December.3,2006 やっぱりロックは武道館でなきゃ

11月23日 エリック・クラプトン (日本武道館)

        東京ドームはもう勘弁してもらいたい。あそこは音楽を聴く環境じゃないでしょう。おそらくもう東京ドームでも聴きに行きたいというミュージシャンは私にはいないと思う。ましてや、今のクラプトンを東京ドームで観たいなんて絶対に思わない。ブルースを聴かせるのが主体となってきた最近のクラプトンだ。ブルースを東京ドームで聴いてどうするのさ。今回のように、武道館公演だけでも10公演。こうこなくちゃいけない。前回の来日では埼玉スーパーアリーナに行って、ほとんど天井に張り付くような位置から観ていた。ありゃあ、音楽を聴く体勢じゃないよ。

        地下鉄九段下駅で降りて、靖国通りの坂を登る。かつて、70年代あたりには、毎月のようにこの坂を登ってロックを聴きに行ったものだった。無許可の屋台は今も健在。ここの商品は出来が悪いが、価格は安い。買わないけどね。テントを張ったオフイシャルのマーチャンダイジング販売所。プログラム3000円! こちらも買いません。

        1階のエントランスからアリーナの地下へ降りる。天井が低い。ここってこんなに天井が低かったのか。なにしろ40年以上も前に建てられたものだもんなあ。私の席はアリーナの真ん中から、やや上手よりのBブロック。このへんなら音もいいし、ステージもよく観える。それでもやや遠いと感じたのでオペラグラスは用意してきた。

        定刻から10分押しで客電が落ち、メンバーが舞台に上がってくる。ギターはエリック・クラプトン以外にサポートがふたり。トリプルギター編成だ。ひとりはデレク・トラックス。もちろん2年前のブルース・カーニバルに登場したザ・デレク・トラックス・バンドのギタリストであり、現在のオールマン・ブラザース・バンドのメンバーでもある。ちなみに宇多村氏もブルース・カーニバルで彼の写真を撮っている。もうひとりが、これまた強力。ドイル・ブラムホールU。自らのリーダー・アルバムも作っているが、ジミー・ヴォーン脱退後のファビラス・サンダーバードのギタリストでもあったり、ロジャー・ウォーターズのバンドでギターを弾いていたりする人物。そういえば、4年前のロジャー・ウォーターズ来日公演でサウスポーノギタリストを観た記憶があるが、あれが彼だったのか。ベースがウイリー・ウイークスでドラムスがスティーブ・ジョーダンというのも、いつになく強力なリズム隊が揃った。キーボードがクラプトンとは長い付き合いのクリス・ステイントン。そしてティム・カーモン。それに女性コーラスふたり。

        前半はブルース中心の渋い選曲で、客席も戸惑い気味か。アコースティック・セットが終わったあたりから客席も暖まってきた。J.J.ケールの『アフター・ミッドナイト』で湧かせた後の、ロバート・ジョンソンの『リトル・クイーン・オブ・スペード』がこの日のハイライトだったろう。クラプトンからソロを渡されたデレク・トラックスが、あまり乗りのよくないソロを取っていると思っていたらば、徐々に自分の中で燃えてきたのか、最後の方は迫真のスライド奏法で、ぶち切れ寸前の演奏を見せてくれた。『エニイ・ディ』のあとの『ワンダフル・トゥナイト』は、もうクラプトンひとりの世界。誰にもソロを回さずにひとりで弾ききった。すぐさま『レイラ』で会場は総立ち。後半部でうっとりする観客を突き放すように、ブチッと切って、『コカイン』に入る思い切りのいいかっこよさに痺れた。

        代表曲だけズラズラと並べるだけのコンサートでなかったのが潔い感じ。これが今の私なんだというクラプトンの声が聴こえてきそうだった。でもなあ、今回のワールド・ツアーでは私の大好きな『レット・イット・レイン』を演った日もあったというではないか。これが聴けなかったのが、やや心残りではあるのだが。


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