February.27,2001 憂歌団『LOST TAPES』の日本の曲カヴァー
憂歌団のデビュー前の音源をCD化した『LOST TAPES』が出たのは目にしていたのだけれど、何をいまさらという気がして買わないでいたのだが、先日収録曲をながめていて、3曲目に『ハイそれまでヨ』とあるので腰をぬかしてしまって、思わず買ってしまった。どう考えたってこれは植木等でしょ、これは。
さっそく家に帰って聴いてみたら、やっぱりあの『ハイそれまでヨ』でした。内田勘太郎の実にブルースを感じさせる自由なイントロで、「ありゃ?」と思わせておいて、木村の歌声が入ってくる。♪あなただけが生きがいなの・・・。やっぱりあの『ハイそれまでヨ』だ! ♪てなこと言われてその気になって・・・の部分からはバックが突然ロックンロール。1分20秒しかないバージョンで、おそらく遊びでやったものだろうが、実に楽しい。最後にスタジオ内の笑い声が入るのもいい。
私は当初、憂歌団なるバンドがブルースのバンドだとは思ってもみなかった。てっきり関西から出てきたフォーク・バンドだと思いこんでいた。だから彼らを聴くようになったのは、ずっと後のこと。もっと早く気がついていればと口惜しい思いをしたものだった。
ライヴを聴きに行くようになって、オリジナルや古いブルースのカヴァーに混じって、加山雄三を取り上げているのにも好感を覚えた。加山雄三に植木等! ブルースにこのふたりの音楽が違和感なく組み込まれるライヴなんて、この人たちだけの離れ業だろう。
『LOST TAPES』にも加山雄三は『君といつまでも』と『夜空を仰いで』の2曲が収められている。私が彼らのライヴを見るようになったときにびっくりしたのは、木村はステージにアルコールを持ちこみながら歌うということだった。ライヴハウスなどでビールが出されたりすると、「あっ、もっと強いやつ。そうそうウイスキーもらえませんか?」なんて言いながら『君といつまでも』なんかを歌っていた。セリフ部分「僕は死ぬまで君を離さないぞ! いいだろう?」を酔っ払ってか、照れ半分でか、やけくそになって言うところがいつも会場で大ウケだった。今、この『LOST TAPES』のこのセリフ部分を聞くと、なんだか真面目に言っているので、面白い。初々しい木村の声が、後年のライヴを見ている者にとっては可笑しい。
日本の曲のカヴァーは、もう1曲。『Shake You Money Maker〜スモーキン・ブギ』。これはダウンタウン・ブギウギ・バンドの大ヒット曲『スモーキン・ブギ』がエルモア・ジェームスの『Shake You Money Maker』のパクリだということに早くも気がついた彼らのイタズラらしい。『スモーキン・ブギ』は1974年にダウンタウンの新井武士が書いた詞に宇崎竜童が曲をつけたもの。この『LOST TAPES』が1975年の録音だから、まさに素早い。
February.11,2001 この人日本では人気が出ませんが
つづいて宇多村さんが1月31日付けで書いているジョージ・サラグッドについて。この人を知ったのは、宇多村さんがインドネシアからのお土産に買ってきてくれたカセットテープ。ひよっとすると海賊版かもしれない。ブルースベースのロックン・ロールをやる人で、私は知らなかった。さすが宇多村さん! けっこう気に入って朝の起きぬけにガンガン鳴らしていた時期がある。
しかし何といってもこの人を好きになったのは、大ヒット曲になったらしい『Bad to the Born』を聴いたとき。宇多村さんからもらったカセットにはこれが入っていなくて、ある日FENを聴いていたら、この曲が流れてきた。ギターのリフのみで始まるイントロを聴いて私は蕎麦を打つ手が一瞬止まってしまった。なんとワクワクさせるギターのリフだろう。そこへ ドンタタドタタタ と入ってくるドラムス。ベースとテナーサックスとピアノがギターに変わってリフを繰り返す。そこにジョージ・サラグッドのだみ声の歌が響き渡る。かっ、カッコイイー! 途中スライドギターとサックスのソロが入り、2回目のギターソロのもうやりたい放題のスライドの唸りには、すっかりノックアウト。
次の週末には、CDを求めて輸入CD屋に飛びこんでいた。日本ではイマイチメジャーにならないのが不思議なのだが、ホームページを見ると着実アルバムをリリースしつづけているようで、本国での人気は衰えないようだ。いいブルース・ギタリストだと思うけれどなあ。少なくとも『Bad to the Born』はブルース・ロック史上の大傑作だと思うのだが。古いブルースのカヴァーも多く、その現代的な解釈はブルース好きにはたまらないものがある。
February.6,2001 ブライアン・メイが演ったブルース
Tavernの宇多村さんのコーナー(笑)で、宇多村さんが1月31日付けで書いていたように、クイーンはブルースっぽくないバンドでした。おそらく、ブルースとはかなり遠い位置にいたバンドだったでしょう。ブライアン・メイはソロをとっても絶対にブルースには持っていかなかった。それはクイーンというバンドの音楽性からいってもブルースは合わなかったからだろうと思うのです。ですが、ブライアンはインタビューでは、尊敬するギタリストとして必ず、ジミ・ヘンドリックスとロリー・ギャラガーの名前を出していて、ブラック・ミュージックは大好きだとも言っています。けしてブルースを好きでないというわけではないのだと思うのです。
1983年、突然にブライアン・メイのソロ・アルバムがリリースされた時は、正直に言って私は途惑いを憶えた。なんと3曲しか入っていないミニ・アルバム。それもそのはず、これはプライベートに録音したものを、まわりの人のすすめで出すことにしたものだそうだ。とにかくびっくりしたのが、このアルバムのジャケット。
「な、なんだあ? ブライアンさん、いったいどうしちゃったの?」という気持ちになったのは私だけではないだろう。これはイギリスのテレビで放映されていた『スターフリート』なる子供向けの番組の一場面。ブライアンの息子がこの番組の大ファンで、それを一緒に見ていたブライアンが「このテーマ曲をロックにアレンジして息子にプレゼントしてやろう」と思ったらしい。親バカもここまでいくと凄い!
それで集められたのが、ギターにエドワード・ヴァン・ヘイレン(ヴァン・ヘイレン)。ドラムスにアラン・グラッツァー(REOスピードワゴン)。ベースにフィル・チェン(ロッド・スチュワート・バンド)。キーボードにフレッド・マンデル(クイーンのツアー・サポート・メンバー)というそうそうたるメンバー。A面はこの『スター・フリートのテーマ』と、ブライアンが昔作ったという『Let Me Out』曲。そして、そしてですね、B面がなんと『Blues Breaker』と名づけられたブルースなんですよ。どうやらスタジオでみんなでコードだけ決めてセッションしたものらしくて、これが今聴いても楽しい。あのブライアンが実に楽しそうに、あの自作ギターでブルースを弾いている。これはもう、最初で最後かもしれない。
その後、2枚のソロが出ているけれど、正面きってブルースをやる気はないみたいで、あれは貴重ですねえ。LPでしか持っていないのだけれど、はたしてCD化されているのだろうか?