風雲電影院

バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち(20 Feet from Stardom)

2013年12月22日
渋谷Bunkamuraル・シネマ

 音楽、とくにポピュラー・ミュージックは好きだ。でも私は聴くのは好きでも、楽器を演奏したり歌ったりはしない。楽器は何回かチャレンジしてみたがやはり才能がないようで、途中で投げ出してしまった。歌の才能も無いらしくて音程もうまく取れない。そんなわけでカラオケに行くのも苦手。今では喉を手術したせいもあり、声もまともに出ない。楽器や歌の才能がある人を、つくづくうらやましく思っている。

 ポピュラー・ミュージックにおいて、やはり華になるのはヴォーカリスト。ソロシンガーならなおさら、バンドとして活動していてもヴォーカルは一番目立つ。どうしても観る側、聴く側はヴォーカルに注目する。そのうしろで楽器を弾いている人たちは、その次だ。中にはスタジオ・ミュージシャンなんていうのもいて、バンドのメンバーでは無いにしても、助っ人として録音に参加したり、ライブに加わったりする。彼らはそういう道を選んでいるわけだ。

 微妙な位置にいるのが、バックコーラス。バックコーラスといえどもヴォーカルだから当然、立場が違えば一番目立つ存在。以前から、なぜあの人たちはソロ歌手にならないんだろうと思っていた。それがこのドキュメンタリー映画を観るとわかってくる。それはこのバックコーラスという位置で歌うことが楽しいという人、本当はソロ歌手になりたいのだけれど、なんらかの理由でそれが叶わなかった人というのがいるようだ。

 面白いのは、いくつかの例をあげてライブの場面を映しているのだが、メインのヴォーカルよりもバックコーラスのメロディーの方が勝ってしまっていて、結局聴く側の頭に残るのはコーラスのメロディーだけというのが結構あるのだということ。そういえばそうだよなぁ。

 メリー・クレイトンがローリング・ストーンズの Gimme Shelter のコーラスを付けたときのエピソードとか、レイ・チャールスの What I Say の秘密とか、知らなかったことがわかったのも面白い。

 録音したものが、ほかの歌手名義でリリースされていたなんていうエピソードは、もう『あまちゃん』そのもの。『あまちゃん』の世界は決してありえない事ではなかったのだ。

 バックコーラスの仕事が年々少なくなってきて、家政婦になったなんていうエピソードも紹介されていたが、日本の音楽状況を見ていても、音楽だけで食えている人なんてほんの一握り。それでも楽しから続けているとしか思えないものなぁ。

12月23日記

静かなお喋り 12月22日

静かなお喋り

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