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アーネストとセレスティーヌ / Ernest & Célestine

Stéphane Aubier, Vincent Patar, Benjamin Renner

F/Belgien/Luxemburg 2012 80 Min. 劇映画

声の出演者

Lambert Wilson (Ernest - 一匹狼の熊)

Pauline Brunner (Célestine - 子鼠)

見た時期:2014年3月

ストーリーの説明あり

ストーリを紹介しますので見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ いいアニメ

私は特にアニメ・ファンではありませんが、絵がいい物、ストーリーがおもしろい物などは好きになり、長い間愛好しています。ストーリーがおもしろければ絵などどうでもいいという例もあれば、絵が良ければストーリーが甘くても「まあ、いいや」という例もあります。

Ernest & Célestine は絵がすてきで、ストーリーはそこそこという感じです。絵はどの場面を切り取って、印刷しても、額に入れてその辺に飾っておける感じです。画風には日本の影響があったのか(フランスの本式の画家には時々日本の影響の強い人がいる)、単に日本人の好みに合うだけなのか分かりませんが、日本人なら大抵の人が好きになるようなところがあります。紙面を全部絵でうめてしまうのではなく、何も描かないスペースをふんだんに取る手法で、欧米人にはスカスカ、無駄な場所が多過ぎると映るかも知れません。日本人は太古の昔から画面にちょっとだけ何かを描くのが大好き。好みに合います。

★ オスカー候補になっていた

この作品を知ったのはオスカーの候補をチェックしていた時。トレイラーを見て気に入り、そのうち見てやろうと思っていました。外国映画が候補に挙がる時は、アメリカの作品よりやや古い事があり、アーネストとセレスティーヌも2014年3月に話題になっていますが、フランスでは2年前に公開されていました。

なのでドイツでもすぐ手に入るだろうと思うと甘い!どういうわけか一緒にEUでがんばっている隣国、直接国境を接している地方もあるのに、なぜかフランスのおもしろそうな作品は劇映画でもドイツで見る事ができなかったり、探すのに苦労する事が多いです。私がファンタでフランス映画と英語圏の映画が重なると、フランス映画を見に行くのもそのためです。

この作品も普通の店ではDVDが見つからず、意外な場所で上映されていました(下を参照)。

★ 主演の1人ランベール・ウィル

何でフランス生まれのフランス人なのにウィルソンなどという名前なんだろうと思ったら、母方がアイルランド系。だからなんだろうと早とちりしそうになったのですが、ウィルソンは父方の名前。

お父ちゃんはフランス生まれ。職業はお父ちゃんも俳優。じゃ、大昔来てブルターニアに居ついたブリテン人の血筋なのかと早とちりしそうになったのですが、それもはずれ。父親ジョルジュ・ウィルソンの苗字は、その父親の父方の姓。その人はアイルランド系の音楽家。そのおっさんのおばあさんがアイルランド人だったのです。短くまとめると、ウィルソンという姓はランベールの祖父の祖母から来ていたのです。数代を経て、ウィルソンと、の所にあったアクセントが、いつの間にかソンに移っています。

私は特にランベール・ウィルン・ファンではありませんが、彼の作品だと聞くと、見ようかなとは思います。私がこれまで見た作品はほぼ悪役。状況に強制された同情すべき場合でも犯人役が多いです。ただ彼の経歴を見るとかなり幅広く色々な役を演じているようです。フランスは国が肩入れしてたくさん映画を作る国、そうなると一定の能力を身につけた俳優を使い回しすることになり、彼に限らずある程度名を成した俳優には色々な役が回って来るようです。

私がウィルソンを善人役で見たのはこれが初めて。善人ではなく、正しくは善熊役です。

そしてこれまで知らなかったのは彼が歌手でもあること。そりゃ身内に音楽家がいるんだからと後で聞けば納得しますが、この作品を見るまでは知らなかった!

★ 動物版ロミオとジュリエット

話を要約すると、ロミオとジュリエットのハッピーエンド版。

★ 2つの世界

熊族と鼠族が地上と地下で住み分けしている世界。熊は恐ろしい動物だと生まれた時から教えられ、毎日防衛トレーニングに励んでいる鼠の孤児院に住むのが子鼠のセレスティーン。子供たちはいずれ歯科医になるべく励んでもいます。居住区はもっぱら地下。

セレスティーンも歯科学校で勉強中ですが、本当は画家になりたい・・・。

熊の世界では鼠は忌み嫌われ、家の中で鼠を見かけると追い掛け回して捕まえ、時には食べてしまいます。捕まれば鼠の命は風前の灯。

そんな世界に住む熊のエルネストですが、彼は他の熊と一緒に町に住まず、森の一軒家に住んでいます。時々町に出てワンマンバンドで音楽演奏し、乞食のようにお金を恵んでもらう生活。それも今は上手く行っておらず、無一文な上にお腹を空かしています。

彼の家系の全ての熊はエリートで、法曹界の重鎮。一家はエルネストも判事にしたかったのですが、芸術肌のエルネストはミュージッシャンになる道を選び、全ての楽器をこなすまでになったのですが、世間からは全く認められず、乞食同様の生活。乞食と違うのは車を1台、家を1軒持っているところだけ。

歯科医志望の子鼠たちは地上の熊世界に時々出向いて熊の歯を集めなければなりません。小熊の乳歯が抜け落ちると熊はその歯を枕の下に隠します。子鼠たちは熊の家に忍び込みその歯を失敬。歯科クリニック・センターに持ち帰ります。歯科センターではその歯を研ぎ、鼠の義歯に作り変えます。

この歯科学校が私が時々行く大学病院の歯科と良く似ているので笑えます。

セレスティーンは熊の町の菓子店の長男の歯を狙い、店に忍び込みます。菓子店の親父は毎日熊の子供たちに甘い物を売って商売をしていますが、自分の息子には一切甘い物を食べる事を禁じています。菓子店の向かいではおかみさんが義歯店を経営しています。つまり、子供たちをせっせと親父さんが虫歯にして、おかみさん義歯を売っているわけ。息子には虫歯にならないよう甘い物を禁じています。

っとまあ、童話の時代から資本主義の構造を子供に教えるのがフランスだと知ってびっくり。

★ エルネストとセレスティーンの出会い

歯科学校の生徒は皆熊の町に送られ、子鼠たちはそれぞれ熊の乳歯を集めて回ります。セレスティーンはたまたまこのお菓子屋の家の中で発見され逃げ回った挙句、家の前にあったゴミ箱に閉じ込められてしまいます。

そこへ通りかかったのがその日もお金を恵んでもらえず、腹を空かしたエルネスト。冬眠しようにもお腹が空き過ぎて眠れません。ゴミ箱をあさっている時にセレスティーンを発見。

ご馳走が転がっていたというので大喜びのエルネストはセレスティーンを捕まえ、口を大きく開け、食べる寸前。機転の利くセレスティーンは「自分を食べるより、目の前の店のお菓子を食べた方がいいよ」と言い、地下倉庫に誘います。

★ エルネストとセレスティーンが仲良くなるまで

他の子鼠たちがせっせと乳歯を集めているのに、セレスティーンは暇があると熊の絵を描いています。なので集めた乳歯はたったの1本。

歯科学校の先生に絵を見つけられてしまい、罰として「乳歯が50本になるまで戻って来るな」と言われてしまいます。

セレスティーンは菓子店と義歯店の関係に気づき、義歯店に忍び込めば50本どころかたくさんの熊の歯を盗めると考えます。

菓子店の地下室でお菓子で満腹になったエルネストは捕まってしまい、護送中。

自分1匹の力では大量の歯を奪えないセレスティーンは一計を案じます。護送中のエルネストを脱走させて歯泥棒を手伝わせようという案。大成功します。これでセレスティーンの面目は保たれます。

しかし鼠世界にいたエルネストが発見され、彼を助けるセレスティーンと共に鼠達から追い掛け回され、命からがらエルネストの町外れの家に逃げ帰ります。当初は対立していたのですが、エルネストはセレスティーンの画才、セレスティーンはエルネストの音楽の才能を知り、仲良くなって行きます。

★ されど住む世界が違う

追跡されていた車の色を塗り替え、あたりの景色に溶け込んで発見されることも無く、暫く2人はとっても幸せな日々を送っていました。しかし坂道に停めてあった車が逆走し、町に戻ってしまい、そこから足がついて、鼠と熊警察が出動して来ます。エルネストは鼠警察、セレスティーンは熊警察に捕まり、裁判。

裁判中に火事が起こり、皮肉な事に取り残された判事がそれぞれエルネスト、セレスティーンに助けられ、恩義ができてしまいます。特別な恩赦で2人はそれぞれ自由の身。2人は森の家に戻る事ができ、ハッピーエンド。

★ とにかく絵がいい

かわいいという感じの絵ではありません。さらっと描いてあり、大人の鑑賞に堪えます。子供時代に1度でもこういう作品を見ておくと、趣味も変わるでしょうし、中には自分も画家になろうと思う子供が出るかも知れません。

ストーリーは映画の世界に良くある、住む世界の違う2人、偏見を打ち破る2人、親の望みと違う道を選ぶ子供などが混ざったありきたりの物ですが、この映画を見るような子供がそうしょっちゅうそんな話を見ているわけではないだろうと思うので、子供には新鮮に映るかも知れません。

★ 喉を聞かせたウィル

どうやら作品中の歌はウィルンが歌ったようです。

★ 見に行った場所

何も知らずにこの映画館に行くと、いかにも場末の落ちぶれ映画館に見えますが、実はここ、うたむらさん向け音楽情報に最近まで常連だったライブ・ハウス ACUD のある所です。うたむらさんや私には音楽情報の方でおなじみだったのですが、この場所にはカフェ、ライブ会場の他に映画館が2つついていて、その他にもワークショップなどができる空間もあるようです。私が出かけて行ったのはこの日が初めて。

知らない人が来ると、古いアパートを占拠した学生が中を作り変えたというような印象の場所で、出入りする人を見ていると外国人の若い学生かなという感じの人も多いです。

私がびっくりしなかったのは、私の家の近くにこれとそっくりの野外映画館があるからです。春先から夏の終わりまで無料で映画が見られる会場があるのですが、同じ場所にやはりカフェ、映画館などがあり、無料映画の日がたまたま雨天になると、その映画館で見る事もできます。普段はそこでは料金を取ってちょっとシーズンを過ぎた作品を上映しています。サッカーの世界選手権などでドイツがいい線行くと、その日はサッカー中継を無料でやってくれたりもします。

この場所はデトレフ・ブックが映画撮影に使ったりもし、関係者の間では知られた場所ですが、普通に映画を見る人はあまり行きません。

ACUD の客筋がどういう人たちなのかは分かりませんが、全体の雰囲気を見ると似た感じがします。最近何年も ACUD 常連だったソウル系のミュージッシャンが別な会場に移っており、ライブからは手を引いたのかと思います。しかしまだ当分ウォッチングはしますので、コンサートが戻るようでしたらまた音楽情報に載せます。

あ、そうそう、私たちが見た日、観客は全部合わせて3人。どういうわけか、こんな映画など見そうにも無い青年が1人来ていました。まあ、私たち3人で映画館を貸し切りにしたような感じで、好きな所に座れました。

そして一見「こんな日に来やがって、俺働かなければならないじゃないか」と観客が来た事に不満そうに見えた映画館の係りの人が、なんと「3人しかいないならフランス語で上映してもいいよ」と大サービスの申し出をしてくれたのです。

子供映画で、ドイツ人の子供がフランス語に堪能なはずは無いので、原則ドイツ語で上映の予定。私たち3人の中に1人だけフランス語が堪能な人がいたのですが、私はからっきしダメ。字幕を読む余裕もありません(「じゃ、なぜファンタではフランス語で見るんだ」と突っ込まないで下さい)。なのでせっかくの申し出を断わったのですが、小さい場末の映画館にはこういうサプライズが時々あります。

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