November.28,1999 円熟したクラプトンのライヴ

        エリック・クラプトン11月27日演奏曲目
        MY FATHER'S EYE
        PILGLIM
        RIVER OF TEARS
        GOING DOWN SLOW
        SHE'S GONE
        (アコースティック)
        YOU GOTTA MOVE
        TEARS IN HEAVEN
        BEFORE YOU ACCUSE ME
        BELLBOTTOM BLUES
        CHANGE THE WORLD
        (エレキに戻って)
        曲目不明(サポートギタリストの歌うブルース)
        COCAINE
        WONDERFUL TONIGHT
        BADGE
        HAVE YOU EVER LOVED A WOMAN
        LAYLA
        (アンコール)
        SUNSHINE OF YOUR LOVE
        だと思うけど、間違っていたらごめん。

        紺のズボンに白の半袖シャツ、黒のストラトキャスターを手にしたクラプトンが舞台に登場する。客席から、「立つなよ、クラプトンゆっくり聴かせてくれよ!」の声が聞こえる。何がなんでも、スタンディングして警備員ともめた昔のことを思うと、観客も大人になったなあと思う。会社帰りの疲れた人もいるであろう、大人達の空間だ。

        サポート・ギター、キーボード、ベース、ドラムス、女性コーラス二名にクラプトンが乗るという構成。前半に『ピルグリム』からの曲、アコースティックをはさんで、ヒット曲集と、うまく区切られている。『レイラ』がアコースティックでなくて良かった。あれは、やはりエレキでなくちゃ。

        CAGE'S TAVERNで鈴木はクラプトンの音に[老い]を感じたと書いていますが、いい言葉で言えば、私には円熟したなと感じた。何と言うか、日本的な言葉ですが、曲にわびさびのような間が出てきた。ギターでオカズを入れる絶妙なタイミングのようなものがうまい。やたら弾きまくっていた過去のことを考えると、今のクラプトンは、総てをわかっていて、ツボをわきまえているマッサージ師のように、こちらを心地よくさせてくれる。

        観客も『コカイン』で絶唱したりせず、静かに楽しんでいる。席に座ってラスト・ナンバー『レイラ』になってから、スタンディング。いいなあ。クラプトン何回も見ているが、派手な演出もない今回のが一番私は好きだ。

        今回気がついたこと。イントロ聴いていると、『コカイン』『サンシャイン・オブ・ユア・ラブ』『ティアリング・アス・アパート』といった曲の区別がつかないこと。これはどうもクラプトンが、タララ、ラーという、三連譜プラス四分音符あるいは、タラララ、ラーという十六分音符四つプラス四分音符といったパターンが、自分のリズムだからなのではないだろうか。『レイラ』だと、十六分音符がもうふたつ頭について、タラ、ララララ、ラーになる。これにインプロビゼーションでも、この手のリズムが顔をだす。音符的にあまり詳しくないので、間違っていたらごめん。


November.19,1999 童謡『里の秋』に秘められたもの

        今朝、コンビニで『週間漫画ゴラク』を立ち読みしていたら、なぎら健壱が童謡『里の秋』について書いている。彼は、この曲のいわれについて、最近になって知ったようなのだ。この分だと、ほかにも知らない人が大勢いるようなので、今日は急遽予定を変更して、この歌について書く。

        『里の秋』を知らない人はいないだろう。小学校で必ず歌わされているはずだ。一番の歌詞はこうだ。

        静かな静かな 里の秋
        お背戸に木の実の 落ちる夜は
        ああ 母さんとただ二人
        栗の実煮てます いろりばた

        この段階ではなんのことか、良く解らないはずだ。ここでは、母子家庭だということだけ記憶しておけばいい。次に二番。

        明るい明るい 星の空
        鳴き鳴き夜鴨の 渡る夜は
        ああ 父さんのあの笑顔
        栗の実たべては 思い出す

        父さんが出てくる。生きているのか、死んでしまったのか、この時点でも解らない。ところが、この詩は、三番になって急転直下、凄い展開になる。

        さよならさよなら 椰子の島
        お舟にゆられて 帰られる
        ああ 父さんよごぶじでと
        今夜も母さんと 祈ります

        どうやら、父さんは生きているらしい。しかも椰子の島から帰ってくるというのだから、南方に行っていたのだろう。実はこの曲、昭和16年に斉藤信夫が、出征兵士のことを書いた『星月夜』という詩であり、終戦直後、NHKラジオ『外地引揚同胞の午後』で流し、後に『復員便り』のテーマ曲になったものである。つまり、本日、どこどこ方面に出征したなになに連隊を乗せた船が、どこそこ港に着くというお知らせの番組の曲だったのである。意味を知らないで歌っていたが、実は涙なくしては歌えない歌なのだ。


November.17,1999 世田谷ジャンボリーのインストアーライヴ

        ディスクユニオン御茶ノ水店の4階、特設スペースというのは、どうやら、社員の休憩室かなんかだと思う。そこの、テーブルや椅子を運びだして、急造の会場を造ったという感じ。壁には、〔ディスクユニオン社訓〕なんてものが、額に入れて飾ってある。地味だあ。

        会場時間、即、開演時間のようなもので、メンバーもゲネプロ終えたものの、楽屋なんてものもないから、会場で突っ立っている。隣にアコーデオン・カーテンがあったが、ちらっと見えたら事務室で、人が通れないほどの狭い空間で、社員が仕事をしている。観客は数えてみたら、私含めて12人。地味だあ。

        「それじゃ、はじめますか」。予想以上に観客が少ないので、落胆の色をみせながら、メンバーが、楽器を持つ。ヴォーカル、ギター、ウッドベース、ドラムスのバックに、サックス三本、トランペット一本、これに時々、ヴォーカルがトランペットを吹くという、8人編成。ところが何があったのか、この日サックスがひとりいない。7人とも地味な格好をしている。管楽器はみんな女性なのだから、もう少し派手な衣装を着ればいいと思うのだが、もろ普段着といった服装。ヴォーカルなんて、白無地のTシャツ。おそろしく地味な展開になってきた。

        しかし、演奏が始まってみると、そんな気分は吹っ飛んだ。「えっ、これで7人」というくらい、厚い音を出す。これまで日本でジャンプをやっていたのは、ほとんど吾妻光良のスウィンギン・バッパーズだけだったといっていいだろう。そのあとに、バンバンバザールぐらいか。スウィンギン・バッパーズは確か12人編成だから、あれより小規模。ドラムスなんて、スネア、バスドラ、ハイハットのみ。なにより、メンバーが楽しんで演っているのがわかる。だから元気がいい。

        ただ、ちょっと気になるのが、ヴォーカル。声もいいし、味があるのだけど、変な表現だが、曲の流れにはまり過ぎている。そうすると、だらーっとした印象になり、歌詞が何を言っているのか解りにくい。歌が曲の中に埋もれてしまっている。もっと曲の流れに、いい意味で対抗するような歌い方をした方がインパクトがあるのではないだろうか。

        とはいえ、九曲三十分、アットホームな雰囲気の中、楽しい時をすごしました。


November.13,1999 大掃除はJB聴きながら

        動物占いによると、私はゾウだそうだ。ゾウは何か夢中になると部屋中を資料だらけにして、かたがつくまでは、かたずける事ができず、散らかし放題。ところが、かたがつくと突然、整理を始める。これも当たっている。この一ヶ月、新しい書斎が出来たというのに、ホームページをなんとか立ち上げようとしていた為、部屋に持ち込んだのは、パソコン関係のものばかり。しかも、もう部屋の中は爆弾を投下されたよう。

        ホームページもなんとか軌道に乗ったようなので、書斎の大掃除と大整理を開始した。いつだったか、ピーター・バラカンが、大掃除のような嫌なことをやる時は、ジェームス・ブラウンを聞きながらやると言っていて、それはいい考えだと、私も真似している。

        一番新しいアルバム、『アイム・バック』を久しぶりに聴きながら、掃除をしていたら、今年、WOWOWで放送した『ウッドストック'99』でのジェームス・ブラウンの姿を思い出していた。往年のことを思うと、やっぱりパワーが落ちていた。もうダイナミックなステップは踏めないし、たたみかけるように次々とステージを進行させていくスピード感もない。あいかわらず、歌はうまいですがね。

        『アイム・バック』の中に一曲インストが入っている。『エヴリー・パート・オブ・マイ・ハート』。このキーボード、JB本人が弾いているんですね。凄くいい曲で気に入っていたんですよ。テレビで見てたら、あいかわらず右手一本で弾いてる(笑)。左なくても、あれだけのバックがあるから問題ないけどね。

        ボーナストラックが付いているので、日本版買ったら、なんとJBじゃなくて、トミ・レイなる女性歌手が、ジャニス・ジョプリンの『トライ』を歌っている。「なんじゃこりゃ」と思っていたら、『ウッドストック'99』にも出ていた。てっきり黒人だと思っていたら、金髪のねーちゃん。『トライ』ふくめて三曲も歌った。おいおい、ただでさえ、JBの放送時間、一時間しかないんだから勘弁しろよと言いたくなったが、これももうJB、長時間のステージがきつくなって、休憩を入れてるのかな。以前見た武道館でも、白人の若いギタリスト連れてきて、ブルース弾かせてたっけ。

        『ウッドストック'99』ではマント・ショウもなし。寂しかった。

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