September.21,1999 天才ジョニー、無残マリアンヌ

        HNK−BS2『モントルー・ジャズ・フェスティバル'99』今夜は2回目。のっけからブルース3連発。

        B・B・キング『レット・ザ・グッド・タイム・ロール』で始まって、ごぶさたジェフ・ヒーリー・バンドがビートルズの『ヤー・ブルース』、おやおや、3人組だったはずが、サポート・ギタリスト入れたのね。

        続いて出てきたのが、ジミー・ロジャース・トリビュート・バンド・フューチャリング・タジ・マハール。タジって、初期のころの凄みが最近感じられない。なんだかフツーのおっさんになってきた。ハーモニカ吹いても迫力なし。それに、バックの左利きのドラマー、ちゃんとリズムだけは刻んでいるけれど、ショボくないかい? 

        この後、何組かワールド・ミュージックがあって、ヴァン・モリソン。むむむ、『ジョージア・オン・マイ・マインド』。さすがにうまい。バックのミュージシャンも言う事なし。

        そこへ、ジョニー・ラング。ヴァン・モリソンの後に並べるのは、酷でないかという危惧は消し飛んだ。曲は『ブレイキン・ミー』。2枚目のアルバムの4曲目ね。15歳でデビューして、まだ20歳にもなっていない。ギターもうまいが、なんだこの歌い方は! この声、この表現力。空恐ろしいティーン・エイジャーがいたものだ。ギターは上手くてもヴォーカルはねえというブルースマン多くないですか? 彼に対する期待が膨らんで来るのを感じた。

        余韻に浸っていると、画像はなにやら太ったおばさんが歌っている。ええーっ、マリアンヌ・フェイスフル? あの全裸にピッタリのレザー・ライダー・スーツを身に付け、ハーレー・ダビットソンでアラン・ドロンの元へと、ヨーロッパの街を駆けぬけた『あの胸にもう一度』のマリアンヌ・フェイスフル? その後、『ブロークン・イングリッシュ』という退廃的でいかしたアルバムを発表して、またまた度肝を抜いた、あのマリアンヌ・フェイスフル? この後、ジョン・マクラグリンだの、ハービー・ハンコックだのが出たが上の空。ショックでした。


September.20,1999 『アンジー』って名曲?

        NHK−BS2の『音盤夜話』っていう番組が面白い。一枚のアルバムを一時間かけて語り尽くそうという、およそテレビ向きではなくて、どちらかというとラジオ向きの企画なのだが、NHK−BSというメディアだからこそ実現できた。今夜の題材は、ローリング・ストーンズの『レット・イット・ブリード』。混乱期のストーンズの傑作を、様々な角度から取り上げていた。参加者が萩原健太、近田春夫、ピーター・バラカン、鈴木慶一の四人。特に萩原の、キースがこのころからオープンGだのオープンEを覚えていったと実際にギターを弾いてみせてくれたのが興味深かった。番組終了近く、近田が「『アンジー』は嫌いだ」と発言。ピーターも「私も嫌いだ」と言い出し、異様に盛り上がった。実を言うと、私も『アンジー』が大っ嫌いなのだ。ストーンズ・ファンを前にして、なかなか言い出せなかったのだが、私にとって、あれは生理的に耐えられない気持ち悪い曲だ。だから、『山羊の頭のスープ』は買ったものの、あまり聴くことがなかったLP。理由は唯一つ。『アンジー』が入っているからなのだ。どうしてみんな、あの曲が好きなんだろう。ベスト盤なんかにも、大抵入っている。人の好みだから、どうでもいいのだけれど、『アンジー』嫌いが意外といるんだと知って、ほっとしたという訳です。


September.13,1999 お願いだからCD化してよ

        3枚組CDで出た『ザ・コレクターズ・キング・クリムゾンVol.1』を飽きずに聴き続けている。この未発表のライヴ音源、[Vol.1]というからには、この後にも何枚か出すつもりなんだろう。

        特に好きなのが、2枚目の1972年ジャクソンビルでの録音。以前出た、『ザ・グレート・ディシーヴァー』という4枚組CDは、1973年と1974年のライヴを集めたものだったから、その前の時期のものを出したわけだ。4人編成となってしまった時で、ベースのボズ・バレルがヴォーカルをとっている。

        おやっ、と思ってLP『アースバウンド』を引っ張り出してみたら、中の一曲『セイラーズ・テイル』だけがジャクソンビルでの録音になっている。ちょっと待ってくださいよ、ロバート・フィリップは、カセット・テープで録ったという『アースバウンド』が気に入らず、日本版のLPの許可を出さず、もちろん、もう一枚のライヴ版『U.S.A』共々、発売を打ち切り、当然のごとく、CD化はしていない。

        『ザ・コレクターズ・・・』のジャクソンビルを聴いてみるとわかるように、これもおそらく元の音源はカセット・テープ。ドラムスの音なんてボコボコで、『アースバウンド』と大差ない。しかし、この音が逆にいいんです。ボズの歌う『21世紀の精神異常者』なんて、音が割れちゃって、凄い声だ。どちらかというと、私グレック・レイクよりボズ・バレルの歌い方の方が、この曲には合っている気がする。ねえ、フィリップさん、この際だから、是非とも『アースバウンド』と『U.S.A』のCD化を検討してもらえないだろうか。


September.9,1999 ゛死゛に直面した時のBGM

        横浜の伯父の葬式に出席して、お坊さんのお経を聞きながら、ぼんやりと考え事をしていた。自分の葬式のBGMには何がいいだろうという、つまらない事なのだが、30分もお経を聞いている間、他にする事がない。

        それで結論に達したのが、レッド・ツェッペリンの『IN MY TIME OF DYING』。日本版では『死にかけて』というタイトルが付いている。『フィジカル・グラテフティ』の中の一曲。ベッドの中で死を意識した者のモノローグになっている。「私が死ぬとき、誰も嘆き悲しまないでくれ。して欲しいのは、私の身体を我が家に運んでくれること。」から始まって、人生を回想し、やがて神に許しを乞う。天使の歌声が聞こえ、イエスの姿が見え、触れることができる。長い曲で11分4秒もある。

        別にキリスト教を信じているわけでもないが、ジョン・ボーナムの力強いドラムスで弱音を吐かずに死んでいきたい。


September.5,1999 苦肉の海賊版CDジャケット

        駿河台下の三省堂書店の入口に海賊版CD屋が店を出していた。いいのかね、天下の三省堂書店がこういうの出させて。こっちは嬉しいけど。

        ストーンズ、クラプトン、ツェッペリン、ビートルズといったお馴染みは種類が多すぎちゃって、もう正直うんざり。その他のコーナーでミック・テイラーを一枚見つけて、来月は来日する事だしと買ってしまった。1,000円。96年のイタリア録音。

        しかし、それにしても何でレーガンの写真がジャケットなんだ? 音を聞きながら、ながめているうちに気が付いた。これミック・テイラーが、ローリング・ストーンズ脱退後参加したロン・ウッドに対して、俺のソロを聞いてくれという格好に海賊版業者はしたかったらしい。つまり、こうしてタイトルが『LISTEN TO THIS RONNIE』となった。ロナルド(ロニー)・レーガンとロン(ロニー)・ウッドを引っ掛けたというわけだ。

        おそらく、私の想像だが、業者がミック・テイラーのいい写真が手に入らなかったのではないか。それで苦肉の策として、こんな写真を持ってきて、こんなタイトルをつけて売り出したのではないだろうか。聞いてくれと言ったって、ロン・ウッドはともかく、レーガン元大統領は聞くことないだろうな。アルツハイマーだっていうし・・・。


September.4,1999 ジャーマン・ブルースって知ってます?

        4年前、ベルリンへ行ったとき、ちょうどパット・トラバースがライヴ・ハウスに出ていて、日本では見ることができそうにないので、この時とばかりに見に行った。その時の話は、また別の機会に譲りますが、今回は違う話。

        その店の壁に貼ってあったのが、CADILAC BLUES BANDなるドイツ人のブルース・バンドのCDの広告。へえ、ドイツにもブルースやる奴らがいるんだと嬉しくなった。翌日、タワー・レコードにいったら、2枚のCDが手に入った。

        帰国後、この2枚のCDは時々聞いているが、先日ドイツ人の友人が新作を見つけたと郵送してくれた。これは昨年(98年)の作品。タイトルは『LOST MIND』。音は相変わらずのホワイト・ブルース。歌詞は一貫して英語。英語に強くないので、ヴォーカルがドイツなまりがあるかどうかは解らない。今回ラスト・ナンバーでビートルズの『ゲット・バック』をブルース・バージョンで演奏している。

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