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塔の上のラプンツェル /
Tangled /
Rapunzel /
Rapunzel - Neu verföhnt /
Raiponce /
Enredados /
Enrolados /
Entrelaçados /
Rapunzel - L'intreccio della torre

Nathan Greno, Byron Howard

2010 USA 100 Min. アニメ

見た時期:2011年7月

グリム自身が元々の話を変えた上、この作品の監督がまためちゃくちゃに変えていますので、グリムの話を知っていてもあまり役に立ちません。

滅多に見ないアニメを見てしまいました。

★ 変更、また変更

元ネタはラプンツェルですが、登場人物もストーリーもかなり変更されています。一応元ネタとして浮かぶグリム童話も実は現在良く目にするバージョンはかなりの変更が加わっています。グリム童話自体もグリム兄弟が国中を回って集めた言い伝えと考える人が多いようですが、実は近くで知っていたフランス系の女性から聞いた話が主で、そのためフランスのシャルル・ペローの童話集とかぶる話もあります。

グリムが童話集を発表した頃欧州ではちょっとした童話集ブームで、他にもいくつか類似品が出版されていました。グリムがその辺から話を失敬して来たのは他の出版物に負けまいと急いだためなのか、などと現実的な方向に想像をたくましくしてしまいます。その中でなぜグリムだけが世界中に今も知られていて、他は間もなく廃れてしまったのかも不思議です。

グリム自身(恐らくは弟)がラプンツエルの話を大きく変えて出版したのはわりと知られている話です。初版では話としては納得の行く、あまり子供向けでない部分が入っていたのですが、後の版ではかなり検閲が入り(役所の検閲ではなく、グリムの自主規制です)話がボケています。

私がラプンツェルを初めて知ったのは小学校低学年の時読んだグリム童話集で、その出版社は恐らくグリムの後の版を訳して、さらに子供向きに書き換えたのだと思います。その後テレビで見たのですが、その記憶とインターネットなどの検索がきっちり合いません。

私の記憶では60年代か70年代、ウォルト・ディズニーが最初に出て来るテレビ・シリーズをやっていました。放送日は確か週末で、毎回違う話。放送時間は1時間より長かったかも知れません。その1つがラプンツェルだったように思うのです。ところが今インターネットを検索しても出て来ないので、記憶違いかも知れません。

一応そういう番組があったものとして話しますが、そのエピソードの主演は若いブロンドの女優で、私の目にはこんなきれいな人はいないと思えるぐらい美しく映りました。ストーリーは童話で読んだのと同じですが、アニメでなく、俳優で見ると魔女と争いになり髪をばっさりやられてしまうシーンなどはとてもインパクトがありました。やはり子供向けの本の挿絵とは違います。

長い長い時を経て先日アニメ版塔の上のラプンツェルを見たのですが、これまた大きな変更が加えられていました。制作はディズニーですが、ウォルト・ディズニーはこの世の人ではなく、会社も当時とかなり変わっています。そしてストーリーもラプンツェルを元ネタとした他の話と言った方がいいように変更されていました。

まずラプンツェルですが、アニメでは王女。さらわれてしまいます。童話では普通の家の娘で、お母さんが彼女を妊娠中にどうしても Feldsalat (直訳すると《野のサラダ》、別名ラプンツェル)が食べたくなり、夫が隣に住んでいる魔女の家の庭から盗み出します(魔女が隣に住んでいるような時代!?多分西洋の漢方医のような人だったんでしょう)。盗みの現場を魔女に見つかってしまい、生まれた子供が女の子だったら、子供を魔女に譲るという約束をしてしまいます。なので誕生するとラプンツェルは連れ去られてしまいます。何も誘拐したわけではありません。この辺はアニメでは全然違う話になっています。

アニメのラプンツェルは赤子の時に既に搭に閉じ込められていて、現在18歳。私が読んだ童話では12歳になった時、あまりにも美しく育ったので、搭に閉じ込められてしまいます。ということはそれまで魔女と一緒にもしかしたら夫婦の隣に暮らしていたのかも知れません。いずれにしろ地上のことはある程度知っているはず。

アニメではラプンツェルを訪ねて来るのは指名手配中の泥棒で、彼女の髪を使わず自分で搭に上って来ます。そこでは彼が盗んだ王冠を隠すという話になります。童話では訪ねて来るのは王子。ラプンツェルの歌声に引かれて搭まで来て、魔女がラプンツェルの髪を使って搭に上る様子を見ます。それで自分も真似をして上ってみます。ですので2人一緒に下へ降りることはできません。そのため王子は訪ねて来るたびに絹の紐を持ち込みます。それを編んではしごを作ろうという計画。

魔女に王子の存在がばれてしまうシーンが大スキャンダル。童話の初版ではどうやらもろにラプンツェルが妊娠してしまうようです。後の版ではそうははっきり言わず、服がきつくなった(= お腹が大きくなった)というくだりがあるそうです。私の読んだ童話ではラプンツェルが自分で口を滑らせてしまいます。

彼女は魔女の怒りに触れ妊娠したまま髪を切られ、荒野に追い出されてしまいます。魔女は王子が次に訪ねてきた時に切った髪を使って王子を搭の上まで来させます。事の顛末を聞かされた王子は絶望して搭から飛び降り自殺を試み、命は助かりますが、失明。

ラプンツェルは荒野を彷徨った後どこかに家を見つけ、生まれた子供は双子。何とか飢えを凌いでいました。王子は何年も失明したまま彷徨い、ある日偶然ラプンツェルの家の近くに来ました。目は見えずとも声は分かります。そうして2人は再会。ラプンツェルの涙が王子の目に入り、王子の目はまた見えるように・・・というハッピーエンドです。

このあたりは最新のアニメでは全然違う話になっています。

★ 1箱100円程度のサラダ

ラプンツェルという名前の植物が私が時々食べているサラダの事だと知ったのはかなり後のこと。私がこちらに来た頃にはあまり見ませんでしたが、Feldsalat (=野のサラダ)という野菜があり、最近ではどこでも1箱100円ぐらいで売っています。1箱で3人分ぐらいの量です。おいしいことはおいしいのですが、どうしても食べずにいられなくなるほどの個性のある味ではありません。普通のサラダ菜と同じでソースの味に大きく左右されます。ドイツ人に聞くとずっと昔からあるもので、特に珍しいものではないそうです。

私はむしろピリッとした味のルコラの方が好きですが、ラプンツェルもどんどん食べることのできる野菜です。Feldsalat がラプンツェルの事だと知ってからは、これがメルヘンで起きる事件のきっかけなのかと思いながら食べています。

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