February.15,2004 ふと思い出す、あの時代

        学生時代に浅草の名画座へ行こうと、ロックを歩いていると、やたらと声をかけられた。「兄ちゃん、いい体してるね」 土建屋らしい男からのアルバイトの話と、そして自衛隊の勧誘だった。そんな時代だったのだ。

        高田渡の『自衛隊に入ろう』がラジオの深夜放送で流れていたのもそんな時代。アメリカのトラディショナル・フォークに皮肉な歌詞をつけて反戦を呼びかけた内容だった。高田渡のノホホンとした歌い方が面白くて、私もシングル盤を買ったのを憶えている。かといって、新宿西口フォーク集会に行こうとか、学生運動に関わろうとかは思ったこともない。心の中では熱いものがあったが、その渦中に飛び込もうとまでは思わなかった。そんな時代があったのだ。

        先日、CDショップに入って、突然目に入ってきたのが、渋さ知らズのシングル盤。なんとあの『自衛隊に入ろう』のカヴァーだという。        



        URCのトリビュート・アルバムのために録音したものだが、自衛隊のイラク派遣が行われたために、あえて先行シングル化したものだという。渋さ知らズは大人数のジャズ・ユニット。私も好きなバンドで、CDはほとんど持っているし、ライヴにも出かけている。渋さ知らズと『自衛隊に入ろう』という組み合わせは、とても頭の中で結びつかなかったのだが、面白いと思い買ってしまった。

        ファンファーレが鳴ると、ばかに陽気に編曲された曲に突入。もっとも渋さ知らズだから、混沌とした音がバックで響いている。女性ヴォーカルで歌が入る。「♪男の中の 男はみんな 自衛隊に入って花と散る・・・」

        曲は例によって、やがて渋さ知らズらしい狂気の世界に突入していく。

        今の学生さんたちは、まったく政治に興味がないのか、学生運動をしているという話も聞かない。それはそれでかまわないけれど、35年ぶりで耳に入ってきた『自衛隊に入ろう』を聴くにつけ、少しは自衛隊イラク派遣に関心を持って欲しいと思うこのごろ・・・。


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