November.29,2000 BouzUMenのライヴが見たい!

        テレビ東京の月曜深夜に放送している『Live On 原石 めんぼ』という番組をご存知だろうか? いわゆるロック・バンドのオーデイション番組なのだが、このところ面白くなってきていて、毎週欠かさずに見るようになってしまった。

        以前は、同じ時間帯で『Live On 原石』というタイトルでやっていたのだが、そのころのは正直言って、あまりにもヘタなのとか、あまりにもヘンなのが多くて、あまり真剣には見ていなかった。横浜かどこかの野外で、30分番組だというのに一回に10バンド以上出してしまうという乱暴な企画だった。司会がブラザー・トム。後ろにアシスタントと称する水着姿の女の子達がズラリと立っている。カメラに向かってニッコリと微笑み、「次のバンドは〇〇でーす!」などというだけ。真冬など、あれは絶対に寒いだろうと思われたのだが、よく我慢して続けていたものだ。

        審査員が、ほとんど音楽をわからないアイドル・タレントだったりして、感想を求められると「すごい、カッコイー」くらいの、ボキャブラリーの無さを露呈するだけの意見しか吐けなくて、うんざりしていた。それでも、月に一度くらいは見ていたのだから、嫌いじゃなかった。

        現在放映中なのは、やはり30分枠なのだが一回に4バンドと限定して、グッと中身が濃くなった。司会は引き続きブラザー・トム。以前のような、世の中を斜に構えるような姿勢が薄らいできて、出演した素人バンドを本当に応援しようとしている態度が好感を持てる。それに、この人もテレビの笑いのコツを分かってきたらしい。テレビの中で生き生きとしている。

        4バンドは、まず他のミュージシャンの曲をカヴァーして1曲演らなければならない。その回ごとにテーマが決まっていて、たとえば今週は松任谷由美だった。これに合格すると、このあと自分達のオリジナルが演奏できる。ただ人の曲を演奏しただけじゃだめ。そのバンドなりの個性あるアレンジがほどこされていないと落とされる。審査員は名前を隠しているが元聖鬼魔Uのメンバーのひとりらしい。この批評が実に的確なので感心させられる。

        今週、ついに面白いことになってきた。何回も出ていて、ついに星5つを獲得。番組でバックアップ・デビューできるバンドが二組も出たのだ。[No? Yes!!]と[BouzUMen]。[No? Yes!!]は、今活躍しているバンド達とひけをとらない実力があると思う。まさに納得。そして、私のお気に入りは実は[BouzUMen]の方。

        このバンド、かなり以前から出ていたので、何回も見ているのだが、なにせ歌詞の内容が過激すぎて、いつもほとんど放送できていない。ピー音だらけで、しかも障りだけ見せてカットされてしまう。[BoyzUMen]のもじりだから、ジャンルは私の嫌いなラップ。ところが、この人達のだけは実に面白い。坊主頭の二人組で、本当にお坊さんの着る袈裟を着て登場する。ただし、目にはサングラス。歌っているとき以外は、実に静かな男たちで、手を前で合わせて拝むような形をとっている。

        打ちこみの音のセンスも抜群で、それに合わせての踊りもいいとなると、ラップ嫌いの私だって、これは夢中になる。ただ問題は歌詞。とても放送ではヤバイよなあ。今私にとって一番ライヴが見たいミュージシャンだ。元々、アメリカのラッパーって歌詞が過激なんだろうねえ。このくらいのこと、やっぱり歌っているんだと思う。きっと[BouzUMen]がデビューしたら、今までの日本のラッパーは霞んでしまうに違いない。


November.25,2000 寂しい『秋』

        忌野清志郎の『冬の十字架』が、パンク調の『君が代』が入っているからと大手レコード会社からリリースできず、インディーズから出したのが、ちょうど一年前。半年前にはやはりインディーズで『夏の十字架』を出したと思ったら、これきっと4部作にするつもりだと思っていたとおり、『秋の十字架』が出た。凄いペースだなあ。半年に一枚アルバムを出すというエネルギーは唯事ではない。

        ただですねえ、今回の『秋』に関しては、どうも私には不満だ。『冬』『夏』でみられたパンク調は、すっかり影を潜めてしまった。これなら、何もインディーズで出す意味がない。そして、さらに気になるのが、歌詞が妙にペシミスティックになっていってしまっていること。

あの娘は行ってしまった
あんなに愛したのに
すべて努力もあっさり水の泡(『水の泡』)

あー夜は暗い
暗い暗いどのくらい暗い(『ひとりの女性に』)

バカなんじゃない人類って 誰も仲良くできない
変なんじゃない人類って いつも傷つけあってる(『口癖』)

子供達が泣いている 帰り道は水浸し(『グレイトフル・モンスター』)

ハンカチーフはいらない
もう涙は枯れたから(『凍えて眠れ』)

        胸に沁みこんでくる、ヒリヒリとするような、これらの歌詞や曲を決して否定するわけではないのだが、清志郎とラフィータフィーには、もっと別のことを演って欲しかったというのが、正直な感想。

        『冬』『夏』『秋』ときて、次はいよいよ『春』を出すのだろうか? 果たして、『春』は希望に燃えた明るいものになるのだろうか? それとも・・・。


November.12,2000 ドンタタ、ドンタ

        米米クラブのナンバーに『Shake Hip!』という曲がある。なかなかに乗りがいい曲で、ライヴでは大抵ラスト・ナンバーに持ってきていた。丸屋バンドをやっていたとき、この曲をやろうとしたことがあった。結局、ホーンが少ないので無理だなということになったのだが、我妻さんが妙なことを言っていたのが頭に残っている。「ドラムのリズムが普通じゃないんだよ。曽宮さん、戸惑っちゃうだろうなあ」

        『Shake Hip!』のリズムは、ドンタタ、ドンタという繰り返しである。なにせ、あまり譜面に詳しくない私は、その時は「ふうん、そんなもんかなあ」と漠然と考えていただけだった。

        先日、ラジオからベンチャーズの『10番街の殺人』が流れてきた。「うわあ、懐かしいなあ」と思って仕事の手を休めて、しばし聞き惚れてしまった。この曲は、ギターの効果音のあと、ドンタタドタタト、ドンタタドタタトというドラム・ソロから始まり、ギターの助走からテーマに入る。聴いていてハッとした。ドラムのリズムはドンタタ、ドンタだった。ありゃ、私はさっそくCDを買いに行った。秋葉原の石丸電気の棚を、くまなく見たのだがベンチャーズがない。ロック、ポップスの棚になく、イージー・リスニングの棚にもない。店員さんに聞くと、ブルースなどを置いてある小さな棚の下の方に置いてあった。それもズラリと。何種類ものベンチャーズのCDが並んでいる。中から山下達郎が選曲したという2枚組を購入した。

        このCD、さすが山下達郎が選曲しただけあって、ロックン・ロール・グループとしてのベンチャーズという視点から集めていて、『二人の銀座』とか『北国の青い空』といった日本的なメロディーのものは省いてある。もちろん、彼自身もそういったものを否定するわけではなく、評価はするが、ロックン・ロール・グループという視点からの選曲で、あえて外したという。

        それで、このCDを通して聴いてみると、なんとほとんど全曲、ドラムのリズムはドンタタ、ドンタだった。自分でドラムを叩いたこともなく、ただ漠然と音楽を聴いて育ってきた私には、なんと今ごろになっての大発見。お笑いください。

        それで、今度はビートルズのCDを引っ張り出してきた。初期のロックン・ロールのカヴァー曲はみんなドンタタ、ドンタ。そうかあ、ロックン・ロールってドンタタ、ドンタだったんだあ。とすると、ベンチャーズは、まさにロックン・ロール・バンドだったんだ。

        古いロックン・ロールにあまり興味がなく、ベンチャーズから入って、即ビートルズを聴くようになった私は、それではビートルズのリズムとは何だったのだろうと気になってきて、聴きなおしてみた。すると、『抱きしめたい』『シー・ラヴズ・ユー』『ツイスト・アンド・シャウト』『プリーズ・プリーズ・ミー』といった初期のオリジナルは、リンゴ・スターのドラムは基本的にはドンタタ、ドンタなのだが、ちょっと崩れてきているのが感じられる。

        おそらく『ハード・デイズ・ナイト』のサントラに収録した曲あたりからは、今までのロックン・ロールのリズムとは違うドラムを叩こうとしているフシがあり、それが『ビートルズ・フォー・セール』では、すっかりロックン・ロールから脱しているのが感じられた。

        およそドラムスに関しては門外漢なので、ヘンなことを書いていたらごめんなさい。話は米米クラブの『Shake Hip!』に戻る。ということは、あの曲のリズムは、かなり古臭いロックン・ロールということになってしまう。それでも、妙に新しいノリが感じられるのは何故なんだろう?

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