January.6.2002 感動のクラプトン最後のワールド・ツアー
12月15日 エリック・クラプトン (横浜)アリーナ
クラプトン最後のワールルド・ツアー宣言。これは行かなくては、というわけで日本公演最終日はるばる来たぜ新横浜。せっかくここまで来たからには[ラーメン博物館]。最後にここに来たのは米米クラブの『英雄伝説』ツアーだから、何年ぶりなのだろう。あのころにはまだ[ラーメン博物館]なんてなかったもんなあ。昭和33年を再現したという地下の町並みをグルグル周って、熊本ラーメン[こむらさき]で王様ラーメンを啜る。ニンニクのチップスが入って香ばしい美味しいラーメンでした―――って、これは久しぶりに書く音楽のコーナーだったっけ。
いきなりクラプトンがアコースティック・ギターを持ってひとりで出てきた。椅子に座ってさっそく弾きだしたのが『キー・ツゥ・ザ・ハイウェイ』 足で拍子を取りながらのブルースの原点に返ったかのようなオープニングだ。でもこういうの、小さな会場で見たかったなあというのは贅沢か。
バンドのメンバーがワラワラと出てくる。2曲目の『レブタイル』が始まる。サンバ調のいわゆるフュージョン。インストだ。クラプトン以外にサポート・ギター、ベース、ドラムス、キーボードふたりの総勢6人編成。みんな椅子に座ってのリラックス・ムード。ドラムスのスティーブ・ガットはスティックではなくブラシを使って静かなビートを刻んでいる。クラプトンのギターから左のキーボード・ソロ、右のキーボード・ソロへ。リラックスしたムードだが、やっぱりこういうの、小さなライブ・スペースで見たいよなあ、スコッチの水割でもやりながら。アコースティックが続く。
3曲目『ガット・ユー・オン・マイ・マインド』。バンドのメンバーはみんな引き続き座ったまんま。憂歌団かあ、おまえら。
4曲目『ティアーズ・イン・ヘブン』。事故で死んだ息子の為に書かれたという名曲だ。いったいこの曲を歌うというクラプトンの心境というのはどうなんだろうか? 私がクラプトンだったら、とてもライヴでは泣き出してしまうだろうが・・・それでも歌い続けているクラプトンは、やっぱり死んだ息子への思いが強いのだろうか? クラプトンなりの息子への供養として、きっといつまでも歌い続けようという覚悟なのに違いない。
5曲目『いとしのレイラ』アコースティック・ヴァージョンを静かに演奏したあとは、『ベルボトム・ブルース』だ。ここからスティーブ・ガットもブラシからスティックに持ち替え、力強いビートを刻み出した。クラプトンのヴォーカルが、時に強く、時に泣くように響き渡る名曲。両方ともデレク・アンド・ドミノス時代の名曲だ。
ここでクラプトン、水を飲んで一服。アコーステッイク・コーナー最後の『チェンジ・ザ・ワールド』に入っていった。後半のクラプトンのソロがカッコイイ。ラストに向かって盛り上がっていくギター、そして力強い歌声。いいなあ、クラブトン。
うっとりと聴き込んでいたところで、アコースティック・コーナーは終了。エレキに持ち替え、サポートのギター、ペースと共に立ち上がってのステージ。かといって観客をスタンディングにさせようという意思がないのは、クラプトンの最近の心境なのか、エレキといっても静かな曲が続く。8曲目『マイ・ファザーズ・アイ』でしんみりさせ、9曲目はもっとスローの『リバー・オブ・ティアーズ』だ。「君がいなくなってから、涙の河で溺れている」なんて胸に迫る歌声にうっとりしてしまったではないか。そしてクラプトンのむせび泣くようなギター・ソロ。泣いている、泣いている、クラプトンのギター! このラストの盛り上がりようときたらどうだ。思わず熱いものが込み上げてきそうになった。
10曲目『ゴーイング・ダウン・スロー』。ラストにソウル風のコーラスが入って盛り上がるったらない。でも今回のツアー、女性コーラスがいない。あくまで男っぽいステージ。ちょっと寂しいけれど、まあ、これもありか。11曲目『シーズ・ゴーン』もコーラスで盛り上がるが男ばっかり。
ここで一転、ブルージー大人のムード。ドラムスがジャズのようなリズムを刻み始めた。12曲目『アイ・ウォント・ア・リトル・ガール』。キーボードがピアノの音色になって、うーん、こういうの、ますます水割りでもやりたくなっちゃうなあ。
うっとりしたところで13曲目お馴染みの『バッジ』。ちらほらと立ち上がる観客あり。と思いきや14曲目ではまた渋く『フーチー・クーチー・マン』。さらにはこれまた渋く『ファイブ・ロング・イヤーズ』。これはこの日の特別メニューだったようだ。ふたりのキーボード・ソロに続いてクラプトンのギター・ソロが冴える。ラストの♪シー・ハド・ザ・ナーブ、シー・ハド・ザ・ナーブ・ツー・プット・ミー・アウト の絶叫が震えが来るほど感動的。
ライヴも佳境に突入。16曲目の『コカイン』でついにオールスタンディング。それにしても♪シー・ドント・ライク、シー・ドント・ライク、シー・ドント・ライク・・・コカイン!の女性コーラスがないのがやっぱり・・・寂しい。照明効果も激しくワンコーラス後のドラムの入り方がカッコイイ! 17曲目『ワンダフル・トゥナイト』、これまた女性コーラス無しというのが聴きなれた立場としてはヘンなのだが、終盤のキーボード・ソロが良かった。サックスのような音色でむせび泣くような効果を出していた。
ラストナンバーは、エレキ・ヴァージョンの『いとしのレイラ』。激しい前半部分から、後半のうっとりする部分へ。そしてラストのバーンという効果音が響き渡るクライマックスは圧巻。
アンコール、『サンシャイン・オブ・ラブ』。クリーム時代のように早弾きで観客を陶然とさせるというよりは、流れるような華麗なギター・ソロ。高音部のヴォーカルはサポートのギタリストが勤めていた。高音出すのはクラプトン苦手なのね。『ホワイト・ルーム』だともっと高い声になっちゃうから、最近は演りたがらないのかなあ。クリーム復活ぜひとも実現して欲しいところ。おじぎをして始めたのがなんとスタンダード・ナンバーの『オーバー・ザ・レインボー』。ひとりひとりのメンバー紹介から歌い出したこのナンバー、クラプトン何の心境だったのだろう。しみじみといい歌声だ。「ゴッド・ブレス・ユー、サンキュー・ベリー・マッチ!」と叫んで去って行くクラプトンに、「それはこっちの台詞だよー!」と言いたくなってしまった。