風雲電影院

ハン・ゴンジュ 17歳の涙

2015年5月28日
キネカ大森

 2013年韓国映画。

 韓国では実際に起きた事件の映画化は人気があるそうで、これもインディーズながらヒットしたらしい。もちろん実際にあったことの映画化はよその国でもあることだから珍しいことではないのだが、韓国の人って、なぜそういうのが好きなんだろう。だとしたら去年起きたフェリーの転覆事故なんていうのも今に映画になるのかしら。

 いやね、実際に起きた事件の映画化が悪いというわけではないのだけど、韓国の場合、こういうのに多分にフィクションを盛っているんじゃないかと思われる演出をする傾向があって、『殺人の追憶』にしても『チェイサー』にしても、ちょっと嫌だなと思えたりした。

 で、この『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』だが、2004年に起きた女子中学生集団レイプ事件とその後を描いたもの。私は一応観る前に、そういう知識があってから観たのだが、そういう前知識も無く突然観た人は、この映画に戸惑うのではないかと思う。もちろん韓国の人は知って観ているのだろうから自然に入って行けるだろうが、余所の国の人で、これが実話の映画化と知らない人は何が何だかわからない世界に放り込まれてしまう。

 ある女子校にひとりの転校生がやってくる。彼女はなかなかみんなと打ち解けようとしない。なにか過去に秘密を持っているらしいという描き方なのだ。わかってる人にはまるわかり。実話の映画化とは知らない人には、このあと、時系列が行ったり来たりするから、一体この映画は何なんだ? と思えてくるだろう。

 彼女が集団レイプされた過去があるということがはっきりわかってくるのは中盤になってから。いやさ、別に集団レイプの実話を映画化しちゃいけないとは言わないけれど、この当人にとっちゃ、実話でございますと映画化されると知った時にどう思ったのだろう。快くどうぞと言ったのだろうか? どうしてもこの話を映画にしたかったのなら、実話としないで、新たにフイクションで書いた方がよくなかっただろうか。なんだか実在する被害者を、またレイプしているような気がしてならない。映画の中でもレイプの現場を撮影してインターネットに流すシーンがあって、それを被害者女性は、本当に嫌がっていたのだから。

 加害者の少年の親たちが、自分の息子の経歴に傷が付くからと示談に持ち込もうとして、彼女がいる教室にやってきたり、受け入れ先の校長が、そんなことがあったのなら先に言っておいてくれないと困るなんて発言をする場面など、ちょっと観るのがつらかった。

 これだけ後味の悪い映画は最近観たことがなかった。観なきゃよかったかもなぁ。

5月29日記

静かなお喋り 5月28日

静かなお喋り

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