August.17,2003 GSが終わりを告げていたころ
GS時代に中学、高校生だったというのに、私はほとんどGSを聴かないで過ごしていた。内心バカにしていたところもあるかもしれない。私はひたすらビートルズやローリングストーンズ、ビーチボーイズなど洋楽を聴いていた。GSなど金を出してレコードを買いたいとも思わなかった。それが、60年代後半になってニュー・ロックの登場とともにGSも転換期を迎えていたという事も、最近まで知らなかった。
今年になって買った『GS MEETS NEW ROCK 1969−1971』というCDは、そんな私の空白時期を埋めてくれるのに相応しい一枚だった。
全16曲収録されているうちの7曲を除き、あとは全部外国の曲のカヴァーだ。
01『美しき愛の掟』ザ・タイガース
この曲は有名だから憶えている。これはオリジナル曲。といっても、作詞がなかにし礼、作曲が村井邦彦。「ぼくは君のために 人のそしり受けて 牢屋で死んでも かまいはしない」といった歌詞が、いかにもGSっぽいし、曲もいかにもGS、ジュリーの歌い方も相変わらずなのだが、バックのギターの音はもうモロにニュー・ロックしている。ライナーによると、「ギターはパワー・ハウスの陳信輝だという説も?」とあり、それはかなり信じられるような気がする。
02『ハロー・アイ・ラヴ・ユー』オックス
オリジナルはドアーズ。かなりたどたどしい英語のヴォーカルだが、ギターとドラムスははっきりとニュー・ロックに向っていっている。
03『すてきなバレリ』ザ・リード
オリジナルはモンキーズ。外国人ばかりで結成されたバンドだというから、英語が上手いのは当然。ほとんど外国の曲のカヴァーだったようで、あの時代はこういうバンドもGSに分類されていたんだなあ。
04『ユー・アー・ベター・マン』パワー・ハウス
オリジナルはヤードバーズ。今から聴くと音を編集したときのバランスが悪い気がする。ドラムスの音が異様に小さい。いいドラムスを叩いているのになあ。
05『ジャンピング・ジャック・フラッシュ』ザ・テンプターズ
オリジナルはローリング・ストーンズ。ライナーから引用すると、「カタカナ英語のどこが悪いと開き直ったショーケンのボーカル。テンポがズレながらも、とにかく演る。音は後からついてくるんだ!といわんばかりのテンションがロックそのものである」となっているが、まさにそんな感じ。ライヴ録音ということもあるが、演奏もかなりラフだし、ショーケンも歌詞が出てこなかったりで、ヨレヨレなのだが、とにかくロックしていることだけは伝わってくる。
06『太陽に叫ぼう』寺内タケシとブルージーンズ
作詞ささきひろと、作曲は寺内タケシ自身というオリジナル曲。当時はルイ高橋とい強力なヴォーカリストが入っていたようで、「♪ジャスト ライジンサン イエイーイ、イエーイ!」とシャウトするところは鳥肌もの。寺内タケシのギターも当時はこんなにニューロックの影響を受けていたのかと思われる奏法。ひょっとしてこの路線を続けていたら、寺内タケシは日本のロック界で、違った存在になったかもしれない。
07『アイム・ソー・グラッド』ザ・ジャガーズ
オリジナルはクリーム。クリームはもちろんギター・トリオだが、ジャガーズのキーボードの入ったバージョンというのもなかなかいける。かなりニュー・ロックしてるよ、これ。
08『紫のけむり』ジャッキー・吉川とブルー・コメッツ
オリジナルはジミ・ヘンドリックス。いやあ、驚きました。ブルコメが『紫のけむり』とはねえ。ギターが唸りをあげているところにフルートが被さるのがブルコメらしい。途中からサックスとギターのバトルになり、ジャズのような、はたまたプログレのような展開になる。
09『ストーン・フリー』内田裕也とフラワーズ
オリジナルはジミ・ヘンドリックス。内田裕也はヴォーカルもとらずプロデューサーのような位置にいたらしいから、フラワー・トラベリン・バンドの前身のようなバンド。それでも内田裕也の名前が付いている。よく考えると内田裕也という人は、一貫してロックの位置にいた人で、GSとは別の存在だったのかも知れない。
10『THE WIND IS WILD』ザ・ランチャーズ
作詞Aly Cross Danolds、作曲喜多島修。ランチャーズといえば加山雄三のバンド。どう聴いても何かのカヴァーのような気がする曲。それほど当時のウエスト・コースト・サウンドそのもの。これは驚きの1曲!
11『ヘイ・ジュード』ズー・ニー・ヴー
オリジナルはビートルズ。これだから恐いのよ。ズー・ニー・ヴーって『白い珊瑚礁』しか知らないもん。ジョー・コッカーよりも先にソウル乗りのビートルズを演っちゃってたんだとは思いもよらなかった。
12『ワイルドでいこう』ザ・スパイダース
オリジナルはステッペン・ウルフ。信じられないことに井上順のヴォーカルが案外決まっているから驚き。原曲の持つワイルド感が、井上順流に消化されて出ている感じ。器用な人なんだろう。
13『ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン』ザ・ハプニングス・フォー
オリジナルはヴァニラ・ファッジ。ザ・ハブニングス・フォーってギター無しのキーボードのバンドという知識しか持っていなかったが、これを聴いているとギターがバックに入っている。ソウル乗りの曲だが、うねるようなギターがもろニュー・ロック。
14『V.D.』ゴールデン・カップス
作詞John Aguinalds、作曲ミッキー吉野。後にゴダイゴに発展するゴールデン・カップスをほとんど聴こうとしなかったのは、やはり悔やまれる。これはヘンな曲だ。おそらくビートルズの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』あたりに影響を受けたのではないか? テーマの部分がどことなく似ているし、後半の騒音ともいえる部分から、鳥の鳴き声、そしてテーマに戻るあたり、一時期のビートルズ、そしてピンク・フロイドをふと思い出してしまった。
15『自由に歩いて愛して』PYG
作詞安井かずみ、作曲井上尭之。GSが終息したころに結成されたタイガース、スバイダース、テンブターズからのメンバーによって組まれたバンドPYG。私はまったく食指が動かなかった。当時、日本でもまったく新しいロックの動きがあり、GSの寄せ集めバンドなんて興味が無かった。こうやって改めて聴いてみると、バックのバンドはロックしているのに、やはりジュリーはジュリーでしかないような気がする。ジュリーのことを悪く言うつもりはない。むしろ私はソロになってからのジュリーが大好きな方だ。しかし、ジュリーはジュリーであって、いわゆるロックではないような気がするのだ。
16『ブルージーン・ブルース』ロック・パイロット
作詞安井かずみ、作曲沢田研二。このバンドのことはまったく知らなかった。ジュリーの作曲となっているが、編曲の段階でかなりとんでもないことになっている。転調は多いは、ギターは唸るは、当時流行のブラス・ロックの部分はあるはで、妙な曲になっている。なんだかごった煮の不思議な曲としかいいようがない。ブツッと切れるエンディングも印象的。これでGSは完全に終わりを告げたのかも知れない。