April.29,2000 買おうか買うまいか『ザ・ウォール・ライヴ』

        CDショップの棚を眺めながら、何日も迷っているのが、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール・ライヴ』。これが映像だったら、即買ってしまうのだが、CDじゃなあ。なぜかって、おそらくスタジオ盤と大きな違いがないと思われるからだ。スタジオ盤は、今やLPでしか持ってないから買ってしまってもいいのだけど。

        ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』は、もちろん大好きだし、傑作だと思う。ただ、もうこの作品で興味があるのは、LP発売後に行った大規模なライヴの映像のみ。あまりに大掛かりなので、日本に持ってこようにも採算が取れず、日本公演は見送られてしまった。当時、私は海外のミュージシャンを呼ぶプロモーターの会社で働いていた。ピンク・フロイドはウドーが交渉していたはずだが、実現しなかった。それならウチでと上司に進言したのだが、『だめだめ、大赤字出すのがオチだ』と、すぐさま却下されてしまった。

        ピンク・フロイドの、このころのコンセプトは、ほとんどロジャー・ウォーターズがやっていたはずだ。『アニマルズ』と『ザ・ウォール』の2作は、ほとんどトーンが一定していて、まとまりのあるアルバムになっている。ただ、あまりにまとまりすぎていて、私には少々息苦しさも感じられる。『狂気』の方がまだ変化に富んだアルバム作りをしていたように思う。『ザ・ウォール』はロジャー・ウォーターズ一色というのが辛い。

        それでも私、なんといってもデイビッド・ギルモアのギターのファンだから、『ザ・ウォール』は繰り返し聴いた。この人、なんて素晴らしいフレーズを弾くんだろう。うっとりしてしまうくらい、いいフレーズだ。しかしですね、この人ライヴになっても、間奏でスタジオ盤とおんなじフレーズを弾くのだ。その場ではそれが気持ちいいのだが、果たしてライヴ盤でCDを買ったとして、それで意味があるといえるのか。デイビッド・ギルモアって一度『これだ!』というギター・ソロが出来てしまうと、もうそれ以上のものはないと、他のフレーズを弾くことがなくなってしまうのだろうか?

        と、考えていたら、去年の暮れ、ポール・マッカートニーがイギリスでインターネット・ライヴを演った。そのときのメンバーにデイビッド・ギルモアがギターで入っていたのだ。これは意外な人選だなあと思っていたら、いやあ、ギルモア、ソロになると実に生き生きと、即興でソロを弾きまくる。なあんだ、出来るんだこの人。なあんて、失礼だよね。プロの天才的ギタリストなんだもの。

        話は、ちょっと逸れるが、逆にライヴになると毎回がっかりするのが、キース・リチャーズの『悪魔を哀れむ歌』の間奏のギター・ソロ。スタジオ盤の、あのソロはもう文句のつけようのない抜群のフレーズではないか。音数も多くないし、どちらかというと、やけっぱちになって弾いたようなソロだが、あの独特の緊張感は何なんだろう。妙に空いた間とか、聴くたびにゾクゾクする興奮がある。ライヴを聴くたびに、あのフレーズを期待するのだが、いっつも、つまらないフレーズを繰り出してきて、ガッカリさせられてしまう。

        『ザ・ウォール』は、映画にもなったことだし、今更ライヴ音源もないだろうと思うのだが、このあとライヴ・ビデオを出す気なのだろうか? だとしたら、ビデオは欲しい。絶対欲しい! あの伝説的なステージは絶対に見たい。となると、CDはいらないもんね。新作が長いこと出ないピンク・フロイド、過去の遺産でまだまだ食っていこうというのか。もったいぶらないで、早く『ザ・ウォール』ライヴ・ビデオを出さんかーい!


April.21,2000 このバンド、やはりライヴがいい

        去年の9月に書いた、ドイツのブルース・バンド、キャディラック・ブルース・バンドのライヴCDがあるらしいとベルリンの若き友人パトリックから連絡をもらった。「欲しいですか?」の問い合わせをもらって、「欲しい欲しい、絶対に欲しい」とおねだりして、送ってもらった。といっても、なかなか見つからず苦労したようなのだが。パトリック、ありがとう! ドイツでもブルースってマイナーなんだろうか。私が5年前にベルリンで、このキャデラック・ブルース・バンドのCDを[タワー・レコード]で2種類手に入れた時も、他のCDショップでは見かけなかった。また、お土産にと帰りがけにもう一度[タワー・レコード]に寄ったのだが、もう在庫はないと言われた。

        さて、その貴重なライヴ盤。『Live`96』だ。私、このバンド、ライヴの方が絶対にいいと確信していた。当たりでしたね。昨年9月に書いた『Lost Mind』でも、ビートルズの『Get Back』を演っていたように、ライヴともなると、もうCDの半分はカヴァー。

        一曲目からして、マディー・ウォーターズの『Louisiana Blues』ときたもんだ。すごく骨太のブルース・ロックに仕上げている。でもって、2曲目なんて、スティービー・レイ・ボーンの『I`m Crying』だぜ! もちろん私、オリジナルも好きだけど、このカヴァーも気に入ってしまった。なんかメリハリが効いていて気持ちいいのだ。

        レイナード・スキナードの『I Know A Little』のグルーヴ感なんて、結構自分達なりに消化していて、これもいい。ラストがジミ・ヘンドリックス二本立て。『Foxy Lady』と『Stone Free』だぜ。これもジミ・ヘンのねちっこさを少し薄めた感じだが、その辺がどちらかというと私の好み。特に『Stone Free』がいい。盛り上げるだけ盛り上げておいて、簡単にメンバー紹介。そこから、「ガッタ、ガッタ、ガッタ、ガッタ」と大盛りあがりのエンディング。

        ジャケットでわかるとおり、四人編成。ヴォーカルが曲によって、キーボードとハーモニカを演るのだが、このキーボードがまたうまい! アンコールで聴かせる『Night Time』のピアノ弾き語りのイントロなんて、格好良すぎだよ。ドイツなまりがあるのかよくわからないのだが、どうも、ちょっと聴いただけでは、アメリカのバンドだといっても通ってしまうのではないだろうか?


April.10,2000 タフだよね、ブルースマンって

        ロイ・ゲインズと吾妻光良の共演盤CDがようやく出た。これ去年の12月12日、新宿のパークタワー・ブルース・フェステイバルで二人が共演した後、そのままスタジオに直行、夜の12時から翌朝の5時までの5時間で録音してしまったという、ちょっと信じられないようなCD。なにせ、吾妻は前日はスインギン・バッパーズのライヴがあって、その後朝まで飲んでいたというのだからさらに驚き。

        ブルースとかジャズとかいったものは、簡単な打ち合わせで演奏ができるとはいえ、傍から見ていると大丈夫なんだろうかと心配になってしまう。以前、西荻窪の[アケタの店]で吾妻光良と梅津和時が共演した時に見に行ったのだが、あのライヴ・ハウスって楽屋がない。なんと、廊下というか出入り口の階段で「さて、今日は何を演りましょうか」と相談していた。「ええーっ、曲目も決まってないの?」と心配になったのだが、本人達、別になんとも思っていないらしく、のんびりと相談をしている。どうやらリハーサルもなかったらしいのだ。それでも演奏が始まると1時間くらい演奏している。第1セットが終わると、休憩時間を利用して、第2セットの打ち合わせ。これまた1時間ほどの演奏をこなしてしまう。アンコールは舞台に出てきてからの打ち合わせ。プロは違うよなあ。

        ええと、ロイ・ゲインズと吾妻光良の共演盤の話だった。方南町の[スタジオ・タッツ](懐かしいなあ、我ら丸屋バンドもよく使ったよね)に入ってから、何を演るかの打ち合わせ。CDを1枚作ろうというのに、この気楽さはどうだ。ところがですね、このCD、その気楽さとは裏腹に、凄い熱気を感じさせる1枚になっている。

        去年のパークタワー・ブルース・フェスティバルをパスしちゃったのが悔やまれる。ロイ・ゲインズっていう人の知識がなかったのだが、ギターを豪快に弾きまくる人で、しかもどうやらブルースだけでなく、ジャズだろうがなんだろうが、なんでもござれの人らしい。次々に繰り出してくるフレーズにマンネリがない。もう、弾きまくる弾きまくる。しかも、ヴォーカルも骨太で迫力満点。吾妻光良がまたああいう人でしょ、ロイ・ゲインズと対等に渡り合ってあっているところが凄い。この日米ブルース・ギター・バトル聴き応えあり。全13曲、79分02秒。CD収録容量ギリギリのサービスぶり。絶対買って損はしないから。

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