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What We Do in the Shadows / 5 Zimmer Küche Sarg

Jemaine Clement, Taika Waititi (= Taika Cohen)

Neuseeland 2014 86 Min. 劇映画

出演者

Jemaine Clement
(Vladislav - ウェリントン郊外テ・アロ在住の862歳の吸血鬼)

Luke Bonjers
(ヴラディスラヴの犠牲者)

Taika Waititi
(Viago - ウェリントン郊外テ・アロ在住の379歳の吸血鬼)

Jonathan Brugh
(Deacon - ウェリントン郊外テ・アロ在住の183歳の吸血鬼)

Jackie van Beek
(Jackie - ディーコンの家来)

Ben Fransham
(Petyr - ウェリントン郊外テ・アロの地下室在住の8000歳の吸血鬼)

Christopher Winchester (吸血鬼)

子供吸血鬼

Morgana Hills
Morag Hills

Cori Gonzalez-Macuer
(Nick - 学生)

Stuart Rutherford
(Stu - ニックの友人、コンピューターのプログラマー)

Elena Stejko (Pauline Ivanovich)

Jason Hoyte (Julian)

Karen O'Leary
(O'Leary - 警官)

Mike Minogue
(Minogue - 警官)

Chelsie Preston Crayford (Josephine)

Ethel Robinson (Katherine)

Brad Harding
(バンパイアー・ハンター)

Rhys Darby (Anton - 狼男)

Simon Vincent (Matt - 狼男)

Cohen Holloway (Dion - 狼男)

Duncan Sarkies (Declan - 狼男)

Nathan Meister (Nathan M - 狼男)

Tanemahuta Gray (Nathan G)

Tim Capper (狼男)

Jamie W.R. Smith (狼男、スタント)

Ian Harcourt (ゾンビ)

Belle Gwilliam (Alisha - ゾンビ)

Aaron Lewis (Aaron)

見た時期:2014年8月

2014年ファンタ参加作品

ストーリーの説明あり

ストーリを紹介しますので見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ 今年のファンタ

今年のファンタ作品はまず最初に疲労困憊で内容をきちんと理解できなかった作品、取り敢えず内容は分かった作品に分けられます。その次に秀作、佳作、凡作に分かれます。

What We Do in the Shadows は秀作です。

今年のファンタはオセアニアからの参加作品が多かったです。オーストラリアからは色々な作品が来ますが、ニュージーランドはオーストラリアに比べると数が少なく、名声はもっぱらピーター・ジャクソンに独占された感があります。オセアニアのコメディー界には特殊な才能が埋もれているらしく、過去にもアンソニー・ミアのお腹の皮がよじれるようなコメディーの秀作が飛び出したことがあります。

★ 監督

2人組で、監督としての作品数は少ないです。

クレメントはマルチ・タレント人ですが、監督としてはこの作品が第1作。続いてテレビ・シリーズのエピソードを2本撮っています。

本職はコメディアンと音楽。

ワイティティ(別名コーエン)はアジア的な感じの人で、監督としては10本強作品があり、What We Do in the Shadows が最新作。これまでは主として短編かテレビのエピソードを撮っていました。

★ ストーリーが弱いのに

ファンタの勝者は通常プロットがしっかりした作品です。プロットさえ冴えていれば、無名の俳優でも、特殊撮影がゼロでも評価は高くなります。What We Do in the Shadows にはストーリーらしいストーリーが無く、吸血鬼の共同生活をつづっただけ。この種の作品は一般向きにはいいですが、ファンタ向きではありません。

ところが What We Do in the Shadows はそういうコンセプトでありながら、客席が大いに沸き、大成功でした。無論この作品を見て感激するためには何十年もの映画のキャリアを積み、特に吸血鬼物をたくさん見ておく必要があります。しかしそういう目の肥えた観客に大受けする作品だという事は中身が濃いわけです。

★ 成功の秘密

ストーリーが単なる吸血鬼の日常生活の描写なのに大成功した理由はあったりまえの人間の日常生活を、何百年も生きている吸血鬼にもあてはめた点でしょう。

制作の中心的なコンセプトはモキュメンタリー。ドキュメンタリー映画のスタイルを劇映画に使っています。それもプロの記録映画監督のスタイルではなく、ホーム・ビデオやスマホで撮影する私的なビデオのスタイル。現代に生きる吸血鬼は少なくともホームビデオを撮る程度にモダンなテクノロジーに適応しています。

もう1つ観客の共感を得やすい要素があります。現在50歳以上の日本人なら、かつてモンキーズの30分のテレビ・シリーズを見たことがあるでしょう。4人組の売れないバンドのメンバーが1軒の家を借り、共同生活をしながら出演のチャンスをつかむとライブをするというのが骨子で、毎週そこに大騒ぎになる個々のエピソードが挟まれます。

欧米に住んでいる人で、60歳前後までの人なら自分でもこういう共同生活を経験した人も多いでしょう。少なくともドイツでは70年代、80年代に多かったです。一戸建ての家か、部屋数の多い古いアパートが使われました。大抵は内装を現代風に改装するものですが、何百年も生きている吸血鬼に取っては私たちには古臭く思える家でもモダンに映るのでしょう。

★ 話の進行

時は現代、所はニュージーランドのウェリントンに近い町テ・アロ。

冒頭からホームビデオの中心になる吸血鬼が観客に話しかけて来ます。「僕たちの家を紹介します」とか「これが共同生活をしている〇〇〇歳の吸血鬼で〜す」ってな感じで進みます。後になると3桁ではなく4ケタの年齢の吸血鬼も登場します。

また、日中買い物などの用を足してくれる家来もいます。

そうやって家と住吸血鬼を一通り紹介した後は、ディスコに繰り出したりします。有名ディスコによくあるように入口の前に長い列を作っているシーンもあります。登場吸血鬼が人間でない、元人間である以外は普通の若者の生活と変わりません。ただ、行動は常に夜間。日が昇ると危険です。

現代社会では犯罪捜査の科学技術が発達しており、吸血鬼もその辺は時代の変化を感じており、そうやたらに人を襲って血を吸うわけには行きません。そこに吸血鬼独特の苦労もあり、それが騒動に発展することもあります。例えば学生のニックが新しく噛まれてしまい仲間に入ってしまいます。新しく吸血鬼の仲間入りしたニックはその事実を隠そうとしないので、残った3人はハラハラ。

大らかな性格のニックは友人のステューを吸血鬼の住処に誘って来ます。コンピューターのプログラマーのステューは相手が吸血鬼でも気にならない様子で、3人にコンピューターの使い方を教えたりします。ややオタク風で、無口。感情の起伏もありません。

吸血鬼独特の問題は日光だけではなく、バンパイアー・ハンター。この家に目をつけているハンターに襲われ、新米のニックの不注意もあり、8000年の長きに渡って生き延びていたピオトルが死んでしまいます。

ストーリーが平凡なのが一応この作品の欠点で、後半狼男や魔女との遭遇がありますがそのあたりの筋はぱっとしません。

この作品の強みは現代の生活に適応しようとする吸血鬼の涙ぐましい努力と、過去の有名な作品に対する尊敬の気持ちたっぷりに作られている点でしょう。ウェリントン市がバックアップした甲斐がありました。

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