風雲電影院

アフター・アワーズ(After Hours)

2013年6月17日
三日月座BaseKOMシネマ倶楽部

 1985年。マーティン・スコセッシ監督作品。未見だった。

 主人公の職業がワープロの指導員というのが時代を感じさせる。まだパソコンは一般的でなかった時代だ。レコードとCDが入れ替わるころ。アナログからデジタルへ入れ替わる、そんな時代の雰囲気を感じさせる映画。

 とにかく変な映画としか言いようがない。まともな人間はあえて言えば主人公ポール(グリフィン・ダン)だけ。
 仕事を終えてポールがコーヒー・ショップで読書をしていると、若い女性マーシーが声をかけてくる。電話番号を教えてもらい家に戻ってマーシーに電話。住所を聞き出してタクシーに乗ると、このタクシーの運ちゃんが変な人物の始まり。いや、マーシーからして相当に変なやつだということに、このあとで気が付くことになるのだが。このタクシー、乱暴運転なことこの上ない。しかもなぜかポールは持ち合わせの金を20ドルしか持っていないのだが、その紙幣を風に飛ばされてしまう。
 マーシーの家へ行けばマーシーは出かけていて、ルームメイトの彫刻家の女性がいて、これがもう、みるからに変な奴。すったもんだあってマーシーには会えるのだが、どうもマトモじゃない。あまり関わりたくないと外に出れば雨。なけなしの20ドル札は無くなってしまったので、小銭をかき集めて地下鉄で帰ろうとすれば深夜料金になっていて金が足りない。金も無いまま深夜営業のバーに入ればバーテンが金を貸してくれると言いだす。ところがレジの鍵を家に忘れてきたとかで、取りに行って欲しいと頼まれる。それでバーテンのアパートに行けば、住人に泥棒と間違われて・・・。
 といった調子が延々と続いていく。なにしろ出てくる人物がみんな変な連中ばっかりで、まさに悪夢のよう。まるでデヴィッド・リンチの映画でも観ているかのような錯覚に陥る。

 おそらくタイトルどおり、アフタータイムの悪夢のような一夜の出来事を描きたかったのだろう。そのための設定がうまくできている。あわよくば一夜のアバンチュールを楽しみたい主人公。帰りのタクシー代も地下鉄に乗るための小銭も無い。歩いて帰ろうにも雨が降り出す。この状況を作り出したのが勝因。そこにわけのわからない変な人物を何人も出して悪夢を演出したのもうまい。つまり、これは『不思議の国のアリス』の現代版・・・いや、1985年版なんだな。夜中が物騒だったころのニューヨーク。夜中に出歩かないで、いい子で寝ましょうという当時の世相もあったのかもしれない。

6月19日記

静かなお喋り 6月17日

静かなお喋り

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