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悪党にも家族がある!?
2005 HK/Makao 93 Min. 劇映画
出演者
甄子丹/Donnie Yen
(Ma Kwan - 乱暴刑事)
洪金寶/Sammo Hung Kam-Bo
(Wong Po - ギャングのボス)
洪天明/Timmy Hung
(マーが殴り過ぎて障害者にしてしまったチンピラ)
Jacky Wu
(Jack - ポーに雇われた刺客)
Jing-kei Liang
(ポーの妻)
谷垣健治
(ポーのボディーガード)
任達華/Simon Yam
(Chan Kwok Chung - 特捜班の班長)
Kai Chi Liu
(Lok Kwun Wah - 特捜班の刑事)
Danny Summer
(Kwok Tsz Sum - 特捜班の刑事)
Ken Chang
(Lee Wai Lok - 特捜班の刑事)
Austin Wai
(Cheung Chun Fei - 刑事)
Vincent Sze
見た時期:2006年8月
ストーリーは大部分ばれますが、肝心の結末は伏せてあります。
物の順序として SPL を出さないと行けなくなって来ました。2006年夏のファンタで見てうわっ!と思ったのですが、見た作品の数が多く、記事にするに至りませんでした。印象に残った作品なのでいつか何か書かないと行けないと思っていました。
ドニー・イェンが匙加減の良い作品に出た、イェンがうまく生きていると思った作品です。イェンはおもしろい俳優で、香港にいなくてはならないと思いますが、前に出過ぎてお邪魔虫と感じる時もあります。それが SPL では作品の中に重みのある人が3人半ほどいて、イェンはその1人、one of them です。バランスがいいです。彼1人が目立ってしまう作品よりずっといいのです。引っ込んだら却って良さが目立つのです。
作品は全体的にセンチメンタルな作りで、ドイツ人が「涙腺を押す映画」と言うタイプです。何しろのっけに海岸が映り、そこに小さな女の子がいて、数人の男が「彼女を一生護る」とか何とか言っているのです。ああ、何とセンチメンタル・・・。
これは冒頭のシーンですが、その前に彼女が家族と刑事と一緒に車に乗っているシーンがあります。重要な証言ができる男とその妻、娘を刑事が保護し、車でどこかへ移動しているところ。そこへ別な乗用車が現われドーンとぶつかります。ご丁寧に証人台に立つはずの男の喉を掻っ切ってしまいます。刑事はとにかく生き残り、家族では娘だけが生存。海岸で男たちが護ると言っているのはこの子です。ああ、泣ける・・・。
一体裏に何があるのか。車ドーンは暗黒街のボス、ポーが命令したことか、あるいは部下が彼を救うために勝手にやったこと。証人が消えると、ポーの容疑もうやむやになるのです。
警察ではまじめな刑事チャンをリーダーとして数人の特捜班がこれまでずっとポーを捕まえようとしていましたが、部下に犠牲者も出、成功しません。特捜班は本道を外れ、一方でポーの裏金を横取り、他方で部下を殺したのがポーでないのに、ポーのせいにしてしまおうと偽装工作を始めます。警察内にはこの班の逸脱を知りつつ黙認する者もいれば、目的が立派でも不正はダメだと考える者もいます。
この作品のわざとらしい特徴は家族愛の強調。なぜか分かりませんが、重要な登場人物ほとんどの家族のエピソードが出ます。刑事はサラリーマンと違い泊り込みや緊急出動があり、家族が思うようにお父さんに会えないという点を強調。かと思うと、闇の世界の悪代官ポーにも妻の不妊症という悩みがあり、ようやく生まれた子供を大切にしています。シングルに見えるドニー・イェン演じるマー刑事さえ父親との関係を口にします。何じゃこれは!?と見ながら思いました。公開日が家族の日とかいう祝日なのかとかかんぐってみたものの論拠としては弱い。
捜査班の指導的立場にあるチャンはちょうど医者から脳腫瘍であとどのぐらい持つか分からないと言われてしまいます。死期が近づいたと感じて大胆に法律解釈を緩めたのかも知れません。間もなく彼は引退の予定。引き継ぐのはマー暴力刑事。しかし彼の法解釈は背骨真っ直ぐです。
チャン以下数人はつるんでいるので、マー刑事をのけ者に。しかし元々マー刑事は乱暴者で被疑者に大怪我をさせてしまったりするので、他の部署でも鼻つまみ。それであまり気にしていない様子。しかしそのマーにもチャンたちがちょっとおかしいとは思えて来ます。
悪党にも悪党の規則があり、刑事たちのやった事は悪党に気にいるわけがありません。ポーは刺客を用意します。映画全体が暗い(黒い)中で、刺客だけ白装束。この男は捜査班の刑事を1人、また1人と消して行きます。犠牲者の1人が死に際にこういう事態に陥ったわけをマー刑事に話したため、それまでのけ者にされていたマー刑事にも何がどうなっているのかが分かります。マーは原則としてチャンのやり方には不賛成。
しかし特捜班の部下が全滅、残るチャンとマーは折り合っていかなければなりません。そこでポーに横取りした金を返すという話になります。しかしそこでもチャンは独自路線を選び、マーが来る前にポーの店に1人で殴り込みをかけます。しかしポーの刺客に捕まってしまいます。マーが現われた時には縛られていました。
ここまでの算数はと言うと、優秀な(!?)刺客のせいで、特捜刑事の部下は全滅。刺客はマー刑事に仕留められる。残るは縛られて動けないチャン、自分の店で余裕たっぷりでマーを待っているボー。そこへ現われるマー刑事。2対1ですが、実質1対1。
で大ボスとマーの対戦。これが凄い重量感です。ボスを演じているフンは肉布団を入れているのではと思いますが、いずれにしても重量級の体格で、100キロ近くあるのではという風に見えます。それなのに猿飛佐助のように飛び、舞い、落下し、ドタンバタン。太っていて動きが速く無駄が無いので相撲取りを連想します。
この後のオトシマエが意外。インファーナル・アフェアのようなシーンがあるのですが、似ているのは視覚的な部分だけ。そのシーンに絡むストーリーは全然違います。SPL のラストは片目で見ていると解釈を誤ります。
さらに葉偉信の導火線を見ると「ええ!?どうなってたんだ!?」となります。
葉偉信と甄子丹の続編に当たるのが導火線なのですが、そちらではトーンをがらっと変えています。こちらがフィルム・ノワールだとすればあちらはフィルム・ブラン。同じく犯罪を扱っているのでノワールと言うべきですが、画面が明るく、陽がさんさんと照っていたりして、全体に明るい雰囲気です。
私の好みから言うと、映画全体でも、甄子丹の使われ方でも SPL の大勝利で、導火線はタイトルだけがおもしろかったと言えます。ここまで悪人の人間性に触れる必要があるかという疑問が起こりはしましたが、深みのある表現をしているという点では SPL が勝っています。まともな家庭生活を営みたいのなら足洗えと言いたくなりますが。
2005年に香港で作られ、2006年にベルリンに来たのが SPL。2007年、できたてのほやほやでベルリンに来たのが導火線です。何人か同じ顔が見られます。
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