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HK 2012 102 Min. 劇映画
出演者
Tony Leung Ka-Fai
(Waise M.B. Lee - 警察の副長官(現場担当)、李家俊の父親)
Eddie Peng/Peng Yu-yen
(Joe K.C. Lee - 警官、Waise M.B. Lee の息子)
Aaron Kwok Fu-shing
(Sean K.F. Lau - 警察の副長官(管理担当))
Ma Yili
(Michel - Sean K.F. Lau の妻)
Aarif Rahman/Aarif Lee
(Billy K.B. Cheung - ICAC の主席調査官)
Gordon Lam/Lam Ka-tung
(Albert C.L. Kwong - 警視正、リーの部下、法学を勉強中)
Charlie Young/Charlie Yeung
(Phoenix C.M. Leung - 警察の広報担当チーフ)
Andy Lau Tak-wah
(Philip M.W. Luk - 保安局局長)
Chin Kar-lok
(Vincent W.K. Tsui - 借金を抱えた警視正、ラウの部下)
J.J. Jia/Jia Xiaochen
(Janet Tsui - Vincent W.K. Tsui の妻)
Terence Yin Chi-wai
(Man To - 情報システムの管理官)
Raico Blue (トウのガールフレンド)
Andy On
(Michael Shek - 特殊任務の指揮官)
Michael Fitzgerald Wong/Wong Man-tak
(York H.W. Tsang - 警察長官)
Alex Tsui Ka-kit
(Matthew K.M. Mak - ICAC の長官)
Grace Huang
(May Cheung - 見習い中の調査官)
Jeannie Chan
(Nicole Chan - ICAC のアシスタント調査官)
Joyce Cheng Yan-yee
(M.Y. Shum - 巡査部長)
Tony Ho Wah-chiu
(William Ngai - 爆死する警視正、金庫番)
Wai Kar-hung
(Keung Wong - 巡査)
Eric Li Tin-cheung
(T.M. Leung - 巡査)
Gary Chan
(K.F. Cheng - 巡査)
Byron Mann
(Chan Bun - ハイジャッカーのボス)
Julius Brian Siswojo (酔っ払い)
Ray Pang (タクシー運転手)
Singh Hartihan Bitto
(東南アジア人犯罪者)
見た時期:2016年6月
どうも長いバージョンがあるようですが、私は短い方を見ました。この作品はファンタにぴったりですが、来ていません。
監督2人はこの作品がデビューだそうです。気合が入っています。リョンはこの作品の前に美術などで少し経験を積んでいますが、監督としては長編も短編もやっていません。ルクはセカンド・ユニットの助監督を90年代からやっているので、話をまとめたり、俳優たちへの指示はルクの力によるものが大きかったのではないかと想像しています。映像には美術的なセンスの高さが見られるのでリョンの美術の経験も生きているのでしょう。脚本は共同執筆。
次作も2人で作っていて、3作目はコールド・ウォー 香港警察 二つの正義の続編。これも共同監督です。
★ オープニングがすばらしい
2013年11月に見た井上さんからは厳しい批判が出ています。一般のネットの記事ではかなり高い評価を受けています。井上さんが指摘した点では私も似たような感想を持ちました。
その他の所は多少ぶつくさ言う点も出ますが、まあ合格点。
内容がまだ全然分かっていない段階で取り敢えずオープニングに感激しました。 インファナル・アフェア(1)のオープニングにも結構感心しましたが、あれから10年も経てばこれぐらいスマートになるだろうと思います。背景にやや日本風な所(画面の作り方)と英国(音楽)の影響を感じますが、上手に料理してあります。
出演者などを紹介するシーンが終わると急に町の風景に変わるのですが、そこもすばらしいです。カメラをどういう風に使うかが勝負を決めますが、勝ちです。ここまではストーリーに関係なく満点をあげていいかと思います。
カメラの使い方はクリストファー・ノーランをパクって改良したのかなと思いましたが、上手に料理してあるので、「きれいだなあ」と思いながら見ていました。制作者は香港をこよなく愛して、自分の町をきれいに描いたのかなと思いました。このシーンは劇場で見たかったです。
続編は今年制作なので2本まとめてファンタに来ればいいなあと・・・希望的観測。
★ 突然の展開もいい
冒頭、ショッピング中の町の人を数秒登場させた後、いきなり爆発とカーチェースです。撮影された所は自分がかつて散歩した場所と似ていましたが、いきなりの爆発でそこにいた人たちは吹っ飛ばされます。台詞を聞いていると犠牲者はゼロ。聞き間違えたのか、「物損だけなんてありえねえ」という感じの大規模爆発です。
★ 出演者の様子
俳優は日本人をパクった感じの顔つき、服装、立ち居振る舞いで出て来ます。ドイツ語に吹きかえられているので、ドイツ人に「これは日本人が演じているんだ」と言っても、そのままだまされそうなぐらいです。ただ、日本の映画に出演する俳優より香港の俳優の方がスマートな振る舞いです。学芸会っぽさが漂いません。このあたりは日本が今後劇映画で世界に打って出るつもりがあれば気を配るべき課題でしょう。
★ カメラはすばらしい
上でも少し褒めましたが、冒頭のシーンだけですでに感激。100分強の間随所に「これぞ香港」という美しいシーンが出て来ます。この町を良く知り、愛している人が撮影したんだなあと思いました。
★ スマート vs 馬鹿馬鹿しい
事件の展開はなかなかスマートです。そういうスタイルは見ていて楽しいです。
井上さんもちょっと文句を言っていましたが、ライバルの争いは馬鹿馬鹿しく芝居がかっていました。いくつかの映画を見ていると、ラオとリーがそのうち協力し始めるだろうなということは予想がつきます。2人共方法は違っても悪を悪と見なし、自分なりにけじめがついている人たちだからラストもおおよそそういう展開になるだろうと思いました。
特にあほらしく芝居がかっていると感じたのはラオとリーより、汚職の内部調査をやっていた若い男の方です。俳優がわざとらしい演技をしたのか、恐ろしく大根役者なのかについてはまだ結論が出ていません。ラオやリーがいない所のシーンはそのままでもいいと思いますが、彼がラオやリーと直接対決するシーンの演技が他の俳優の演技の格より落ちます。
各国で公的な立場の人の呼び名が違うと思いますが、ここでラオとリーがやっているのは副警視総監なのでしょうか。正は1人らしく、事件が起こる時はデンマークに出張中。
★ アクション!
高速道路のアクション・シーンは見ごたえがありました。他のアクション・シーンも良かったです。
ビルの屋上が爆発するシーンは大げさですが、見ごたえはあります。
香港の中心部は人口が密集し、道路も混雑していますので、それを知った上であのアクションを見ると、巻き込まれ犠牲者の数も想像がつき、撮影すら日中は大変だったろうと思います。
★ 筋がゆるい
井上さんと意見が一致する所です。犯人の要求金額が変で、あの時に警察側は理由をもう少し考えるべきだったと思います。犯人の真意まで思い至らないとしても、送り返される3分の2の金額の護衛がゆるかったのは確か。警察の落ち度と言えます。
この作品、所々に香港人の誇りが見え隠れしますが、犯人とのやり取りで警察側が「(ドルというのは)香港ドルだぞ」と念を押すシーンがあります。
★ ラウさんは香港の大臣
インファナル・アフェアで見事に主演を演じたアンディー・ラウがぼけっとしたスタイルで登場します。役は警察を抱える省の大臣。笑顔の人のいいおっさんスタイルで登場し、髪型がお粗末なのでインファナル・アフェアの3部作を知っている者は笑えます。メイク係がその気になればピッカピカのスターの外見で登場することもできるのですが、華は四大天王のもう1人の郭富城に持たせて、もさっとしたおじさん姿での登場です。
実はドイツ語では大臣と訳されているので、内務大臣だろうと思うのですが、旧字体の中国語を見ると保安局の局長となっています。それならあの髪型もあるか・・・と思ってしまいます(笑)。もしかして国家公安委員長だとしたら、やっぱりあの風貌はちょっとゆる過ぎる・・・(笑)。
アンディー・ラウの口を通して大陸に対する姿勢をしゃべらせています。香港人の気概を彼が代表して語っています。このシーンがこの作品のスタンスであり、それがこの作品が高く評価された理由でしょう。
加えてリーが取調べ中に若い汚職調査員に説教をするシーンがいいです。
★ あらすじ
香港警察の副長官をやっている父親のリーと同じ警察で働く息子を含めた5人の警官が仕事の真っ最中に車ごと消えてしまいます。間もなく巨額の現金の要求があります。暫くすると犯人側から値引きがあり(!?)、要求額は3分の1に減ります。
探知機がつけられた現金の受け渡しに失敗し、現金は道路にまき散らされます。警察から余った3分の2を銀行に戻しに行く最中の車が襲われ、探知機のついていない3分の2の現金が犯人の本来の目的だったことが遅まきながら分かります。
人質は最初1人が解放され、後で残りも全員戻りますが、最初に戻った男は心臓発作を起こして死んでしまいます。
事件の本質は金だけではなく、息子がもう1人の副長官のラウを失脚させ、父親を長官に昇進させるのが狙い。この部分を成立させるために、前半何度もリーとラウの対立が描かれます。ユニークなのは親子が逆の役目を演じる点。アジアでは親や年配の親戚が子供や孫を昇進させたり、重要な地位につけることが伝統になっていますが、コールド・ウォー 香港警察 二つの正義では息子が父親を警察の長官にしようとたくらんでいたのです。
コールド・ウォー 香港警察 二つの正義の《二つの正義》の部分は、政府の節約政策が現場の警官を苦しめているため一石を投じるという一応納得の行く動機を指しているのかもしれません。現場がつらい思いをしていることがラストで息子の口から語られます。皮肉なのは現場を知り尽くして経験豊富な父親のリーと、デスク・ワーク中心で管理をやっているライバルのラウが、犯罪撲滅という点でお互いの共通点を見出し、後半気合を入れて両者共捜査を行い、友情すら生まれるのに対し、共に現場を知っているリー親子は、犯罪との一線を越えてしまうか越えないかで大きな亀裂を生み、意見の一致を見ないまま終わります。 悪の道に走った息子と、署内で規則違反を、モノともせず強引な事はやるけれど、それは皆悪事と戦うためという大原則を守る父親との対決からショーダウンへ。
★ オクラホマ事件を参考にしたのか
真犯人の言葉が、時代を表わしていることになっていました。父親と対決中息子は一人っ子なので助かるつもりでいますが(まさか一人っ子の自分を実の親が殺さないだろうという変な自信)、父親は自分の生き方に忠実で、もしかすると息子に自分を殺させるつもりだったのかも知れません。重大な犯罪を犯した息子を無罪放免にするわけにはいかない、逃げたいなら自分を殺してから行けという父親として最後の教育のつもりだったのかも知れません。
息子はティモシー・マクベイが関わっていたと思われるような団体に属していました。マクベイは自分が犯人として死ぬことで背後にいる人たちを庇ったと解釈する人たちがおり、私もあの事件のオトシマイはきちんとついておらず、彼に救われた団体があったのかもしれないという解釈に基づいて作られた映画を見たことがあります。何かしらきちんと統制の取れた団体の影が見え隠れしていました。
リーの息子はそういう団体があることを示唆した後特殊部隊に胸を撃たれます(特殊部隊こそが問題だったのですが)。
★ 続編があるぞ
最後父親のリーは定年まで努めることはできなくなりますが、お咎め無しで引退。ラウが新しいトップに納まります。公用車で移動中電話がかかって来て、妻と娘に危害を加えるようなことがほのめかされます。交換条件は警察病院に収容されているリーの息子の釈放。胸を撃たれてはいますが、ベッドに座れるぐらいに回復しています。次作をお楽しみにということですが、ここ2年ほどで政治状況が難しくなり、香港の人たちが言いたい事を言えるかは続編を見ないと分かりません。
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