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十三人の刺客 /
13 Assassins

三池崇史

2010 J/UK 141 Min. 劇映画

出演者

役所広司
(島田新左衛門 - 刺客、目付、鏡心明智流の遣い手)

山田孝之
(島田新六郎 - 刺客、新左衛門の甥、直心影流の遣い手)

松方弘樹
(倉永左平太 - 刺客、旗本、御徒目付組頭、小野派一刀流の遣い手)

沢村一樹
(三橋軍次郎 - 刺客、御小人目付組頭、直心影流の遣い手)

石垣佑磨
(樋口源内 - 刺客、御小人目付)

近藤公園
(堀井弥八 - 刺客、三橋の部下、御小人目付)

高岡蒼甫
(日置八十吉 - 刺客、御徒目付)

六角精児
(大竹茂助 - 刺客、御徒目付)

波岡一喜
(石塚利平 - 刺客、足軽)

伊原剛志
(平山九十郎 - 刺客、浪人)

古田新太
(佐原平蔵 - 刺客、浪人、神道無念流の遣い手)

窪田正孝
(小倉庄次郎 - 刺客、平山の弟子)

伊勢谷友介
(木賀小弥太 - 刺客、山暮らしの男)

稲垣吾郎
(松平左兵衛督斉韶 - 明石藩藩主、将軍の弟、明石松平家の養子、次期老中、やりたい放題の男)

平幹二朗
(土井大炊頭利位 - 幕府の老中)

内野聖陽
(間宮図書 - 抗議の切腹をした明石藩江戸家老)

市村正親
(鬼頭半兵衛 - 明石藩御用人、新左衛門の幼友達)

光石研
(浅川十太夫 - 明石藩近習頭、上昇志向の男)

阿部進之介
(出口源四郎 - 明石藩若い侍)

松本幸四郎
(牧野靭負 - 尾張家木曽上松陣屋詰吟味役)

斎藤工
(牧野妥女 - 牧野靭負の息子)

谷村美月
(牧野千世 - 牧野妥女の妻)

岸部一徳
(三州屋徳兵衛 - 13人の作戦に協力する落合宿庄屋)

吹石一恵
(小えん - 芸者、新六郎の愛人)

吹石一恵
(ウパシ - 山の女)

茂手木桜子
(松平左兵衛督斉韶の慰み者)

見た時期:2011年3月


十三人の刺客

工藤栄一

J 1963 125 Min. 劇映画

出演者

片岡千恵蔵
(島田新左衛門 - 刺客、旗本)

里見浩太朗
(島田新六郎 - 刺客)

嵐寛寿郎
(倉永左平太 - 刺客、与力)

阿部九州男
(三橋軍太夫 - 刺客、倉永の部下)

加賀邦男
(樋口源内 - 刺客、三橋の部下)

汐路章
(堀井弥八 - 刺客、三橋の部下)

春日俊二
(日置八十吉 - 刺客、倉永の部下)

片岡栄二郎
(大竹茂助 - 刺客、倉永の部下)

和崎俊哉
(石塚利平 - 刺客、倉永の部下)

西村晃
(平山九十郎 - 刺客、島田家の客)

水島道太郎
(佐原平蔵 - 刺客、浪人)

沢村精四郎
(小倉庄次郎 - 刺客、平山の弟子)

山城新伍
(木賀小弥太 - 刺客、落合宿の武士の端くれ)

菅貫太郎
(松平左兵衛督斉韶 - 明石藩藩主、将軍の弟)

丹波哲郎
(土井大炊頭利位 - 筆頭老中)

高松錦之助
(間宮図書 - 江戸家老)

内田良平
(鬼頭半兵衛)

原田甲子郎
(浅川十太夫)

有川正治
(出口源四郎)

月形龍之介
(牧野靭負 - 木曽上松陣屋詰)

河原崎長一郎
(牧野妥女 - 牧野靭負の息子)

三島ゆり子
(牧野千世)

水野浩
(三州屋徳兵衛 - 木曽落合宿総代)

丘さとみ
(おえん - 芸者)

見ていない

2011年春のファンタ参加作品

今年のファンタのテーマ、自分でオトシマイをつけるシリーズの最後でしたが、他の作品と違い、どちらかと言えば赤穂浪士的な雰囲気です。赤穂浪士とは動機も結末も違いますが、刺客の暗殺作戦を見ている間に観客が受ける印象は似ています。

★ 井上さんも見た

記事を書いた後体調を崩し、アップが遅れたのですが、その間に井上さんからこの作品のパンフレットが届きました。最近のパンフレットはなぜか黒地に白の文字で書かれているものが多く、その上やたら字が小さくなっています。井上さんはちょっと前に目を患った身。私も数年前にやったばかり。その後は知人が両目やられ、世界でも珍しいと言われたばかり(この人の病気は片目が普通)。今年に入ってからはまだ若い前途有望な知人までがやられました。目の病気も伝染するのでしょうか。結膜炎ではないのですが(もっと重病)。その上年齢を重ねるとどなたでも多少視力には問題が生じます。なので読むのは大変。

パンフレットの中身は質の高い文章もあり、読みたいなあと思わせるような物もあります。そして私たち古い世代はインターネットのモニターより書籍類を好む傾向があります。そして写真の質は年々良くなっている・・・。なのでパンフレットの背景の色と文字の色は是非逆にしていただきたい。黒地に白字だとモダンでかっこいいと思ってデザインしたのかも知れませんが、肝心の中身を読んでもらえないのでは作った人も徒労に終わってしまいます。

★ 史実とは違う

・・・らしいです。実在した人物にまつわるフィクションのようです。実際悪役の松平斉韶には悪い評判はあるのですが、映画になったようなストーリーではないようです。本人は66歳まで生きています。自分の時代が終わったと悟ってか、江戸時代の最終日が終わり、明治に変わったその日に亡くなっています。つまり江戸時代を最後まで行き抜き、明治時代に変わった初日にもう自分の時代ではないとばかりに世を去っています。斬られたという話も無いので、普通に畳の上で死んだと考えていいようです。ですので、リメイクのこの作品や、その元の作品のように13人の刺客に襲われて死んだというのは嘘、フィクション、でっち上げです。

★ 与太話としての出来

フィクションとして見ると日本ではある程度受けそうな舞台装置、人物設定で、努力してもどうしようもなかった不条理を赤穂浪士的に自ら正すというテーマも好かれそうです。外国ではすっきり分からない部分もあると思いますし、今回のファンタに出た他の復讐劇とは趣を異にします。

他の作品はどちらかと言えば個人的な恨みですが、十三人の刺客は公の部分が大きいです。日本の江戸時代の官僚的なやり方では抗議がし切れず、「問題ありの人物が大きな権力を持つ地位に就くのを防がなければ」という考えで乗り出した13人。相手を仕留めても、当分は犯罪者扱いされることを承知で暗殺に乗り出す話です。

日本人には分かりやすく、藩主を戒める意味での切腹、息子と嫁を失った武士が抗議の切腹、問題の人物の昇進が予定されている幕府の内部で家老が悩んでいる様子が描かれていて、自分の昇進を狙ってへいこらする人以外は皆が困り果てている様子が前半よく理解できます。直接身近な人が死んだからと言って恨みを晴らしたがるエピソードもありますが、全体としてはむしろ「こんな話が通っては世が乱れる」という公の心配の方が大きく描かれています。

日本人が見ているとこういう風に伏線を張っておいて、前半はメンバー集め、中盤は作戦を練り、後半はそれを実行するので非常に分かりやすいです。外国人から見ると、同じ《ハラキリ》なのになぜ1度は介錯人がついていて、もう1人はついていないのかとか細かい所で分かりにくい部分もあったようです。

また、前半官僚的な方法で手を打とうと試み、それがうまく行かないので仕方なく刺客を送るという風になりますが、欧米人にはその辺がもどかしく思えるかも知れません。それは話に不手際があったからというより、三池崇史がアメリカのウエスタン活劇のような演出にしてしまったため、それにしては前半がもどかしいということなのかも知れません。私は前半の官僚的な手続きの部分がファンタに出る作品にしては割と良く描かれていたので、後半が大アクションになってしまったのを見てちょっと戸惑いました。

大活劇の作戦としてはハチャメチャで、そういう物だと思って見るならおもしろいです。普段は良く護られていて襲いにくいので、松平斉韶の旅行中を襲おうという話になります。道中邪魔をして一行が迂回せざるを得ないようにします。「我が藩に入ってくれるな」と断わる人物の理由も立ち、松平斉韶一行はルートを変更します。それで立ち寄った落合宿の村を刺客たちは金を出して買い取り、宿の人には一行に怪しまれないように普段通り平静を装って芝居をしてもらい、いざという時には逃げてもらいます。

落合宿に入ってしまった300人を超える一行を前と後ろで分離し、バカ殿と部下の一部分が宿に閉じ込められるようにします。これですと剣豪13人で仕留められます。1人10人ぐらい斬れば良く、江戸時代ずっと戦争が無く、実践に慣れていない、官僚化してしまった侍ならやっつけられるという計算です。この辺は歴史を考えるとまあ説得力があります。本物の松平斉韶が慶応から明治に変わる日に66歳で死んだとすれば、十三人の刺客の時は松平斉韶が30歳過ぎ、40歳より前ぐらい。演じている稲垣吾郎も40前。となると戦国時代のような命がけの戦争からは200年以上遠ざかっていたわけです。

こういう事情を全然知らない外国人が見ると、日本人が納得して見ている様子が理解しにくいかも知れません。春のファンタのフィナーレでしたが、大受けではなく中受けという感じでした。私はスターの顔が見られたりもしたので納得しながら見ていました。

★ だるま女登場

三池崇史の作品はいくつか見ていますが、だるま女が登場したのには驚きました。松平斉韶がいかに悪い男かを示すために考え付いたのでしょうが、あまり趣味が良いとは言えません。新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争などという作品も作った人なので、取材している間に都市伝説を聞いたのかも知れません。殺し屋1 もかなりバイオレンスを強調した作品でしたし、三池としてはただの楽しいアクション映画では物足りなかったのかも知れません。

実在しただるま女(だるま娘と呼ばれた)が聞いたら嫌な気持ちになったことと思います。見世物をやっていた女性ですが、両親が健在な時には幸せに暮らしていたようです。手足は凍傷で失ったそうです。後に義理の父親に売り飛ばされて1度は見世物にされたそうです。意思の強い女性だったらしく、その後結婚し、子供を育て、見世物からも引退。彼女を大切にしてくれた人たちとは次々に死別。それでも自立して生き続け、文筆業、講演、慰問を続けたそうです。明治時代に生まれ、まだ女性には選挙権が無い時代を過ごし、戦後も活躍を続けた人で、日本の大きな変化を体験した人です。

7歳で父親と死別したのに始まり、次々と家族を亡くして行きます。それも同じ年に2人の身内を失うことを2度も体験。祖母と夫は関東大震災で亡くしています。間もなく知り合った2人目の夫とも2年で死別。3度目の夫と結婚。子供を2人育て、家事は自分でやったそうです。売られて見世物と言われるとすぐ同情したくなってしまうものですが、彼女は非常に自立した考えの持ち主で、見世物を仕事と考え、身体障害者向けの補助金を貰うより、自分でお金を稼ぐ方を選んでいます。

・・・というわけで、三池がちらっと出したシーンには賛成しかねます。

★ スター大盤振る舞いのオリジナル

見てください、オリジナルのキャスト。作られたのは1963年で、私は見ていません。あの頃は邦画を見る機会が無く、連れて行ってもらったのは洋画ばかりでした。確かまだテレビは持っていなかったと思います。その翌年は確かテレビがうちにも来たと思いますが、テレビでも見たのは洋画や子供向きの番組ばかり。

キャストの表を見比べて見ると、オリジナル版には物凄い数のスターが出ています。リメイクより強力な顔ぶれです。リメイクで渋いのは平幹二郎、松本幸四郎など。あとは普段はあまり共演しない人たちが集まっています。1人で主演が取れる人が何人も出ているので、2010年としてはそれなりに凄い動員をかけたのでしょう。

★ 受け

国内でどのぐらい受けたのかは分かりませんが、有名な監督と出演者なので、ある程度は行ったのかなと思います。ベルリンでの受けはまあまあ。大感激の顔は見られませんでしたが、全否定の顔もありませんでした。毎年ファンタとしては日本と韓国、出来れば中国の作品を混ぜたいらしく、今年の春は初日の最終作品が韓国、最終日(と言っても開催は2日だけ)のフィナーレが日本の作品でした。

私は前半のような作品はドイツにはあまり来ないので、そこでは満足、後半のアクション部分は時代考証も何もすっ飛ばしているのであまり満足しませんでした。ああいうアクションをやるのなら、全部をああいう風にしたらと思いました。なら、平幹二郎は要らない。前半と後半で違う映画のようです。

ドイツにはなかなか所謂邦画的な作品が来ないので、その一端が見られたのは良かったです。

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