July.3,2002 曇りのち雨。虹のち豪雨

5月26日 JAPAN BLUES CARNIVAL `02
       日比谷野外音楽堂 2日目

        「曇り、夕方にわか雨」という予報が気になる。カッパと折りたたみ傘を持っての外出となった。開演の午後3時30分に間に合うように日比谷公園をぬけるうちにも、もう空模様が危うい。たいした降りにならなければいいのだが・・・。

        まずは、前日も出たKOTEZ&YANCYから。前日はバンドをつけたが、2日目はふたりだけのデュオスタイル。こっちの方が彼ららしくていい。『I Want You By My Side』 『Too Many Cooks』といったスタンダードをブルージーに演っていく。水割りでもやりながら、ゆったりしたソファーで聴きたいところだが、ここは野音の冷たく硬いベンチ。空は今にも降り始めそうな様相。まっ、しょーがねえか。ラストナンバーでYANCYが、どこかで聞き覚えのある曲に日本語の歌詞を付けて歌い出した。「♪もしもある時 君が傷ついて 僕の前で涙をみせるとしたら・・・」 ああっ! これは、これは・・・サイモンとガーファンクルの『明日にかける橋』ではないの。この連中にかかると、こんな歌も彼ら流の世界に大変身。いいね、いいね。

        後藤ゆうぞうとカメリア・マキちゃんの『主催者からのお知らせブルース』も快調。なんと今年のTシャツは売り切れだって。デザインもよかったから買おうかなあと思ってたのにィ。

        「ジャパン・ブルース・カーニバル初登場。プリーズ・ウェル・カム、HARRY! ハリーきってどうぞ」 後藤ゆうぞうの叫び声に迎えられて登場したのはストリート・スライダーズのHARRY。ストリート・スライダーズって存在は知ってるけど、聴いたことないんだよなあ。トリオ編成でいきなり演りはじめたのがルーファス・トーマスのというよりは、ローリング・ストーンズのカヴァーでこちらも知った『Walking the Dog』。かっこいいじゃん! 余分なものを殺ぎ落としたトリオ編成って私も好きな方で、あとは私の知らない曲ばかりだったけど、ソリッドでなかなかよいのだよ。気合を入れて聴いているうちに、アラアラ、ついに雨がパラパラ降り出しちゃったよ。持参のカッパを取り出して防水体制。トホホと思うけれども、HARRYにこれだけ熱演されては、こっちのハートも熱くなる一方。

        お馴染み、後藤ゆうぞうとカメリア・マキちゃんのブルース講座。「・・・ブルースはロックのお父さんで、ジャズのお兄さんや。それまでの音楽には下のドから上のドまで半音も入れて12個しか音がない。ところがブラック・ミュージックは無限に音があるねんな。ギターでいえばチョーキングやねん。それにブルーノート」 マキちゃんがギターでチョーキングとブルーノートを出してみせる。ええぞ、ええぞ! これこそブルースだあ。「ハーモニカにしたってそうですねん」 今度は後藤ゆうぞうが『おお、スザンナ』を演ったあとでブルース・ハープ奏法を演ってみせる。「ハーモニカはブルース以外では吹くものなんや。それがブルースでは吸いまんねん」 そうなんだよね、ベンド奏法こそがブルース・ハープの命。ベンドのやり方いかんで音程を半音から2音程度まで下げられる。またハープの練習を演りたくなってきたなあ。あれっ? 去年もこんなこと書かなかったっけ。

        3組目、鮎川 永井“ホトケ”バンド。シーナ&ロケッツのギタリスト鮎川誠と、ウエストロード・ブルース・バンドのヴォーカリスト“ホトケ”こと永井隆が組んだユニット。ベースにウエストロードの小堀正。ドラムスはスウィンギン・バッパーズの岡地曙裕というブルース・ファンにはたまらない構成。そこにさらにKOTEZのブルス・ハープが入る。いきなりぶちかましたのはマディー・ウォーターズ2連発『Rollin` And Tumblin`』 『Mannish Boy』 とくにホトケの『Mannish Boy』は定評のあるドスの効いたやつ。おっかねえんだよね。でもかっこいい!! 続いてこれまたホトケお得意の『Shake A Hand』 『Give Some Lovin`』 お決まりのシーナ乱入もあって超ミニスカートで踊ってくれた。シーナ姐さんいつまでも素敵だねえ。終わって空を見上げりゃ晴れ渡っており、虹が二本かかっていた。ホトケに恐れをなしたかな。

        前日のジミー・ヴォーンも聞きたかったのだけど、この日はピーター・グーリンの出番だ。ピーター・グリーンといえば、初期フリートウッド・マックの中心人物。私も一時期ホワイト・ブルースにどっぷりだったときには、年中聞きまくっていたものだったっけ。特にライヴ録音が良くって少々音質が悪くても海賊盤が最高。猛烈なブルース・ギターが唸っていた。そのピーター・グリーンを見られる。この日を楽しみにしていたのは当然。後藤ゆうぞうの浪曲調の紹介も冴える。「・・・イギリス、ロンドンで『おぎゃー』と生まれた元気な子。ピーター・グリーンと名付けられ、小学校に通うたけれど、やがて不良の仲間入り。働かないでがっぽりと、稼いで見せるぜブルースで・・・」 はいはい、みんなおんなじね。「ときは昭和の41年。ところも同じロンドンで、このころロンドンは飛ぶ鳥落とす勢いのブルース・ロック・ブームの真っ只中。その代表人物がジョン・メイオールがやってたのがブルース・ブレイーカズ。その看板ギタリストこそエリック・クラブトン。ある夜、ジョン・メイオールを訪ねたひとりの若者。『ドンドンドン、兄貴ィー』 『誰やねん、こんな夜中に。おっ、エリック・クラブトンやないか。どないしたんや、われ』 『兄貴、話しがあるんです』 『なんじゃい、言うてみい』 『今度バンドを組もう思うてまんねん』 『なんちゅうバンドや』 『クリーム言いまんねん』 『よし、では替わりのギタリスト連れて来い』 『いい男がいるんですねん。この男、ピーターですねん』 『♪夜と 朝の間に・・・』」 違うでしょ!

        というわけで登場したピーター・グリーンのバンドだが、失望のひと言でしかなかった。ベース、ドラムスにピーター・グリーンとナイジェル・ワトソンのギター&ヴォーカルという構成だが、いきなりナイジェル・ワトソンのヴォーカル。あれれ、これって誰のバンドだあ? ピーターのギターもほとんど聞こえてこない。エンディング間際でピーターがブルース・ハープを吹き出したのだが、これも[?]という出来。2曲目でピーターがヴォーカルをとったが、「眠っているんじゃないの?」という出来。どうした、ピーター・グリーン! サンタナで有名になったピーターの曲『ブラック・マジック・ウーマン』でちょっと沸いたが、往年の彼から見ると、ほとんど抜け殻のごとし。ナイジェル・ワトソンのバンドに置かせてもらっているという感じ。ああ、ピーター。

        後藤ゆうぞうとカメリア・マキちゃんの歌、うブルース・クイズ・コーナー。マキちゃんがギターでイントロを弾き、客に歌わせる構成。

1問目。B・B・キングの『Live At Regal』の2曲目は何か?
これは『Sweet Little Angel』ね。
♪I`ve gut a sweet little angel
ばっちり、一人目で正解者が出た。さーすがあ、ブルース・カーニバル。通の人が多い。

2問目。マディー・ウォーターズの『Got My Mojo Workin`』 この歌の歌詞は、主人公がMojoを求めて旅立ちます。さて、どこへ旅立つのでしょう。
ルイジアナね。

3問目。『Ain`t Nobady`s Bussiness,If I Do』。さあて主人公は何を食べるでしょうか?
これは簡単。・・・といってもブルース・ファンしか知らないよね。
♪One day I have ham and bacon
 And next day, ain`t nothing chicken

        このあと、前日の同じくバディ・ガイの登場となったが、途中で雷が鳴り、バケツをひっくり返したような豪雨。『Feel Like Rain』なんて呑気な場合ではなく、私は退散。前日に見たからもういいもんね。 


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