July.15,2006 得した気分
このところ映画館に行かなくなっているが、どうしても観たいものは観に行く。例えば『M:i:V』。こういうのは映画館に行く事がお祭りみたいなものだから。公開初日、新宿の映画館に観に行った。さぞや超満員、立見かもなあという覚悟で行ったものの、いささか拍子抜け。チケット売り場に到着してみれば[席があります]の表示。チケットを買って中に入ってみれば、驚いた事に場内は空いているではないの。空席がいっぱい。これでいて、翌日のスポーツ紙によれば大ヒットだというのだから、この映画館がたまたま空いていたのかと思うしかないのだろうか? だいたい今や、以前のように期待の大作映画が公開されるとドッと人が押し寄せるという現象は無くなってしまったのかもしれない。それでも予告編上映などがあるうちに、場内はほどよく埋まった。
もともとトム・クルーズの演技には期待してはいないと言ったら酷かもしれないが、彼は別に演技派の役者ではない。クールな二枚目俳優であってくれればそれでいいとこっちは思っているから、こういうお祭り騒ぎにはうってつけ。「うまいいなあ」と思うのは、この映画、最初に中段のトム・クルーズが危機に陥るところから始めているところ。そこから話が一気に物語のアタマに戻り映画が始まる。今回が前二作と大きく違うのは、イーサン(トム・クルーズ)に婚約者がいるということ。相手は女医のジュリア(ミシェル・モナハン)。ヒーローに女はいらない。敵に付け入られる隙を作るから。それでもこの映画が面白いのはそのハラハラがうまく作用したから。イーサンはジュリアに自分の本当の職業を隠している。今回の悪役は演技派のフィリップ・シーモア・ホフマン。イーサンに捕まったときにイーサンの質問には一切答えず、「お前の女を殺してやる」という台詞を繰り返し、イーサンが逆上してしまうのは最初のシーンに繋がっていて、観客は納得してしまう。
観終わって、「このストーリーをめぐるラビットフットって、いったい何だったんだ」という疑問が残らないではないがとにかく2時間をアクションの連続で引っ張っていく。最初はドイツでのリンジー(ケリー・ラッセル)救出作戦。ここで頭に埋め込まれた爆弾という、この映画のクライマックスに繋がる伏線をたっぷりと見せておく。次がバチカンでのオーウェン・デイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)誘拐作戦。バチカンへの忍び込み、変装のスリルはテレビ・シリーズの『スパイ大作戦』の楽しさがそのまま再現されていて、これまた楽しい。
輸送機でのイーサンとオーウェンの一幕があって、アメリカに帰ってみればヘリが襲ってきて、長い橋の上での銃撃戦。ここも迫力あり。でも、こんな露骨な攻防戦があったら、もう戦争だよね(笑)。
物語のラストは上海。48時間以内に最後のミッションを成し遂げなければジュリアの命がなくなる。そこから留置所を脱出して、アメリカから上海に飛ぶなんて無理だろうと思うのだが、やってしまうのがこの映画。映画なんだものいいじゃんという姿勢は笑えるのだが、あと2時間というところで、遠く離れたところにある高層ビルの中に忍び込む作戦を考えているって、ありえな〜いという突っ込みもなんのその。どうやって調達したのかわからないロープなどを使って、隣のビルから振り子の要領で飛び移るって・・・いったい・・・・まっ、いいか。ジャッキー・チェンかお前は!!
ラストで自分の正体を婚約者に打ち明けるイーサン。これから先のこのシリーズ、果たしてまたジュリアは出てくるのだろうか? なんとなく別れちゃう気がするんだけど・・・・・。
帰りがけにパンフレットを買った。600円。写真が多いし、インタビュー記事も多い。プロダクション・ノートも豊富。それでいて読みたくも無い映画評論家の文章が無いのもうれしい。それでもっとうれしかったのが、これに時計がオマケに付いてきた事。わ〜い!
July.8,2006 突っ込み満載のホラー映画
せっかくWOWOWに加入しているんだからと、放映される映画をさして予備知識も無く観ていることがある。以前はスリリング・フライデーという枠で放映される映画をよく観ていた。金曜の夜、一風呂浴びてビール片手に一週間の疲れをとるのに、肩の凝らないサスペナスものを観ながら夜更かしをするというのが私のささやかな楽しみでもあった。有名無名、玉石混交のセレクトで、当たりのときもあったが、「ハズレじゃん。ケッ!」と言って眠りにつくこともあった。このスリリングフライデーが番組改編で無くなってしまって、今度は同じような企画で月曜に移動して、月曜スリル・アクションなる枠になってしまった。月曜の夜10時からでは翌日に差し障りが出てしまう。やむなく、面白そうなものがかかったときは、録画して観ている。
その月曜スリル・アクションに『0:34 レイジ34フン』という映画がかかった。宅配されてくるWOWOWマガジンを開くと、『ラン・ローラ・ラン』のフランカ・ボテンテ主演の地下鉄を舞台にしたホラーということがわかった途端、「ああ、あれか」と思い出した。これはベルリンさんが2年前のベルリン・ファンタで観て、ひどい出来だと書いていた『Creep』だと思い出したのです。そんなひどい作品なら、逆にどんなにひどいのか観てやろうと思ってしまうのが、私の野次馬根性。録画予約を入れて録っておいて、週末になってから再生してみた。
いやあ、ベルリンさんのご忠告に従った方がよかったと思うくらい、しょーもない作品でしたが(笑)。でもまあ、せっかく観たんですから、ベルリンさんの文章の補足とでもいうようなことを書いてみるとしましょう。
冒頭は地下道の保守点検作業をやっているらしい二人組みの男の姿から始まる。どうも刑務所の話なんかをしているから、ボランティアを兼ねた仕事なのかもしれない。それにしてもなんで真夜中にこんな仕事をしているのかという素朴な疑問が沸いてくるのだが、そこはそれ、そうじゃないとホラー映画にはならない(笑)。ここで、先輩格のほうの男が、何者かによって殺される。
画面は一転、どうやらどこかの家で行われているパーティ。ここでフランカ・ボテンテが登場。役名はケイト。イギリスで仕事をしているドイツ人という設定。この映画ではボテンテは髪を金髪に染めている。ホラー映画には金髪美人というセオリーなのだろう。黄色のドレス姿なのだが、けっこうキワドいカットが入っていてヒールの高いサンダル姿。ちょっと期待が高まるが、う〜ん、ここでのボテンテ、どうにも感情移入しにくい女なんですね。とにかく性格的に問題ありという設定になっている。やや傲慢な態度が鼻につく女性で、これからジョージ・クルーニーの追っかけをするんだと人に話していたりする。パーティ会場にはケイトに気がある男ジョージがいて、さかんにケイトを口説こうとするが、ケイトはこの男が大嫌いなようだ。はっきりと嫌いだという意思表示をしたあとで、仲間との会話で、男なんてちょろいもんだとの会話を交わし、さっきのジョージに投げキッスなどしてみせる。さあ、これではジョージの方も、実は自分に気があるんじゃないかと思ってしまうじゃないの。しかも、やばいパーティらしくてジョージはラリっているときている。
ジョージ・クルーニーの宿泊先のホテルを知っていて、一緒に追っかけをやろうと約束していた女の子は、なぜか先に会場を抜け出していた。仕方なくひとりで帰ることにするケイト。タクシーを捕まえようとするが捕まらない。このへんのイギリスの事情は知らないが、東京に住んでいるとこれは不思議。バブルのころは、夜中にタクシーを捕まえようとすると乗車拒否にあったりしたものだが、今や夜のタクシーの量は過剰ぎみ。繁華街にはタクシーがズラリと客待ちをしている。
ケイトは仕方なく地下鉄で帰ることにする。どうやらケイトは地下鉄に乗り慣れていないらしい。キップを自販機で買おうとするが小銭を持っていないなどのトラブルに遭遇する。一日乗車券をホームレスから買ってホームへ降りる。このへんのホームレスに対する傲慢な態度も嫌な感じ。終電は0時34分。日本語のタイトルはここから来ている。終電が来るまでケイトはホームのベンチに座って待つことする。鞄の中から取り出したのは、ウォッカらしいミニボトル。これをラッパ飲みする。だめじゃん、公共の場でそんなもの飲んじゃ。もうヒロインに対する感情は引くばかり。ケイトはついウトウト。ハッと気がつくと終電は行ってしまっている。さあて、ほんの一瞬眠り込んでも、電車が入ってきた音に気がつかないなんてことがあるのかという疑問はこの際問わないことにしましょう。東京の地下鉄の場合、終電が入ってきた場合うるさくアナウンスがあり、「終電に乗り遅れないように」と繰り返し伝えられる。でも、イギリスではそんな野暮なアナウンスはしないのかもしれません。それも問わないことにしましょう。
終電が行ってしまったと気がついたケイトは改札へ戻ります。ところが改札口はシャッターが閉まっていて外には出られなくなっている。これも東京の地下鉄から考えると不思議なのは、ホームから改札口まで全て照明が消されないまま点いているということ。しかも改札の向こうは照明が消されている。なんで? まあいいでしょう。これも不問にしましょう。さて、地下鉄の構内に取り残されてしまったケイトなのですが、いったいイギリスの地下鉄職員は何をやっているだろうという気がしてくるわけです。東京の地下鉄の場合、ホームに人が残っていないかどうか厳しくチェックして回り、いないと判断してから改札を閉めます。ベンチで居眠りしている乗客を見過ごすはずがない。まあいいでしょう。見過ごさなければこの話が始まらないわけですから。
ホームへ戻ってくると、来るはずのない列車がホームに入線してきます。誰も乗っていない列車。出口を失ったケイトがこれに乗ってしまうというのはわからないではない。ベルリンさんも指摘しているとおり、この列車は誰が動かしたのかということです。後に判明するのですが、運転手は乗っているのです。ただ、この運転手も何者かによって残虐に殺害されている。もちろんこの運転手は化け物によって殺されたのですが、運転手はいつ殺されたのかということ。仮にこの列車を回送するために運転手が走らせていたとすれば、なんでホームで一旦停車させてドアまで開けたのでしょう。意味がわからない。とすると考えられるのは化け物が運転して来たということ。そんなに簡単に動かせるシステムなんだろうか、イギリスの地下鉄というところは。だとしたら随分ずさんな管理体制といえる。
さて話を戻して、列車に乗り込むケイト。その後方で、列車に乗り込むもうひとりの影。列車は動き出します。このもうひとりの影の正体はすぐに明かされます。パーティ会場にいた嫌な男ジョージ。「本当はオレとやりたいんだろう? 早く服を脱げ」とズボンのチャックを開けてケイトに迫ってくる。ジョージはケイトを押し倒しレイプしようとする。そこで列車が停まり、ドアが開いてジョージは何者かによって列車の外に引き摺り下ろされてしまう。さあて、なんだこりゃでしょ。いったいドアを開けるスイッチを押したのは誰? 開いた瞬間にジョージは引き摺り下ろされますから複数の犯行のように見えますが、後にわかるように化け物は一人だけ。いったいどうやったら車掌室にあるドアの開閉スイッチを押して中ほどにある列車のドアまで瞬間移動できるというのですか!?
一旦引き摺り下ろされたジョージは血まみれでドアによじ登ってくる。ケイトに「逃げろ」と告げます。後方の車掌室に逃げるケイト。外を見ると後ろの駅はすぐそこ。外に出て、走ってホームに戻ります。さあて、ここも変なんだよなあ。あれだけ走っていた地下鉄のはずなのに、目の前に見えていた駅、先ほどケイトが乗り込んだ駅なんだよね。なぜそれがわかるかというと、ケイトの前にカワイイ犬が出てくる。ビーグル犬らしいこの犬を追ってケイトがつけて行くと、地下鉄の構内の穴の中で生活しているホームレスの夫婦に出会う。この女性はケイトに一日乗車券を売った人。つまりケイトが乗り込んだ駅でしょ。ケイトは大金を払い(といってもホームレスにとっての)、男に警備室に案内してくれと頼む。結果、男は殺され、元のホームレスの巣に戻ってみれば女性もいなくなっている。って、ケイト以外の人の被害は拡大の一方(笑)。
ジョージも這ってホームへ戻ってくる。ケイトは警備室に繋がる非常連絡用電話があることを知り、警備室に連絡を取ります。怪我をしている人がいるから救急車を呼んでくれと頼むものの、嘘だろうと思われてしまう。ケイトは一連の事件で服も汚れてホームレスだと思われてしまうわけです。これがまたわからない。ホームレスなら地下鉄構内にいてもかまわないということらしいのだが、東京の場合そんなことは考えられんでしょ。ホームレスはどんなに寒い真冬の日であろうと外に放り出されます。また、たとえ汚れた服とはいえ、パーティ・ドレス姿のホームレスなんているかあ?
このへんまでが、映画の前半部分。後半は突っ込んでいられないくらいグロテスクな映像に突入してしまう。化け物は人間の形はしているものの、かなり異形。元は人間だったのだろうが言葉は話さず「キエー!」という叫び声を上げるだけ。一応何者なのかというのは中段でそれらしき説明はあるものの、詳しい説明は無し。推測の域を出ないまま、ケイトは化け物に追いかけられることになる。地下水の汚水処理場みたいなところの檻に入れられたりするシーンも不快だが、なぜか存在する地下の手術室のシーンは不快を通り越して、なんでいったいこんなものまで見せようとするのかという怒りまで感じるほど。
警備員まで含めて回りの人間がみんな殺され、孤軍奮闘となったケイトがお約束どおり化け物を倒したところで始発が動き始める。悪夢の一夜を体験したケイト=ボテンテの表情は実に良くなっている。おいおい、お前が終電に乗り遅れなかったら、こんなに死人は出なかったんじゃないか、との突っ込みはやめておこう。優しいいい顔をしている。ホームの床に座り込むケイトの膝の上に、例の犬がよじ登ってベッタリ寝てしまう。どうやら猫みたいな性格の犬らしい。化け物が出て来ても吼えないし、飼い主放って逃げちゃうし(笑)。