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Sam's Lake

Andrew Christopher Erin

2005 Korea/USA/Kanada 86 Min. 劇映画

出演者

Fay Masterson
(Sam - 帰郷中の女性)

Sandrine Holt
(Kate - サムの故郷に遊びに来た友人)

William Gregory Lee
(Jesse - サムと同郷の青年)

Stephen Bishop
(Franklin - サムの故郷に遊びに来た友人)

Megan Fahlenbock
(Melanie - サムの故郷に遊びに来た友人)

Salvatore Antonio
(Dominik - サムの故郷に遊びに来た友人)

Robert William Smith
(父親)

見た時期:2006年8月

2006年 ファンタ参加作品

この作品の元になった話を子供の頃に聞いたエリン監督は2002年に全く同じタイトルで短編を作っています。その時は自分でジェスの役を演じ、その時にドミニクを演じた俳優は長編でも同じ役を演じています。今度長編として作り直したぐらいですからこだわりがあるのでしょう。ストーリーには映画化するに足るだけのポイントがいくつも含まれています。

サムというのは女性の名前で、このストーリーの主人公です。彼女の故郷にサムという湖があり、彼女はその名にちなんで名付けられました。毎年夏になると両親と一緒に住んでいた湖畔の家 で休暇を過ごすサムは、今年友達を数人連れて来ています。こういう時につき物なのが幽霊話。サムの故郷でもかつて有名な殺人事件が起きていたので、友達にせがまれ、サムは条件つきで事件について話し始めます。条件というのは事件関係者が住んでいた家に皆で行くということ。

事の起こりは40年ほど前。幸せだった4人家族のまだ幼い息子の精神が病んで来ます。それで精神病院に収容されます。その子が18歳になった時、病院を脱走し、故郷に舞い戻り、眠っていた家族を惨殺。その後その息子の行方はふっつり。

現代。休暇でサムの故郷を訪れた友人は4人。町の育ちです。サム湖のほとりの家に陣取って、ロマンティックな一夜。中の1人はゲイの男性、2人はカップル、サム自身はシングル。そこにちょうど年の合う地元の青年ジェスが加わり、6人になります。で、ホラー話を始めます。

40年前の事件はそれだけでは終わらず、その後、家族を惨殺し行方の分からない当時の少年、今では中年おやじが毎年犠牲者を出し続けているというのです。夏休みに林間学校で語られる怪談のようなものと思いきや・・・。恐々問題の家を訪れると、犯人が書いた日記らしきものが見つかるのです。そして正体の良く分からない赤毛長髪男が徘徊していました。

そのうちに若者は誰かに襲われ、死者も出ます。犯人はこの赤毛長髪男かも知れません。あれあれ、と思っているうちに犯人側の関係者はそれだけではないということになって来ます。結局結末までに40年前の事件と現在も生きている人たちの関係が明らかになりますが、死体もその辺にごろごろ・・・。

皆までは言いませんが、比較的理解しやすいストーリーです。わりとストレートな筋でも工夫すれば、見ごたえのあるホラー映画が作れたと思います。ファンタの他のレベルと比べると私は Sam's Lake には落第点をつけます。合格すれすれのレベルまでは行っていると思います。

ストーリーに効果的に使えそうな要素がいくつかあり、上手に生かすと、怖いミステリーも作れそうなのです。それが上手く行っていなかったのは、俳優の人選が悪かったのと、ストーリーの練り方が不充分だったからでしょう。これだけ聞くと救い様が無いように思えますが、おもしろくする可能性を秘めていると思います。

例えば私ならサムと自然の関係、事件と自然の関係を、町から来た現代っ子の若者と対照的に描き、子供の時からこの地を知っているサムが自由に森の中を歩き回れる様をもう少しはっきり出したいです。そのためには別な俳優にするか、主演の女優にもう少し違った態度を要求します。私も見事に引っかかったブレア・ウィッチ・プロジェクト(1)で今でも誉めざるを得ない部分は、田舎と主人公の若者の対比。車があれば大丈夫と思っている現代っ子が森の中で予想外の出来事に出くわした戸惑いが良く出ていました。

日本人にはそれほどのこだわりは無いのですが、ドイツ人は森というものにこだわります。森はただ木がたくさん生えている場所ではなく、何か不思議なもの、時には怖いものが潜んでいる、しかしその分町の法律などに縛られず自由な場所でもあり、色々な想像が混ざり合う神秘的な場所です。古くから文学などでも取り上げられていました。アメリカに渡ったヨーロッパ人の中にもそういう印象が生き続けているのかも知れません。監督はその辺を狙ったのではないかと思います。ですから発想はいいと思います。

ロケ地も変更した方がいいし、セットも作り変えた方がいいように思いますが、それでもストーリーの骨子は残しておもしろくすることができそうです。残念。監督はもう同じタイトルで2作作ったので、3作目にも兆戦しますか。

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