March.30,2000 ヨコハマの雨傘?

        昨日、『蕎麦湯ぶれいく』で書いた[小川源歯科医院]に通っているある日、治療を終えて帰ろうとしたらば、後ろから声をかけられた。フィギュア・スケートの勝先生ではない。おとうちゃんの方の先生である。

        「いのうえさーん。演歌なんて聴きます?」

        演歌は苦手な範疇なのだが、「嫌いです」とは言えずに、「ええ、まあ。音楽なら一応なんでも聴きますけど」と答えてしまった。このへんが私の悪いところなのだが・・・。

        「これ、あげようか。聴いてみて」

        そう言って、とうちゃん先生は一枚のシングルCDをくれた。このCDジャケットを眺めながら、家に帰った。なになに、『ヨコハマの雨傘』?

        小野寺智子なる歌手が歌っているようなのだが、ご覧のようにジャケットは雨に煙る横浜ベイブリッジ。裏ジャケも横浜の風景を撮った写真が散りばめられているだけで、どんな顔の歌手が歌っているのか解らない。 これなんなんだろう。先生は演歌だって言っていたけれど。とりあえずと、CDプレイヤーに入れてみる。これは演歌というよりは、今ではほとんど聞かれなくなった歌謡曲だ。

        発売元が[YOKOHAMA RECORDS]となっているから、横浜のご当地ソングみたいなものなんだろうか。レコード番号がYTK−0001って、これ一枚目のCD? このあと何枚か出たのだろうか? 観光客用? それにしても歌詞が凄い。内容はといいますとね、ヨコハマに初めてやってきたはいいものの、なんと雨。でも「雨の降るヨコハマが好き」だって。普通、観光にやってきて雨に降られて、雨の降るその街が好きになるなんてことあるのかなあ。

        最後のフレーズが「もう一度 必ず来るからね」になっていることについて、作詞者のメッセージが書いてあって、これがまた面白いので引用させていただく。

        「『必ず来るからね』のフレーズに若いころ、初の訪欧でローマを訪れたときの感激も重ね合わせ、『雨の横浜もいいものだと、少しでも思いを伝えられれば・・・』横浜への思いを込めた一曲です。」

        凄いなあ。自分のローマ訪問の体験と横浜が結びつくところが、よくわかんない。

        翌日、先生に訊いてみた。「あのCDどこかでもらったんですか?」 「いや、買わされちゃったんだよ。その作曲家と作詞家、ぼくの友人なんだ。鈴木邦彦って有名だろ。ほら、テレビ番組で審査員までやっているじゃない」

        私、とんとそういう番組を見ないので知らないのだが、そういえば、鈴木邦彦っていう名前は聞いたことがあるような気がする。長崎くーん、鈴木邦彦ってどんな曲作った人だか教えて! それとふじなみゆきみっていう作詞家知ってる? 小野寺智子っていう歌手も知っていたら教えて。凄い有名な歌手で、私が知らないだけだったりして。

注・鈴木邦彦さんについては、CAGE`S TAVERNで解説をもらいました。


March.24,2000 アイドル・ブルース・ギタリストとは呼ばせない!

        ブルース・カーニヴァルまで、あと2ヶ月。楽しみなのだが、今回の来日でもっとも興味があるのが、このシャノン・カーフマンなる女の子。何歳だと思う? 14歳だって! おいおい、中学生じゃないの! 去年出たファースト・アルバムの写真なのだが、とても大人びて見えるでしょ。こういうの、昔からレコード会社の作戦の常套手段で、わざと化粧させて、大人っぽく見せる。それで裏ジャケおよび、中の写真は、あどけない子供っぽい姿の写真にする。実際、シャノンのも、裏ジャケ見ると、ほんとに子供って感じ。

        この子がギター弾きながら、ブルースを歌っちゃうというのだから驚き! CDを聞いてみて、最初に感じたのは、とても14歳の声じゃないということ。完璧に大人の声。どっしりと落ち着いた歌い方で、感心してしまった。決してアイドル乗りの歌い方ではない。日本にも中学生や高校生で歌手になっちゃう子がいるけれど、なんだか耳障りな歌い方をしている子が多い。前にも書いたけれど、この歳になると、あのキンキンした声は疲れる。

        ギターの方も、なかなかの腕前。ブルース・ギターのツボを知ってるなあというフレーズを繰り出してくる。いまや日本でもギターのうまい女の子のバンドってあるけれど、いきなり中学生でブルースを弾いちゃうなんていないだろうな。ブルースが日常的に流れているアメリカという環境のおかげなんだろうな。ライヴを見てみないと確かなことは言えないのだけれど、テクニックはまだ発展途上かな。でも、まだ14歳だものな。この調子でいくと空恐ろしい。

        出身が、なんと映画で突然有名になったファーゴ。先輩にあたるジョニー・ラングと同郷。ジョニー・ラングはデビューが16歳だったから、2歳も早いデビューだ。同郷のよしみか、ジョニー・ラングが3曲ゲストでギターを弾いている。ところがですね、ふたりのソロを聴き較べると、繊細で華麗なのが19歳の男であるジョニーのもの。反対に荒削りでワイルドなのが女の子であるシャノン・カーフマンのものだという驚くべき事実。まあ、キャリアの違いと言えばそれまでなのだが。

        ほとんどの曲がシャノンのオリジナル。この歳にして、いい曲を書く。残念なのは、全てがブルースではないということか。たくさんいる普通の女性シンガー・ソング・ライターが書くような曲も多い。これからシャノンがどういう方向へ行くのか解らないが、ブルースを忘れないで欲しいな。しかしなあ、14歳の女の子に人生背負ったブルース歌われるのもなあ。

        カヴァーでザ・バンドの『ザ・ウェイト』を演ってるのだが、これがまたいいのだ。ドスのきいた歌唱法をどこで学んだのだろう、この子。絶対に声だけ聴いていたら、14歳とは思えない! ともあれ、ブルース・カーニヴァルで、その姿を見るのが楽しみだ。


March.12,2000 日米パクリ合戦

        サンタナ来日まで、いよいよあと1ヶ月ほど。楽しみだなあ。このところ、去年出た『スーパーナチュラル』と、73年の大阪公演の模様を収録した名盤『ロータスの伝説』をとっかえひっかえ聴いている毎日(今、「とっかえひっかえ」って打って変換かけてみたら「特価衛筆禍衛」だって)。サンタナもグラミー賞貰ったようで、良かった良かった。

        『スーパーナチュラル』はいいアルバムだと思う。サンタナってアルバムごとに出来不出来がはっきりしちゃって、つまんないのに当たると、もう2度とサンタナは買うものかと思うのだけれど、このくらいの出来のものが続けば、見直してもいい。話題になった『スムーズ』も乗りがよくて好きだし、ラスト・ナンバーのクラプトンとの競演もワクワクさせられる出来。

        以前、バンド演っていたとき、『哀愁のヨーロッパ』や『ブラック・マジック・ウーマン』をよく演ったっけねえ、水野さん。サンタナって、あの独特なラテン乗りが、演奏する側を興奮状態に引きずり込むようなところがあって、よくインプロビゼーションに突入しちゃって、20分30分平気で続いちゃったことあったっけね。

        閑話休題。しかし、はっきり言ってびっくりしたのは、11曲目に入っている『エル・ファロル』という曲。これアントニオ猪木の登場テーマ曲そっくりなんだもん。あの情熱的なテーマ曲をスローで哀愁漂うように演奏したのが『エル・ファロル』だといっていい。盗作(パクリ)だとは思いたくないのだけれど、それにしても、そっくりだよなあ。

        ところで、こちらは最初から確信犯的パクリ。メンズ5という、どちらかというとコミック・バンド的性格を持った日本のバンド。巨人の松井のことを歌った『アッパレですね!』がCMに使われたりしたので、知っている人も多いと思うけど、今までも確信犯的パクリを数多くアルバムで演ってきた連中。去年出たアルバム『SOUNDTRACK』の中の曲『Yarite−Yo!』がサンタナの『僕のリズムを聞いとくれ(Oye Como Va)』を換骨奪胎してきている。

        この曲、ゲストに加藤茶を迎えてサビの「オエ・コモ・バ」というフレーズを「やりて〜よ」と歌わせている。うーん、何と言うストレートで御下劣な歌詞。曲もちょこっと変えてるから、別の曲だと言えばそれで通っちゃう。ギター・ソロまでそっくりなんで、笑っちゃいます。

        このアルバムには、もう一曲、クイーンの『伝説のチャンピオン』(We are the Champion)のやはり確信犯的パクリ『ワンモア・チャンス』も入っている。こういうバカバカしいのが好きな人には、お薦め。


March.2,2000 宇崎竜童のおとしまえ

        Tavernの方で、生嶋猛、宇多村一雄氏がダウンタウン・ブギウギ・バンドの『曽根崎心中Part2』について触れているので、私もこのへんで、このことについて書いておこうと思う。

        大映が倒産したあと、増村保造はATGで『曽根崎心中』を撮ることになる。学生時代、私は増村保造に夢中になっていた。土曜のオールナイト特集上映があると、必ず見に行っていた。当然、『曽根崎心中』も封切りで見た。公開前から気になったのは、お初役を梶芽衣子は解るとして、主人公の徳兵衛役を、なんと宇崎竜童が演じるということである。ミュージシャン、役者経験なし。大丈夫なんだろうか? しかも宇崎は当時、人前でサングラスを外したことがない。どうして、こんなキャスティングに踏み切ったのか。

        サングラスを外した宇崎は、思いの外、優男だった。ええーっ、こんな優しく気弱そうな目をしていたのか。映画の出来としては、大の増村ファンとしても納得のいくものではなかった。増村安造としては、すでに心中ものの傑作をものにしている。野坂昭如の原作『心中弁天島』を原作にした、『遊び』という作品である。なんで今さら心中ものだ。私の心は揺れ動いていた。『遊び』および増村保造に関しては、また別の機会に『風雲電影院』の方で語っていくとして、さて、『曽根崎心中』その後である。

        私も納得いかなかったが、宇崎竜童としても納得いかなかったらしい。何より、初めての演技。自分の演技に心残りを感じながらも撮影が終了してしまった。何とかもう一度、自分なりの方法で『曽根崎心中』が出来ないか。そこで浮かんできたのが、一時期ザ・フーなどが演っていた、ロック・オペラのような形で『曽根崎心中』を演ってみようというアイデア。自分のバンドが演奏する前で、文楽の人達に人形を操ってもらう。

        渋谷[ジャンジャン]という、キャパシティー200人以下の小さな空間で、ひっそりと上演された公演は、連日超満員。とても入れなかった。しばらくして、同じ渋谷でも、渋谷公会堂という大きなホールで上演されることになり、これには私も見に行った。

        さすがに、渋谷公会堂は大きすぎた。後ろのほうの席だと、人形がよく見えない。それでも、私はこの世界に夢中になっていた。この中で演奏される曲は、この為に宇崎、阿木コンビで作詞作曲されたもの。DTBWBとしては、聴くことができなかったのだが、もう名曲ばかりなのだ。帰りがけに会場の売店で、このLPを買っていた。

        近松門左衛門の原作は、ちょっと複雑な構造になっているのだが、宇崎はストーリーの煩雑なところを、すっきりとした構成に造り直し、解りやすくしてある。舞台はいよいよ心中シーン。二人が倒れると、舞台がいったん真っ暗になる。そして、舞台照明が突然に今までにないくらいに明るくなる。徳兵衛、お初が再び登場してくる。流れるは、ラスト・ナンバー『道行華』。

        『道行華』(「みちゆきばな」と読ませるのだと思う)こそが、実は宇崎が言いたかったことを表していると思うのだが、サビの部分の歌詞、三番はこうである。
        生きてる間が 極楽なのか
        道行く先は 三途の河か
        この身の辛さは 何としよう
        この身が朽ちたら どこへ行きます

        きっと宇崎には、だからといって何も心中するこたあないじゃないか。生きていてこそ、なんぼのものさと言いたかったのに違いないと私には思えるのだ。実はこの曲だけ、竜童組になったときに、時々、演奏したいたから、思い入れがあったにちがいない。

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