October.19,2002 ロビン・トロワーの『Too Rolling Stoned』

        プロコルハルムというと『青い影』が思い浮かぶ。まさに名曲だが、この曲がヒットしていたころ、私はこの曲が嫌いだった。当時の私の頭の中はハードロック一直線の音楽生活をしていたから、こんな曲は腑抜けた音楽だとしか聞えなかったらしい。当然プロコルハルムのレコードを買うという気にはさらさらならず、彼らのアルバムを買ったのはずっと後のこと。

        ロビン・トロワーというと元プロコルハルムのギタリストという形容詞がついてまわる。実際、ロビン・トロワーがソロになってからの音を聴かなかったらプロコルハルムも聴こうとは思わなかったはずだ。あれは、いつのことだったろう。仕事をしながら流していたFENから、乗りのいいギターのリフが聞えてきた。どうやらライヴ録音らしい。ワウワウのサウンドがいかにも懐かしい。曲はやがてスローに突入してブルースっぽくなっていく。後半はギターが唸りっぱなしのセッション・モード。ベースがやたら力強いし、ドラムスは手数も多く迫力がある。なんだこの曲は? 終わってアナウンサーがRobin Trowerの『Too Rolling Stoned』だと告げたときに、あの、名盤だといわれながら私は聴いた事が無かったロビン・トロワーの『Live!』のジャケットが頭に浮かんだ。



        さっそくレコード屋へ駆け込んだことは言うまでも無い。『Too Rolling Stoned』は、A面1曲目。買ったばかりのころは、この曲ばかり繰り返し聴いていた。今聴きなおしてみても迫真の名演奏だと思う。そのうちにアルバム内の他の曲も聴くようになっていくうちに、「あれえ、この弾き方は誰かに似ているなあ」と思うようになった。雑誌を読んでいたらロビン・トロワーはジミ・ヘンの影響が強いということが書かれていて、ああそうだ、これは、もろジミ・ヘンだよと気がついた。遅いって! プロコルハルムを脱退したのもブルースを演りたかったかららしい。この『Live!』でもB.B.Kingの『Rock Me Baby』を演ったりしている。

        ウタムラさんに話したら、「ロビン・トロワー? いいけどさあ、あの人、ブルースって顔してないだろ?」と言われてしまった。うう〜ん、残念だけど、それは言える。ブルースって顔で弾くってとこもあるのかもなあ。音源だけで聴いていれば気がつかないからいいんだけどね。それと日本でイマイチ人気が出なかったのは、ロビン・トロワー自身が歌を歌わずに、ヴォーカルをベーシストに任せてしまったことだろう。ギターに専念するのはいいけれど、やっぱりブルースはギタリストに歌ってもらいたいというのが、ブルース・ファンの願いなのではないだろうか?


October.2,2002 ベルリンで見たもう一組のバンド

        先月書いたベルリンのライブ・ハウスでパット・トラヴァースを見た話の続き。

        1時間半くらいのパット・トラヴァースのトリオの演奏が終わり、さて帰ろうかと思った。ところが、お客さんがひとりとして帰らない。今のが1セット目で、このあと2セット目があるとは思えない。おやっ?と思っていたら、スタッフがステージを片付けはじめると同時に、またセッティングをしている。キーボードが持ち込まれ、やはりまだ続きがありそうだ。そういえば思い出した。私は情報誌のPat Traversと書かれた文字にしか目がいかなかったが、その下にもうひとつ名前があったっけ。

        30分ほどの休憩で出てきたバンドがあった。どうやら、こっちの方がトリで、パットよりも格上の扱いのようなのだ。キーボードが入った4人編成のバンド。パットが本人を含め全員がスリムな体つきだったのに対して、こちらのバンドは重量級という感じだった。いや、重量級なのは体だけではない。その音も重かった。私にはサザンロック系ブルース、オールマンブラザース・バンドに近い音に聞こえた。リーダーらしいギタリスト兼ヴォーカリストのパワーは、パットの音の印象をすっ飛ばしてしまうくらい。ギターも爆音をたてて弾きまくっていたが、声もいい。翌日確認したら、このバンドはWalter Troutというバンドだった。ウォルター・トゥラウトと読むのだろう。おそらく日本盤ではCDが出ていないと思う。

        ギターとキーボードのからみが絶妙で、ドラムスがすっげえパワフル。今聞いたばかりのパット・トラヴァースの音がすっ飛んでしまうくらいパワフルだった。演奏が始まったのが午後11時だから、終演は午前を回っていた。タクシーを拾ってホテルまで帰ったのだが、その夜は興奮して眠れなかったのを憶えている。

        翌日、ベルリン市内のCDショップでWalter TroutのCDを捜したら、何枚も見つかった。日本での知名度は低いようだが、世界的には有名な人らしい。その中から1枚だけ買って帰国したが、日本でも輸入CDショップでは、ちゃんと置かれていた。その後何枚か買ったが、やはりライヴ盤がいい。いまのところ一番のお気に入りは、『Face The Music』という2000年に出たライヴ。この中の『The Reason I`m Gone』という曲は鳥肌ものだ。       


        日本での知名度はイマイチなのだが、Walter TroutのWebサイトを見て驚いた。1993年のBBC選出のベスト・ギタリストの6位に入っている。1位エリック・クラプトン、2位ジミ・ヘンドリックス、3位ゲイリー・ムーア、4位ジミー・ページ、5位マーク・ノップラー。そして同率6位がブライアン・メイとウォルター・トゥラウトなのだ。どうしてウォルター・トゥラウトが日本で評判にならないのか不思議だ。

        当初受けた印象はサザンロック風と思っていたのだが、CDで聴き直してみると、ヘビーなブルース・ロックという感じ。もっとみんなに知ってもらいたい。そして是非とも来日公演が実現してくれたらなあと思っている。それにしても、あのベルリンの夜はなんと豪華な体験だったことか!        


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