこっそりとスーパーボールをポケットに入れた私と観客たち、そしてこれを読んでいる皆ではないか。

 3−4坪ぐらいの狭い舞台。中央には正方形の低い段が敷かれて、
その後ろには二枚の薄いカーテンが掛かっていた。その隙間から事務用の机・椅子などを入れたり出したりしながら場面を変える。役者の登場・退場も客席と舞台を通して全方位的に行なう。息が苦しくなりそうな狭い劇場の中での1時間40分はあっという間にすぎてしまった。本当に、大阪で初めて、
活きている小劇場に出会った。

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劇評だよぉ~ん♪
『よろめきジャック』
  ~景気豆の木三種の神器~

※ロクソドンタフェスティバル2011参加作品

(韓国演劇8月号掲載)